Interview

チバユウスケ ソロ・プロジェクト“SNAKE ON THE BEACH”7年ぶりの新作は、なぜこんなにもロマンティックなのか?

チバユウスケ ソロ・プロジェクト“SNAKE ON THE BEACH”7年ぶりの新作は、なぜこんなにもロマンティックなのか?

チバユウスケのソロ・プロジェクト“SNAKE ON THE BEACH”名義でリリースした前作『DEAR ROCKERS』(2012年)から7年。リリース直後から制作に入ったというセカンド・アルバム『潮騒』が完成した。
エッジーな楽器の音を独特の美意識で組み上げたサウンドには、ノイズ・ミュージックのひと言では片づけられない深みがある。「新星」から始まって「少年」までの17曲は、途中に3曲のボーカル・トラックを含んで、静かな物語を激しく伝えてくれる。轟々と鳴り響く音の隙間から垣間見える景色に、共感するリスナーも多いだろう。僕は個人的に11曲目「予兆」から始まる後半の流れが、非常に気に入っている。
チバの追求した“理想のノイズ”について聞いてみた。チバの頭の中で鳴っていた音楽は、決して偶発的なものではなく、確信をもって響き合っていた。それはそれはロマンティックなものだった。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 高木博史


やりたいからやってるような(笑)。思いついたことを全部やっておきたいというか。

前作からすぐに制作を始めたとしたら、7年間というかなり長いレコーディング期間ですね。

そうですね、本当に。

いつものスタジオで?

うん。たとえばThe Birthdayのツアー終わったりすると、ちょっとスケジュールが空いたりするじゃないですか。そういう時に、ギターのフレーズだったり、ちょっとピアノやってみたりとか、そういうのを。

まず素材録りっていう?

形を考えないで、ワンフレーズだけでも録る。家で弾いてレコーダーに録ったやつじゃなくて、スタジオできちんと録るっていう。そういう作業を空いてるときにいつもしたかったので。あんまし歌のことは考えてなかった。

チバユウスケ エンタメステーションインタビュー

今回のアルバムを聴いていて、思ったことがあって。僕は身体も心もバテているときに立ち寄るノイズ・バーがあって、『潮騒』はそこでかかっているノイズ・ミュージックと同じ感じがする。本当にくたびれてる時って、AメロBメロとかなくてよくて、ひたすら轟々とノイズが鳴ってるのがいい。そこにいると、不思議と気持ちが楽になるんだよね(笑)。

なんていうバーですか?

新宿の「N」っていうバー。

行ってみようかな。

そのバーを思い出したので、チバくんがどんな精神状態で『潮騒』を録ったのか、すごく興味があった。

俺はバテてはないですよ(笑)。まあでも、空いてる時間に思いついたことをやる、いろんなことをやるというか。途中でThe Birthdayのアルバム用のデモテープ作ったりもしてたから、並行してやってた時期もある。

バテバテの時に録ってたわけじゃない?(笑)

うん、別にやりたいからやってるような(笑)。俺、休むと逆にダメなんすよね。

あ、そういうことなんだ。

はい。思いついたことを全部やっておきたいというか。

ほっとくと忘れちゃうから?

いや、忘れると言うよりも、鮮度が落ちるじゃないですか。

まず素材ありきというか。その裏で綺麗なメロディーが鳴ってもいいだろうし、プラス違うノイズが入ってきてもいいって考えてました。

その素材録りは、ノイズを鳴らすためにやってるの? 

最初は、なんていうのかな、ずっとギターをアンプで鳴らして、いろんなエフェクター(注:音色を加工する装置)を踏んで、いちばんいいノイズが出た時に、レコーダーをずっと回しといてもらって、そこから動かずに“ノイズの波”みたいなのを30分ぐらい録って。

延々と“グワーン”ってやって(笑)。

(笑)。で、エフェクター変えたりとか、ちょっとなんかやってみたりして、また違うテイクのノイズを録る。まあ、基本的にギターなんですけど。っていうのをしばらくやってましたね。

それが『潮騒』の制作の始まり?

そうですね、これをやろうと思った時に、まずその素材ありきというか。その裏で綺麗なメロディーが鳴ってもいいだろうし、プラスもっと違うノイズが入ってきてもいいっていうふうに考えてました。

チバユウスケ エンタメステーションインタビュー チバユウスケ エンタメステーションインタビュー

前作でやれなかったことをやってみようってことだったのかな?

いや、そこまでは考えてなかったですね。もうスタジオが空いてるんだったら、(空いているスケジュールを)全部取ってくれって。アンプ使わなくてもやれる状況になったら、ミキシングする卓があるブースだけでやれるんで。あとは直で卓につないで、パソコンのアンプのシュミレーターとかに突っ込んでもらって。それでもノイズは鳴るんで面白い。そうするとまた、「おー、なるほどな」ってなって。

じゃあ、制作には段階があって、素材を録り溜める時期があって、しばらくして落ち着いたら、これとこれが合うかもしれないっていう組み合わせ作業に移る。

そうですね。まさに、そうです。

楽器はほぼひとりでやってるの?

うん。ドラムは打ち込みと…自分でちょっと叩いたのもあるんですけど。「東京」っていう曲では、フジケンにマンドリンギターを弾いてもらったり。

今まで自分で作ってきたレコードの中で、いちばん聴いてる(笑)。ホントに。

曲のタイトルはどうやって付けたんですか? 曲のイメージを言葉が限定してしまう危険性があると思うけど?

最初はトラックの数字だけとかだったんだけど、でもやっぱりちょっと違うなと思って。それだと、なんか自由なようで自由じゃないというか。見えるようで見えないというか。そういうのになっちゃうなと思って。だったら、なんとなく自分の思ってる言葉というか、タイトルをつけたほうがいいんじゃないかなと思って。で、これは何に聴こえるかなとかって思いながら聴いて、タイトルを付けてった。そういうやり方。

曲のタイトルを付けてから、曲順を決めたの?

いや、曲順ありきでしたね。逆に曲順をすごい考えましたけど。

僕は後半の、「予兆」からの流れがめちゃくちゃ好きだなあ。

あー、なるほどね。

曲順ありきだったとすると、この流れでみんなに聴かせたいっていうことではあったんだ。

うん。まあそうだと思う。

全17曲って、CDの限界に近い長さ?

ギリですね。すごい短い曲もあるんですけどね。

チバユウスケ エンタメステーションインタビュー チバユウスケ エンタメステーションインタビュー

17曲の全部がインストではなくて、「デッドリー・ドライヴ」と「春」と「夕陽」の3曲には、歌詞が付いていて歌っている。

この3曲は、けっこうあとのほうですね。今年か去年ぐらいですかね。

制作期間が7年間だとしたら、最後の段階で。

もう最後の2年間ぐらいで。

それはインストと歌モノのバランスを考えてって感じなの?

いや、やりたくなったんすよ、なんか(笑)。

あははは。

歌を歌う曲になると、絶対、The Birthdayに持っていくんですけど、でもなんかこの3曲に関しては、ひとりでやりたいなと思っちゃったんですよ。

The Birthdayでやったらどうなるのかなって想像しながら聴いてみたら、ギターの音色がThe Birthdayとは全然違う。

うん、そうなんですよね。 

そのギターの音色でやりたい歌だったんだろうね。

そうなんですよ。 

歌が入ってる最初の曲「デッドリー・ドライヴ」は、8曲目に入ってる。

それは7曲目まで聴いてきた人が、歌が入ってきてびっくりするかなと思って。「あれっ? 歌、あるんだ!」って(笑)。

それは驚くよ(笑)。

まあ歌が入ってるのが、3曲ぐらいあったほうがいいかなって。あ、最初は2曲のつもりだったんだけど、「春」っていう曲を家でiPad置いて、ボイスメモみたいなやつで録ったら、それでもう完結したなと思った。だったらアルバムにそのまま入れちゃおうと思って、それで3曲になった。

確かに「春」のサウンドは、ざらざらしてる。それに比べると「夕陽」は、ちゃんとした楽曲になってるね。

まあまあ、ちゃんとやりましたね。

あははは。

俺にしてはというか(笑)。

チバユウスケ エンタメステーションインタビュー
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「夕陽」の歌詞には“お前”っていう人物が出てくるけど、これはモデルになった具体的な人がいたの?

それは言わない(笑)。

じゃあ、聞かない(笑)。『潮騒』っていうアルバム・タイトルはどこから?

うーん、まあなんとなくっていうのと、「予兆」っていう曲にカモメの鳴き声入れた。そこからかな。

それはやっぱりチバくんの自分の心の風景なのかね。 

うーん。実際、このアルバムは聴いててめちゃめちゃ心地いい。落ち着くというか。マスタリングの前とか、ミックスが大体終わった頃ぐらいから、朝起きて普通にヘッドホンで、全曲まるまる2回ぐらい聴いてましたから。曲順を考えるっていうのもあったんだけど、全然苦痛じゃなかった。今まで自分で作ってきたレコードの中で、いちばん聴いてる(笑)。ホントに。

ミュージシャンはだいたいミックスが終わった途端に、それまで死ぬほど聴いてるから、もういいやってなる。

そうそう、マスタリングまで行ったら、もう聴かなくなる。

その時その時の思いつきで作ってると、どうしても音が下がるんですよ。だからちゃんと作っていかないと。

チバくんにとって、心地いいノイズって?

ノイズ作ろうとすると、どうしてもギターのエフェクターをいろいろ踏んだりするじゃないですか。そうすると音って下がっていくじゃないですか。

下がる?

聴こえが。ライブの時でも、たとえばデカい音のノイズってのはほとんどなくて。ノイズのライブを観に行くと、どんどん音がちっちゃくなっていくんですよ。それがもったいないなっていつも思っちゃうんだよね。その時その時の思いつきで作ってると、どうしてもエフェクター踏めば踏むほど、音が下がるんですよ。

エッジがなくなっていくんだね。

そうです。だからちゃんと作っていかないと。

それで今回、ちゃんとしたスタジオで素材を録って、それを組み上げていったんだ。

そうですね。だから俺は今回の音をライブで再現する気はない……実際、再現できないけど(笑)。

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そのアイデアは、いつ頃から芽生えたんだろうね。

『潮騒』の1曲目の「新星」を作ってる時は、もうその感じだった。そのあと「鯨」っていう曲をやった時に、「あ、これだ!」っていうふうに思って、これでもうアルバムできるなっと思ったんだよなあ。「新星」は2013年か2014年ぐらいに作ってて、もう出来上がってた。「鯨」はここ2年ぐらいの隙間隙間で録っていった。とにかくやろうと思ったこと、全部詰め込んで。

今、自分の思うノイズを追求したんだ。

なので最後のほうは、そこから抜いていく作業のほうが多かったんですよ。「やっぱこれいらない、これもいらない、これも入れない」って。これは短くしようとか。そういう感じでした。

ライブで再現できないかもしれないけど、とにかくデカイ音のノイズを演出した。

演出というか、今回できた音は、自分で聴いてても飽きない。だから爆音でヘッドホンで聴いてほしいんだけどな(笑)。

俺が言ったんです。CDとDVDの2枚セットのパッケージにしたいって。

全曲分のイメージビデオを付けたのは?

いわゆるスライドショーじゃないけど、そういうふうにやりたいって俺が言ったんです。CDとDVDの2枚セットのパッケージにしたいって。

動画? それとも写真?

いわゆるビデオじゃないんですよ。俺が撮った写真の、ちょっとしたスライドショーみたいになってて。それを曲に合わせた。監督に写真を700枚ぐらい渡して。「ノック ノック ノック」と「エデン」と「予兆」の3曲はそれぞれ違う監督がビデオを撮ってくれて、その3曲以外はスチール写真を動かすような。渡した700枚から、スライドショーを作ってくれた監督がちゃんと選んでくれてて、それがなんかすげー嬉しかったな(笑)。自分では絶対できない。

スタジオで『潮騒』を作ったことと、写真を撮ることは似てた?

似てないですね。音楽の場合、行き当たりばったりのようなんだけど、結局たどり着くところはなんか俺わかってるような気がするんだけど、写真の場合は適当に撮ってるだけだから(笑)。

ああ、そうなんだ(笑)。

なのに写真展やるっていう暴挙に出て(笑)。

『潮騒』を作ったことで、何か自分が影響受けそうかな? 

まあ影響を受けるっていうか、逆にこういうことをしばらくやらなくなると思う。

そっかそっか(笑)。

そういう意味では、いい意味での反面教師みたいなさ。多分しばらくはやらないと思う(笑)。でも、うん、本当によく表現したなと、自分でも思いましたね。

ありがとうございました。

そのほかのYUSUKE CHIBA-SNAKE ON THE BEACH-の作品はこちらへ。

イベント情報

YUSUKE CHIBA -SNAKE ON THE BEACH- 写真展「潮騒」

会期:2019年11月19日(火)〜11月27日(水)
会場:AL www.al-tokyo.jp
時間:12:00〜19:00(各日、最終入場は18:30まで)
※会期中無休・入場無料

YUSUKE CHIBA-SNAKE ON THE BEACH-「潮騒FILMS」プレミアム上映イベント

期日:12月6日(金)
時間:OPEN 20:30/上映 20:50
会場:シネマート新宿スクリーン1
※アーティストの出演はありません。

チバユウスケ

1991年から2003年までTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのボーカル&ギターとして活動。2005年から現在までThe Birthday。そのほかイマイアキノブとのMidnight Bankrobbersや、イマイアキノブ&中村達也と結成したTHE GOLDEN WET FINGERSなどでも活動。ソロ・プロジェクト“SNAKE ON THE BEACH”として2012年10月『DEAR ROCKERS』をリリース。

オフィシャルサイト
https://www.universal-music.co.jp/sotb/