LIVE SHUTTLE  vol. 376

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アニメが終われば聴けなくなる…“キャラソン”歌って13年 声優・早見沙織、SPライブ“CHARACTERS”で再び届けた非凡な魅力

アニメが終われば聴けなくなる…“キャラソン”歌って13年 声優・早見沙織、SPライブ“CHARACTERS”で再び届けた非凡な魅力

アーティストデビュー5周年イヤーを迎えた声優・早見沙織が、『早見沙織 Special Live 2019 “CHARACTERS”』を東京と大阪で開催した。タイトル通り、これまで声優として歌ってきたキャラクターソングを中心に披露されたスペシャルライブ。ステージでは、ゲーム『無双OROCHI3 Ultimate』主題歌を担当することと、2020年に全国ツアーの開催と春にミニアルバムをリリースすることも発表。5周年イヤーの楽しみをたくさん伝えてくれた東京公演の模様をレポートする。

取材・文 / 塚越淳一


『神のみぞ知るセカイ』『四月は君の嘘』……数々の作品から誕生した名曲が甦った奇跡の夜

彼女の歌声を、ソロ名義より先にアニメの主題歌やキャラクターソングで知った人も多いのではないだろうか。そのくらい、アーティストデビュー前から声はもちろん、歌も注目をされていた声優が早見沙織である。ただ、その衝撃はというと、CD音源を聴いたときよりキャラクターソングを歌うライブを見たときのほうがむしろ大きくて、生で見たときの圧倒的な表現力・歌唱力というのは彼女が高校生・大学生だった頃から非凡なものがあった。

そんな早見沙織が、アーティストデビュー5周年イヤーを迎え、キャラクターソングを中心としたスペシャルライブを開催するというのだから、興奮せずにはいられない。おそらく数百はあるであろうキャラソンの中から何を歌ってくれるのか、Zepp DiverCity(TOKYO)に集まったファンは、それを楽しみに彼女の登場を待っていた。

バンドがドラムからひとりずつ登場し、順に音を重ねていく。ヴァイオリン、コーラスが揃い「overture」を演奏すると、ファンも音楽に身を委ね始める。インストから入るところが、いつものライブのようであり、彼女だからこそのライブ演出と言えるだろう。そして早見沙織がゆっくりと登場し、ステージのセンターに立つと、「やさしい希望」でライブがスタートする。キャラソンではないと思うかもしれないが、彼女の記念すべきデビュー曲であり、『赤髪の白雪姫』のオープニングテーマでもある。

早見沙織 エンタメステーション ライブレポート

ここでガッチリとファンの心をつかむと、拍手も鳴り止まない中、ピアノとともに歌い出したのは「木漏れ日のコントラスト」。その透き通る歌声に鳥肌が立つ。真後ろから射す光に包まれながら歌う姿も、神々しさがあった。『STAR DRIVER 輝きのタクト』でヒロインであり巫女のアゲマキ・ワコとして歌った劇中歌だが、アニメが放送されていた2010年に一気にタイムスリップしたような感覚になった。これがキャラソンの持つパワーなのだろう。何より嬉しかったのは、同期を使わない生バンドによる演奏なので楽器が違うことはあるが、フレーズをあまり変えずに再現してくれていたということだ。このあとに続くキャラソンも同様、おいしいフレーズはほぼ活かしてくれていた。

そして『赤髪の白雪姫』第2クールのオープニングテーマ「その声が地図になる」を挟み、「NAKED GENIUS」「Sacred Bullet~赤の十字架~」と続ける。キャラソンの中でもロック調の楽曲を並べていたが、自身名義ではやらないような曲調というところで、アーティスト・早見沙織から入った人には新鮮に感じられたブロックかもしれない。アニメ『神のみぞ知るセカイII』の「NAKED GENIUS」などは、作品絡みのコンサートで聴いたきりだったので感慨深いものがあった。続く「Have a strong will ~木枯らし」は『四月は君の嘘』のキャラソンだが、今の早見沙織の表現力をたっぷりと注ぎ込み、演じていた井川絵見の心情に寄り添った歌を披露してくれた。

「作品が一旦終わってしまうと、キャラクターソングを皆さんの前で歌唱する機会が少なくなってしまうんです。でも、曲としてこの世に生を受けた、すごく素敵な楽曲がたくさんある中で、それを宝箱に入れておくだけではなく、一度開けて、今の自分で、そして素敵なバンドと一緒に昇華したら、もっともっと皆さんに伝わるんじゃないかと思ったんです」と、今回のライブの趣旨を説明する。そして、曲を知っている人は、その曲を聴いていた時期を思い出しながら、新たな楽曲の魅力に気づいたり、知らなかった人はさかのぼって作品にまで触れてくれたら嬉しいと、このライブに込めた想いも語っていく。

早見沙織 エンタメステーション ライブレポート

レトロな曲調が癖になる「夢の果てまで」を歌ったあと、やさしいヴァイオリンの音色とともに「きみを想うとき」を歌うと会場からは大きなどよめきが起こる。ここからの「想うコト」とメドレーで繋ぎ、衣装チェンジしての「fallen down」「風がなにかを言おうとしている」の流れは、2008年~2010年あたりに演じたキャラクターのキャラソンなのだが、曲のイントロが流れるごとにどこからか大きな声が上がっていた。この頃から彼女の歌を知っている人は多いと思うが、どの曲も今聴いても色褪せることのない名曲ばかりだ。アレンジも原曲を生かしながらも、少しだけジャジーにしたり、当時よりも大人な雰囲気で歌っていたのも印象的だった。

「今日のライブで歌ったそれぞれのキャラソンは、誰か刺さる人の心を撃ち抜いていくんじゃないかと思っています(笑)。このブロックは私の高校・大学時代の思い出がよみがえりました。生バンドでライブ練習するとき、まず当時の音源を聴くんですが、メロディはほぼ忘れていなくて、不思議なことに、こんなスタジオでレコーディングしたなとか、こんなディレクションを受けたなとか、ひとつひとつ思い出すんです。だから私も、これまでの軌跡をたどっているような感じでした」

このようにMCで語っていたが、数多く歌ってきたキャラクターソングの一曲一曲に魂を込めて、心を込めてレコーディングしていたことがわかるエピソードで、アニメファンとしても嬉しい気持ちになる。ただ、キャラソンの場合、会場にいるすべての人が知っているとは限らないというのも一理あって、それがこういうライブの難しいところと言えるだろう。

早見沙織 エンタメステーション ライブレポート

そんな中、みんなが一緒に盛り上がれるのは、早見沙織名義の楽曲ということで、自身が作詞・作曲したTVアニメ『カードキャプターさくら クリアカード編』のエンディングテーマで、とてもポジティブで陽気な楽曲「Jewelry」で盛り上がり、ここでバンドメンバー紹介を、それぞれのソロを交えながらおしゃれにカッコよく終えると、TVアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のエンディングテーマである「ダーリン」を歌い、さらに盛り上げていく。かなり最近の作品だが、演じたココロがストーリー上、とても難しい役割を持ったキャラクターだったこともあって、印象に残っていたのかもしれない。そして本編残り2曲は、しっとりとした曲で締めくくる。

劇場版『はいからさんが通る 後編 ~花の東京大ロマン~』の主題歌となった、竹内まりや作詞・作曲の「新しい朝」は、歌詞の深さ、そしてメロディの美しさに酔いしれる曲で、最後に「ラララ」と全員で声を合わせる瞬間の心地よさは格別で、いつまでも彼女のライブで味わっていきたいと思える。そして最後は「secret base~君がくれたもの~」。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』のエンディングテーマになる前から、すでに名曲として知られていた楽曲だが、彼女のやさしくも温かい歌声で聴くと、『あの花』のいろいろなシーンも思い浮かんできて、大きな感動が押し寄せてくる。

そして、歌い終わりステージを去っていく早見沙織には、大きな大きな拍手が贈られた。今年4月の彼女のワンマンでも感じたが、ライブのあとの拍手が、アンコールを求めるものというより、心からの感謝を伝えるための拍手になっているのが、彼女のライブの特徴だと思う。

早見沙織 エンタメステーション ライブレポート

アンコールでは、会場全員が知っている彼女名義の楽曲で盛り上がる。ヴァイオリンの音色が美しく響く中、伸びやかなボーカルが踊る「レンダン」、そしてアーバンなムード漂う「メトロナイト」はライブでもかなり盛り上がる楽曲のひとつ。本編でも何度か披露していたボーカル横にあるマイクロコルグ(シンセ)を弾く早見の姿も決まっている。そして最後は、今後のライブのために用意したという新曲「ワンスモア」。コール&レスポンス&クラップで、みんなと一緒に楽しめる曲がほしいという彼女の想いも感じられる楽曲だったし、とても幸せな気持ちになった。

いろいろな人の協力で、今回のライブが実現したことを伝えていく早見は「この先、5年じゃなくてもっと先まで、走り抜けていきますのでよろしくお願いします!」と最後に伝え、15歳の時に初めてキャラクターソングとしてレコーディングしたという楽曲「この世界がいつかは」を歌ってライブを終えた。どこか和のテイストを感じる曲をバンドで完璧に再現。原曲を歌ってから13年……歌を歌い続けて、大きく成長した歌を聴かせてくれた。ただ、当時の曲を聴いても、やっぱり頭を抱えたくなるほどうまいのだ……。

私も10年以上前から、その才能に魅せられてしまったひとりだが、それを育み続けているのもまた素晴らしいことだと実感した。宝箱にしまわれていた大切な曲たちを、再びライブで聴けた幸せーー。今回のライブはほとんどそれに尽きるだろう。まだまだこの日歌っていない名曲はたくさんあるので、いつの日かまた、このような素敵なライブをしてほしいと心から思う夜だった。


『早見沙織 Special Live 2019 “CHARACTERS”』東京公演

2019年10月16日(水)Zepp DiverCity(TOKYO)

<セットリスト>
00「overture」
01「やさしい希望」(TVアニメ『赤髪の白雪姫』第1クールオープニングテーマ)
02「木漏れ日のコンタクト」(TVアニメ『STAR DRIVER 輝きのタクト』アゲマキ・ワコ)
03「その声が地図になる」(TVアニメ『赤髪の白雪姫』第2クールオープニングテーマ)
04「NAKED GENIUS」(TVアニメ『神のみぞ知るセカイII』ハクア・ド・ロット・ヘルミニウム)
05「Sacred Bullet~赤の十字架~」(ゲーム『シャイニング・アーク』キルマリア)
06「Have a strong will ~木枯らし」(TVアニメ『四月は君の嘘』井川絵見)
07「夢の果てまで」(『劇場版 はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~』主題歌)
08「きみを想うとき」(アニメ『セキレイ』結)※第11話EDテーマ
09「想うコト」(TVアニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』新垣あやせ)※第12話EDテーマ
10「fallen down」(TVアニメ『そらのおとしもの』イカロス)※第10話EDテーマ)
11「風がなにかを言おうとしている」(TVアニメ『我が家のお稲荷さま。』コウ)※EDテーマ
12「Jewelry」(TVアニメ『カードキャプターさくら クリアカード編』エンディングテーマ)
13「ダーリン」(TVアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』XX:me(キスミー)/ココロ)※EDテーマ
14「新しい朝」(『劇場版 はいからさんが通る 後編 ~花の東京大ロマン~』主題歌)
15「secret base ~君がくれたもの~(10 years after Ver.)」 (TVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』本間芽衣子(茅野愛衣)、安城鳴子(戸松 遥)、鶴見知利子(早見沙織))※EDテーマ

encore
01「レンダン」
02「メトロナイト」
03「ワンスモワ」
04「この世界がいつかは」(TVアニメ『桃華月憚』川壁桃花)※EDテーマ

リリース情報

早見沙織
Statice

ゲーム『無双OROCHI3 Ultimate』主題歌
2019年12月18日(水)配信リリース

・Statice
 作詞:早見沙織/作曲:田辺 望・伽羅奢・瀧口系太/編曲:前口 渉
・Statice(English ver.)
 Lyrics:Saori Hayami/Lyrics in English:Eliana/Music:Nozomi Tanabe, gratia, Keita Takiguchi/Arrangement:Wataru Maeguchi
・Statice(ハイレゾ音源)
・Statice(English ver.)(ハイレゾ音源)

※音楽配信サイトにて配信限定販売

早見沙織オフィシャルサイト

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