Interview

二代目座長・早乙女太一が「劇団朱雀」の新たな幕を開ける。「復活公演」に挑む彼の決意とは?

二代目座長・早乙女太一が「劇団朱雀」の新たな幕を開ける。「復活公演」に挑む彼の決意とは?

実父が立ち上げた大衆演劇の「劇団朱雀」の舞台に4歳から立ち、近年は劇団☆新感線の舞台『けむりの軍団』や『髑髏城の七人』をはじめ数多くの人気舞台に出演。映画、ドラマ、声優などの映像作品にも活躍の場を広げ、その存在と実力を輝かせている俳優・早乙女太一。
彼の役者人生の原点でもある「劇団朱雀」は2015年に解散したが、その解散から約5年の月日を経て、ついに「劇団朱雀 復活公演」が、11月26日(火)より紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAを皮切りに上演される。
本公演には座員のほかに、大衆演劇に初挑戦する喜矢武 豊(ゴールデンボンバー)、木村 了らも参加。また、劇団☆新感線の座付き作家・中島かずき、劇団・扉座を主宰し、スーパー歌舞伎なども手がける横内謙介、そして、早乙女太一自身も脚本を手がける“3作品”が日替わりで上演される。
本公演で総合プロデュース・演出・振付・脚本を手がけ、出演もする早乙女太一に「劇団朱雀 復活公演」についてインタビューした。

取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 冨田望


役者の根っこ、芸事の始まりにあるのが大衆演劇

2015年に劇団朱雀を解散させた理由から、あらためて聞かせてください。

解散を決めた時点で、自分の中では再結成は5年後ぐらいと決めてはいました。ありがたいことに、劇団があると1年間ほぼ劇団公演があるんです。その反面、新たな挑戦や外部の公演に出る機会がほとんどない。僕自身、劇団朱雀以外で役者をさせていただけるチャレンジの幅が広がったことで学ぶことも多かったので、自分も含めて座員たちが劇団の外に出て挑戦をするための期間、研鑽を積むための期間が必要だと感じていました。なので、あのときの解散とは終わりではなく、各々がひとりの役者として表現者として、修行することで力をつけ、再集結できたらと思っていました。

解散を決められたときは、座員などほかのどなたかに相談したんですか?

いえ、誰にもしてないです。僕、何かを決めるときは人に相談することがなくて。だいたいひとりで決めちゃうんですよ(苦笑)。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

解散を機に劇団朱雀の舞台から一度離れたことで、劇団朱雀や大衆演劇に対する早乙女さんの思いは変化しましたか?

大衆演劇って、大衆演劇専用の芝居小屋もありますけど、ほとんどが温泉宿や健康ランドなどの大広間で上演することが多い。それこそお客さんがお座敷でお酒を飲んでいたり、食事をしながら観てもらう、そういう娯楽なんです。解散したからあらためて気づけたことではないのですが、僕はそういう場所にこそ、大衆演劇の良さ、舞台やお芝居の根源があると思っていて。

舞台やお芝居の根源とは?

お客さんが気楽に観るものと言いますか。役者としては、そういう場所でお芝居をすることで、とても多くのことを学ぶことができる。お酒を飲んでいるお客さんや野次を飛ばすお客さんの興味をひく芝居はどうすればできるのか、そして、どうすればまた足を運んでもらえるのか。そういったことを毎日毎日考え、毎回実践していく。それと、大衆演劇の舞台は、お芝居だけではなくて歌も踊りもあるし、自分たちができる芸はなんでもするので、役者の根っこ、芸事の始まりにあるのが大衆演劇なんじゃないかと。大衆演劇からいろいろな芸術がどんどん広がっていったんだろうなって、僕はそう思っているんです。だから僕は、役者としても、自分の芸を磨くためにも、大衆演劇は必要だと思っています。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

早乙女さんが活躍することで、早乙女太一の役者人生の原点である大衆演劇に興味を持った方たちも多いと思います。

大衆演劇にしかない独特な雰囲気や芸というものがあるので、自分がきっかけとなって、少しでも多くの方に大衆演劇を知っていただきたい、興味を持っていただきたいという思いは、今もありますね。だからこそ、自分や座員たち、劇団朱雀もレベルアップしなければいけないと思って、一度解散しようと思ったんです。

今回の一番大きな挑戦は、脚本家の方に新たに脚本を書いていただいたこと

今回、「劇団朱雀 復活公演」を決めて、座員の皆さんが再集結したときの雰囲気はいかがでしたか?

「久しぶりに一緒に舞台に立つね」っていう感じはもちろんありましたけど、普段から頻繁に会ってはいたので、再集結感は全然なかったです(笑)。ただ、僕もそうですけど座員たちも、「思っていたより5年ってあっという間に過ぎた!」って言ってましたね。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

先ほど、自分の中では再結成は5年後ぐらいと決めていたとおっしゃっていましたが、5年後の復活公演でやりたいことを、早乙女さんは自分の中でずっと温めていたんですか?

それぞれが研鑽を積んだ5年後の理想の姿というものを踏まえたうえで、復活公演ではこういうことをやりたいというものは、自分の頭の中にはいくつかありました。以前から観てくださっているお客さんに懐かしいと思っていただけるような昔ながらの大衆演劇のスタイルを引継ぎながらも、自分たちのベースとなっているものをレベルアップしたもの、今の自分たちができることの最善をつくっていこう、と。あと、初めてチャレンジすることもやりたいと思っていました。今回の一番大きな挑戦は、脚本家の方に新たに脚本を書いていただいたことです。

復活公演では、劇団☆新感線の座付き作家・中島かずきさん、劇団・扉座を主宰し、スーパー歌舞伎などを手がける横内謙介さん、そして、早乙女さん自身が脚本を手がける“3作品”が日替わりで上演されますね。

大衆演劇は何百本もある演目の中から、その日に上演するものを選ぶので、毎日やる演目が変わりますし、事前に稽古をしないので、今回のように新しく脚本を書いていただくことも、ちゃんと稽古期間をつくって稽古をするのも、新しく脚本を3本つくるのも初めてなんです。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

中島さんや横内さんは、早乙女さんが出演された舞台やドラマの脚本を手がけていた脚本家ですね。

これまでも僕が劇団にお声掛けする方は、自分が直接関わったことがある方で、信頼を寄せている方ばかりです。かずきさんも横内さんも大衆演劇の脚本を手がけるのは初めてとのことでしたが、時代劇にも詳しいお二方なので、お願いしました。

総合プロデューサー・早乙女太一として、おふたりに脚本を書いていただくうえで、“時代劇”というキーワード以外に、何か伝えたことはありますか?

大衆演劇ならではの作品をつくり上げたいと思っていたので、初めて大衆演劇を観に来られる方にもわかりやすい、“時代劇の定番のもの”をやりたいとお伝えしました。うちの劇団はこれまでこういうことをやってきましたとか、自分たちがやってきた何十本もある演目にはこんな内容の話がありますという話もしましたね。お互いにいろいろなアイデアを持ち寄っていくなかで、どういった演目を選ぶのか、どの物語の誰を主人公にするのかということが決まっていきました。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

ところで、「劇団朱雀 復活公演」は、どんな演目をやるのか、誰がどんな役どころを演じるのかというような情報が、前もってアナウンスされていませんね。

そこが大衆演劇ならではなんですよね。大衆演劇はやる演目が毎日違うので、前もって演目を発表はしないし、お客さんもその日観に来るまで何をやるのかわからないものなんです。けど、かずきさんからも「僕が書いた脚本の芝居をやる日はいつわかるの?」「僕はいつ観に行けばいいの?」って言われました(笑)。だから今回は、演目の告知は、前もって何日間かは出そうかなとは考えています。

中島かずきさんと横内謙介さんが書かれた新しい脚本は、どのような物語になっていますか? また、それぞれの脚本に特徴はありますか?

かずきさんの脚本は、昔からある演目の「ねずみ小僧」と火消しの「め組」のお話を合体させています。もともとは違うお話ですが、かずきさんといろいろ案を出し合っていくなかで、盗賊同士のお話になりました。かずきさんの脚本は登場人物それぞれに粋なカッコよさがあって。昔からある大衆演劇の面白さを目一杯盛り込んでいるので、粋でいなせな物語に仕上がっています。芝居の中に何度も出てくるカッコよくてスカッとする啖呵に注目して欲しいです。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

横内さんの脚本は?

のちに「忠臣蔵」の赤穂浪士のひとりになる中山安兵衛が主人公の「高田馬場の決闘」を元にしたお話です。飲んだくれている侍が、自分の親父を助けるために大活躍するチャンバラ劇なので、殺陣がふんだんに楽しめると思います。あと、横内さんの脚本は長台詞が多いですね。木村 了くんがたくさん台詞を言う場面が多いです。横内さんには最初の時点で「(総合プロデューサーとして)ほかにもたくさんやることがあるので、僕の役は台詞を少なくしてください」ってお願いしておきました(笑)。これも昔からある物語ですが、横内さんの脚本で新たな「高田馬場の決闘」をお見せすることができると思うので、ぜひ楽しみにしてください。

そして、早乙女さんが手がけた脚本は?

昔から大衆劇団でやっている「清水次郎長」に子分の森の石松が出てくる物語があって。もともとは50分ほどの短い演目なんですが、話を足したり、登場人物を増やしたりしてアレンジしています。中島さんは“盗賊もの”、横内さんは“侍もの”、僕のは“ヤクザもの”と、3作品がそれぞれ違うものになっていますし、お芝居のテイストもそれぞれ変わると思います。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

「復活公演」には共演経験のある木村 了さん、ゴールデンボンバーの喜矢武 豊さんが参加してくださいますね。

了くんは、もともと大衆演劇に興味を持ってくれていたみたいで。会うといつも大衆演劇の話をしていたので、ずいぶん前から誘おうと思っていました(笑)。僕、劇団に(ゲスト俳優を)誘うときって、ちょっとずつ引き込んでいくんですよ。

ちょっとずつ引き込んでいくとは?

最初は「今度遊びに来てよ」から始まって、次は「舞台、観に来てよ」と誘って、観に来てくれたら「今度出てみる?」っていう感じで、どんどん出る方向へ持っていく(笑)。了くんはチャレンジ精神がとても強くて、興味を持ってモノに対する熱量と行動力、探究心がすごいです。新しいことに挑めるだけの地盤と素晴らしい演技力を持っている役者さんですが、大衆演劇という初めてのジャンルに対して覚悟を持ってくれたことが、とてもすごいなと思っています。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

大阪公演と札幌公演に参加する喜矢武さんはいかがですか?

喜矢武さんは大阪公演からの参加なので「今、稽古場に来てもまだ早いから、来なくても大丈夫だよ」(*取材時は稽古開始から数日)って言ったんですけど、みんなが稽古をしているのに自分だけやっていないのがかなり不安みたいで。この前も稽古場に勝手に来て、勝手に稽古して帰っていきました(笑)。皆さんが知っているゴールデンボンバーの喜矢武さんとして見せる姿やキャラが、大衆演劇という場所でどのように変化して、どんな新しい顔を見せてくれるのか、僕も楽しみです。

実弟の早乙女友貴さんとは、劇団朱雀公演以外で舞台『蒼の乱』(2014年)などで共演経験もありますが、どんなところに成長を感じられていますか?

彼も劇団解散後に多くの経験を積んで、外の現場でいろんなことを学んだと思うので、今の“早乙女友貴”の魅力を引き出せたらいいなと思っています。劇団メンバーの中では一番動けるので、殺陣をたくさんやってもらおうかな、と(笑)。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

「一部」は早乙女さんが女形で行う舞踊ショー、「二部」は日替わり芝居、「三部」はキャスト全員による舞踊ショーと、盛りだくさんです。

岐阜公演のぎふ葵劇場は大衆演劇専用の劇場なので、劇団朱雀がもともとやってきた大衆演劇のスタイルに一番近くなるとは思いますが、稽古できっちりつくり上げたものをお見せするというよりは、その場その場で生まれる空気感だったり、アドリブだったりも大切にしますし、きっとほかの舞台とは違う雰囲気を皆さんに楽しんでいただけると思います。

大衆演劇のお面白さを充分に楽しんでもらえる舞台

総合プロデュース・脚本・演出・振付を担当していると、かなり忙しい日々だと思います。どんなことをして息抜きされていますか?

今は何をしていても、休みの日でも、復活公演のことしか考えていないですね。自分が頭の中で考えていることをなるべく早く形にするというのが、今の息抜きになっています。形にすれば、次に進めるので。本当にやることがたくさんありすぎて寝る時間はどんどん少なくなっていて……気づけばいつもソファで寝落ちしています(笑)。

早乙女太一 エンタメステーションインタビュー

では最後に、劇団朱雀の「復活公演」を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。

今の自分たちができること、新しいチャレンジをすべて詰め込んだ「復活公演」は大衆演劇のお面白さを充分に楽しんでもらえる舞台です。大衆演劇に初挑戦する木村 了くん、喜矢武さんがどんな芝居を見せてくれるのか、それもドキドキして欲しいです。あと、大衆演劇をやっている役者っておじさんが多いんですよね(笑)。でも、すべてのことに対して自分の骨身を削りながらやっている人ばかりで、その人たちの削れている様がカッコいい。僕はそこも魅力的だと思っているので、ぜひ大衆演劇の世界で生きてきたおじさんたちのカッコいい生き様も観届けていただきたいです。

「劇団朱雀 復活公演」

東京公演:2019年11月26日(火)~12月15日(日)紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
岐阜公演:2019年12月19日(木)~12月30日(月)ぎふ葵劇場
大阪公演:2020年1月4日(土)~1月7日(火)サンケイホールブリーゼ
札幌公演:2020年1月18日(土)道新ホール

総合プロデュース・演出・振付:早乙女太一
脚本:中島かずき・横内謙介/早乙女太一

出演:
早乙女太一
早乙女友貴 富岡晃一郎 久保田創 小川智之 岩崎祐也
安田桃太郎<岐阜公演の出演なし> 藤原儀輝 南誉士広<岐阜公演の出演なし> 熊倉功<岐阜公演の出演なし> 高橋玲<岐阜公演の出演なし> 関根アヤノ 高畠麻奈 重咲なお 鈴花あゆみ 千葉さなえ<岐阜公演の出演なし> 蓮城まこと<岐阜公演の出演なし>
喜矢武 豊(ゴールデンボンバー)<大阪公演・札幌公演のみ> 鈴花奈々/葵陽之介
山崎銀之丞<東京公演・札幌公演のみ>
木村 了

主催:LDH JAPAN

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早乙女太一(さおとめ・たいち)

1991年9月24日生まれ。大衆演劇 “劇団朱雀”二代目として4歳で初舞台を踏み、全国で公演を行う。2003年に北野 武監督の映画『座頭市』出演をきっかけに“100年に1人の天才女形”としてその名を広く知られることとなる。2015年に“劇団朱雀”を解散以降、様々な舞台、映像作品に出演。本公演で5年ぶりの再結成を果たす。近年の主な出演作品には【舞台】劇団☆新感線39興行・夏秋公演 いのうえ歌舞伎《亜》 alternative『けむりの軍団』、音楽活劇「SHIRANAMI」、劇団☆新感線『髑髏城の七人 season月』《上弦の月》、劇団☆新感線『髑髏城の七人 season鳥』、『世界』【映画】『プロメア』、『居眠り磐音』、『泣き虫しょったんの奇跡』、『BLEACH』【テレビドラマ】『東京独身男子』、『忘却のサチコ』、『コールドケース2』、『ふたがしら』シリーズなどがある。

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