Interview

大友啓史監督が『カエル男』のこだわり、小栗旬&妻夫木聡のキャスティングを語る

大友啓史監督が『カエル男』のこだわり、小栗旬&妻夫木聡のキャスティングを語る

大友組の俳優陣も多いんですが、実は裏テーマは、カエルっぽい顔立ちというのがあります(笑)

なるほど。妻夫木さんは暑かったり重かったりしたかもしれないですね(笑)。

そうですね。靴も結構重いものを履いてもらっていたので、大変だったかもしれません。ほかに気を配っていたのは刑事たちです。
沢村は警視庁の人間なんですが、警視庁を舞台にしてしまうとどうしてもあの千代田区の警視庁になってしまうから、セットの自由度も美術的に限られてくる。リアルに引っ張られてしまいます。そこで、すでに事件が発生していて、所轄署にできた捜査本部に警視庁から捜査一課が出向して来ているという設定にし、より動的で埃っぽい空間を設定しました。加えて、刑事たちはみんな足で稼ぐ古いタイプの、昭和を感じさせるようなイメージで作り込んでいこうかと。“刑事”という職業を巡る映画でもありますから。
映画自体、泥くさくて湿度があるというか、人の心の裏の裏まで捉えて人間の業まで炙り出すような、そういう映画を目指したいと思っていましたね。通奏低音をつかさどるカエル男には、どこかそういう部分がある。人の生活を調べ上げて、痛いところや嫌がるところを引きずり出して、スネの傷に塩を塗り込むような殺し方をしていくんですが、それは沢村に対しても徹底していて、心を弄ぶような執拗さで迫っていく。そうしたジメジメとしていて両生類的なぬめりに見合う俳優ということで、刑事役のキャスティングにもこだわりました。僕の作品によく出てくれている大友組の俳優陣も多いんですが、実は裏テーマは、カエルっぽい顔立ちというのがあります(笑)。

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脚本にも参加されていますが、脚色の際に気にされたことは?

前半、ストーリーが転がっていくところは原作自体スピーディーですごく面白いので、大きく変えずに脚色しました。映画としての落としどころとしてラストをどうしようかというのが一番考えた部分でしたね。原作はいろいろな解釈ができるように終わっていますが、映画ではもう少し物理に落とし込みたかった。子役を選ぶオーディションで、カエル男に囚われたあとのシチュエーションをやらせると、子役の子が本当に怖がって大泣きしてしまったんです。そのとき、これだけの大きなトラウマを子供に残すシーンになるんだなと思ったことから、映画の着地点が見つかって、あのラストになるという感じです。あまり詳しくは言えないですけどね。

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ブラッド・ピット主演の『セブン』(95)のような印象も受けました。

僕も原作を読んだときには正直そう思いました。原作者の巴(亮介)さんが、『セブン』や、『ソウ』(04)のような作品にインスパイアされて書かれた原作なのかなと。ただ、『セブン』は聖書がベースですけど、『ミュージアム』はそうではない。原作はその不在を埋めるため、現代日本の風潮にしっかり落とし込もうとしているなと感じました。そういった部分を受けて、映画化してただの殺戮ゲームにならないように気をつけたところは多々あります。

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次回の監督作は『3月のライオン』です。『るろうに剣心』も、前作『秘密 THE TOP SECRET』もコミックが原作ですね。

コミック原作にこだわっているわけではありません。オファーを受けた仕事の中で、たまたま原作コミックものがうまく着地しているという感じです。コミックの場合、その作品のコアになるテーマをちゃんとおさえ、原作からソフトランディングし、やがてきっちり卒業することが大事かと思います。それは例え原作が漫画でも小説でも変わらないですね。
『るろうに剣心』だったら、明治時代に生き残ってしまった人斬りの贖罪の話だし、贖罪というテーマでいうと、『秘密~』も『ミュージアム』も実はそれに近い。『ミュージアム』の場合、家庭を顧みなかった沢村が自分の家族を囚われたとき、どうやって救うのか、そしてそのプロセスで自分の過去にどう向き合っていくかという話ですからね。
ただ、漫画だと画が事前に観客に刷り込まれているので、ビジュアルはあまり裏切らないようにしたいというのはもちろんあります。沢村だったら目の下に傷があるので、そういうところもちゃんと再現したかったですね。

コミックのコマ割りなども再現したりするものですか?

僕は脚本を仕上げたら、あとは原作はよほどのことがないかぎり読むことはないです。それまでは徹底的に読み込みますけどね。映画を作っている身としては、創作のプロセスにおいていつか原作にさよならしないといけないんですが、早くさよならを言えたほうがいいんですよね。
漫画のコマ割りと映画のカット割りについて言われることもあるんですけど、僕自身は、カット割りはいっさいせず、芝居を作ったら1シーンをすべて多様なアングルで撮ってあとで編集するという方法なので、そもそも漫画のコマ割りをまったく気にしていません。先日もこの作品が上映された(スペインの)シッチェス・カタロニア国際映画祭で、「原作のコマ割りとカット割りが似ていますね」と言われたんですけど、「えっ? そうなんだ」と思いました(笑)。アニメーターと漫画家はカット割りやコマ割りの感覚が近いのかもしれませんが、僕は最初から割らないので、カットとしての良し悪しより、芝居と繋ぎのことしか考えていない。そういう意味では、漫画的、アニメ的感性とは一番遠いスタンスで撮っていると思います。編集のモンタージュの段階で、漫画のコマ割りと似てくることがあるのかもしれません。それで、最終的に出来上がったあとに、重なる部分もあるかもしれないし、ないかもしれない、という感じですね。

映画『ミュージアム』

2016年11月12日(土)公開

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雨が降るとヤツが来る――。
“ドッグフードの刑”として生きたまま野犬に襲われて絶命した女性、“母の痛みを知りましょうの刑”として生まれたときと同じ体重の肉を切り取られた男性。決まって雨の日に起きる残忍な殺人事件を捜査する警視庁捜査一課一係巡査部長〈沢村久志〉。彼は仕事にのめり込んで家庭を放置した結果、妻が息子を連れて家を出て行ってしまい、荒れた生活を送っている。事件の捜査が進むうち、沢村は被害者たちにある共通点があることに気づく。そして、行方がわからなくなっている妻もその中のひとりだった……。激しく動揺する沢村の前にカエルのマスクを被った異様な出で立ちの男が現れて……。

【監督】大友啓史
【原作】巴亮介(講談社『ヤングマガジン』刊)
【脚本】髙橋泉 藤井清美 大友啓史
【出演】
小栗旬 尾野真千子 野村周平 丸山智己 田畑智子 市川実日子 伊武雅刀 / 大森南朋 松重豊 / 妻夫木聡
【主題歌】ONE OK ROCK 「Taking Off」(A-Sketch)
【音楽】岩代太郎
【配給】ワーナー・ブラザース映画

オフィシャルサイトhttp://www.museum-movie.jp

© 巴亮介/講談社
© 2016映画「ミュージアム」製作委員会


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ミュージアム 全3巻セット

巴亮介 (著)
講談社

悪魔の蛙男、”私刑”執行。”ドッグフードの刑”母の痛みを知りましょうの刑”均等の愛の刑”針千本のーますの刑”ずっと美しくの刑”――。すべては、ある1つの裁判から始まった。超戦慄連続猟奇サスペンスホラー、絶望大解禁!!!


大友啓史

1966年生まれ、岩手県出身。1990年、NHKに入局し、ディレクターとして様々な番組を担当。
1997年から2年間、ハリウッドで脚本や映像演出について学び、帰国後はNHK連続テレビ小説『ちゅらさん』(01)、『ハゲタカ』(07)、大河ドラマ『龍馬伝』(10)などを演出し、映画『ハゲタカ』(09)の監督を務める。
2011年にNHKを退局後は、映画『るろうに剣心』(12)や『プラチナデータ』(13)をヒットさせる。2014年には『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最後編』を2作連続で公開し、その年公開の実写邦画ナンバー1ヒットを記録した。
2017年は、映画『3月のライオン』の前編が3月18日に、後編が4月22日に公開予定。

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