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加藤和樹が無償の愛を歌い上げ、城田 優の演出が冴えわたる。ミュージカル『ファントム』絶賛上演中!

加藤和樹が無償の愛を歌い上げ、城田 優の演出が冴えわたる。ミュージカル『ファントム』絶賛上演中!

2014年の公演でファントム(エリック)役を演じた城田 優が、今作では主役と演出を務めるミュージカル『ファントム』が、11月10日(日)からTBS赤坂ACTシアターにて上演中だ。
ファントム(エリック)役には、今作で初めて本役に挑む加藤和樹がダブルキャストとして名を連ねる。それ以外にも、ヒロインのクリスティーヌ 役には、宝塚歌劇団月組の娘役のトップを経て活躍が著しい愛希れいかと、抜群の歌唱力で様々なミュージカルに出演している木下晴香のダブルキャスト。また、ファントムの恋敵となるシャンドン伯爵 役は、ミュージカル界にはなくてはならない、廣瀬友祐と木村達成がダブルキャストで出演する。新しいチャレンジ、豪華な布陣で、どんなミュージカル『ファントム』になるのか……。そのゲネプロと囲み取材に立ち会うことができた。

※11月8日(金)に行われたゲネプロでは、ファントム 役は加藤和樹、クリスティーヌ 役は愛希れいか、シャンドン伯爵 役は廣瀬友祐、少年エリック 役は大河原爽介が務めた。

取材・文・撮影 / 竹下力


“あなたと私”だけのささやかな愛。その大切さを教えてくれる

思わず涙してしまったのは、互いに秘密を抱えたふたり、ファントム(エリック)(加藤和樹)と、ゲラール・キャリエール(岡田浩暉)のデュエット曲「You Are My Own」だった。この曲で描かれるのは、彼らの凝り固まった心のわだかまりが一気に氷解するところ。ミュージカルの魅力は、歌と芝居を通して、人種や性差などを超え、あらゆるものをゼロにすること、言い換えれば平等にしてしまうことにあると感じてしまう。そして、そこから新しい未来を創り始めることができるとも。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

オペラ座という劇場を舞台にした作品であるから劇中劇もあり、とにかく歌にフォーカスが当たっている。通奏低音に流れているのは、おそらく「You are music」という曲で、“音楽が生きる証”というモチーフを込めた歌が随所で流れ、この舞台に立つすべての人たちが音楽を愛していることを知る。音楽のパワーが漲った作品でもある。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

舞台は19世紀後半のパリ。楽譜売りで歌手志望のクリスティーヌ・ダーエ(愛希れいか)は、その歌声をオペラ座のパトロンであるフィリップ・シャンドン伯爵(廣瀬友祐)に認められ、オペラ座で歌のレッスンを受けられるように紹介状を書いてもらう。しかし、オペラ座に行ってみると、頼みのキャリエール支配人は解雇され、新支配人のアラン・ショレ(エハラマサヒロ)や妻のプリマドンナのカルロッタ(エリアンナ)に衣裳係にされてしまう。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

その一方で、クリスティーヌの美しい歌声を聴いたオペラ座の地下に住む怪人ことファントムは、彼に深い愛情を寄せた亡き母を思い出し、彼女に秘かに近づき、歌のレッスンを行うようになる。その成果は、『妖精の女王』という演目のタイターニア 役に抜擢されることで果たされる。

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しかし、初日の楽屋、彼女の歌や美貌に嫉妬していたカルロッタは、クリスティーヌを罠に陥れ、毒酒により喉を潰してしまう。初日の幕は、怒声が飛び交う大荒れとなり、ファントムは失意のクリスティーヌをオペラ座の地下へ連れて行くことになるのだが……。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

まず注目したいのは、城田 優の演出だろう。囲み取材で「視覚的にはクリスティーヌの目線を通して、パリへの憧れをファンタジックに描こうとした」と語ったように、舞台全体が色とりどりで華やかだった。ファントムが住むオペラ座の地下も真っ暗闇という印象はなく、つねに光がどこかからか差し込んでいる。それはファントムの人生の悲劇を悲劇のまま終わらせない城田なりの演出意図なのかもしれない。さらに、客席を巻き込みながら、ひとつの劇場をオペラ座に見立てた演出で、いつもどこかで何かアクションが起こっていて楽しい。観客の目線を引きつけるときは、舞台中央にスポットライトを当て役者が歌うことで、悲劇性や喜劇性が饒舌に表現されている。また、宙吊り、回り舞台、火花、スモーク、紙吹雪、屋台崩し的な仕掛けなど様々な趣向を凝らしているところも素晴らしかった。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

ファントムは生まれたときから、オペラ座の地下に隠れ住んできたせいか、人とのコミュニケーションが上手にできずに、感情の表現の仕方が苦手だが、加藤和樹はそんな彼の音楽への無償の愛、クリスティーヌや両親に対する愛を、幼さをも感じさせる演技と朗々とした歌で巧みに表現していた。なにより、醜さゆえに怪人に成り果て、愛する人を遠くから眺めることしかできずに、それでも愛して欲しいと願わずにはいられない一途な気持ちがストレートに伝わってくる真摯な芝居は、切なくて哀しくて、身悶えしてしまう。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

クリスティーヌ・ダーエ 役の愛希れいかは、身のこなしと歌の音域の幅広さに改めて度肝を抜かれた。しなやかな身体の肉体性を活かしながら、明るくて美しいファルセットが魅力的で、彼女の天真爛漫さには、こちらまで笑顔になる。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

廣瀬友祐はクールで知的なフィリップ・シャンドン伯爵を熱演していた。オペラ座のパトロンという、金持ちでモテ男という設定はあるが、廣瀬が型にはまらない演技を見せて、とても生き生き舞台上に存在しているように見えた。シャンドンがファントムとクリスティーヌと三角関係になり、ファントムに嫉妬し、心を痛める姿は、とてもリアルだった。完璧に見える人物にも悩みはあるのだと思わせる、観客が感情移入できるスペースのある熟達した芝居だったし、渋みのある歌声がとても魅惑的だった。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

ほかにもカルロッタを演じたエリアンナはコメディエンヌぶりを発揮して、凄腕のゴスペルやR&Bシンガーだと唸らせる、シャウトやこぶしの効いた歌い回しを見せ、アラン・ショレ 役のエハラマサヒロは、エリアンナの尻に敷かれる旦那さんを好演。ゲラール・キャリエールがファントムと付かず離れずの距離を保ちながら、最後にお互いが心を許し、急接近する際の岡田浩暉の芝居も感動的だった。演出の城田 優を支えようとするカンパニーの結束力の高さをもうかがえた。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

今作は、家族愛、恋人同士の愛、様々な愛がテーマになっていると思うが、それは人類愛といった宇宙レベルの壮大な愛を訴えているわけではない。小さいけれど誰にでも手が届く、“あなたと私”だけのささやかな愛。その大切さを教えてくれる素晴らしいミュージカルだった。

愛に満ちた最高のエンターテインメントの舞台

ゲネプロの前には囲み取材が行われ、加藤和樹、城田 優、愛希れいか、木下晴香、廣瀬友祐、木村達成が登壇した。

ミュージカル『ファントム』史上、初の演出と主演を兼ねることについて、城田 優は「初めての経験で、言葉にできない謎の感情と戦っています(笑)。今回は演出をしながらお芝居をしなくてはいけないというのも初めてでしたし、ファントムという役の分量も多いので、そこの両立と言いますか、客観性と主観性の使い分けですとか……僕個人的にはいろんな不安はあるんですが、とにかく最高のクォリティーをつくりたいがゆえに葛藤しながら、できることはすべてやってきましたので、この作品が世に出ていくことには何の不安もありません。2019年、一番輝かしく、夢の世界で、愛に満ちていて、希望と絶望が入り混じった、最高のエンターテインメントの舞台になっていると自負しています」と作品に対しての自信をみなぎらせながら、出演への不安を正直に吐露した。

ミュージカル ファントム 城田 優 エンタメステーションステージレポート

演出家・城田 優の印象を尋ねられた加藤和樹は「彼とは15年の付き合いですが、芝居に対する想いはその頃から変わっていないですし、彼の頭にあるイメージを真摯に伝えてくれて、僕らも形にしようと食らいついてきました。演出家としても人を引っ張る力があると思いましたし、役者でもあるので、気持ちの共通認識があったので、稽古をしていて心強かったです」と城田への信頼を寄せた。

一方、愛希れいかは「城田さんは、作品だけでなく、スタッフ・キャストに対する愛にも溢れた方だったので、私はついて行こうという気持ちだけで稽古をしてきましたし、私たちの稽古に多くの時間を費やしてくれたので感謝しています」と城田に心からの感謝を述べた。

ミュージカル ファントム 愛希れいか エンタメステーションステージレポート

稽古は厳しかったかと問われた木下晴香は「厳しくなかったです。お稽古から本番まで、始まるのがあっという間でした。城田さんは“不安があったらいつでも言ってね”とおっしゃってくれて、城田さんの頼もしい背中を見ながら走ってきました」と稽古を振り返ってコメント。

さらに、廣瀬友祐も「誰よりも大変なポジションなのに、エネルギッシュにカンパニーを引っ張ってくれたので尊敬しかないです。同い年なのに、演出家という立場を違和感なく受け入れられたし、自分のプランをいろんな年齢層の役者に分け隔てなく平等に伝えていて感動しました」と城田の演出家としての凄さについて語った。

ミュージカル ファントム 木村達成 エンタメステーションステージレポート

木村達成は「城田さんは“稽古が始まったら余裕がなくなって厳しくなるかもしれない”とおしゃっていましたが、いつもニコニコしていて、迷わずに飛び込むことができました。これほど考えながら稽古をした経験はありませんでしたが、“考えないで感じろ”と投げかけてくれたので、本番を通して成長した姿をお見せしたいです」と自身の抱負を語った。

最後に見どころを尋ねられた城田が「2年前から始まったプロジェクトで、今日まで毎日熟考して、『ファントム』という世界を具現化して、身体で感じるお芝居と歌になるように心がけました。『ファントム』はスッと入ることができる歌とお芝居のバランスで出来上がっていますし、メッセージ性を含めて、どの方にも楽しめる、ミュージカルの入り口のような作品です。カンパニーの愛が溢れる作品をどう描いたのか、劇場で楽しみにしてください」と締め括り、囲み取材は終了した。

ミュージカル ファントム エンタメステーションステージレポート

東京公演は12月1日(日)までTBS赤坂ACTシアターにて上演。大阪公演は12月7日(土)から12月16日(月)まで梅田芸術劇場メインホールにて上演される。

ミュージカル『ファントム』

東京公演:2019年11月10日(日)〜12月1日(日)TBS赤坂ACTシアター
大阪公演:2019年12月7日(土)〜12月16日(月)梅田芸術劇場メインホール

脚本:アーサー・コピット
作詞・作曲:モーリー・イェストン
原作:ガストン・ルルー
演出:城田 優

出演:
ファントム(エリック)役:加藤和樹、城田 優(ダブルキャスト)
クリスティーヌ・ダーエ 役:愛希れいか、木下晴香(ダブルキャスト)
フィリップ・シャンドン伯爵 役:廣瀬友祐、木村達成(ダブルキャスト)
カルロッタ 役:エリアンナ
アラン・ショレ 役:エハラマサヒロ
ジャン・クロード 役:佐藤 玲
ルドゥ警部 役:神尾 佑
ゲラール・キャリエール 役:岡田浩暉

安部三博
伊藤広祥
大塚たかし
岡田 誠
五大輝一
染谷洸太
高橋卓士
田川景一
富永雄翔
幸村吉也
横沢健司
彩橋みゆ
桜雪陽子
小此木まり
可知寛子
熊澤沙穂
丹羽麻由美
福田えり
山中美奈
和田清香

少年エリック 役:大河原爽介、大前優樹、熊谷俊輝(トリプルキャスト)

企画・制作:梅田芸術劇場

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