Interview

寺岡呼人 タイトルに込めたソロ活動への思いと音楽愛が詰まったニュー・アルバムについて訊く。

寺岡呼人 タイトルに込めたソロ活動への思いと音楽愛が詰まったニュー・アルバムについて訊く。

寺岡呼人のニューアルバム『NO GUARD』には、ポップな曲、ロックな曲、ハッピーな曲、シニカルな曲が詰め込まれていて、バラエティに富んでいる。彼の幅広い音楽愛が、そのまま作品に反映されているようだ。一方で、歌詞には寺岡が日々思っていることが飾らずに書かれていて、今の世の中の様子が活き活きと伝わってくる。
寺岡と言えば話題のスーパーバンド“カーリングシトーンズ”のリーダーとして注目を集めているが、『NO GUARD』はそのカーリングシトーンズのデビューアルバム『氷上のならず者』と同時発売になる。ということは、寺岡は2枚のアルバムを同時進行で作っていたことになる。
この元気なベテランに最新ソロアルバムと近況について聞いてみた。果たして、寺岡呼人の“ノーガード”とは?

取材・文 / 平山雄一


ソロに関しては、常に自分で発破をかけてやっていかなきゃいけない

アルバム『NO GUARD』を完成させての感想は?

自分の中で、“生み出す”っていう作業は絶対にやり続けないといけないと思っていて。昔、上岡龍太郎さんが引退するときにテレビで言ってたんですけど、「人間っていうのは自転車のライトと一緒で、漕いでいないと点かない。充電はできない。漕ぐのをやめたら、そこで明かりは消える。よくいろんな人たちが“充電期間”という言葉を使うけど、人間には充電なんかできない。だから自分はやめるんだ」と。そんな話を聞いたことがあって、どこか自分の中でもそれは間違いないなって思いながら、とにかく作るとか生むっていう作業を絶対にやり続けないと、いざ何かがあったときに対処できないと思った。
ソロになって26年なんですけど、途中からは「はい、来年何か出しましょ」みたいなことを言う人がいるわけでもなく、そこはもう自分で自分のケツを叩きながら、「やるぞ! やるぞ!」って言いながらやってるところがあって。ソロに関しては、常に自分で発破をかけてやっていかなきゃいけないという。ここ最近は1年に1枚ぐらいのペースでやれてる。今回は1年4ヶ月ぶりのアルバムなんですけど、「無事に生み出せて良かったな」っていうのが率直な感想です。

ということは、前のアルバムが出来上がった直後から、もう『NO GUARD』の制作は始まっていたの?

はい。始まっているんですけど、なんかボヤーンとしてるんですよね(笑)。でも「なんかやらなきゃ、やらなきゃ」って言いながらボヤーンとしながら、それを繰り返しながら進んで行って。で、去年9月のカーリングシトーンズでのライブが、いいきっかけになった――そのときに曲を作ったりもしたじゃないですか。なので曲を作るモードに入るには、いいきっかけをもらった気がします。去年の年末ぐらいからなんとなく曲のスケッチが出来てきて、今年に入って1月、2月ぐらいにガーッと簡単なデモテープを作って、4月と5月で8割ぐらい一気に録っちゃった。そのあと弾き語りツアーがあったので制作をお休みして、何もしないで2ヶ月が過ぎちゃった(苦笑)。9月になって「11月ぐらいに出しましょうか」みたいな話になって、「ヤバイ! あと2割出来てない!」。一気にバババババッと3曲ほど作って、そのままレコーディングして仕上げたという感じです。

僕は独立してひとりでやり始めて6~7年経つんですけど、時が経てば経つほど自分は“ノーガード戦法”になってきてる(笑)

呼人さんが他人のプロデュースをするときは、いつもコンセプトがすごくしっかりしてるなと思いながら聴いてるんですけど、自分の場合はどうなんですか?

自分の場合は逆で、まったくコンセプトは考えずにやってます(笑)。今回も「アルバム・タイトルをどうしようか」っていう話になって、全然いいのがなくて。僕は独立してひとりでやり始めて6~7年経つんですけど、時が経てば経つほど自分は“ノーガード戦法”になってきてる(笑)。打たれ強くもなったし、ここ1、2年、特にそういうのが強くなってきたと思っていて。それでアルバム・タイトルを「ノーガード」って決めた。そこから「NO GUARD」っていう曲を作りました(笑)。

じゃあ、「NO GUARD」は9月に作ったんですか?

そうです。いちばん最後に出来た。他人のプロデュースのときはコンセプチュアルに作ることが多いんですけど、自分の場合は逆に“壮大なる実験場”みたいなところがあるんで、遊びたいし、いろいろ挑戦できるかなっていう。実験場でもあるし、挑戦する場所でもあるんで、あんまり「こうだ!」って決めないほうがいいかなっていうのはありますね。

「ここ1、2年、自分は打たれ強くなった」っていうのは?

正確に言うと、打たれ強くはなってないんですよ(苦笑)。打たれ強くはなっていないけど、最初からガードしていくというよりは、逆に裏表なく接することで、全然誰にも後ろめたさがないというか。それでダメだったらしょうがないし。

殴ってきた人に、恨みを持たない?

はい。もうしょうがないっていう感じ。そういう意味での強さは出てきましたね。だけど、そんなにドMじゃないんで(笑)。

「NO GUARD」の歌詞を読むと、「掛かってこい」的なニュアンスがある(笑)。

そうなんですよね。「掛かってこい」って、そこは言っとかないと(笑)。

人の責任にできない自分に追い込む中で、毎年毎年、そこがアップデートされてってる気がします

ははは! それはこの年令になっての、自分に対する新しい発見なのかな?

発見というよりも、それこそスケジュール管理からブッキングから何から自分でやってるじゃないですか。そういう意味では全部自分の責任なんで、人の責任にできない自分に追い込む中で、毎年毎年、そこがアップデートされてってる気がします。現時点では、そのやり方で戦ってるっていう意識はありますね。

最後に出来たのが「NO GUARD」で、いちばん最初に出来た曲はどれだったんですか?

僕はいつも歌詞から作るんですけど、制作の最初の頃は試運転というかリハビリみたいな感じで、自分のスタジオに来てギターを弾きながら、リフから作る。そこにスケッチしてあった歌詞みたいなのを乗せながら曲を作ることが、1曲目の場合には多くて。今回のアルバムでは「許せないリスト」っていう曲を、最初に作りました。

「許せないリスト」の歌詞は、けっこう毒を吐いてますよね(笑)。

はい。打たれ強いって言いながら、根に持ってるっていう。うはははは!

ははは!

そういう曲です(笑)。 

「あり得ないものをぶつけよう」みたいな気持ちが、僕ら世代にはあるような気がします

「許せないリスト」の♪年賀状も出さないリスト 葬式にもいかないリスト♪っていう歌詞が面白かった。

年賀状、葬式…本当にそこまでするかどうかはわからないですけど(笑)。“心のリスト”というか、どこかで許さなきゃいけないことと、絶対に許しちゃいけないことと、それはたぶん相反してある。たとえばカーリングシトーンズのみんなもそうなんですけど、僕らってRCサクセション以降の世代じゃないですか。やっぱり清志郎さんやCHABOさんが生み出した音楽のお陰で、「ロックってこういうテーマでもいいんだよ」みたいな、何か日本語のロックの文脈が変わったと思うんですよ。
たとえばRCに「あきれて物も言えない」っていう曲があって、♪どっかのヤマ師が オレが死んでるって 言ったってよ~あきれて物も言えない♪っていう歌詞なんですけど、その中に“香典”っていう言葉が出てくる。初めて聴いたとき、「えっ? こんなの歌っていいんだ」って思ったんですけど、RCがロックの文脈を切り拓いた以降の世代なので、「あり得ないものをぶつけよう」みたいな気持ちが、僕ら世代にはあるような気がします。今、インタビューを受けながら、歌詞を書いてるときは清志郎さんとかCHABOさんとかって思ってなかったんですけど、こうやって話してみると「結局、これって、RCチルドレンの発想なのかな」っていうのを今、思いました。

このアルバムにはRC的なものもあるし、昔のグループサウンズっぽいのがあったり、ビートルズ的なものがあったり、他の音楽を連想させるバリエーションがたくさんありますね。

そうですね。「これをやったら何かの真似になっちゃう」って思うようになった瞬間に、自分の歩みが止まる気がするんですよ。たとえば「10代のときに何々に憧れて、一生懸命それをコピーしてた自分でありたい」っていうのはどこかにあるんですよね。

ああ、それはちゃんと残しておきたい?

はい。なので今、街中で何かを聴いて「今度はこれを自分でやりたい」という気持ちは、絶対に忘れちゃいけないと思いますね。

たとえば「俺がグループサウンズをやったらこうなる」とか「俺がRC的なものをやったらこうなる」みたいなのは、人によって違うから、そこまで行くともう真似じゃない。

そうなんです、そうなんですよ。うんうん。

「そのスタイルを自分がやったら、自分のものになるはずだ」っていう気持ちがないと、その先には行けないもんね。

確かに。

最初に「許せないリスト」を作って毒づいて、最後に掛かってこいっていう「NO GUARD」を書いたっていうのは、面白い!(笑)。

「絶対、忘れねえぞ」みたいなところもあるというか、そういうことなんですけど(笑)。

「許さないリスト」や「NO GUARD」はすごく濃い歌なんだけど、いちばん無色透明に聴こえたのが「飛行機雲」だった。

「飛行機雲」は、「許さないリスト」の次ぐらいに作りました。これはあるとき友だちと呑んでいて、その友だちがカラオケで歌い出したのが、AKB48の「365日の紙飛行機」だった。

青い空にずーっと細い線が延びていく、ああいう感じなのか――しかも夕暮れに向かって延びていく、ああいう感じかもなと思ったときに、詞から書いていって出来た

ああ、NHKの朝ドラのテーマ曲に使われてた歌だよね。

かな? 全然知らなかったんですよ、その曲。で、「何、このいい曲!」って思って(笑)。メチャクチャいい曲で、みんなが幸せそうに聴いてて、「ああ、こういうのって大事だなあ」と思って。たとえば僕が小学生だったら、この曲は自分のひとつのスタンダードになるんじゃないかって思うぐらい――何年かに1回そういう曲ってあるじゃないですか。スタンダード感がある曲みたいな。で、いつか50代の「365日の紙飛行機」を作りたいなっていう思いが、そのときに生れたんですよ。じゃあ、自分たち世代の「365日の紙飛行機」って何だろうっていうボンヤリとしたテーマの中で、もう50代なので無邪気に「自由に紙飛行機のように飛んで行け」ではない。じゃあ、何だろうなと思ったときに、青い空にずーっと細い線が延びていく、ああいう感じなのか――しかも夕暮れに向かって延びていく、ああいう感じかもなと思ったときに、詞から書いていって出来たって感じですかね。

「許せないリスト」を書いて、まず1曲出来たから、ホッとしちゃったので(笑)。

出来て安心して、ホッとして(笑)。

ユーミンさんへのオマージュとして、「ひこうき雲」のイントロと同じ感じでオルガンを入れたり、「ひこうき雲」でギターを弾いている(鈴木)茂さんに弾いてもらってます

昔のカラオケのことを思い出して。 

そうです、そうです(笑)。それと、僕の青春時代は、ホンッとにRCとユーミンだった。高校時代にユーミンもRCもライブに行っていて、でも一方で松田聖子も聴いてた。いわゆるロックとニューミュージックとポップス、アイドル、歌謡曲も全部聴いてた。そういうのが全部フュージョンになったのが自分の音楽観というか。で、特にユーミンに影響されてるところがあるんで、自分の中でそれを翻訳したのが「飛行機雲」なのかもしれない。なので、ユーミンさんへのオマージュとして、「ひこうき雲」のイントロと同じ感じでオルガンを入れたり、「ひこうき雲」でギターを弾いている(鈴木)茂さんに弾いてもらってます。

「生む」っていうことと「ステージに立つ」っていうことは、ミュージシャンにとって絶対に途切らせてはダメなものなんじゃないかなって思う

そしてこのアルバムを出したあとのツアーは?

はい、来年の春ぐらいにやろうと思ってます。最初に言ったこととかぶるんですけど、「生む」っていうことと「ステージに立つ」っていうことは、ミュージシャンにとって絶対に途切らせてはダメなものなんじゃないかなって思う。特に歳を取れば取るほど鈍くなっていくと思うんですよ、期間を空ければ空けるほど。

それこそ“充電”はできない。

そうなんですよね。だからどんな形であれ、カフェであってもどこでも良くて、とにかくやれるところだったらどこでもライブをやるべきだっていう気持ちではあるので、アルバムを出したら、やっぱりそのアルバムのツアーをやりたいなと思ってます。

弾き語りじゃなくて、バンドセットで?

場所によってバンドと弾き語りを分けようかなと思ってます。

逆に言うと、弾き語りもそのツアーの中には入る?

はい、入れていこうかなあと。

ツアー、楽しみにしてます。ありがとうございました!

その他の寺岡呼人の作品はこちらへ。

ライブ情報

カーリングシトーンズTOUR 2019-2020「やったぁ!明日はシトーンズだ!」

<2019年>
12月23日(月)東京国際フォーラムホールA
<2020年>
1月11日(土)熊本城ホール メインホール
1月13日(月・祝)大阪・オリックス劇場
1月14日(火)広島文化学園HBGホール
1月28日(火)名古屋国際会議場センチュリーホール

【寺岡呼人ツアー2020 ~NO GUARD~ スペシャルゲスト浜端ヨウヘイ】

◎ 4月11日(土) 長野 ネオンホール
◎ 4月12日(日) 金沢 もっきりや
★ 4月18日(土) 倉敷 REDBOX
★ 4月19日(日) 福岡 rooms
★ 4月21日(火) 高知 X-pt.【クロスポイント】
★ 4月22日(水) 淡路島 マトヤ楽器 的矢ミュージックスタジオ
★ 4月24日(金) 名古屋 ell.SIZE
★ 4月26日(日) 渋谷 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE 
◎ 4月28日(火) 山形 FRANK LLOYD WRIGHT
◎ 4月29日(水・祝) 仙台 SENDAI KOFFEE
★ 5月2日(土) 心斎橋 JANUS
◎ 5月16日(土) 札幌 円山夜想
◎ 5月23日(土) 横浜 Thumbs Up

■スペシャルゲスト:浜端ヨウヘイ
■編成:◎2人(寺岡呼人、浜端ヨウヘイ)★BAND(with 林久悦、林由恭、佐藤健治、ミトカツユキ)

*その他の情報についてはオフィシャルサイトへ。

寺岡呼人

1968年2月7日生まれ。
自身のアーティスト活動と並行してプロデュース活動を行い、ゆず、矢野まき、ミドリカワ書房、植村花菜「トイレの神様」、グッドモーニングアメリカ、八代亜紀など多彩に手掛ける。
また、自身を中心とした3世代が集うライブイベント『ゴールデンサークル』を2001年に立ち上げ、松任谷由実、小田和正、仲井戸麗市、桜井和寿、奥田民生、斉藤和義、backnumberなど多くのアーティストが参加。
現在、再結成を果たしたJUN SKY WALKER(S)ベーシストとしても活動。
2018年には、ソロ・アーティスト25周年を記念して奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本とカーリングシトーンズを結成した。

オフィシャルサイト
http://yohito.com