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ホンモノのRPG『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』新要素は前作をどう変えたのか!?

ホンモノのRPG『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』新要素は前作をどう変えたのか!?

JRPG(日本製ロール・プレイング・ゲーム)を遊ぶとき、“お気に入りのヒロイン”がいるかどうかというのは筆者にとって重要な問題だ。見た目も性格も好みの萌えヒロインがいるとき、そのRPGの面白さは何倍にもなる。そんな偏った持論を持つ筆者だが、『ペルソナ5』を遊んだときはパーティメンバーのなかに“お気に入り”を見つけることができなかった。そこで、サブキャラクター的な位置づけではあるが、ちょっとロックな雰囲気がたまらなくセクシーな“武見妙”先生に入れ込んでプレイしていたのだが、メインキャラクター的な位置づけではないためのめり込むのは難しかった。『ペルソナ3』では岳羽ゆかり、『ペルソナ4』では久慈川りせというお気に入りのヒロインがいたのだが、それが途絶えてしまった。これは筆者にとってあまりにも痛手だった(レビューで、「お気に入りのヒロインがいないからつらかったです」とは書けなかったから、当時この作品に関するレビュー依頼は断った)。
そんな自分勝手な事情で『ペルソナ5』は傑作だが、自分の心を打つゲームではないという一方的な位置づけだったのだが、2019年に発表された『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』の情報を見てテンションが変わった。オリジナル版にはなかった三学期が追加され、新キャラクターも増えているし、システム面にもいろいろと変化があるらしい。この手の完全版的な作品は『ペルソナ3』以降でもたびたび見かけるのでそう驚かなかったが、追加される新キャラクターの“芳澤かすみ”という女の子が、とてつもなく可愛い。見た目良し、喋り良し、なんだか優等生キャラクターっぽいところも良し。やっぱりJRPGには、自分なりの“萌えヒロイン”が必要なのだと頷きながら、筆者は再びコントローラーを手に取ったのだった。

文 / 浅葉たいが


魅力的な物語とそれを支える仕組みや描写

芳澤かすみの話をするまえに本作の概要を説明しよう。すでに『ペルソナ5』を遊んでいる人には不要のものだろうが、本作は“初プレイ”の方に向けた作品でもあるからだ。ナンバリングタイトルを目にすると、「1作目から遊ばなくて大丈夫か」と思う方がいるかもしれないが、『ペルソナ』シリーズはどのナンバリングから遊んでも話に置いていかれることはない。小ネタ的に小さなリンクが作品間で見られることはあるが、それはゲームをディープに語る際の材料になる程度のものだ。本作をプレイして気に入ったら、他の作品も遊んでみるというスタンスで臨めばいい。

ペルソナ5 ザ・ロイヤル エンタメステーションゲームレビュー

▲『ペルソナ』シリーズは“学園もの”である。特に『ペルソナ3』以降は学校生活パートのボリュームが増し、アドベンチャーゲームとRPGのいいとこ取りをしたようなプレイフィールを味わえる。プレイ時間が長いのも特徴で、初回プレイはクリアまでに50時間〜100時間ほどかかるだろう

主人公たちは昼間に普通の高校生として学校生活をおくり、放課後は都会を騒がす“心の怪盗団”として活躍する。心の怪盗団のターゲットは、歪んだ欲望を抱く“大人”たち。歪んだ欲望が生んだ“パレス”と呼ばれる異世界に潜入し、戦闘や罠などの障害を切り抜けながら大人たちを“改心”させるのが目的となる。物語序盤では、この“改心させる”という行為が正義として描かれるが、中盤以降では“人の心を変えてしまう”ことの是非が問われるシーンもある。ただの勧善懲悪ではないシナリオはプレイヤーに問いかける要素も多く、すらすらと読み進めればエンタテインメントとして楽しめ、立ち止まって考えればちょっと重いテーマが顔を出してくるという絶妙な構成になっている。『ペルソナ3』以降の目玉であるプレイヤーを驚かせるサスペンス的な仕掛けは今作でも健在。本作が初プレイとなる方は情報をあまり仕入れずにプレイすることをおすすめしたい。

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▲学生パートには、仲間たちと語り合うシーンも多数存在する

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▲こちらは、心の怪盗団として歪んだ欲望を持つ大人を改心させるため、 “パレス”に乗り込んでいるシーン

学園生活にあたるパートはアドベンチャーゲーム形式に近く、学校や街を散策し、さまざまな人と交流していくことになる。お目当てのヒロインに積極的に会いに行ったり、男同士の友情を深めるのもいい。また、主人公自身の学力や魅力といったステータスをアップさせるために、勉強やトレーニングをするのもいいだろう。能力値によってこちらに好意を寄せてくれる人物もいるので、“自分を磨く時間を作りつつ、人との交流も積極的に行う”のが本作の学園生活のセオリーである。仲を深めたい人物とのイベントを進めると、“コープ”と呼ばれる絆を可視化したものが発生する。コープレベルが上昇すると戦闘に関係する項目にもボーナスがかかるなど、さまざまな恩恵を受けられる。日常生活を充実させるとバトルがより楽になるという仕組みがあることで、一見溝がありそうな学園生活パートとパレスの探索パートが、ゆるく結びついているというのが本作の面白いところだろう。

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▲学園生活パートで、特定のキャラクターと仲を深めると……

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▲コープが築かれ、以降は仲を深めるごとにコープランクが上昇する。ランクは最大で10まで用意されており、ランクによって戦闘や探索に役立つ“アビリティ”が解放されることも。戦ってレベルを上げるだけが成長ではないのだ

また、学園生活パートでは、アトラスの持ち味である“街の描写”も本作の大きな見どころのひとつとなる。なかでもさまざまな文化が交差する渋谷の渾沌とした雰囲気は、実に見事に描かれている。歩いているだけで楽しく、何かを見つけるとつい調べてみたくなってしまう。今作から新たに行けるようになった吉祥寺の街も商店街などが細やかに描かれており、路地にちょっと入ったところの雰囲気などは絶妙な出来栄え。ついつい買い物や探索で時間を使ってしまう。本作に登場する街は東京の実際の街をベースにしているものも多いので、クリア後はスマートフォンやカメラを片手に“舞台探訪”を楽しんでみるのもいいだろう。

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▲渋谷セントラル街。アトラスの街を描くセンスは特筆すべきものがある。引き込まれる色合いと、そこを歩く人たちの息遣いが伝わるような描写には脱帽だ

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▲こちらは新宿。通りの奥に広がる華やかなネオンの色と、手前の開けた空間のコントラストが見事だ

探索とダンジョンのボリュームも膨大

パレスはダンジョン形式になっており、最深部には“改心”のターゲットとなる敵が待ち構えている。ダンジョンの構造はそれほど複雑ではないものの、気を抜くと敗北してしまう強敵やほどよい頭の体操になるギミックも用意されているので、適度な緊張感をもってプレイすることができる。また、パレス以外にも歯ごたえのある“メメントス”というダンジョンが用意されているため、本作における探索と戦闘を楽しめる時間はかなり長い。

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▲個性豊かなパレスが複数用意されている。『ペルソナ』シリーズにはランダム生成型のダンジョンもあったが、今回は固有マップとなっている

バトルは、敵の弱点属性を突くことで再行動の権利が得られるワンモアバトルを軸にしている。弱点を突くことで戦闘を有利に進めるシステムは近年のアトラス製RPGの軸にもなっており、『ペルソナ5』でさらに熟成され、より戦略的なものになっている。コマンド選択式RPGというと、とりあえずレベルを上げてごり押し気味にクリアするという方法で先へ進むことができるが、本作の場合はこの属性相性をうまく活かせば、いわゆる適正レベルではないダンジョンや敵も攻略できる。主人公はタイトルにもなっている“ペルソナ”(自分自身の分身。例えると守護霊のようなもの)を付け替えることで、さまざまな攻撃を繰り出すことができる。弱点属性を突いて行動不能のうちに集中攻撃をかけたり、回復や補助をかける時間を稼いだり。戦術がうまくハマって難所を抜けたときのしてやったり感はたまらない。

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▲敵の弱点を突くことで、再行動の権利を得られるワンモアバトル。あらかじめ複数の属性スキルを用意しておき、敵によって使い分けるのがセオリーとなる

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▲ボスは特殊な攻撃を多く備えるため、初見は苦戦必至。スキルやアイテムなどを駆使して撃破を狙う

『ペルソナ5』には難度を調整する機能があり、難度ノーマルで遊ぶぶんにはそれほど難しいゲームではない。2000年代前半までのアトラス製RPGというと、“刺激的な世界設定と理不尽かつ凶悪な難度が混ざり合った作品”が多かったように思うが、最近は難度選択がつき、ユーザーフレンドリーな説明もゲーム内で行われるなど遊びやすくわかりやすい作品が増えた。しかし、難度を上げてプレイすると、昔ながらの理不尽を味わえるバランスへと変貌し、筆者のようなひねくれたプレイヤーにはこれがたまらないご褒美となる。この難度を上げた状態でクリアを目指すと、属性を活かすという戦術がより重要になるため、パーティメンバーの構成や主人公の所持するペルソナのラインアップで悩むことになる。これが歯ごたえのあるパズルのようで、うまくハマって気持ちよくクリアできたときの爽快感はかなりのものだ。

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▲ペルソナは敵を説得して手に入れるほか、手持ちのペルソナを合体させて入手することもできる。手持ちのペルソナが弱く感じてきたら、合体して新しいペルソナを生み出すというのが基本的な攻略法になる

『真・女神転生』シリーズと『ペルソナ』シリーズを過去作から遊んできているプレイヤーであれば、お馴染みの敵が本作には登場する。このため、最近の作品では“こいつの弱点はこの属性だろう”という過去作の経験に基づく攻略が通用することもあったのだが、本作の場合は過去の敵であっても弱点属性が異なるものに設定されているし、ボス敵は新鮮味のある攻撃や耐性を備えている。未知の敵との戦いという興奮が進行上に用意されているので、初見のプレイは緊張感に溢れている。

新しくなった部分をどう受け止めるか

本作は、オリジナル版に数々の追加要素を加えている。シナリオ面では新キャラクターや新コープ、そして新しいエンディングも追加されている。シナリオ的な変化が実感できるのはゲーム後半からだが、前作のエンディングとは全く異なるドラマが描かれる。新キャラクターの芳澤かすみは、新キャラクターながらメインヒロインのような魅力を振りまいていく。追加された三学期に進むためには、ゲーム内でヒントが提示されるいくつかの条件を満たす必要があるのだが、ここではオリジナル版では語られなかったあるキャラクターの秘密も語られる。三学期はオリジナル版を遊んでいるプレイヤーほど驚く内容になっているので、購入した人は是非こちらのルートを遊んでみてほしい。

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▲芳澤かすみは序盤からイベントなどで登場する

バトルやシステム面での変更点も実に多岐に渡る。戦闘の要となるペルソナには弱点を克服するスキルを習得できる“特訓”や、属性攻撃などをさらに強化する“特性”という要素が追加された。さらに、ベルベットルームではペルソナに“お香”を使うことによって、パラメーターを上昇させることが可能になった。これらの要素が合わさることで、オリジナル版以上にペルソナ育成の自由度が上がっており、お気に入りのペルソナを満足ゆくまで鍛えるという遊びかたも可能になっている。

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▲こちらがペルソナの“特性”。もともと所持しているスキルをさらに強化するものが多い

本作では仲間にも新たなペルソナが用意されているため、オリジナル版以上に強力なスキルを使えるようになる。スキルが付与された“アクセサリー”を装備すると、使用できる行動がさらに増えるのもバトルにおける大きな変化だろう。オリジナル版の仲間キャラクターは、攻撃属性の幅がある程度限定されていたが、アクセサリーの追加によってさまざまな状況に対応できるようになった。難度を引き上げた状態でのプレイでは、このペルソナと仲間まわりで追加されたシステムをやりくりすることになる。今後ダウンロードコンテンツ(DLC)で、『ペルソナ3』や『ペルソナ4』の主人公と戦えるようになるなど、パーティを鍛えることに見合う強敵の存在も示唆されている。

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▲バトル中の新要素のひとつ“ショウタイム”は、ふたりのキャラクターで繰り出す合体技のようなもの。威力が高く、トドメなどに活用できる

もともとクオリティの高い『ペルソナ5』が新生となった本作は、傑作であることは間違いない。『ペルソナ5』初プレイの人が本作を遊べば、充実したゲーム体験を手にすることができるだろう。しかしオリジナル版をプレイした人からすると、ちょっともやもやする部分があるかもしれない。筆者は新キャラクターの芳澤かすみがいたことで最後までテンション高く遊ぶことができたが、オリジナル版に対する本作の“完全版”という位置づけは手放しで褒められない。追加要素は確かに多いが、これらの新要素にフルプライスの価値を見出せるかどうかは、プレイヤーによって異なるからだ。
まず、ゲーム序盤から感じられる新要素というのがあまり派手なものではなく、システム的な変更点やユーザービリティ向上の延長線上にあるものに触れてもそれほど大きな感動はない。新規に追加されたイベントなども序盤や中盤は、“メインシナリオに影響を与えないもの”として作られている。新シナリオの方向性は賛否両論を呼ぶであろう尖ったもので刺激的だが、かなり後半からの分岐となるため、物語に目新しさを感じるまでに相当な時間がかかった。筆者の場合は、攻略情報を見ずにプレイしていたため不安になる時間も長かった。
後半まで進めれば再プレイでも面白いが、それまでが遠いのは問題だろう。なにせ本作は特大ボリュームのRPGだ。普通にプレイしていたら50時間以上かかる作品で、それをやり直すにはスパイスが少なすぎる。イベントスキップ機能もそれほどスピーディではないため、周回プレイには不向きという弱点もある。オリジナル版とのセーブデータに互換性を持たせたり、それが無理ならもうちょっと再プレイの人に配慮した遊びかたも提供してほしかった。アトラス製RPGの一部作品などで提供されている数時間でレベルMAXにできるDLCなどは、このゲームにこそ向いていたように思う。

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▲こちらは新要素の“マイパレス”。ミニゲームを楽しんだり、おまけ的な収集要素のあるコンテンツに取り組める

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▲オリジナル版のパレスと大きく構造は変わらないが、新アクションの“ワイヤーアクション”を使える場所が増えている

発売から年月が経っていたり、ハードを超えた作品のリマスターやリメイクならともかく、PlayStation®4で出たゲームが、同じプラットフォームでフルプライス販売されるというのはちょっと寂しい。コアなアトラスファンや『ペルソナ』ファンほどオリジナル版を素早く買い、本作も手に取ろうとするのだから、フルプライスにするのなら両作品を持っているユーザーにもっと特典があっても良かったのではないだろうか。

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▲筆者は限定版にあたる『ペルソナ5 ザ・ロイヤル ストレートフラッシュ・エディション』を購入した

以上が、オリジナル版も遊んでいた筆者の正直な感想だが、本作がそうした“オリジナル版のあとに最初から遊ぶプレイヤーの事情”を抜きにして初めて遊ぶプレイヤー向けと考えれば、紛れもない傑作であることは間違いない。シナリオやキャラクター、世界設定が好みかどうかという部分を別にしても、ボリューム、洗練されたデザイン、戦闘の楽しさ、限りなく親切なユーザーインターフェースなど、どれも一級品のRPGである。
最近、日本ではこのクラスの大作RPGというのがめっきり減ってしまったように思う。アトラスは数少ない、大作を作り出せるメーカーのひとつだ。まだ『ペルソナ』に触れたことがないという方は是非この機会に、ホンモノのRPGである本作をプレイしてもらいたい。

フォトギャラリー
ペルソナ5 ザ・ロイヤル ロゴ

■タイトル:ペルソナ5 ザ・ロイヤル
■メーカー:アトラス
■対応ハード:PlayStation®4
■ジャンル:RPG
■対象年齢:15歳以上
■発売日:発売中(2019年10月31日)
■価格:通常パッケージ版・ダウンロード版 各8,800円+税


『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』オフィシャルサイト

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