Interview

ジャンプ原作アニメで“ここまで凝縮された第1話”ってあった?『Dr.STONE』が視聴者を惹きつけてやまない理由

ジャンプ原作アニメで“ここまで凝縮された第1話”ってあった?『Dr.STONE』が視聴者を惹きつけてやまない理由

<TVアニメ『Dr.STONE』クリエイターインタビュー・後編>

突如起こった謎の現象により全人類が石化――。それから数千年もの歳月が経過したある日、ひとりの少年が石化から目覚める。天才的な頭脳を持ち、すべての文明が滅んでしまった世界でも絶望しなかった彼は、化学の知識を武器に生き抜き、失われた文明と石化した人類を取り戻そうと行動する。

「週刊少年ジャンプ」連載中の人気作をTVアニメ化した『Dr.STONE』(ドクターストーン)は、主人公である少年・千空(せんくう)が失われた文明を再び構築していくという“クラフト冒険譚(アドベンチャー)”だ。2019年7月の放送スタートから現在は2クール目後半に入り、各配信サイトでも常に人気トップクラスに名前を連ねる盛り上がりをみせている。

そんな本作制作の中心的メンバーに聞くクリエイターインタビュー、後編となる今回は、作品の魅力を生むテンポ感やシリーズ構成にもスポットを当てながら詳しい話を聞いていく。「週刊少年ジャンプ」(集英社)で原作の担当編集者をつとめる本田佑行氏、トムス・エンタテインメントでアニメーションプロデューサーとして携わる片桐秀介氏、それぞれ異なる視点から語られる『Dr.STONE』の魅力とは?

取材・文 / 加藤和弘(クリエンタ)
構成 / 柳 雄大


インタビュー前編はこちら
「科学」が題材の難しさ、でも「ジャンプ」作品ならではの熱さ!『Dr.STONE』の物語はどうやって生まれたのか?

「科学」が題材の難しさ、でも「ジャンプ」作品ならではの熱さ!『Dr.STONE』の物語はどうやって生まれたのか?

2019.11.30

何でも言い合えるスタッフだからこそ実現できた、密度の濃い展開

原作の担当編集者として、本田さんはアニメ化の経緯やスタッフに関してはどのような印象を持たれましたか?

本田 今回の製作チームを組んでいる東宝さんとトムス・エンタテインメントさんは、以前に『弱虫ペダル』をアニメ化されていましたよね。登場キャラクターが多く、レースシーンも大変というタフな原作をあれだけのクオリティで仕上げられていたので信頼していました。あとは、制作スタッフの方々が若いというのにもワクワクしました。プロデューサーの片桐さん始め、飯野(慎也)監督、シリーズ構成・脚本の木戸(雄一郎)さんなど皆さんお若いですからね。

片桐 確かにメインスタッフは若いメンバーが多いです。『Dr.STONE』のアニメ化企画を想定してスタッフリストを出してくれないかというお話があった最初期の時点で、候補に挙がっていたのは若いスタッフ中心でした。

原作サイドとして、若手スタッフという部分が決め手のひとつになったと考えられた理由は何だったのでしょうか?

本田 「週刊少年ジャンプ」は若い作家と新しいものを作っていく媒体ですから、新しいものを生み出したいと思ってくださる若い方たちとウマが合うというか、水が合うと言いますか、そういう部分はあります。

片桐 ただ、飯野監督は本作が初監督作品ですし、脚本の木戸さんもシリーズ構成担当として長く関わられるのは今回が初めてだったので、スタート時はかなりチャレンジな感じもあって。でも脚本会議が始まった段階で、その考えは杞憂だったなと感じました。

『Dr.STONE』では木戸さんがすべておひとりで脚本を書いていて、複数の脚本の方が入る作品と比べると、とてもスムーズに脚本会議が進むんですよ。その上で木戸さんが柔軟に何でも吸収してくださる方で、監督のリクエストもうまく吸収してくれましたし。あと心強かったのは、毎回の脚本会議の際に原作者の稲垣(理一郎)先生がきちんと脚本を監修してくださった部分ですね。そのおかげで脚本に行き詰まったことはなかったです。

本田 良い部分も悪い部分もざっくばらんに話ができるチームワークが強みになっていると思います。「ここは直した方がいいと思います」と言うべきところでは言えますし、逆に面白い部分は「これ天才じゃないですか!?」なんて言えるような関係性です(笑)。

片桐 飯野監督と木戸さん、稲垣先生のお互いのやりとりもスムーズでしたからね。ただ……「ジャンプ」作品の場合、アニメが1クールで終わることは少ないですから、そういった意味でシリーズ構成は大変だったと思います。

最初にお話をいただいた時点で2クールというのは決まっていたんですが、原作がまだまだ序盤の段階だったので、アニメでどこまでのストーリーを描けることになるのかはわからなかったんですよ。だから東宝さん経由で先々の展開を聞きながら……「千空は次にどうやら●●を作るらしい」と聞いて、じゃあそれを作るまでの部分をアニメで描こう、という話になりました(注:●●が何なのかは2クール目ラストのお楽しみ!)。

本田 そこは木戸さんのお力できれいに収まりましたよね。制作の初期段階で、「各話をどのくらいのテンポ感で描いていくのか?」ということも話し合ったんです。飯野監督や木戸さんらクリエイター陣の意見と色々と議論した結果、チームとして「早く描く方」を選択しました。原作のテンポ感を大切にするのがアニメの面白さなんじゃないかと思って……で、進めていたらあっという間に原作を消化していったという(笑)。

初めは原作の第1話分をアニメでも1話分かけて描くという考え方もあったんですが、『Dr.STONE』のテンポだともっと行けるな、ということになり、実際は原作2話分をアニメでは1話で描くようなテンポ感になりました。特に第1話は、僕が知る限りで「ジャンプ」作品のアニメの中でも一番シナリオが詰まっているに話になったかもしれません。

片桐 普通の「ジャンプ」作品の第1話だと、たぶん千空たちの学園生活の部分を少し長めに描いて、そこに石化の現象が起こって、大樹の石化が解けて千空と出会ったところぐらいで終わると思うんですよ。ところが実際には、Aパートの時点で大樹はもう千空と出会って、Bパートで石化復活液まで完成するという(笑)。もう全然、僕らがいつも想定しているスピード感ではなかったですね。

だから絵コンテが上がるまでは不安な部分もあったんですが、飯野監督としては絵コンテを上げた段階でテンポ感や描き方がほぼ見えていたみたいです。僕らは監督に追従して、監督のやりたいことが成立するよう動いていったら第1話があんな感じで完成して……結果はご覧のとおりで、「中身が詰まっていて、めっちゃ面白いな」とみんなで言い合いましたね。

本田 みんなで自画自賛しちゃいましたよね。

『Dr.STONE』のストーリーは、何かひとつ素材や道具を作り、それを元にまた新たな素材や道具を作っていくというものですよね。そうなると要素をカットするのが難しいと思うのですが、アニメを拝見した感じ、テンポ感は早くても原作の要素がひとつも抜かれていないと感じました。

本田 稲垣先生は先々のことまでちゃんと考えてセリフを入れているので、ひとつひとつにちゃんと意味があるんです。だからセリフをひとつ抜くだけでパズルが組み立てられないぞ、となることも結構あるんじゃないかと。

片桐 木戸さんが苦労された部分がそこですよね。どこも端折れないので、描こうとすると凄く丁寧に描かなければいけない、そうするとテンポが遅くなってしまう。でも、実際にぎゅっと詰め込んでみたら想像以上に面白く見られることがわかってきて、それからはスルスルと進みましたね。

本田 アニメの立ち上がりの時って、みんなの頭の中にテンポ感が共有されていないのでなかなか難しいんです。一度フィルムを見るとみんなの中に同じテンポ感が共有できるので、そうすると尺の調整とかも段々とイメージしやすくなるんですが、そこまではみんな不安ですよね。

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