Interview

生瀬勝久を研究したい!? 阿部寛が俳優としてのスタンスを語る『疾風ロンド』

生瀬勝久を研究したい!? 阿部寛が俳優としてのスタンスを語る『疾風ロンド』

東野圭吾のベストセラー長編小説が『サラリーマンNEO』シリーズの吉田照幸監督によって映画化された『疾風ロンド』。シーズン真っ最中の広大なスキー場のどこかに埋められた生物兵器を、4日というわずかな時間で発見しなければいけない。そんなミッションを背負って白銀のゲレンデを右往左往する主人公〈栗林和幸〉を情けなくもチャーミングに演じた阿部寛に、吉田監督とのタッグや役との向き合い方、俳優人生の転機まで、様々な話を聞いた。


取材・文 / 熊谷真由子 撮影 / 三橋優美子
ヘアメイク / AZUMA スタイリスト / 土屋詩童


お互いの個性が微妙にズレて、噛み合っていないという面白さ

栗林和幸を演じる阿部さんのコミカルな演技がとても面白かったです。出演を決めた理由は?


『サラリーマンNEO』を観ていたので、吉田監督と以前からお仕事をしたいと思っていたところ、吉田さんが声をかけてくださったので、ふたつ返事でお引き受けしたんです。東野(圭吾)さんの原作を吉田さんがどう撮るのか。コメディタッチのシーンもあれば、もちろんシリアスな場面もあるので、どんな世界観で作るんだろうとすごく楽しみにしていました。

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どのようにこの役を作り上げていったのでしょうか?


脚本やシチュエーションというものは役者によって感じ取り方が違いますから、役者それぞれが感じ取った価値観と芝居をまずはやってみて、それを監督にジャッジしてもらいました。結果的に、この作品にマッチするチグハグさが演技の中で生まれたと思います。吉田さんは的確なジャッジをしてくださるので、相談しながら栗林を作っていきました。ここまでは大丈夫とか、これ以上はふざけすぎとか。でも、『サラリーマンNEO』の監督だから、ガッチリとした自分の世界があって、「こうしましょう」「ああしましょう」といろいろ言ってくるのかと思っていたら、そうでもなくて。物腰が柔らかくて優しい、役者の演技を見ながら判断していくスタイルだったのが意外でしたね。

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栗林の上司役の柄本明さんや、スキー場で出会う謎の男役のムロツヨシさんとの掛け合いは笑いっぱなしでした。


吉田さんは、そういうシーンのとき、カットをかけないんですよ。ずっとカメラを回し続けていけば何かが生まれると思っているんじゃないか、という感じで、まるでコントみたいになっていました(笑)。以前、柄本さんとは、本作と同じ東野さんの原作で共演したことがあったんですが(2014年放送のドラマスペシャル『“新参者”加賀恭一郎「眠りの森」』)、そのときとは関係性が全然違って、今回は柄本さんのユーモラスな部分が前面に出ていたので楽しかったですね。ムロさんは今回が初めてだったから、(キャラクターを)掴みきれなかったです(笑)。ものすごく謙虚な人なんですけど、「本当にそうなのかな?」と思うときもあって(笑)。「ぜひ一緒に飲みたいです!」とか言っておきながら、誘ってくれなかったりするんですよ。昨日、みんなで飲みに行ってたのに、俺は誘ってくれなかったんだ……みたいなことがありました(笑)。遠慮したのかもしれないですけどね。

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濱田龍臣さんが演じる息子〈秀人〉とのぎこちないやり取りも良かったです。阿部さんご自身は、栗林のちょっと情けない父親像をどう考えますか?


会社や仕事の研究に振り回されて、親子関係をほったらかしにしているんですよね。母親がいないから、そのことで子供が犠牲になっている部分もある。でも栗林は、親だから子供に口を出さなきゃいけないと思って、とりあえず何か言ったりするけど、それが秀人にはお見通しだし、だからこそ心が離れてしまうんですよね。秀人は大人のペースに合わせない子供で反抗期なんですが、濱田くんが現場でそういう冷めた目をしてくるんですよ。大人の芝居に対して濱田くんは迎合しない。監督もそこを評価していて、「濱田くんの大人を見下す目が満点です」と喜んでいました。

濱田さんの印象は?


濱田くんは子役からやっていてキャリアがあるから、大人との接し方に慣れていると思っていたんですけど、普通に年相応の子供で、とてもかわいかったです(笑)。みんなで飯を食いに行ったときも、残っているピザとか果物を「食べていいですか?」とか言いながら、全部食べてしまって。大倉(忠義)くんが「太ったら明日からの撮影に影響あるし、やめたほうがいいんじゃないか」と言っていたんですけど、次の日、案の定、一気に太っていて(笑)。そういうところが無垢のままで、微笑ましかったです。

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阿部さんの実際のスキーの腕前はいかがなんでしょうか?


劇中と同じくらいのレベルか、あれよりちょっとうまいくらいです(笑)。撮影前に1日練習しに行って、そのまま現場に入りました。吹き替えの人もいたんですが、吹き替えの人のほうが当然、上手だから、ヘタに滑ってもどうしても嘘っぽく見えちゃうんですよ。だから実際にうまくない僕がやるほうがちょうど良かったです。30年ぶりくらいのスキーでしたね。スノーボードは以前、2回行ったけど、まったく成長が見られないし、腰を痛めそうだから止めました(笑)。


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