モリコメンド 一本釣り  vol. 142

Column

つるうちはな “私の歌でリスナーを救いたい! 元気になるエナジーに溢れた音楽(歌)の魅力

つるうちはな “私の歌でリスナーを救いたい! 元気になるエナジーに溢れた音楽(歌)の魅力

自分の音楽を聴いてくれた人、ライブ会場に足を運んでくれた人、だけじゃなく、とにかく私に関わった人たちを全員ハッピーにしたい! みんなと一緒に豊かな人生を送りたい! 彼女の音楽には、あまりにも純粋で、あまりも真っ直ぐな願いがビックリするほどの濃度で詰まっている。それは切実な感情というより(もちろん根底にあるのはシリアスな思いだったりするのだが)、“どこまでも気持ちよく爆発したい”という欲求に基づいている、気がする。これだけでなんのこっちゃわからないと思うが(すいません、これから説明します)、とにかく、こんなにもエナジーに溢れた音楽(歌)に触れたのは本当に久しぶりだ。

今回取り上げるのは、女性シンガーソングライターの“つるうちはな”。1983年生まれの彼女が、10数年に及ぶ活動を経て、ついにメジャーデビューを果たす。冒頭に書いたことは、その最初のアルバム『サルベージ』を聴いたときに筆者が感じたことだ。

まず、つるうちはなの軌跡を簡単に紹介したい。バンド活動を経験したあとソロに転向した彼女は、2006年のミニアルバム『メロディー』によって、自らのキャリアを本格的にスタートさせた。以後、フルアルバム『つるうちはな』ミニアルバム『DAY GIRL』、シングル「あたしバカ」「あいゆうえにい」をリリースし、 2011年には「出れんの?!サマソニ?!」よりSUMMER SONIC 2011に出演。 また自身の活動に加え、ATSUGI×最上もが「柄、じゃない?」「してみてタイッ」をはじめ、アーティストへの楽曲提供やCMソングを数多く手がけるなど、作家、プロデューサーとしても活躍してる。さらに2016年には、女性アーティストだけ(!)の音楽レーベル<花とポップス>を立ち上げるなど、多面的な活動を続けている。

つるうちはなの楽曲の特徴を端的に言えば、“(特に女性の)リスナーに向けられた溢れんばかりの愛”ということになるだろう。その傾向はキャリアを重ねるごとに強まり、最近の楽曲は“みんなに幸せになってほしい。自分らしく生きてほしい!”というメッセージに溢れている。以前は“私のことをわかってほしい”という時期もあったそうだが、現在は完全に“リスナーのために音楽をやっている”モード。カッコつけるとか飾ることのまったくない、生の感情をダイレクトに響かせるボーカルのスタイルもまた、彼女の魅力だ。

アルバム『サルベージ』は、まさに満を持してのメジャーデビュー作となる。タイトルは<海難救助>を意味する言葉。そこに込められているのももちろん、“私の歌でリスナーを救いたい!”という真摯な思いだ。

古い価値観に捉われた社会の在り方をぶっちぎり、“欲望や孤独を抱いたまま、新しい次元に突き抜けよう!”とリスナーを気持ちよく鼓舞するアッパーチューン「新次元ガール」から始まるアルバム『サルベージ』。収録曲は(というか、彼女の楽曲はすべて)つるうちはな自身の生の体験、心を揺さぶられた経験がもとになっている。たとえば先行配信された「おまじないを君に」は、彼女の友達からかかってきた悩み相談の電話の会話がヒントになっているし、「apple in my eyes」は、テレビの英会話の番組で知った“apple in my eyes”(目に入れても痛くないほどかわいい、の意味)という語句が知人の夫婦の姿と重なり、曲に結びついたという。

彼女のライフワークとも言える“女の子へのエール”がもっとも強く表れているのは、「宇宙の神秘女の子」だろう。いまもなお女性への様々な差別が存在しているは揺るがない事実だが、そのこともしっかり見据えたうえで彼女は、女性の素晴らしさを宇宙的な神秘に例え、“意地悪に慣れちゃダメなんだ 愛を取り戻せ ここから”というフレーズを響かせる。この徹底した賛美もまた、彼女の音楽の特徴だ。

ここまで歌の内容ばかり記してきたが、サウンドメイクもきわめて個性的。幼少の頃にクラシック・ピアノを習い、その後、矢野顕子、坂本龍一(がプロデュースした女性アーティスト)、ファレル・ウィリアムスなど幅広い音楽に傾倒し、自らのオリジナリティにつなげてきた彼女のサウンドは、洗練されたコード進行と(ジャズやニューウェイブのテイストを感じさせる)斬新なアレンジのアイデアがナチュラルに共存しているのだ。その雰囲気を端的に言うと、“ぶっ飛んでいて、ポップ”。つまり、めちゃくちゃ独創的なのに、誰もが楽しめる音楽なのだ。

即効性のあるサプリメントのように、聴けば聴くほど元気になるつるうちはなの音楽。メジャーデビューを機に、彼女の楽曲をより多くのリスナーと共有したい。なんだかんだと暗いニュースばかりが耳に入ってくる現在、我々に必要なのは“幸せになりたい!”という真っ直ぐな欲望なのだから。

文 / 森朋之

その他のつるうちはなの作品はこちらへ。

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