HEATWAVE結成40周年企画  vol. 4

Interview

HEATWAVEが結成40年目に見た風景。一瞬の瞬きの中に凝縮された現在過去未来を貫いて届けられるメッセージ。ロックの原点と究極が詰まったアルバムについて山口洋に聞く。

HEATWAVEが結成40年目に見た風景。一瞬の瞬きの中に凝縮された現在過去未来を貫いて届けられるメッセージ。ロックの原点と究極が詰まったアルバムについて山口洋に聞く。

HEATWAVE結成40周年企画第4弾
ニューアルバム『Blink』インタビュー

今年、結成40周年を迎えたHEATWAVEは、今、40th Anniversary Tour 2019を敢行中だ。彼らのアニバーサリー・プランのもうひとつは、オリジナル・アルバムの制作で、ツアー前半が終わったところでリリースされることになった。ツアーとアルバムはバンドという存在を証明する2本柱で、節目となる今年、彼らはそれを忠実に実行に移したのだった。
注目のニューアルバム『Blink』には、比較的短い曲が多い。そこで歌われる歌詞は、このところ山口洋がよく口にしている言葉が頻繁に登場する。言ってみれば、“山口の今”がストレートに表現されている日記のようだ。そこからは、シンプルに生きる彼のシルエットが浮かび上がる。
『Blink』の全曲について、山口に聞いた。そして現在、進行中のツアーについても聞いてみた。すると、とても風通しの良い答えが返ってきたのだった。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 三浦麻旅子


同じこのムチャクチャな時代を生きている者として、新しい音楽を見い出して届けるのが、ファンに対するいちばんの感謝じゃないかなって

HEATWAVE 山口洋 エンタメステーションインタビュー

40周年記念のアルバムが、ついに出来上がりましたね。

最近ステージに上がってて思うのは、ファンがいなければ音楽活動を続けられなかったってこと。40年も続くバンドなんて、そんなにあるものじゃない。今年は周りから「40周年を記念して、ゲストにたくさん来てもらってでっかいコンサートやろうよ」っていう悪魔の誘いがいろいろあったんだけど、そんなライブは俺には向いてないなと思った。支えてくれたファンに、何がいちばん誠実なことかなと思ったら、やっぱり同じこのムチャクチャな時代を生きている者として、新しい音楽を見い出してちゃんと届けるのが、ファンに対するいちばんの感謝じゃないかなって。
(古市)コータローくんも平山さんも「40年が一瞬って感じるなんて、すごく幸せな人生じゃん?」って言ってくれたけど、俺も幸福だったんじゃないのかなあって思っていて。だって、それしかやってないわけだから「そんな人生ってないよな」って。ホントに一瞬だったもんなあ。

ファンやリスナーにも、自分と同じような人生を送ってほしいと思う?

んー……友だちと話すと、どんどん自分が浮世離れしてる感じはある。富士山が見える家に住んで、昨日の朝も悩んでることがあって、バッと富士山を見たら、袂から袂まで虹がゴーッて出てたのね。で、俺、そういうメッセージをすぐ受け取ってしまうタイプの人間なので(笑)、「よし、逡巡はやめよう」みたいな。ははは! そういう直感で生きてるけど、でもどんどん世間と乖離してる感じはあるなあ、浮世離れしてるっていうか……。

それって、どういうことなんだろう?

その富士山が見える窓のところに、最近、100インチのスクリーンを設置したの。そこに『ニュー・シネマ・パラダイス』を映して観るんだけど、毎回、号泣すんだよね(笑)。家をキレイに掃除して、海沿いを走って、体にいいものを自分で作って食べて、たまに断食とかしてる。自分をクリアに保っていたいっていうか。なんか、そんな人生ですよ。メッチャ孤独なんだけど、でも孤独がもう淋しくないというか。この淋しがり屋だった俺がね。すごく不思議な感じ。たぶんもっとどんどん孤独になるんだろうなっていう気がする。

今回のアルバムに「私がこの世から消える日」っていう歌があった。

そんなに明るいムードでもないというか。でもあの曲をスタジオに持ってったら、(細海)魚ちゃんに、「洋、恋でもしたの?」って聞かれて。

それ、いいねえ!(笑)

「違うわ!」みたいな(笑)。

(笑)ただ、今回のアルバムには山口くんが最近考えてることが、ストレートに反映されてると思う。

でもね、実は今回の40周年ツアーの最初の3本に、アルバムの完成が間に合わなかったの。そうしたら、ツアーの2日前にファンからの「予約販売してください」っていうメールに気が付いて……。そりゃそうだなと思って、それをやったわけ。

それはそうだよね。みんなアルバムを待ちかねてたんじゃない?

そう。そしたらたくさんの人が予約してくれてね! だから完成が間に合わなかったのが、ホントに申し訳なくて。予約してくれた人たちに送る封筒に、全部、自分で宛名書きしたの。ひとりひとりの住所と名前を書いてたら、「こんなにいろんな名前があるんだ!」とか、「1本のライブにこれだけのところから人が集まってくるんだ!」とか思って、改めて感激した。「ちゃんと生きなきゃダメだろ」って思ったよ。ホントに有り難かった。

誰もベースを入れようとしなかった心意気を感じてほしい。完全に張り詰めて、しかも自分を解放してやらないと成り立たない

HEATWAVE 山口洋 エンタメステーションインタビュー

どんな内容のアルバムにしようと思ったんですか?

作るにあたって、「自分が好きだったものって何なんだろう」って振り返ると、46分のカセットテープに収まるようなアルバムが好きだったわけですよ。ローリング・ストーンズの『Some Girls』とか、ルー・リードの『Legendary Hearts』とか。そういう明確なコンセプトがあったから、今回は熟考するというよりも、スタジオでのテイクも、ファーストテイクにすべてがあると思ってたから、1回か2回、せいぜいやっても3回しかやらなかった。歌も、基本的に全部演奏しながら録ってるし、録れなかった場合でもその場で3テイクぐらい歌って、それ以上はやらないっていう。すごく動物的な判断をして、家のスタジオでは歌わなかった。だからエンタメステーションの連載コラムにも書いたけど、キース・リチャーズのツイッターで流れてくる動物的な言葉がすごく良くて。要するに「迷うな」と。「迷うんだったら、何かが間違ってる」って(笑)。なので、動物的にちゃっちゃと作業をしていったんで、レコーディングは早かったっすよ。

でも、ツアーには間に合わなかった(苦笑)。

間に合わなかったです(苦笑)。ただ、俺が野菜を作ってるとしたら、「できたから食べて!」って感じ。ははは! 自分たちのやりたいようにやらせてもらってる。今はアップルミュージックとかいろいろあるけど、よくわかんない。俺は利用しないしね、今のところ。自分たちはやっぱりアルバムというものが好きで、それで生き抜いていきたいと思ってて。

レコーディングは3人だけで?

うん。誰もベースを入れようとしなかったという心意気を、感じてほしい。全然淋しくないっしょ? ベースがいなかったら、それを想像させるような演奏をすればいいっていうことだから。みんな一丸となって集中してやってる。やっぱり3人だと息が抜けないから、魚ちゃんに掛かってる負担はすごいと思うけど、魚ちゃんも池畑(潤二)さんも素晴らしい。やっぱり家の土台が1個ないわけだから、3人って脆い(苦笑)。完全に張り詰めて、しかも自分を解放してやらないと成り立たない。でもやり甲斐がある。

未来の世代に“未来のルーツミュージック”というものを手渡したい。ロックンロールがいかにすごかったか、今もすごいかということをね

HEATWAVE 山口洋 エンタメステーションインタビュー

1曲目の「Freedom」は?

『イージー・ライダー』(1970年 日本公開)っていう映画が、中学ぐらいのときの俺に与えた影響ってすごかった。主人公たちの最期の死に様も含めて、自由に生きるということがどういうことかっていうね。結局、誰も自由になれなかった。そういう意味での「Freedom」ですよ。その映画に出てたピーター・フォンダもデニス・ホッパーも死んだ。あれを作ったアイコンがもう死んじゃったわけじゃないですか。ジャック・ニコルソンしか生きてない。

『イージー・ライダー』の衝撃は大きかった?

うん。忘れられない。若い子が「『イージー・ライダー』って何?」って思って、この映画を観てくれたらいいな。70年代の初頭に、本当に自由を目指した人たちがいて、あのラストシーンにボブ・ディランが、「もうちょっと違うラストシーンじゃないと、俺の音楽を使わせない」って言ったことを含めてね(笑)。『イージー・ライダー』は、今の自分の下地を作ってくれた。そういうルーツが見える音楽をやりたいんですよ。

それは山口くんがずっと言ってることだね。

うん。自分がどんなものに影響を受けてきたか。だって、ローリング・ストーンズを好きになって、ブルースを聴いたわけだからさ。自分が人間として生まれてきた理由っていうのを、深く考える時期なのかもしれない。

そういう年齢ということ?

うん。CHABO(仲井戸麗市)さんの言葉を借りれば、「手渡された」モノを自分のところでホールドしているつもりはない。誰かに手渡したいっていう。たとえば『イージー・ライダー』に込められたメッセージを敏感に感じ取るアンテナが、自分たちにも備わっていて、それが自分の人生を変えていくということを、未来の世代に“未来のルーツミュージック”というものを手渡したい。ロックンロールがいかにすごかったか、今もすごいかということをね。

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