サザンオールスターズと昭和・平成・令和元年  vol. 12

Column

スタジアム・ロックへの架橋となった「ボディ・スペシャル II(BODY SPECIAL)」

スタジアム・ロックへの架橋となった「ボディ・スペシャル II(BODY SPECIAL)」

2018年にデビュー40周年を迎えたサザンオールスターズのバンド・ヒストリーを、彼らが生み出した数々の作品から改めて見つめていく。音楽評論家・小貫信昭が独自に紐解く、サザンオールスターズの魅力──。


アルバム未収録の重要シングルが続く時期ゆえ、今回はそのあたりを取り上げたい。その前に、アルバム『NUDE MAN』からシングル・カットされた「匂艶(にじいろ)THE NIGHT CLUB」(1982年5月)を。サザンオールスターズのシングル・ヒストリーとしては、「チャコの海岸物語」の次作ということの期待も大きかった。

“ラテン調”ということもあり、しばしば「勝手にシンドバッド」と比較されがちだが、“シンドバッド”が“ストリートの解放感”(サンバにひっかけて言うならエスコーラ・ヂ・サンバの胸騒ぎ)なら、今回はバンド・アンサンブルの抑制も効いたうえの解放感(ストリートというよりインドア感覚。それもそのはず、歌の舞台はナイトクラブ)だった。

編成、音数も多いので、ミックス・ダウンには気を遣ったのだろうが、ピアノ、ギター・ベース・ドラム・パーカッション、さらにブラス&ストリングスの音が、一定の音圧を保ちつつも順繰りに自己主張していく様がよくわかる。ヘッドフォンで聴くとなおさらだ。終盤の追っかけコーラスの部分もキマっていて、特にライヴでは、パーカッションの野沢秀行が大きなグローブ状のパーカッション(?)を頭上で打ち鳴らし、観客を鼓舞し、会場を熱狂へと誘う様も定着していった。

続く「Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)」(1982年10月)は、秋の空に響く胸に滲みるバラードであり、彼らの母体となった青山学院大学の音楽サークル“Better Days”の日々も綴られている。〈涙のチャペル〉という、ミッション系の学校ならではの描写もあるが、ジ・オリオールズのヒット曲でオールディーズの名曲として知られる作品の邦題からの引用とも受け取れる。

ただ、歌詞の〈忘られぬ日々よ〉というのは、学生時代に後ろ髪を引かれてのこと、というより、むしろプロとしてのキャリアを積み上げた今だからこそ、一定の距離感で歌えた想い、なのだろう。だからこそ、この歌は自伝的に響き過ぎず、普遍的な青春のひとコマとして、“Better Days”でギターを鳴らしていたわけじゃない学外の我々の胸にも滲みるのだ。

1983年3月にリリースされたのが、「ボディ・スペシャル II(BODY SPECIAL)」である。この作品は、その後のサザンオールスターズのライヴに欠かせないものとなっていく。セットリストの終盤の、通称“煽りのコーナー”で、今現在も大きな役割を果たしている。

印象的なのは、サビが緻密なバンド内コール&レスポンスになっていて、もちろんバンド内だから阿吽の呼吸であって、餅つきの“つき手”と“返し手”のごとくテンポが良い。それもあり、てっきり最初からライヴを意識した作品なのかと思ったら、ちょっと違うようだ。『ただの歌詩じゃねぇか、こんなもん』(220ページ / 新潮文庫 刊)で、桑田佳祐はこう言っている。

「ボディ・スペシャル II(BODY SPECIAL)」は、ある意味で初期のサザンに戻ったところがある。バンドとしてロックをやろう。もう説明はいらないじゃないか、ウズウズする音楽をやろうよってね。

そのウズウズが、客席にも伝播していったからこそ、ライヴの定番となったのだろう。この曲は、我々が客席で掲げた拳のやり場に困らない、まさに“参加型”楽曲でもあり、こうして文章を書いていても、つい心の中で“オ~イヤ~!”と叫んでしまうほどなのだ。

サザンオールスターズの歴史の中で、「ボディ・スペシャル II(BODY SPECIAL)」は節目の楽曲と言えそうだ。1983~1984年といえば、ライヴ会場が巨大化していく時期である。全49公演の『SASたいした発表会・私は騙された!!ツアー ’83』を終え、1984年の夏に、初のスタジアム・ツアー『熱帯絶命ツアー夏“出席とります”』を敢行し、横浜スタジアム2daysからスタ−トした。

このとき、セットリストの終盤で、大きな役割を果たしたのが「ボディ・スペシャル II(BODY SPECIAL)」だった。その後、“スタジアム・ロック”という言葉も一般的になっていくわけだが、首尾良くこの時期、彼らはこれだけの広さを充たす熱量の楽曲を、レパートリーに加えたのだった。

文 / 小貫信昭


SINGLE「匂艶(にじいろ)THE NIGHT CLUB」
1982年5月21日発売
VICL-36015 ¥762(税別)

〈収録曲〉
01. 匂艶(にじいろ)THE NIGHT CLUB
02. 走れ!!トーキョー・タウン

SINGLE「Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)」
1982年10月5日発売
VICL-36016 ¥762(税別)

〈収録曲〉
01. Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)
02. シャッポ

SINGLE「ボディ・スペシャル II(BODY SPECIAL)」
1983年3月5日発売
VICL-36017 ¥762(税別)

〈収録曲〉
01. ボディ・スペシャル II(BODY SPECIAL)
02. ボディ・スペシャル I(BODY SPECIAL)

SINGLE「匂艶(にじいろ)THE NIGHT CLUB
SINGLE「Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)」
SINGLE「ボディ・スペシャル IIBODY SPECIAL)」
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