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世界中が待ち続けた『シェンムーIII』18年ぶりの楽しさとは!?

世界中が待ち続けた『シェンムーIII』18年ぶりの楽しさとは!?

不思議なことに、この日が来たのをいまだに信じられない気持ちでいっぱいである。見ることはできないと思っていた世界と先に待ち受けるストーリーの体験。そして、情景や感情をプレイヤーに疑似体験させる主人公の“彼”をこの手で一歩、また一歩と動かす感触。
ある日を境に物語の進行がピタリと止まった、超大作アクションアドベンチャーゲーム『シェンムー』。その最新作『シェンムーIII』が、18年という時間を経て発売された。なぜこのゲームはそれほどまでにファンを魅了するのだろうか? 『シェンムーI&II』のレビューを前後編にわたって紹介した過去記事では、横須賀や香港の街並み、人々の生活を再現したことによる“ゲームにおける自由度の拡大”と、主人公・芭月涼の行く末がどうなるのかという“ストーリー性の高さ”を重点に挙げた。はたして今回の『シェンムーIII』では、ゲームを通じて我々にどんな感情を抱かせてくれるのだろうか? 今回は、前作からの変更点を交えつつ紹介したい。

文 / クドータクヤ


時間が進むまでの前日譚

まず『シェンムーIII』のゲーム内容を話すまえに、語っておきたいエピソードがある。思い返せば4年まえのことだ。2015年6月16日、アメリカで開催されたコンピューターゲームの見本市“E3 2015”のなかで開かれたSony Computer Entertainmentのプレスカンファレンス。その壇上で『ファイナルファンタジーVII』のフルリメイクが発表された直後、まさかの事態が起きた。会場内のスクリーンに映し出される桜吹雪を目にし、中国の弦楽器・二胡が奏でるメインテーマのイントロが聴こえた瞬間、全身に鳥肌が立った。『シェンムーIII』の発表、それこそが“まさか”の正体だ。カンファレンスの模様をスマホで視聴しながら出社途中だった筆者は、電車内で「へぇぇあっ!?」と情けない声を出してしまい、周りの乗客から変な目線を向けられた気まずさに次の駅で途中下車したのもいい思い出だ。

続いて『シェンムー』シリーズのディレクターである鈴木裕氏の口から、「Kickstarterを使用した『シェンムーIII』の開発」と語られると、出社しても溜まっている原稿には目もくれず、すぐさまKickstarterの登録を済ませて100ドルを出資した。各国のファンから送られた出資額は募集開始から1時間42分で100万ドルを超え、その日のうちにファンディングゴールの200万ドルに到達。“短時間で最も100万ドルをクラウドファンディングで集めた”というギネス記録をおまけにつけるのだから、どれほどの人が『シェンムー』を待ち望んでいたのかおわかりいただけるはずだ。そして、現在までに約7万人ものバッカーと633万3,295ドル(約7億8,500万円)という額がバックアップした『シェンムーIII』だが、この手で遊べるようになるのがこれまた長かった。当初予定されていた2017年末の発売は2018年下半期に順延。その後、2019年8月27日から11月19日……と、あと一歩のところで手が届かないもどかしさには不思議と怒りや呆れを感じることなく、『シェンムーIII』への期待感が沸々と高まるいい材料となっていった。そしてついに、18年ぶりに涼を動かせたことで、これが夢ではなく現実であると実感し、今作の舞台である中国・桂林にある白鹿村へと足を踏み出していった。

シェンムーIII エンタメステーションゲームレビュー

▲『シェンムーII』のエンディングがプロローグとなる本作。この洞窟から先にどんな展開が待ち構えているのか……ただ予想するしかなかった世界がようやく開かれていく

シェンムーIII エンタメステーションゲームレビュー
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▲ムービーが終わり、涼を操作する待ち焦がれていたパートに移行。この一歩を踏み出すことをどれだけ待ち望んでいただろう

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▲前作を未プレイの人でもストーリーがわかるように、約5分間のダイジェストムービーが鑑賞できる。可能であれば、ぜひとも『シェンムーI&II』で実際にプレイしてみてほしい

変わったこと、変わらないこと

『シェンムー』のストーリーは、目のまえで謎の男に父・巌を殺された敵を討つべくその背中を追いかけ、『シェンムー 一章』では横須賀、『シェンムーII』では香港と中国・桂林を舞台に、芭月家に隠されていた龍と鳳凰の“鏡”の謎に迫るというもの。『シェンムーII』の終盤でメインヒロイン・莎花と出会いを果たし、踏み入れた洞窟のなかに巨大な龍と鳳凰の鏡を見つけ、謎の核心にグッと迫る……という場面でエンディングを迎えた。『シェンムーIII』では、行方不明になった莎花の父親を探す場面から物語は幕を開ける。『シェンムーII』で終了し、いくら頑張っても見ることができなかった”その先のストーリー”をひとつひとつ目のあたりにするのは、18年もの時間を感じさせない新鮮さだ。

これまでに公開されているトレーラームービーを見ても明らかだが、ドリームキャストとは比べ物にならないほど高グラフィックとなっており、鈴木裕氏が本来の『シェンムー』で表現したかった世界に時代がようやく追いついたような印象だ。序盤の舞台となる白鹿村は非常に狭いように見えるが、この村に突如表れた“ゴロツキ”たちの行方や父・巌のことを知る武術家たちと出会うたびに、涼の行動範囲はどんどん広がっていく。歩く、走る、人に話しかける、アイテムを買うといった操作自体は良くも悪くもこれまでの『シェンムー』とまったく同じだ。オープンワールド形式のゲームが数多く存在する昨今、新規プレイヤーにとっては”古い”と思われてしまうかもしれないが、ファンや既存プレイヤーであれば「これこそが『シェンムー』だ!」と安心できる部分だ。

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▲村人に話を聞き、小さな手がかりから情報を収集。初めはそっけない態度を示す村人ばかりだが、莎花とともに行動することで次第に心を開いていく

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▲岩山や川に囲まれた自然豊かな白鹿村が序盤の舞台。村へ渡るために掛けられた“花橋”は、なにやら鏡の秘密とつながっているようだが……

アイテムの購入やおなじみのグルッパ(ガチャガチャ)も健在しているが、大きな変化は”購入できる食べもの”が大幅に増えたという点だ。前作でも買うことはできたが、野良猫にあげるためのエサや限定フィギュアを獲得できるくじ引き目的に過ぎなかった。しかし本作では生野菜、饅頭をはじめ、次の舞台となる大きな街ではケーキや串焼きなど、店の数だけ種類が豊富に用意されている。これは、涼の体力ステータスが空腹度と共有されるようになり、リアルタイムに減少するだけでなく、ゲージがなくなると走れなくなるシステムが新たに採用されたことによるものだ。過去作において「涼は食事をしない」と突っ込まれたことによるものなのか、はたまた鈴木裕氏が当初から『シェンムー』で予定していたものなのか……どちらにせよ、飲食店を食べ歩いて制覇するというやり込み要素や新たな楽しみかたが増えたといえるだろう。

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▲『シェンムー』のお金稼ぎといえばアルバイト。本作では新たに薪割りが加わり、制限時間内に割れた薪の数で賃金が変わる。薪の芯を捉えて割ると、懐かしいBGMが流れてくることも

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▲一攫千金が夢ではないギャンブルも健在。『シェンムーII』でもおなじみの落とし玉をはじめ、丼のなかで転がした銀球の停止位置を予想する花鳥風月、1着を予想する亀レースが新たに加わっている

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▲アルバイトとギャンブル以外にも村のいたるところに自生しているさまざまな生薬(薬草)を摘んで集め、雑貨屋さんに買い取ってもらうというお金の稼ぎかたもできる。セットで揃えると高額になるほか、新たな技を覚えるための技書と交換も可能だ

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▲新たな要素として加わったのは、各地の池や釣り堀での魚釣りだ。釣った魚は釣具屋で買い取ってもらうことができ、種類や大きさによって金額が変動。グルッパで集めたルアーを使うこともできるので、ストーリーそっちのけでコレクションする楽しさもある

シェンムーIII エンタメステーションゲームレビュー シェンムーIII エンタメステーションゲームレビュー
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▲買い物以外でお金を使う目的といえばミニゲーム。白鹿村に唯一あるゲームセンターには、残念ながら『スペースハリアー』や『アウトラン』は設置されていないが、もぐら叩きやドライブゲームといったエレメカを再現したものが用意されている。大きな街にはビデオゲームもあるようだが……?

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▲ミニゲームと同じく「『シェンムー』といえばこれ!」と欠かせないのがグルッパ。『ソニック』をはじめとするキャラクターたちは不在だが、そこに置いてあるだけで回さずにはいられないのがコレクターの性……

もうひとつの大きな変化は、先述したバトルシーンにおけるコマンドの入力だ。もともと、3D対戦格闘ゲーム『バーチャファイター』シリーズの流れを汲んで制作された『シェンムー』は、方向キー+ボタンの組み合わせによる技入力が採用されていた。本作ではボタンの押し順による技入力に変更されており、格闘ゲームが苦手な人でも楽しめるように工夫されている。いまでも指先が覚えているコマンドで戦えないのは些か寂しい気もするが、涼がこれまでの恩師や友人から教わった技を覚えているあたりにホッとする。また、白鹿村にある道場の門下生や拳法家と組手(散打)をすることで技の熟練度と涼自身の攻撃力を上げる以外にも、各地に設置されている馬歩や寸拳で体幹を鍛え体力ゲージを増幅させることができる。なお、初回プレイではストーリーを進めたいあまりにトレーニングを怠るだらしない涼にしてしまい、バトルシーンで苦戦を強いられっぱなしだった。日々の鍛錬の大事さを知った次第……。

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▲悪さをする連中には拳をお見舞いするのが涼。「復讐のために拳を振るってはならない」と香港で教わったが、場合に応じてついつい荒っぽくなってしまう一面は変わらぬまま

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▲イベントムービーでは、表示されたボタンを瞬時に押すQTE(Quick Time Event)も健在。入力受付時間がかなり早いのでミスしがちだが、即ゲームオーバーにはならないのでご安心を

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▲体力が少ない状態でバトルシーンに移行することもあるので、常に万全を期しておきたい。なお、体力ゲージが一定以下だった場合は飲食できるシーケンスが挟み込まれるので、余裕があれば食べものの買い溜めをしておきたいところ

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▲軸がずれないようにボタンを適度に押して調整する馬歩や、ゲージをタイミングよく合わせる寸拳は非常に地味だが、何事も小さなことからコツコツとこなす重要さをあとで思い知ることになるだろう

グラフィックの進化やシステムの改良など、見た目も内容も現代的な仕上がりになった『シェンムーIII』。しかし、涼を動かす感触が変わっておらず、約20年以上まえでは見ることができなかった村や街を歩けるだけでもただただ楽しい。『シェンムー』を知らない人にとって、本稿は盲目的な信者の戯言に見えてしまうことだろう。ファンの心に消えない傷跡を残されても続編が出ると信じて18年間待ち続けることができたのは、芭月涼という青年がどのような結末を迎えるのかを見届けたい一心であることにほかならない。そのために微力ながらも支援できたことを誇りに思い、諸事情やしがらみで止まってしまった時計の針がふたたび動きだして形になったことがなによりも嬉しい。次回は、涼が出会うさまざまな人物や白鹿村の次に訪れる広大な港街など、ストーリーに重点を置いた内容で『シェンムーIII』の世界を紹介したい。

フォトギャラリー
シェンムーIII ロゴ

■タイトル:シェンムーIII
■メーカー:Deep Silver
■対応ハード:Play Station®4、PC
■ジャンル:アクションアドベンチャー
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2019年11月17日)
■価格:パッケージ版・ダウンロード版 各6,980円+税


『シェンムーIII』オフィシャルサイト

©Ys Net Original Game ©SEGA Published 2019 by Deep Silver, a Division of Koch Media GmbH, Austria.