山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 72

Column

My Guitar Heroes

My Guitar Heroes

何と、誰と、どの時期に出逢うか。
人生の岐路は無数にあって、失敗も過ちも後悔も、それを「学び」にするかどうかで一瞬先の未来は拓かれていく。
アルバム『Blink』がリリース直前、HEATWAVE40周年ツアーも絶好調のHEATWAVE山口洋が、“我が道”へと誘ったギター・ヒーローたちを一気に書き下ろす。


今回の編集部からのオファー。HEATWAVEの新譜『Blink』におけるギターが印象的だったがゆえ、わたくしのギター・ヒーローについて。

いいんですか? そのテーマで! そんなの、際限もなく書き続けられるに決まっているから、ツアー初日の飛行機の中でこの原稿を書きはじめる。

14歳の誕生日。親友にギターを教わった。初めて弾いたコードはG。稲妻のような天啓。この瞬間にミュージシャンになることを決めた。ほんとだよ。その日のうちに弾けるようになったのは小椋佳さんの「さらば青春」と井上陽水さんの「夢の中へ」。まったく同じコード進行だったから、1日にして2曲をモノにしたことになる。笑。

そして、密かに伊勢正三さんが弾くギターに憧れていたから、いつかギルドのアコースティック・ギターを弾くのだとこころに決めて、10年かけて実現する。

さて。原稿にも何度も書いてきたけれど、キース・リチャーズのオープンGの5弦ギターが僕の進むべき道を決めた。多くのギタリストが夢中になるリッチー・ブラックモア道は僕にはまったく向いていなかった。早弾きって何が格好いいんだか、今もわからない。

剣道、柔道、キース道。これは道なのだよ。

福岡は恵まれていた。ストーンズが好きならこれを聞くといいよと、ルーツ・ミュージックを教えてくれるレコード店が複数あった。中でも福岡が誇るジューク・レコードの松本康さん。彼が僕らの世代に果たしてくれた功績は計りしれない。のちに彼はHEATWAVEにはなにもしてあげられず申し訳なかったとおっしゃったが、そんなことはない。ジューク・レコードは世界に繋がる扉のようなものだった。僕らはレコードの溝の中にまだ見ぬ広大な世界を感じていた。アホみたいな話だけれど、外盤を買ってきたら、まず匂いを嗅いだ。外国の匂いがしそうで。笑。

ジューク・レコードのおかげで、ストーンズが影響を受けたブルースをたくさん聞いた。多感な高校時代に養われたものは大きい。ギタリストとしてもっとも影響を受けたブルースマンはハウンドドッグ・テイラーとジョン・リー・フッカー。ふたりのタッチが大好きだった。

そしてパブ・ロックにたどり着く。ジューク・レコードでのコピーはこうだった。「一家に一枚、パイレーツ!」。そのギタリスト、ミック・グリーンによって、僕のギターにガッツというテイストが注入された。同じ流れをくむウイルコ・ジョンソン、ジッピー・メイヨーにも影響を受けた。いかにロックンロールを自分のやり方でクールに演奏するかってこと。

ステージ・アクション部門では圧倒的にピート・タウンゼント。ギターの練習より、ジャンプの練習に精を出していた時期もある。

ジミ・ヘンドリックスは凄すぎて、真似をする気もしなかったが、名曲「Little Wing」はひと月かけてコピーした。以来、ライヴのサウンド・チェックはすべてこの曲。つい最近、土屋公平さんにこの曲の奥義を教えてもらって、自分がコピーしたものがまだまだだってことを知った。ジミヘン、当時20代半ば。わたくし、50代半ば。アーメン。

さて、奥深きジューク・レコード。ルーツ・ミュージックの次はニューヨークの音楽を紹介してくれる。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、テレヴィジョン、ヴォイドイズ、エトセトラ……。

ルー・リードが抱えていたグレッチ・カントリー・ジェントルマンの写真を見て、生涯のギターはこれだと決める。弾いたこともないのに。いえいえ、形からいくべきなんです。わたくしの理論では。そして福岡のベスト電器で売られていた、70年代のカントリー・ジェントルマン。初めて実物を見たその日に頭金ゼロ、炎の60回払いで購入。宇宙に行く乗り物を手に入れたような気分だったなぁ。ほんとに抱いて寝たもん。

トム・ヴァーラインのギターは特別に好きだった。あの痙攣するような感じが。ロバート・クイン。飄々とした佇まいから繰り出される狂気のギター。一転して、美しい曲を彩る雫がついたようなフレーズ。

総じて、歌っている人が弾くギターが好きだった。ルー・リード、ニール・ヤング、そうそうマーク・ノップラー。彼がディランの「Sweetheart like you」で弾いているギターソロが世界で一番好き。これはコピーしたなぁ。聞けば僕がどれだけ影響を受けているかわかると思う。ギタリストのみなさん、渋いギターソロが弾きたければこの曲をモノにするといいよ。エッセンスが詰まってる。

フォーク勢のギターも素晴らしい。ジョニ・ミッチェルのギターを解明するのには3年くらいを要した。彼女もブルースに深い影響を受けて、自らの解釈であの和音を生みだしている。バート・ヤンシュ、ジョン・レンボーン、リチャード・トンプソン、ブルース・コバーン。それぞれに素晴らしすぎて、書き出したら止まらない。

ああ、そうだ。エイモス・ギャレット。奇跡の来日公演。「Midnight at the Oasis」が始まって、ギターソロで全員総立ち。もちろん僕も。終演後、握手させてもらって、あの解読不能なギターは異様なまでの手の大きさによって奏でられていたことが判明する。

デビット・リンドレーとライ・クーダー。ふたりの素晴らしさは聞けばわかるさ。いわずもがなスライドの名手。ジェシ・ディヴィスも聞いた瞬間に彼だってわかる。

スライドといえば、クリス・レアも外せない。彼のスタイルは洗練されていて、とってもクール。僕もスライドを弾くときは「誰かのように」ならないように気をつける。ちなみにスライドバーは中学生のときから同じものを使っている。これじゃないと、弾けない。ピックもそう。

ジェリー・ガルシアさんのギターなら永遠に聞いていられる。なぜ彼だけ敬称がつくのか?尊敬しているからです。

最後にロックンロール・ギター。ポール・ウェスターバーグ。一緒に古いギブソンのレスポールJr.でセッションしたい。ミネアポリス代表 VS 福岡代表。ええ、負ける気しません。

最後に国内編。

とあるフェスで名だたるギタリストの中、吾妻光良さんがぶちかました一音で失神。その夜、大好きなバーでもう一度吾妻さんとお会いしたのだが、店主がかけるブルースに合わせて、解説入りのエア・ギターを弾いてくださった。トラウマになるくらいの素晴らしさだった。きっと氏は僕のことなんて覚えてないだろうけれど、死ぬ前にもう一度体験したい。熱望。

佇まいなら花田裕之さん。彼の主張しない主張がほんとうに素晴らしい。僕にはできない。

麗蘭のみなさんとやらせてもらったとき、左右からギター・ヒーローの音が降ってきて、僕は草原に放たれた散歩不足のイヌみたいになった。

Photo by Mariko Miura

そういえば、故どんと氏にこう言われたことがある。「ただのギター小僧やん!」。おっしゃる通りで。

最後に。

この国にアイリッシュ・ブズーキを持ち込んだのはわたくしだと思っているのだけれど、その道の双璧であるドーナル・ラニーとアンディー・アーヴァインに挟まれて演奏したとき。夢に見た音が星屑みたいに降ってきたよ。

この原稿を書くことはどうやって、自分のスタイルが形成されたのか、振り返るいい機会だった。

僕のギターは模倣から始まった。徹底的に真似をしてみた。そしてもっとも大切なことは、誰にも習わなかったこと。難儀でも諦めなかったことと、ただ単純にギターを弾くという行為を愛して、手に入れたギターをたいせつにしたこと。アンプもギターも38年同じもの。ツマミの位置まで変わってない。笑。それがわたくしのこだわり。

こんなんでいかがでしょう?以上、ギター小僧より愛を込めて。


著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。90年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』に収録された「満月の夕」は阪神・淡路大震災後に作られた楽曲で、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。“ミュージシャンズ・ミュージシャン”としてその名を挙げるアーティストも多岐にわたり、近年は野外フェスやR&Rイベントへの出演も多い。バンド結成40周年となる今年、これまで以上に精力的にライヴとレコーディングを行っており、11月10日高松オリーブホールを皮切りにHEATWAVE結成40周年全国ツアーがスタート。長野、仙台会場はSOLD OUT、好評のうちに前半戦が終了し、12月からは福岡、大阪、東京を廻る。ファイナルは12月22日、東京 日本橋三井ホール。12月6日福岡 Drum Be-1
からスタジオ・アルバムとしては2年ぶりとなる新作『Blink』をリリースする。複数会場を廻ったリスナーに抽選で最新アルバム全曲のオリジナルカラオケが当たる40周年企画「ツアー開催地ラリー」は12月21日までの開催(詳しくはhttp://no-regrets.jp/news/2019/1027_rally/)。その他、Twitter、Facebookでも情報発信中。

オフィシャルサイト
http://no-regrets.jp/index.html

ライブ情報

HEATWAVE 40th Anniversary Tour 2019
12月6日(金)福岡 Drum Be-1
12月13日(金)大阪 バナナホール
12月22日(日)東京 日本橋三井ホール
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リクオ スペシャル・ライブ「グラデーション・ワールド」*ゲスト出演
出演:リクオ with HOBO HOUSE BAND
ゲスト:古市コータロー(ザ・コレクターズ) / 山口洋(HEATWAVE)ほか
11月26日(火)下北沢 GARDEN
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SMILEY’S CONNECTION~ノイズホテル TOKYO~
出演:フルノイズ(from 福岡)、山口洋(HEATWAVE)、百々和宏 with有江嘉典
12月8日(日)渋谷 LOFT HEAVEN
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