Interview

Nulbarich ミニアルバム『2ND GALAXY』が意味するものとは? 提示される新たな表現方法についてJQに訊く。

Nulbarich ミニアルバム『2ND GALAXY』が意味するものとは? 提示される新たな表現方法についてJQに訊く。

サードアルバム『Blank Envelope』から9か月。Nulbarichの快進撃が止まらない。12月1日にさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ開催を発表した彼らは、『Blank Envelope』のアルバムツアーを経て、早くも新作ミニアルバム『2ND GALAXY』を完成! 映画『HELLO WORLD』主題歌の「Lost Game」をはじめ、「Look Up」(シチズン「クロスシー」TVCMソング)や「Kiss Me」(アニメ『キャロル&チューズデイ』OP曲のリアレンジセルフカバー)など、目覚ましい進化を遂げた全8曲について、フロントマンのJQに話を訊いた。

取材・文 / 小野田雄 撮影 / 森崎純子


曲至上主義というか、曲が良くなるのであれば、形態にこだわらず、必要な音を入れ、不必要な音は省くことをよしとするスタンスなんです

Nulbarich エンタメステーションインタビュー

サードアルバム『Blank Envelope』から9か月。新作ミニアルバム『2ND GALAXY』までの流れをまずは振り返っていただけますか?

前作『Blank Envelope』は、前半部分を昨年11月の武道館公演前に作り、後半部分を武道館後に作った作品なんですね。そのアルバムを今年2月にリリースした後、今年12月に行うさいたまスーパーアリーナ公演を3月に発表して、アルバムの全国ツアーに臨んだんですけど、自分にとって、さいたまスーパーアリーナ公演は『Blank Envelope』以降のNulbarichを象徴するライブと考えていることもあり、それ以降は意識や姿勢が自然とさいたまに向かっていったんです。昨年の武道館公演というのは、10人編成のバンドで、その時点の僕たちに出来る全て、それを可能な限りゴージャスに伝えることがテーマだったんですけど、そもそも、僕たちは学生の頃から同じ音楽観を共有してやってきたバンドではなく、本来備わっているはずのバンド感が欠けた状態で活動が始まり、作品が広がり始めた時点ではまだライブをやったことがなかったんですよね。でも、回数を重ねるうちに、ライブの楽しさに目覚め、今年3月から始まったツアーはさいたまスーパーアリーナを念頭に、バンドらしい音を鳴らせるように、シンプルな構成でメンバーの一体感を伝えることをテーマに掲げたんです。その成果が曲作りにも反映されて、削ぎ落とされ、すっきりした部分も多いし、スケール感を増したものになっていきました。

すっきりした佇まいの力強い曲が出来上がっていった

Nulbarich エンタメステーションインタビュー

新作ミニアルバムの曲は、確かに大きな会場で鳴らされている絵が思い浮かぶスケール感と揺るぎない足腰の強さ、シンプルな楽曲の佇まいが大きな特徴ですよね。

今までのNulbarichは、ライブを想定しつつも、スタジオワークでは細部をどこまでも突き詰めてきたんですけど、今回は、例えば、“この曲はベースが聞こえていれば、あとは必要ないんじゃない?”と判断したり、1曲1曲の軸がはっきりしたと思いますね。もちろん、僕は耳を澄ませた時に聞こえてくる繊細な音の美しさも大好きなんですけど、今の音楽シーンは表現がどんどんシンプルな方向に向かっていたりもするし、Nulbarichは、曲至上主義というか、曲が良くなるのであれば、形態にこだわらず、必要な音を入れ、不必要な音は省くことをよしとするスタンスなんですよね。そして、なにより、さいたまのような反響だらけの大きな会場で音を鳴らした時、緻密にアレンジしても、その緻密さはなかなか伝わりづらかったりする。だから、よりシンプルに、それでいて、鳴らすフレーズの格好良さや音色にこだわって曲作りをして、そうやって全てを固めた曲をもとにレコーディングを進めていったら、すっきりした佇まいの力強い曲が出来上がっていったんです。

すっきりとシンプルに、瑞々しく響く2曲目のダンストラック「Twilight」はバンドの進化を明確に伝える1曲です。

この曲は他の曲がほぼ出来上がった状態で制作に取り掛かったんですけど、今回のミニアルバムが濃密な印象を受けたので、ドライブフリークな方々に気持ち良く聴いてもらいたくて、深夜の首都高をイメージしながら作りました。その時、ちょうどLAに滞在していて、東京が恋しく感じていたこともあり、そんな心境ともマッチした曲でもあり、こういうジャジーなタッチのすっきりした曲を作ったのはひさしぶりですよね。アルバムの中盤に入れたら、他の曲にその良さが消されてしまうだろうなと思ったので(笑)、真っ先にみんなに聴いてもらいたくて、作品の冒頭に収録しました。

僕らがさいたまで鳴らしたい音が分かりやすい形になっていますね

Nulbarich エンタメステーションインタビュー Nulbarich エンタメステーションインタビュー

そして、濃密なグルーヴが溢れる4曲目の「Kiss Me」と5曲目の「Get Ready」もNulbarichがライブで培ってきた経験が音の厚みや耳触りに反映されています。

そうですね。Nulbarichの全体像を伝え、広められる場所はライブしかないですし、その現場に重きを置いて活動してきて、いい意味でも悪い意味でも成長しているというか、「Kiss Me」や「Get Ready」はグルーヴそのものは変わっていませんけど、音色や音の質感は以前の曲と比較して、鳴らしている音が変わってきているのが如実に表れていると思いますし、僕らがさいたまで鳴らしたい音が分かりやすい形になっていますね。

シンプルに力強く鳴る曲を追求しつつ、その一方で新たな表現を追求するのもNulbarichであって、3曲目の「Look Up」はゴスペル的なアプローチが新機軸ですね。

「Look Up」は、災害も含め、色んなことが起こり、世の中が目まぐるしく浮き沈みしているなかで、自分をどうポジティブに持っていくかということを考えて作った曲で、完成してから、しばらくストックしていたんですね。そんななか、シチズンのCMのお話を頂いて、光だったり、これからの明るい未来を前にウキウキしている様子だったり、そういうポジティブなテーマのCMということだったので、マイナスの地点からスタートして希望を見出していく内容の「Look Up」が合うんじゃないかと思ったんです。僕がポジティブなベクトルで書く曲というのは、ゴスペルからインスピレーションを得ていることが多いんですけど、ゴスペルって、曲自体はめちゃくちゃ明るかったりするのに、困難な状況に置かれている人が祈りとして歌っていて、それゆえに曲から圧倒的なパワーが生まれてくるんですよね。だから、「Look Up」を世の中に発信する際には、よりハッピーな方向に持っていくために、ゴスペルの明るく華やかなアレンジを施したんです。

この曲は今回のミニアルバムでブラックミュージックの影響下にない唯一の曲

Nulbarich エンタメステーションインタビュー

6曲目「Rock Me Now」もエレクトロポップのスペーシーな要素はこれまでのNulbarichになかったものですよね。

この曲は今年5月にアパレルブランドのポップアップイベントで音楽担当のキュレーターとして参加した時に作った曲を発展させたものなんです。その大元の曲を作るにあたって、パリコレのヴィジュアルをリサーチしたら、80年代後半から90年代初頭にかけてのニュアンスがリバイバルしているように感じたので、当時の音楽のエッセンス、エレクトロポップのスペーシーな要素を織り込んだサウンドを上手く返したいなと思ったんです。だから、この曲は今回のミニアルバムでブラックミュージックの影響下にない唯一の曲だったりして、そのことに気づいていただけてうれしいです。

作品のハイライトである7曲目の「Lost Game」はストリングスをまとい、どこまでも広がるエモーショナルなバラードです。

この曲に関しては、主題歌を担当させて頂いた映画『HELLO WORLD』のおかげですね。曲が使われるのは、かなり壮大で、この世の終わりという感じのシーンなんですけど、この世の終わりを経験したことがないので、当初は全然ぴんと来なくて。映画自体、まず声優さんのセリフを録って、後からアニメーションを乗せていく珍しい手法で制作されたものなんですけど、僕が楽曲制作に取り掛かった段階では絵の素材がほとんどない状態だったんですけど、逆にそれがよかったのか、想像力がかき立てられて、自然と映画の世界に入り込めたんですよ。そこで主人公だったら、どんな思いを抱くのかということが出来て、その主人公から自分にはない壮大さを教えてもらったような感じでしたね。主人公はナオミっていうんですけど、レコーディングではナオミのセリフを流しながら、演奏を録音していたんですけど、“そんなんじゃ、ナオミは絶望しない”って、よく言ってました(笑)。ただ、そうやって作った曲をアルバムのどこに置くか。その壮大さに触れたら、リスナーは戻ってこれないじゃないですか。だから、アルバムの最後に収録しました。

これからのNulbarichを作る言葉は何だろうと考えた時、ポジティブなマインドだと思ったんです

これまでになく壮大な「Lost Game」だけでなく、今回のミニアルバムで使われている“空”や“宇宙”といった言葉には現在のNulbarichが見ている大きく開けた世界やそこで湧き上がってくる心境が投影されているように感じました。

今回のミニアルバムのポイントになっているのは、何も分からない状態でデビューしてから3年間走ってきて、その間、色んなものを見てきたつもりなんですけど、その上でこの先自分はどうしていきたいのか。これからのNulbarichを作る言葉は何だろうと考えた時、ポジティブなマインドだと思ったんですね。世の中にはネガティブなものがあちこちにあると思うんですけど、そうしたネガティブなものが気にならないくらいポジティブでいることが大切なんじゃないかなって思ってます。

この世にある壁なき無限の世界は、宇宙の他に浮かんだのは人間の想像の世界。想像しないことには世界は広がらない

Nulbarich エンタメステーションインタビュー

ネガティブな思考にとらわれず、想像力をポジティブな方向にどんどん加速させていくような?

そうですね。スポーツにも当てはまると思うんですけど、来るものを抑えるディフェンスはめちゃめちゃしんどいんですよね。そうではなく、ただただ攻め続けること。何が来ようともそれに気づかず進んでいく勢いは最強だよなって(笑)。このミニアルバムでは自分たちにそう言い聞かせているところがあるのかもしれない。今回のジャケットは、宇宙旅行を夢見る少年の無邪気で美しい姿が描かれているんですけど、その少年が夢を追い続けることによって、その思いが影響して、現実世界でも本や靴、ソファーが浮き始めるっていう。自分の想像世界を比喩した『2ND GALAXY』っていう作品タイトルもそう。この世にある壁なき無限の世界は、宇宙の他に浮かんだのは人間の想像の世界。想像しないことには世界は広がらないじゃないですか。そんな思いを込めて、作品タイトルを付けましたね。

さいたまスーパーアリーナに向けて、バンドの表現世界がどんどん広がっていると。

今回の作品は当初は4曲入りのEPを想定して制作を進めていったんですけど、さいたまを想定して、あれもこれもと考えているうちにEPからミニアルバムへと膨らんでいって。そのお陰で、制作がかなりタイトになってしまったんですけど(笑)、Nulbarichの歴史を振り返りつつ、新しいNulbarichを提示したいと考えているさいたまに持ち込めば、きっと今の自分たちのベストパフォーマンスが引き出せるんじゃないかなと思っています。

その他のNulbarichの作品はこちらへ。

ライブ情報

Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY- at SAITAMA SUPER ARENA
12月1日(日) さいたまスーパーアリーナ

COUNTDOWN JAPAN 19/20  12月28日(土)・29日(日)・30日(月)・31日(火)
幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール(28日は国際展示場1~11ホールのみ)<Nulbarichは12月29日(日)に出演>

Nulbarich

シンガー・ソングライターのJQが(Vo.)がトータルプロデュースするNulbarich。
2016年10月、1st ALBUM『Guess Who?』リリース。
その後わずか2年で武道館ライブを達成。即ソールドアウト。
日本はもとより中国、韓国、台湾など国内外のフェスは既に50ステージを超えた。
生演奏、またそれらをサンプリングし組み上げるという、ビートメーカー出身のJQらしいスタイルから生まれるグルーヴィーな音は、バイリンガルなボーカルと溶け合い、エモーショナルでポップなオリジナルサウンドへと昇華する。
「Null(何もない)」けど「Rich(満たされている)」。
バンド名にも、そんなアンビバレントなスタイルへのJQの想いが込められている。

オフィシャルサイト
http://nulbarich.com