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思春期女子が“性”と立ち向かう! アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』元・少年少女の大人にこそオススメしたい深い理由

思春期女子が“性”と立ち向かう! アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』元・少年少女の大人にこそオススメしたい深い理由

2019年夏クール、オンエアを終えたTVアニメの中から、アニメ担当ライターが「ぜひ観ておいてほしい!」というオススメの作品をピックアップ。リアルタイムでの放送を見逃した方は、ぜひDVDやBlu-ray、サブスクリプションサービスでその魅力を味わってください。今回取り上げるのは、女性にもおすすめの痛快青春群像劇『荒ぶる季節の乙女どもよ。』!

文 / 阿部美香


“揺れ動く心のヒダ”をビビッドに描写。思春期の葛藤はこうあってほしい!

高校の文芸部に所属する“まだ本気の恋愛を知らない”5人の女子達が、文学作品に登場する性描写を興味津々で受け止めることをキッカケに、初めて体験する恋する感情や“性”との向き合い方に、それぞれの立場で振り回されていく『荒ぶる季節の乙女どもよ。』。青春アニメの大ヒット作『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』や、昨年は自ら脚本・監督作を手がけたことでも話題を呼んだ脚本家・岡田麿里が原作を担当し、「別冊少年マガジン」(講談社)で今年9月に連載が完結した同名漫画(絵は絵本奈央)のアニメ化だ。

思春期の(とくに女子の!)どろどろした感情、内に秘めた衝動を斬新な手法で描くことにかけては定評のある岡田麿里が、女の子の“性”にスポットを当てたということで、原作漫画もかなり評判となっていた。が、アニメはハートフルな作画と新人声優達のフレッシュな演技を味方につけることで、キャラクター達の揺れ動く心のヒダを、よりビビッドに描き出していたのが印象的だ。

主役となる5人の文芸部員たちの、恋愛を目の前にした女子の思春期特有の感性や感情の揺れ動きは、フィクションでありながらも、限りなくノンフィクションに近い。本作は、自分でも気づいていなかった隣家に住む幼馴染み・典元泉(CV:土屋神葉)への恋心を、性を意識することで明確に体現していく奥手で“地味子”な小野寺和紗(CV:河野ひより)を中心に、女性なら誰もが「ああ、自分にもこういう時代があった。こういう子いたいた!」と思えるキャラクターがひしめいている。

少女期に倒錯したロリコン性癖を持つおやじ演出家に抱いた憧れをこじらせ、同世代とは異なる恋愛観に縛られる児童劇団員出身の大人びたクールな美少女・菅原新菜(CV:安済知佳)。極端に潔癖で生真面目な性格と自分の容姿への自信のなさから、性に奔放な同級生に反発し、“男の子を好きになる”感情自体を封じ込めるしかなくなる文芸部長・曾根崎り香(CV:上坂すみれ)。男子に好意を寄せられ、今まで男性を好きになったことが一度もない自分が、本当に好きな人は誰なのかを突き詰めた初恋(相手は意外な人物!)に辿り着く須藤百々子(CV:麻倉もも)。小説家志望だが恋愛表現にリアリティがないと指摘され、教師を相手に本物のセックス経験を持とうと焦る本郷ひと葉(CV:黒沢ともよ)。

アニメらしいキャラクター設定とストーリーではあるが、同じ女性の立場としては、恋愛感情をこじらせていく“思春期女子あるある”が、(同じ女性として)懐かしさを伴って呼び起こされて心地よい。同時に、彼女達に恋心を寄せる、おませな女子の気持ちが全く理解できていない童貞男子たちの子供っぽさと、若さゆえのピュアな男らしさが浮き彫りになっていくのも楽しかった(第1話のラスト、THE BLUE HEARTSの「TRAIN-TRAIN」を自室でガンガンにかけ、PCでエロ映像を観ながらナニしているところを、和紗ちゃんにバッチリ目撃されてしまった泉くんには同情を禁じ得ない!)

5人の少女の“悶々”と“鬱屈”は、物語終盤、理不尽な大人の仕打ちに対して破天荒に“荒ぶる”、ある種ファンタジックなエンディングによって、より痛快で爽快な青春群像劇として幕を閉じる。青春は……健康的な思春期の葛藤はこうあってほしいし、少年少女の暗く世知辛いニュースが駆け巡っている現代でも、巷の少年少女達は今もピュアに向き合い続けているはずだ。本作はそんな“もうあの頃には戻れない”大人からのメッセージのようにも思えた。

半歩間違えば、暗く生々しい世界に足を踏み入れそうになる物語を、エンターテインメントとして軽やかに突き抜けていった『荒乙』。コメディ要素もかなり多めで作画も美しい、女性にもぜひ観て欲しい良作だ。

TVアニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』

dアニメストアほかで配信中

■キャスト
⼩野寺和紗役:河野ひより
菅原新菜役:安済知佳
須藤百々⼦役:⿇倉もも
本郷ひと葉役:⿊沢ともよ
曾根崎り⾹役:上坂すみれ
典元泉役:⼟屋神葉
⼭岸知明役:福⼭潤
天城駿役:広瀬裕也
三枝久役:咲野俊介
⼗条園絵役:⼾松遥
杉本悟役:花江夏樹

■ 原作
『荒ぶる季節の⼄⼥どもよ。』(講談社「別冊少年マガジン」連載)
原作:岡⽥麿⾥ 漫画:絵本奈央

■スタッフ
監督:安藤真裕、塚⽥拓郎
脚本: 岡⽥麿⾥
キャラクターデザイン/総作画監督: ⽯井かおり
⾳楽:⽇向萌
美術監督:中久⽊孝将、中尾陽⼦
⾊彩設計:⼭崎朋⼦
撮影監督:⻑⽥雄⼀郎
⾳響監督:郷⽂裕貴
編集:髙橋歩
プロデュース:斎藤俊輔
アニメーションプロデューサー:⽶内則智
アニメーション制作:Lay-duce

©岡田麿里・絵本奈央・講談社/荒乙製作委員会