Interview

「科学」が題材の難しさ、でも「ジャンプ」作品ならではの熱さ!『Dr.STONE』の物語はどうやって生まれたのか?

「科学」が題材の難しさ、でも「ジャンプ」作品ならではの熱さ!『Dr.STONE』の物語はどうやって生まれたのか?

<TVアニメ『Dr.STONE』クリエイターインタビュー・前編>

突如起こった謎の現象により全人類が石化――。それから数千年もの歳月が経過したある日、ひとりの少年が石化から目覚める。天才的な頭脳を持ち、すべての文明が滅んでしまった世界でも絶望しなかった彼は、科学の知識を武器に生き抜き、失われた文明と石化した人類を取り戻そうと行動する。

「週刊少年ジャンプ」連載中の人気作をTVアニメ化した『Dr.STONE』(ドクターストーン)は、主人公である少年・千空(せんくう)が失われた文明を再び構築していくという“クラフト冒険譚(アドベンチャー)”だ。2019年7月の放送スタートから現在は2クール目後半に入り、各配信サイトでも常に人気トップクラスに名前を連ねる盛り上がりをみせている。

今回は、そんな『Dr.STONE』において中心的な役割を担った人物たちへロングインタビューを実施。「週刊少年ジャンプ」(集英社)で原作の担当編集者をつとめる本田佑行氏、そしてトムス・エンタテインメントでアニメーションプロデューサーとして携わる片桐秀介氏──この2人に、原作の魅力とともにアニメーション制作秘話について聞いた。

取材・文 / 加藤和弘(クリエンタ)
構成 / 柳 雄大


飛躍的発想から生まれた“文明クラフト”という世界観

まずは本田さんに原作サイドのお話を伺いたいのですが、『Dr.STONE』の“文明クラフト”という独特な世界観はどのようにして生まれたのでしょうか?

本田 原作者の稲垣理一郎先生から初めに「文明を一から作る漫画はどうですか?」という提案をしていただいたのが始まりです。当時他にもいくつかアイデアがあった中で、特に「どうやって漫画にするんだろう?」と思ったのがそのお話で。「面白そうなので、読んでみたいです」ということになりました。

現代文明の科学知識を持った少年が数千年を経て復活するという部分には、今勢いのある“異世界転生もの”に近い性質もあると思いました。

本田 “異世界転生もの”凄いですよね。稲垣先生には読者が欲しいものの一歩先、時流を読む嗅覚があって、結果的に時代に求められていたものを作り出してくれたと思います。その上で個人的な印象ですが、『Dr.STONE』の場合は、「この世界で自分がどれだけできるか試してみたい」とか「自分の能力をもう一度検証したい」というのが根底にある気がします。文明や科学だったり、当たり前に思われているものともう一度ちゃんと向き合ってみたら実は格好いいんじゃないか? という部分がスタートになっていて。

いっぽう、アニメーションプロデューサーの片桐さんとしては『Dr.STONE』の原作について客観的にどんな思いを持たれていましたか? また、アニメ化のお話が来たときはどのような気持ちでしたか?

片桐 本音を言うと、当初はアニメとはかなり食い合わせが悪い作品だと思っていました(笑)。派手なバトルがあったりするわけではないので、やはり“アニメとして魅力ある画”を作るのにどうすれば良いのかは相当考えましたね。中でもクラフト描写は『Dr.STONE』の中でとても重要な要素なので、そこに嘘がないように気を付けました。でも、やってみると次々とわからない部分が出てきて……。

例えばフラスコの中の液体を混ぜるシーンがあったとき、実際にその液体はサラサラなのか、ドロドロなのか? というのは原作コミックスだけではわからない。科学描写に嘘があってしまうとこの作品が成立しなくなってしまうので、原作で科学監修をしてくださっているくられ先生に、アニメでも確認をとりながら進めています。

具体的には、第18話で千空がサルファ剤(抗生物質)を生成する途中でできた薬品を金狼の傷口にかけるシーンがありますよね。抗生物質の副産物なのでサラサラだと思っていたら、どうやら「粉砂糖のようにちょっと固まり感がある重い感じの薬品」であるとわかって、それをどうやってアニメで表現すればいいか悩みました。言い出すとキリがないのですが、クラフトが始まった第8話以降はずっとそういった悩みが続いています……。視聴者の方にはその辺のこだわりが伝わりにくいと思うのですが(笑)。

サルファ剤が出てきた時、「あ、抗生物質って作れるものなんだ!」とあらためて気付かされました。このあたりに料理漫画っぽい感覚もあって、古い作品ですが『OH!MYコンブ』(※)を思い出しました。

本田 『OH!MYコンブ』は僕も大好きでしたね(笑)。確かに、初めは「抗生物質っていう物質があるんでしょ」ぐらいに思っていたので、料理みたいに掛け合わせて作るものなんだ……というのは『Dr.STONE』であらためて知りました。

※『OH!MYコンブ』 お菓子など、子どもがコンビニで買えるような材料を掛け合わせて料理を生み出す“リトルグルメ”を題材にした、コミックボンボン(講談社)原作の漫画作品。1991年にアニメ化もされた。

片桐 知っていたら学校で言いたくなるというか、身近なものだからこその良さもありますよね。

文明が滅んで、残った武器が科学の知識だったというのはとても面白いですよね。

本田 そうですね。稲垣先生が考えた順番としては、「地道に科学を一歩一歩やっていく主人公を格好良く描きたい」「じゃあそいつが一番活きる場所は何だろう?」といった流れで、「じゃあ文明を崩壊させればいいじゃん」と。……まあ、そこが「ジャンプ」的な発想の飛躍なんですけど(笑)。でも文明が崩壊するとみんな死んでしまうし、回復不可能なものは少年漫画に向かないし、ということで生まれたのが“石化”というアイデアなんじゃないでしょうか。

『Dr.STONE』としての印象を壊さない、アニメならではの演出

アニメ版の『Dr.STONE』をご覧になって、本田さんの印象はいかがでしたか?

本田 原作をしっかり再現していただいていて、先ほど片桐さんがおっしゃったように科学描写もこだわっていただいて。アニメーションならではの演出にもちゃんとチャレンジしていただいているというのが非常にありがたく、トムスさんやこのスタッフさんとご一緒できて本当に良かったなと思っています。

漫画とアニメって違うものなので、漫画のコマやセリフをそのままアニメにするだけではダメなんですよね。一番大切なのは、漫画ならではの読み口と、アニメを見た時の印象がずれていないこと、つまり“漫画を読んでも、アニメを見ても、『Dr.STONE』だ”という印象が変わらないことで。だからアニメの脚本ではセリフを入れ替えたり変更したりもしているんですが、よっぽど原作を読み込んでいる方でもなかなか気が付かないと思います。作品が持っている手触りや匂いがちゃんと『Dr.STONE』だと感じられるのが、このアニメの魅力で。「原作に忠実に再現しているなぁ」と思っていただけたら何よりの褒め言葉ですね。

本田 表現の変化という意味で一番わかりやすいのは、第1話で千空が石化から目覚めたのち1年が経過するシーンで。漫画は漫画ならではの季節の変化の表現、アニメではアニメならではのタイムラプスによる表現を使っていますが、1年が経った千空や大樹(たいじゅ)たちから受ける印象って、どちらも変わらないと思うんですよ。原作サイドとしては、そういったアニメならではの演出があればあれるほど面白いと思います。

片桐 飯野(慎也)監督からタイムラプスのアイデアを聞いた時は「どうするんだろう」と思いました。「一度作ったアニメを早回しで見せるのだろうか?」って(笑)。実際には、早回しに見えるように作画しています。

今回、飯野監督とは初めてお仕事をさせてもらったんですが、たくさんの表現方法を持っている方だなと思いました。脚本の段階でいろいろ意見も出てきますし、コンテをご自身で描かれていない回でもしっかりと手を入れていただいて、それを現場に落とし込んでくれています。

第6話の特殊エンディングも監督のアイデアでしたね。一見すると「本編が長くなってしまい、尺に合わせるためにエンディングテーマを流しているだけ」と感じた方もいるかもしれませんが、監督がコンテの段階から指示を入れていました。コハクを救ったところで曲がきれいに終わるというのもちゃんと計算された演出だったんですよ。

本田 飯野監督が本当に素晴らしいクリエイターであったということですよね。ありがたい限りです。『Dr.STONE』で初監督とか、絶対ウソだと思います(笑)。

いわゆる作画が超凄いアニメ作品の場合、その作画部分だけで見ている愉悦があるように、『Dr.STONE』の場合も同じようにアニメーションとしての “快感がある映像”になっています。ただ見ているだけで面白いというか。演出や画の力がある作品だなと思います。あと音楽! 第16話の宇宙ステーションのシーン(世界的な歌姫であるリリアンの歌を宇宙中継で全世界に届けるシーン)は本当に良かったですね。

片桐 アニメオリジナルのシーンですよね。まだ石化する前の大樹や杠(ゆずりは)も出てきて、アニメならではの良いシーンが作れたかなと思っています。

本田 (取材時点での最新話である)16話まで見た中でも、とりわけ印象深い回でした。

片桐 これまでのストーリーとは全然切り口が違うのと、16、17話を見ると今までの伏線が一気に回収されて、すっごく気持ちいい回になっているんですよね。幼い千空と大樹も出ているんですが、アニメ的に子供たちが淡泊だとつまらないものになってしまうので、監督もその部分はしっかりコミカルな演出を入れていました。そこからラストカット、キャラクターデザインの岩佐(裕子)さんの絵に続く流れはとても素敵だったと思います。

インタビュー後編はこちら
ジャンプ原作アニメで“ここまで凝縮された第1話”ってあった?『Dr.STONE』が視聴者を惹きつけてやまない理由

ジャンプ原作アニメで“ここまで凝縮された第1話”ってあった?『Dr.STONE』が視聴者を惹きつけてやまない理由

2019.12.06

TVアニメ『Dr.STONE』

放送中

<放送情報>
TOKYO MX 毎週金曜日 22:00~22:30
KBS京都 毎週金曜日 22:30~23:00
サンテレビ 毎週金曜日 23:30~24:00
BS11 毎週金曜日 23:30~24:00
TVQ九州放送 毎週月曜日 26:00~26:30
テレビ愛知 毎週月曜日 26:05~26:35
TBC東北放送 毎週月曜日 26:10~26:40
テレビ北海道 毎週火曜日 26:35~27:05
※放送開始日・日時は編成の都合などにより変更となる場合があります。

<配信情報>
dアニメストアほかにて配信中

<スタッフ>
原作:稲垣理一郎・Boichi(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:飯野慎也
シリーズ構成・脚本:木戸雄一郎
キャラクターデザイン:岩佐裕子
デザインワークス:水村良男
メインアニメーター:堀内博之
美術設定:青木智由紀
美術監督:吉原俊一郎
色彩設計:中尾総子
撮影監督:葛山剛士
編集:坂本久美子
音響監督:明田川 仁
音楽:加藤達也、堤博明、YUKI KANESAKA
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント

<キャスト>
石神千空:小林裕介
大木大樹:古川 慎
小川 杠:市ノ瀬加那
獅子王 司:中村悠一
コハク:沼倉愛美
クロム:佐藤 元
金狼:前野智昭
銀狼:村瀬 歩
ルリ:上田麗奈
スイカ:高橋花林
あさぎりゲン:河西健吾
カセキ:麦人
百夜:藤原啓治
リリアン・ワインバーグ:Lynn
シャミール・ヴォルコフ:森久保祥太郎
ダリヤ・ニキーチナ:金元寿子
ヤコフ・ニキーチン:山本兼平
コニー・リー:田中理恵
氷月:石田 彰
ほむら:豊崎愛生
ほか

©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会

オフィシャルサイト