LIVE SHUTTLE  vol. 378

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和楽器バンド まさしく“新章”という言葉に相応しいツアーファイナルの夜を振り返る。

和楽器バンド まさしく“新章”という言葉に相応しいツアーファイナルの夜を振り返る。

和楽器バンドJapan Tour 2019 REACT-新章-
2019年11月23日 横須賀芸術劇場 よこすか劇場

9月1日にスタートした和楽器バンド約1年半ぶりの全国ツアー『和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT〜新章〜』が、11月23日に神奈川・横須賀芸術劇場 よこすか劇場でファイナルを迎えた。会場には、メンバーのコスプレや和を取り入れた格好のファンが数多く集まり、グループごとに写真を撮り合うなどしていて、彼らがいかにこの日を待ちわびていたかが伝わった。そんなファンの気持ちに応え、新旧の名曲16曲を披露した和楽器バンド。移籍に伴う憶測や不安を完全に払拭し、新たな門出を祝う華やかで力強い一夜になった。

一騎当千のメンバーによる迫力の演奏で不安を払拭

「Overture〜ReAct〜」に合わせて、ビジョンにメンバーのシルエットが映し出されると、一斉に歓声が沸いた会場。気になる1曲目は、1stシングルの表題曲にもなった「雨のち感情論」だ。和のサウンドに現代的なメロディと詞の世界観が合わさった楽曲で、リズムに合わせて観客は、紫のペンライトを揺らしながら<オイオイ>とかけ声をあげる。<星座>という歌詞になぞらえて、バックには宇宙の映像が映し出され、壮大でロマンチックな景色が目の前に広がった。続けて、デビュー作『ボカロ三昧』に収録の2曲で観客を沸かせた。まずは、尺八の音色で始まる「天樂」。しっとりと艶のあるボーカルに対して、激しい演奏が魅力の楽曲。ステージの中央では、ボーカルの鈴華、尺八の神永、ギターの町屋がピラミッド形態に並んで魅せる。そして、軽快なシャッフルビートのナンバー「吉原ラメント」では、メンバーが縦横無尽にステージを動きまわり、鈴華は和傘を開いてくるくる回しながらパフォーマンス。<吉原今日は雨>という歌詞を<横須賀今日は雨>と、会場にちなんで歌詞を変えて歌うと、客席からは大歓声が響いた。

今回のツアータイトルに付けられた『REACT』は、「再び行動する」といった意味を持つ。レコード会社を移籍、新事務所を設立、それによって心機一転活動していくことを決意し付けられたもの。この移籍等に伴い活動に空白期間が生まれ、今後の活動に不安を感じたファンも少なからずいた。鈴華自身も、今年はツアーができないのではないかという不安にも襲われたと言う。しかし「スタッフやファンのみなさんのおかげで、こうして無事ツアーを行い、ファイナルを迎えることができました」と、感謝の気持ちを表した。その上で「スタッフ一同、気合いが入っている。今日という日は今日だけ。最高の日にしよう」と叫んだ言葉は、客席だけでなく自分たちにも向けているようで印象的だった。

それぞれが、一騎当千のプロフェッショナルであるメンバー。楽器を自在に操りながら、和とロックが融合した圧倒的なサウンドを次々と聴かせて、さらにパワーアップしていることを見せつけた。2016年に武道館で初披露された「Strong Fate」では、洋楽のヘヴィロックのようなスケールの大きさで、怪しくも儚い世界観を魅せて聴かせる。「鏡花水月」では、それぞれの楽器がソロを繰り出し、鈴華がその中で詩舞を見せ、こぶしの効いたフェイクを聴かせて会場を沸かせた。また「月に叫ぶ夜」では、切ないメロディを歌いながら、満月を背に鈴華が刀を振るうパフォーマンスで観客を圧倒した。大正ロマネスクといった雰囲気のジャジーなサウンドが広がる「シンクロニシティ」では、鈴華と町屋が、男女の会話のようにデュエットで聴かせ、会場はまるでダンスホールといった、モダンな雰囲気になった。また「極限双打」は、ドラムと和太鼓による連打バトルと、観客がリズムを口で歌うコール&レスポンスを繰り広げて会場を沸かせた。

新章に相応しい所信表明の意を伴ったステージ

ツアーを振り返ったMCでは、鬼気迫るような迫真の演奏から一転、メンバーの和気あいあいとしたムードで会場に笑いがこぼれた。この日の会場である横須賀はX JAPANのhideのお膝元で、ベースの亜沙は、地元のお巡りさんとX JAPANの話で意気投合したというエピソードを披露。箏のいぶくろ聖志からは、うしろの3人(箏、ドラム、和太鼓)の扱いが雑すぎるとの意見も飛び出す。笑いながら「デビュー6年、全国ツアーも6回目。ツアーを重ねるたびにこうやってお互いを知りながら、バンド感が上がっていく。それがツアーというもの」と、ピシャリと話を締めた鈴華はさすが。また、来年2月〜3月に両国国技館で『和楽器バンド 大新年会 2020』が開催されることを発表すると、相撲の寄せ太鼓や行司の呼び出しを即興で披露するというアドリブもあり、これには観客も手を叩いて喜びながら声援を送った。その『大新年会』については、「夏でも春でも、年に一回の大きなライブを“大新年会”と呼ぶのは、和楽器バンドらしいでしょ。“ドリカムワンダーランド”のように、“和楽器バンドの大新年会”を定着させたい」と言いながら、また会えることの喜びをファンと共に噛みしめていた様子だった。

後半は、一気呵成。タオル曲「雪影ぼうし」では、キャッチーなメロディとアッパーのサウンドで聴かせ、サビでの「回せ!」というかけ声で、観客が一斉にタオルを回してひとつになった。「暁ノ糸」は、ハードロック調のヘヴィなサウンドで聴かせる。そして最後は、「みんなで歌って踊りましょう。みんなの最高の声を聴かせて」と、「あっぱれが正義。」を披露した。ポップな曲調に合わせて観客は思い思いに踊り、手拍子を打ったり、<どっこい>などのかけ声をかかる。最後は手を左右に揺らしながら<ラララ〜>と大合唱し、まさしく大団円という言葉がぴったりの爽快さで本編を締めくくった。

圧巻だったアンコール。「Ignite」は、12月4日に移籍第一弾としてリリースするコンセプトEP『REACT』に収録された新曲で、流麗なメロディと艶のある歌声はそのままに、英語の歌詞とラップが絡む、和楽器バンドの新境地。アッパーのヘヴィなサウンドで、間奏では各楽器のソロが立て続けに繰り出される。和楽器バンド流ダンスチューンといった雰囲気で、会場には無数のレーザー光線が走り、和楽器バンドの新たな可能性を指し示してくれた。そしてラストには、和楽器バンドの代名詞である「千本桜」を、会場全体で合唱した。蜷川べにの三味線ソロにも歓声が沸き、銀テープが発射されるなどの演出も相まって、会場は桜吹雪が吹き荒れるような華やかさで包まれた。

まさしく“新章”という言葉に相応しい、決意表明を込めた新曲と、和楽器バンドの始まりと言える人気曲を届けたアンコール。鈴華からは「音楽は、夢とか世界共通のいろいろなものが詰め込めるもの。これからは音楽を楽しみ、しっかり届けていきたい。更なる進化を遂げたステージをお届けしていきたい」と、力強い言葉も聞くことができた。彼らの気概に満ちた演奏には、これまでの和楽器バンドの魅力を残しながら、どんな困難にも屈せず新たな挑戦を続けていくという、所信表明の気持ちがにじみ溢れていた。

文 / 榑林史章 撮影 / 上溝恭⾹

和楽器バンドJapan Tour 2019 REACT-新章-
2019年11月23日 横須賀芸術劇場 よこすか劇場

セットリスト
Overture~ReAct~
1. 雨のち感情論
2. 天樂
3. 吉原ラメント
4. 蜉蝣
5. Strong Fate
6. 細雪
7. 鏡花水月
8. 月に叫ぶ夜
9. なでしこ桜
10. シンクロニシティ
11. 極限双打
12. 雪影ぼうし
13. 暁ノ糸
14. あっぱれが正義。
(アンコール)
15. Ignite
16. 千本桜

和楽器バンド

詩吟、和楽器とロックバンドを融合させた新感覚ロックエンタテインメントバンド。
2014年4月にアルバム『ボカロ三昧』でデビュー。
2015年に発売したセカンドアルバム『八奏絵巻』はオリコン週間ランキング初登場1位を獲得し、第57回「輝く! 日本レコード大賞 企画賞」を受賞。
また国内外において精力的にライブを行い、2016年にはデビュー1年9ヶ月にして初の日本武道館公演開催、
海外においては北米単独ツアーを開催し、ワールドワイドに展開。
2018年には5thアルバム『オトノエ』が第60回「輝く! 日本レコード大賞 アルバム賞」を受賞。
2019年にはさいたまスーパーアリーナ2days公演を成功させ、今最も注目すべきアーティストである。

オフィシャルサイト
https://wagakkiband.com

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