Interview

メンバー2名が「卒業」を発表。きみコが語るnano.RIPEのこれから

メンバー2名が「卒業」を発表。きみコが語るnano.RIPEのこれから

今秋、ベース・アベノブユキとドラム・青山友樹のバンド脱退が発表され、2017年からはボーカル&ギター・きみコとギター・ササキジュンの2人体制になることが決まっているnano.RIPE。彼らは現在、10月19日にリリースされた5thアルバム『スペースエコー』を引っ提げ全国7ヵ所8公演のツアーを開催中だ。これが今の4人で行われる、“ラストライブ”。現在のバンドの状況やアルバムに込められた想いについて、きみコに聞いた。

取材・文・撮影 / 西原史顕


あたしはnano.RIPEのためなら、嘘もつく人間です

現メンバーでのラストツアーとなる“nano.RIPE TOUR 2016「ルミナナリー」”も終盤に入りましたね。

 5thアルバム『スペースエコー』の新曲たちがすんなりセットリストに馴染んでくれたなという手応えを感じています。たしかにこの4人でやる最後のツアーなんですけど、湿っぽくならずにいい意味で肩の力が抜けていて、一人ひとりが楽しくベストを尽くせています。ファイナルに向けて、もっともっと加速していくツアーになるんじゃないかと思いますね。

ベース・アベノブユキとドラム・青山友樹の脱退。初日のライブを観させていただきましたが、たしかに悲壮感はありませんでしたね。

 ぼくらはあえて「脱退」ではなく、「卒業」という言葉を使っているんですけど、nano.RIPEというバンドはある意味学校のようなところで、あたしとササキジュンが作った学校にふたりがやってきて、そこでいろいろ学んで、あたしとササキジュンも学ばせてもらって、巣立っていく時が来たという感覚なんですね。だから「元気でねー」と笑顔で送り出すというか、晴れやかな空気になっているんだと思います。 

とはいえ、決して軽い決断ではないですよね?

 そうですね。バンドとしてはふたりの意見を受け入れたかたちになるわけですけど、おそらく、ふたりはいろいろ悩んでいたんだと思います。あたしたちはふたりの考えを聞いて、ただ頷くだけでした。

バントとふたりは、どこですれ違ったのでしょうか?

 nano.RIPEって、あたしとササキジュンが作って長いことやってきたバンドで、その間、メンバーチェンジも数回繰り返しているんですけど、良くも悪くもあたしとジュンのバンドという側面があるんですね。ふたりはそれを信じて、nano.RIPEに入って一緒に音楽を作ってきてくれていたんですけど、一方で、ほかのバンドのサポートに入ったりする、いちプレイヤーでもあったんです。あたしとササキジュンにはnano.RIPEしかないんですけど、ふたりにはほかにも音楽に接する場があった。そんななか、nano.RIPEだけをやっていきたいあたしたちと、いちベーシスト、いちドラマーとしてもっといろんな音楽に触れて生きていきたいふたりの間に、ズレができてしまったのかもしれないです。

音楽人としての、生き方の問題ですね。

 もっともっとプレイヤーとして成長していきたいというふたりに対して、「nano.RIPEだけやってくれ」とは言えませんでした。なぜなら彼らがnano.RIPEに自分のベーシスト人生やドラマー人生を捧げるまでに至らなかったのは、あたしの力が足りなかったからなので。

それはちょっと、自分を責めすぎではありませんか?

 そうですね。今はそんなふうには考えていません(笑)。基本的に空気感の合う4人だったので、今も家族みたいに仲がいいんです。性格の不一致による別れではなくて、生き方の問題。遅かれ早かれこうなるのは必然で、ああ、ついにそういうタイミングが来たんだなと納得しています。だからでしょうね。「卒業」が決まってからアルバム『スペースエコー』のレコーディングに入ったり、ツアーの準備を始めたんですけど、ぎくしゃくすることもなく、いつも以上に普段通りというか、現体制のnano.RIPEとしてやれることは全力でやろうという雰囲気なんです。その空気をお客さんも感じるからこそ、今ツアーが湿っぽくならないんでしょうね。

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ササキさんとはどんな話をしたんですか?

 ジュンには改めて、nano.RIPEに対して「実際のところどうなの?」という質問をしました。すると「俺はnano.RIPEしかやらないよ」という返事があって、それは正直心強かった。nano.RIPEは何度かメンバーチェンジを繰り返してきたバンドですけど、その都度ゼロからスタートするのって、結構大変なことなんです。今後しばらくは、ふたりだけでやっていくことになると思います。思えば1stアルバムや2ndアルバムの頃は、いろんなミュージシャンの方々に叩いてもらっていたので、今度もあの頃のように外部の刺激をたくさんもらって、nano.RIPEの音楽の幅を広げていけたらと思います。

今の話を聞くと、余計に5thアルバム『スペースエコー』で歌われているストーリーが、バンドの現状と重なりますね。

 結果的にそうなりました。アレンジなどの制作はふたりの「卒業」が決まってからスタートしましたが、曲を作ったり歌詞を書いたりしていた段階では、まだこの話は出ていなかったんです。苦悩葛藤や出会いや別れといったテーマは、あたしが普段からずっと歌ってきたもの。それがたまたま今回の状況に重なったため、そういうふうに聴こえるんだと思います。

不安や葛藤から始まり、感情が爆発し、そして穏やかになっていく曲の並びが秀逸で。

 曲順については、そうかもですね。曲順は「卒業」が決まってから考えたので、意識していないと言ったら嘘になります。

序盤、「システム」にはバンドや自分自身に対する危機感のようなメッセージがありましたね。

 昨年はメジャーデビュー5周年という節目を迎えて47都道府県を周るツアーもやらせていただいたんですけど、5年前にデビューしたときのことを思い出すと、当時思い描いていた“5年後”はもっと上のところにあったんです。だから現状に対する悔しさみたいものが、正直あります。アニメのタイアップをいただいてリリースができて、ツアーも当たり前のようにやらせていただいていることに、甘んじているぼくらがいるのではないか。もっともっと上を目指さなきゃいけないのに、「わーい楽しいな」となってしまっているのではないか。悠長にやってる場合じゃないんだぞというのが、「システム」ですね。

先ほどもきみコさんはメンバーの「卒業」に対し、まずは自分を責めたとお話されていましたが、『スペースエコー』にもそのような部分が現れているような気がします。

 答えのないものに苦しんでいる部分はたしかにありますね。例えば「イタチ」という曲では、性善説と性悪説について考えているんですけど、結局それは、「死んでもわからない」と結論づけています。神様を信じたって仕方がない。自分の身に起こったことに対し、自分以外の何かに救いを求めるのは愚かなことで、そんなことをしている暇があったら、自分で自分のことを変えようとしなくちゃっていう。

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「システム」も「イタチ」も、受け止め方によってはかなり厳しい内容ですよね。

 他人を責めることは簡単なんですよ。でも何か思い通りにならないことがあったときに、人のせいにしてイライラするのがあたしは嫌いなんです。だったら自分の力が足りないと思ったほうが、楽になれて。

その結果、潰れてしまったりはしないんですか?

 あたしの場合は自分に厳しくというよりは、正直でありたいということなんだと思います。気持ちが落ち込んでいるときには、そういう音楽をやればいい。ライブでも悲しくて辛くてステージに立つのがやっとな状態なのに、そこで笑っていられる人のほうが気持ち悪いとあたしは思います。お客さんに「ああ、今日は何かがあったのかな?」と思われてもいいくらい正直になることで、初めて実感できることもあるんですよね。守っているつもりだったのに守られていたのはこっちだったなとか。

「ディア」ですね。

 これは「卒業」するふたりと、お客さんたちに向けたあたしの気持ちを正直に歌った曲です。ここには“ウソもつくよ”という歌詞がありますが、これはnano.RIPEというバンドを続けていく以上、つかなきゃいけない嘘もあるんだよという宣言です。実際、ぼくらはふたりの「卒業」を黙ったまましばらく活動してました。あたしはnano.RIPEのためなら、嘘もつく人間です。ただ、この「ディア」で歌っているような、みんなやメンバーがいてくれたからこそnano.RIPEはここまで来られたという気持ちは嘘じゃありません。今回の一件をただの美談で終わらすことは、あたしにはできませんでした。これが正しいのか間違っているのかはわかりませんが、あたしはそういう人間です。

ツアーも残りわずか。そして12月25日には追加公演の“nano.RIPE TOUR 2016 FINAL「スーパーノヴァ」”も行われます。

 まずはこの4人で作った音で、過去最高のツアーをやりたいです。今回に限って“次”はもうないので、このファイナルを必ず最高到達点にしたいと思っています。そしてそこから先は、それをさらに上回るものをあたしとササキジュンのふたりで作っていかなくてはならない。この4人で作った音があり、次の段階があるのは、今までもいろいろな方たちが加入して脱退して、すべてを積み重ねながら成長してきたnano.RIPEというバンドの歴史そのものです。今回の件もふたりとの別れを糧にして、次の新しいステージに向かって頑張るためのきっかけになったと思っています。だからそのためにも、残りの公演で悔いは残したくないですね。

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nano.RIPE

オフィシャルサイトhttp://www.nanoripe.com/