HEATWAVE結成40周年企画  vol. 3

Interview

古市コータローの美学と山口洋の瞬き。ギターの音ですべてが分かり合える、日本のロックシーンを代表する2大ギタリスト夢の対談!

古市コータローの美学と山口洋の瞬き。ギターの音ですべてが分かり合える、日本のロックシーンを代表する2大ギタリスト夢の対談!

HEATWAVE結成40周年企画第3弾
特別対談 古市コータロー(ザ・コレクターズ)× 山口洋(HEATWAVE)

日本のバンドシーンを代表する2人のギタリストの対談だ。山口洋はHEATWAVEを40年間、古市コータローはザ・コレクターズを35年間、牽引してきた。対談場所は、両バンドと同じくらいの歴史を持つ、池袋を代表する焼きトンの名店で、古市はここにほぼ毎日、チェックインしているという。
今年3月にリリースされた古市のソロアルバム『東京』の収録曲「愛に疲れて」の歌詞を山口が書き下ろした。一方、HEATWAVEは間もなくニューアルバム『Blink』を発表する。そして、来年1月からは2人で回るツアーも決定した。そんな話題を交えながら、2人の交流と音楽観について語ってもらった。永いキャリアを持ちながら、常に音楽に新鮮な気持ちで臨んできたギタリストたちの話は、まるで“Blink”=瞬き(まばたき)のように過ぎてきたバンドライフに、強い輝きを与えていた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 三浦麻旅子


古市コータロー 山口洋 エンタメステ-ション特別対談

店員 コータローさんは、いつものでいいんですね?

古市 あ、いつもので!

「いつものでいいんですね?」って、常連ですね。

古市 会議はいつもここでやるんで。

山口 打ち合わせ、ここでしてるの?(笑)

古市 イベンターさんとツアーのプラニングとかの会議。武道館をやろうって決めたのもここだった。

山口 コータローくん、他のお客とグラスが違うらしいよ。

マイグラス持ってるの?(笑)

古市 マイグラスってわけじゃないけど(笑)。 

山口 何が違うんだっけ?

古市 見ればわかります(笑)。

例えばギターで俺がバーンって弾いたら、「あれは今どういう気分で弾いてる」って洋ちゃんはわかってくれる(古市)

古市コータロー 山口洋 エンタメステ-―ション特別対談

ではコータローさんのホームグラウンドで対談をお願いします。まずは乾杯!

山口 取材で飲酒って最高だね(笑)。

2人の最初の出会いは?

古市 意外と最近なんですよ。

山口 もちろん存在は知ってましたよ。共通のスタッフがいたり、エンジニアがいたりするんで。

古市 初対面はいつだっけな?

山口 俺が渋谷でCHABOさんとヤイコ(矢井田瞳)ちゃんと「MY LIFE IS MY MESSAGE」のライブやったときに、共通の友達が打ち上げに連れて来てくれた。

古市 ああ、5年前だね。

ライブは観たんですか?

古市 俺はね、自分のライブだったんですよ。

山口 コレクターズも渋谷でライブやってて。

古市 CHABOさんがゲストに出てくれた後だったから、お礼だけ言おうと思って、共通の知り合いがいたから紹介してもらった。

それが初対面?

山口 そう。フェスで俺たちの前がコレクターズとかあったんだけど、なんかタイミングが合わなかった。

永い付き合いなのかと思ったけど。

古市 いや。ただ年がほぼ同じだから永いようなもんだから。説明がいらないっていうのかな。

山口 聴いてきた音楽のお里は一緒だから。

古市 例えばギターで俺がバーンって弾いたら、「あれは今どういう気分で弾いてる」って洋ちゃんはわかってくれる。

彼も俺も、ミュージシャンというよりは「バンドの人になりたかった」というところが共通してるのかな(山口)

古市コータロー 山口洋 エンタメステ-ション特別対談

山口 2年ちょっと前にコレクターズの武道館を観に行かせてもらって、1曲目でコータローくんが最初に弾くコードがEだった。そのEを聴いた瞬間に、もう拍手! 「古市コータロー、ここに賭けたな」って感じで、その瞬間に彼が積み上げてきたものが一瞬にして理解できた。隣で観てたCHABOさんも、同じことを感じてたと思う。今日、歩きながら考えてたんだけど、彼も俺もCHABOさんも、ミュージシャンというよりは「バンドの人になりたかった」というところが共通してるのかなって。

それがギターを聴いて感じた共通点だったんだ。

山口 うん。Eっていうコードは、ギターの中でいちばん低い音が鳴る。彼のギターを借りてスタジオで弾いてみると、そこに命を賭けてるのがわかる。だって同じ職業だから。

そんなことがわかるんだ。

山口 わかる、わかる(笑)。

古市 ボディーの反応が違うから。

さすがギタリスト同士! ちなみに初対面の印象は?

古市 俺、洋ちゃんてもっと気難しい人かと思ってた。そうしたら、意外とハッピーで(笑)。

意外とハッピー(笑)。

古市 とっつきにくいとかまったくなくて、その日の打ち上げで2軒ぐらい行ったもんね。俺、その打ち上げに関係ないのに(笑)。

山口 ちゃんと聞いたことはないけど、似てるところがたくさんある。

古市 たぶん価値観が一緒なんだよな。

山口 それが楽なの。ティーンのころ、同級生に馴染めなかったのも同じ。The Whoが「Teenage Wasteland」って歌ってたじゃん。

古市 「10代の荒野」でしょ。

山口 バンドを作って、鳴かず飛ばずが続いて、それでもバンドを続けてきたってのがすごい。それでつい最近、会うべくして会って、もう言葉はいらないというか、しゃべる必要もない。俺は武道館のEのコードを聴いて、涙がちょちょぎれた。しびれるよね、そういう美学って(笑)。

彼は音楽以外でも自分の生き方を貫いていて。そういうプロフェッショナルな生き方が素晴らしい(笑)(山口)

古市コータロー 山口洋 エンタメステ-ション特別対談

 一緒に演奏しようっていう話は?

山口 きっかけは自然だったね。

古市 自然だね。「MY LIFE IS MY MESSAGE」に呼んでくれたんですよ。そこでやったのは大きかったかな。CHABOさんと3人でキネマ倶楽部でやった。

山口 アラバキでも一緒にやったり。ライブ会場に向かう方法とか、彼は音楽以外でも自分の生き方を貫いていて。酒の飲み方だとか、ラーメンの食べ方だとか、とにかく彼のそういうプロフェッショナルな生き方が素晴らしい(笑)。いろいろ学ぶことがある。コータローくんが俺に残した酒の名言は、「あと一杯飲みたいっていうときに帰るのがプロだ」って。俺はあと5杯ぐらい飲んじゃう(笑)。

古市 それもわかる。昨日も俺、飲み終わってラーメン食ってたのね。もう一杯飲みたいわけよ。で、今はラーメン食ってるんだから、ここでの追加の一杯は許されるんじゃないかと思って(笑)。途中でハイボール頼んじゃった。

山口 (笑)そうなんだ。

プロじゃないじゃん!(笑)

山口 俺の住んでる街もそうなんだけど、税理士とか医者とかヘアカットしてくれる人とか、いろんな人全部が街の中で機能してるのがいい。自分が街の中で生きてる感じがするじゃん。その中にミュージシャンもいる、俺たちがいるって感じ。それがね、素晴らしいと思う。

古市 実際、俺もこの街で全部済ますもんね。いつも使うスタジオも池袋にあるし、さっきも床屋に行ってきた。

山口 しかも“置きギター”だよ。彼はスタジオに手ブラで来る。「全国置きギター計画」みたいなのがあるみたいで、手ブラでツアーするつもりらしい(笑)。

ギターはあんまり選ばないの?

古市 選ばないねえ。

山口 (笑)。

少しはこだわってください(笑)。

山口 でも彼がこの前、国産のレスポール弾いてたのね。音が良くて、ちょっと俺もグラっときた。 

古市 中学のときに憧れたグレコ製のギターです。ほら、大人になってさ、不良が昔憧れてたカワサキのバイク買ったりするじゃん。それと一緒だよ。

山口 (笑)。

そこにはこだわる(笑)。

山口 それもひとつのプロフェッショナルだと思う。俺とは違うパターンだけど。俺は30年間、ギターのつまみの位置も変わってない。

古市 俺、置きギターだからさ、自分のメインギターが使えるのは本番だけだもん。そうすると本番が楽しいんですよ。弾きにくいんだ、置きギターが。養成ギプスみたいなもんですよ。あんなに難しかったフレーズが、今日は簡単だと思うんです(笑)。

山口 (笑)マスコットバット的なね。

それでいいのかなぁ(笑)。

「Blink=40年間が一瞬の瞬きだった」って言い切れるのは、前しか向いてない人の強みだと思うんだよね(古市)

古市コータロー 山口洋 エンタメステ-ション特別対談

コレクターズがずっと出ていた新宿のライブハウス“JAM”が一昨年閉店するときにライブをやりましたが、バンドの長い歴史の中でどんな出来事だったんですか?

古市 そりゃあ、感慨深いものがありましたよ。

山口 バンドを育ててくれたライブハウスが無くなったり、育ててくれた人が亡くなったりすると、キツイよね。その人が励ましてくれなかったら、俺、ここまでできなかっただろうなっていうのがあるから。そういうのを背負ってるというか、そういう気持ちもあるからね。だって、バンドを続ける以外に自分のできることがなかったし、俺は一生懸命やったというよりも、バンドにしがみついたって感じが強かったからね。それがなかったらどうなってたかわからない。

古市 バンドをやめることをイメージしてないというか、常に前を向いてきたわけですよね、40年間。

山口 そのうちになんとなく強くなっただけで(笑)。

古市 だからHEATWAVEの新譜を聴いてさ、「Blink=40年間が一瞬の瞬きだった」って言い切れるのは、過ぎたことはどうでもいいってどっかに置いてこれるからだっていう。やっぱり前しか向いてない人の強みだと思うんだよね。俺も35年間、やっぱり一瞬の瞬きだもんね。これが途中に活動休止が5年とかあると、ちょっと違うと思うんだ。ずっと前だけ見てやってるというのはあるよね。

山口 とりあえず目の前の今日を全力でやる以外、それを繰り返すこと以外やることがなかったというか。

古市 それは深いなと思ったよ。

山口 そしたら40年なんて瞬きの一瞬みたいなもんで、「人生は短い。やばい!」みたいな(笑)。

細海(魚)先輩が、あそこでギターソロ弾けって言ったの。そう言ってくれるバンドのメンバーって、いいよね(山口)

古市コータロー 山口洋 エンタメステ-ション特別対談

古市 それってなかなか言えないよ。わかる人も深いよ。でもホント、そうなんだよ。アルバムの話をもうちょっとさせてもらうとですね、聴かせてもらって、全部かっこよかったんだけど、特に「コンプライアンス」っていう曲のギターソロにやられました(笑)。かっこよかったなあ。ここで終わるかと思ったら、また倍行きましたからね。

山口 あれね、細海(魚)先輩が、あそこでギターソロ弾けって言ったの。俺は嫌だったの。俺、ギターソロなんかしたくないって言って。そうしたら細海先輩から、「いやいや、洋。ファンは望んでるから、倍、弾きなさい」って言われた。

古市 あそこね、よかったよ。ギターソロが倍で、俺も「オッ」と思ったもの。

山口 俺は嫌々弾いてたんだけどなぁ(笑)。

古市 そんな感じしなかった。ノリノリで弾いてるような気がしたけど(笑)。

山口 いやいやいや(笑)。

古市 自転車乗りながら聴いてたんだけど、ちょうどあそこでペダルがキュってきたもんね。すごいかっこよかったです。

山口 (笑)ありがとうございます。

古市 でもギタリストとして、嫌だなって思うのもわかる。俺もいっつもギターソロとか弾きたくないから。いらないんじゃないって。

山口 でもレコード買ってくれたファンがさ、「山口のギターソロはないのか」って思うことを、魚先輩はレコーディングしててわかってて、「弾きなさい。倍弾きなさい」って。そう言ってくれるバンドのメンバーって、いいよね。俺がプロデューサーだったらギターソロはないもん。

我々2人の共通点は、ギターがアウトプット。全部をインプットしてギターを弾いてるわけだから普段の“ライフ”が大事(古市)

古市コータロー 山口洋 エンタメステ-ション特別対談

2人はティーンエイジャーの頃、「バンドマンになりたい」って思ってたけど、何10年もやるとは思ってなかった?

山口 思ってない、思ってない。

古市 そんなこと考えないよ。

山口 「27歳ぐらいで死ぬんだろうな」みたいな感じでやり始めたわけだから。

古市 そうそう。

なんで?(笑)。

山口 ジミヘンとかジャニスとか、天才は27歳で死ぬのに、俺はなんで死なないんだろうと思って、「あれ?」みたいな。

「まだ生きてるぞ」的な。

山口 でもこの歳になってコータローくんを見てて思うのは、別に音楽のことよりも、大事なのは総合的人間力だから。総合的な人間力が、ギターを持って、イタコのように音楽を奏でていくわけで。それを人が見て感動するわけだから。乗り移ってるものが、ギターから出てくる。そういうのは、ライブを観ててすぐわかっちゃう。それが音楽のいちばんすごいところ。 

古市 我々2人の共通点は、ギターがアウトプットっていうとこでしょ。だとすると、この酒の一杯にしても、さっきの撮影にしても、その全部をインプットしてギターを弾いてるわけだからね。だから普段の“ライフ”が大事。昔は憧れとか、そういうほうが強かったわけじゃん。今はあんまそういうのがない代わりに、普段のライフが大事だもんね。

山口 さっきの撮影で、コレクターズの聖地のような場所から池袋を見下ろしてると、昭和から令和に至るまでのいろんなものがそこに現実としてあるから、うお〜って思うよね(笑)。

古市 あの場所は池袋で撮影すると、行きたがる人が多い。なんか絵になるんだよな、あそこ。

山口 確かに。

古市 ずっとあそこで撮ってるから、「太陽にほえろ!」のあの新宿が変わっていく感じと一緒だよ。

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