LIVE SHUTTLE  vol. 381

Report

シド 様々な色を纏い新たなスタイルで臨んだ“承認欲求ツアー”

シド 様々な色を纏い新たなスタイルで臨んだ“承認欲求ツアー”

SID TOUR 2019 -承認欲求- FINAL
2019年11月21日 東京国際フォーラム ホールA

シドの全国ツアー“SID TOUR 2019 -承認欲求-”の(振替公演は残しつつも)ファイナル公演が11月21日、東京国際フォーラム ホールAで行われた。最新アルバム『承認欲求』を携え、シドとしては2年ぶりとなる今回のホールツアーで、彼らはいままで観せたことがないライブを表現。それが大成功だったことをツアーの集大成となるファイナル公演で証明した。

取材・文 / 東條祥恵 撮影 / 西槇太一


大きな節目を経て、シドはバンドとしてなにを表現し、観せていくのか

3月の横浜アリーナ公演で大団円を迎えたシド結成15周年。大きな節目を経て、シドはバンドとしてなにを表現し、観せていくのか。その回答がなぜ『承認欲求』だったのか。それが「要するにこれをやりたかったのか」ということをアルバムとツアー、2つセットになってみて初めて明らかになった。ツアー2日目の千葉県・松戸・森のホール21公演でマオが「いつものライブとはひと味もふた味も違ったシドを最後までよろしく」と宣言。そこからこのツアーが最終公演までどのような変貌を遂げたのかを分析しながら、レポートしたいと思う。

バンドとして初めて“文字”の演出に特化したライブを披露

ファイナル公演のオープニング。街の中のノイズ音とともにステージの紗幕に映し出された文字が“僕たちは誰ですか?”“あなたは誰ですか?”と語りかけてくる。まず、今回のツアーは、このノンナレーションの文字と、演奏中に映し出されるリリックムービーが大きな肝となり、アルバム『承認欲求』の世界観を問いかけ、進行していく。もちろん、シドがここまで“文字”の演出に特化したライブをやるのは今回が初。バラードで幕を開け客席を静寂で包むというのはこれまでのツアーでもやってきたが、今回の冒頭ではその静寂とはまたタイプの違う声援さえ拒絶するような緊張感が場内に張り詰める。

胸の内を打ち明けるフレーズが文字となって視覚に飛び込んでくる

薄暗いままのステージ、紗幕越しにドラムのゆうやの“タタン”とリズムを刻む音が響き、ライブはアルバム1曲目「承認欲求」でスタート。マオがAメロで“鈍色の空~”と歌うと、紗幕に鈍色の空の景色が広がり、“本当のぼくは 今日も閉じた”“苦しい”と胸の内を打ち明けるフレーズが文字となって視覚に飛び込んできて、心がズキズキし始める。紗幕が上がり、曲は「see through」。ライトは“世界中の薔薇の花を集めて”で深紅に染まり、マオの歌とステージ上にマッピングで映し出される歌詞がリンクして“よそ見なんかしないで”というフレーズがダブルで鋭く刺さってくる。陰影の強い感情を引きずったままでいる客席をシドは次の「螺旋のユメ」「MUSIC」のブロック(ここではリリックムービーは流れない)で、オーディエンスの盛り上がりを呼び込むパフォーマンスへと見事にシフトしていく。この切り替えを抑制したまま、張り詰めた緊張感をキープさせて駆け抜けた松戸公演は非常に新しかった。だが、ツアーはオーディエンスと作り上げるもの。バンドが描いたシナリオは、このツアーファイナルまでの間に客席と一体感を分かち合うブロックへと変化したのだと思う。

グラデーションを描くように重なり合うサウンドをたっぷりと堪能

挨拶を告げたあと「アルバムのツアーとは言いつつも、懐かしいシドもちょいちょい挟んでいくんで」と伝えるマオ。リリックムービーはなくても、なぜ次の曲が「2月」だったのかを“出会いの奇跡”、“手を繋いで”という歌詞を聴いて気付き、ハッとする。そこから“手を繋いでほしかった”という文字が浮かび上がったあとの「手」ではリリックが縦に映し出される。シドにしては珍しくストリングスのないバラード。だからこそ、1サビ後にインしてくるリズム隊の音が瞬時に立ち上がって耳に飛び込んでくる。さらに、次の「淡い足跡」ではゆったりとしたテンポのなか、まるで泳ぐようにマオのヴォーカル、Shinjiのギター、明希のベース、ゆうやのドラムがグラデーションを描くように重なり合うサウンドをたっぷりと堪能。ここはライブを観るたびにバンドの新たな発見があるブロックとなっていった。

「ここでみんなにプレゼントがあります」(マオ)

スクリーンに“あなたでなければ、ダメですか?”という文字が浮かんだあと、始まったのは「罠」。その言葉と歌詞の“あたしでいいの? あたしじゃなきゃだめなの?”がリンクするなど、本ツアーでは既存曲もアルバム『承認欲求』の世界観に近いナンバーを彼らはセレクトし、このツアーのセットリストを作っていた。いつもならこのあと、さらに「妄想日記」などの既存曲が続くはずなのだが、ファイナル公演では「ここでみんなにプレゼントがあります」とマオが言い、新曲「delete」を初披露。今後ライブの盛り上げ役となりそうなアッパーのロックナンバーを演奏し、このツアーでキラーチューンへと育っていった「Trick」へとつないだ。ここでは、サウンドに合わせてリリックムービーの文字が映像のなかで激しく飛び交うという演出が、観客の高揚感をどこまでも高めていく。

「好きな歌詞はちゃんと口ずさんでるの、みんなは知ってるよね?」(Shinji)

その盛り上がりから “あなたにとって、あなたは必要ですか? 誰かに認めてほしいわけじゃない。 ただ笑っても笑っても笑っても自分がいないような気がするだけ。”という文字がオーディエンスを再びクールダウンさせていく。日常生活のなかで、辛いときの自分を思い出したとき、そんな風に忙しい日々に疲れたときこそ“ゆっくり吐いて 大きく吸って 上手くいくイメージで 君を満たそう”と「ポジティブの魔法」を優しく歌いかける。ここからステージ上のシドはアコースティックセットでパフォーマンス。松戸公演では落ち着いた大人っぽいシドを装っていたのに、ツアー終盤からなぜかここは“いちゃいちゃコーナー”に様変わり(笑)。くっついてくるマオをウエルカムで待っているゆうや、背中を向けて恥ずかしがる明希、“信じてる”という歌詞の“しんじ”を使って絡んでいったトークに全く気付かないShinjiに客席からクスクスと笑いが溢れる。Shinjiの反応にここでゆうやが「コイツ、歌詞知らねーだけだろう」と歌詞を読んでいない疑惑を投げかけると、Shinjiが真顔で「好きな歌詞はちゃんと口ずさんでるの、みんなは知ってるよね?」と客席に同意を求める。「じゃあこの歌詞は気に入ってないってことだ」とマオが突っ込むという安定の展開でみんなの笑いを誘ったあと、「マオ君は俺らが作る曲全部、ちゃんと感想メモしてくれてるのにね」と明希が暴露し、マオが「それ、言わなくていいやつ!」と大照れ。「昔はだいたい自分1人がしゃべってたんですけど、最近はこんなスタイルでやってます」とメンバートークを締めくくったあとは、再びバンドセットに戻る。

いよいよ本編は「Blood Vessel」からクライマックスへ突入

そうしてライブが再開し、後半戦へ。この日は懐かしの「青」が飛び出す。この曲のチョイスもまた、すれ違う2人の心、それが次に映し出される“誰かにふれたいと思ったことはありますか”という文字につながっていくという展開だった。そうして「Blood Vessel」が、本編のクライマックスへの突入を知らせると、このあとは「プロポーズ」「park」の連打で場内のテンションを急激にあげていく。マオが「シドはこのあと20年、30年経ってもこういう曲をやって、40年経ったら次の日は病院にお世話になってるかもしれないけど」と笑わせたあと「今後もシドはこうやって昔の曲も演りながら活動していくんで、応援よろしく」と伝え「その未来へ」を歌い出す。サビのコーラスで大合唱が生まれると、場内がピースフルな空気に包まれる。だが、ここで終わらないのが今回のツアーなのだ。“あいたくなると苦しくなるーーそんな時ばっかり自分を感じるーー”という文字が浮かび、雨音が聴こえてくると紗幕がおり「涙雨」へ。雨モノの名曲が多いシドが、この曲で雨伝説をさらに更新。ツアーファイナルでも歌、演奏、スクリーンに雨粒のように降るリリック、すべてが一丸となってバラードでありながら最もエモーショナルな深い感動を呼び起こしていく。このツアーで毎公演、本編の大きなハイライトを作っていった楽曲だった。

「ライブってファンのみんなと作っていくんだなって、こういう曲をやると改めて思います」(マオ)

アンコールは「デアイ=キセキ」で幕開け。タイトルをコール&レスポンスで行ない、客席にクラップと笑顔が広がっていくと、場内のハッピーオーラを受けてメンバー同士もステージ上で体を揺らし、ぶつけあっておおはしゃぎ。それを受け、「ライブってファンのみんなと作っていくんだなって、こういう曲をやると改めて思います」とマオが伝える。そして「デアイ=キセキ」のエピソードとして、松戸公演の朝にマオ、明希、ゆうやが2日連続で同じ食堂で出くわしたことをうれしそうに披露した(新潟公演のラーメン店でも同様のエピソードがあった)。そして「循環」が始まると(松戸公演の朝は他の仕事が入っていて別行動だった)Shinjiが勢いよく客席に乱入し、場内を走りながらプレイ。そして「エール」で凄まじいばかりの一体感を作り上げ、“君は一人じゃない~君は僕に必要なんだ”と歌い、そこから、“あなたにとって僕たちは、必要ですか?”と最後の問いかけが文字で浮かび上がっていったあと「君色の朝」で、みんなをポジティブな気持ちに戻してライブはエンディングを迎えた。
今回のツアーは、ライブが終わったあと、再びアルバムを聴き返したくなる。そんな深い余韻を観客の心に刻みつけるものになっていた。アルバム『承認欲求』とこのツアーを通してシドが行なったこと。それは、これまで支えてくれたみんなとここからは“1対1”で向き合うという決意を伝えることだったように思う。日々生きていくことはときにはやるせなくて、しんどくて、傷ついて。けれども、そんな風に落ち込んだときがあったとしても、シドの音楽、ライブで、それが少しでも輝きのある色づいた日常に変えられたら。そんなメッセージが込められていたんじゃないかと感じている。松戸公演で「最近、みんなの夢ができました。それは、シドを長く続けていくことです」と伝えたマオ。15周年を終え、シドはここからさらにみんなのそばで様々な色を纏い、輝きを放っていくはずだ。

SID TOUR 2019-承認欲求- FINAL
2019年11月21日 東京国際フォーラム ホールA

SET LIST
01.承認欲求
02.see through
03.螺旋のユメ
04.MUSIC
05.2月
06.手
07.淡い足跡
08.罠
09.delete
10.Trick
11.ポジティブの魔法
12.青
13.Blood Vessel
14.プロポーズ
15.park
16.その未来へ
17.涙雨

EN01.デアイ=キセキ
EN02.循環
EN03.ドラマ
EN04.エール
EN05.君色の朝

ライブ情報

SID TOUR 2019 -承認欲求- ※振替公演

2019年12月29日(日) 埼玉県 大宮ソニックシティ
2020年1月5日(日) 宮城県 東京エレクトロンホール宮城

詳細はhttps://sid-web.info/

SID(シド)

2003年結成。マオ(vo)、Shinji(g)、明希(b)、ゆうや(ds)からなる4人組ロックバンド。
2008年、TVアニメ『黒執事』オープニングテーマ「モノクロのキス」でメジャーデビュー。
2010年の東京ドーム公演では4万人を動員。結成10周年となった2013年には、初のベストアルバムをリリースし、オリコンウィークリー1位を獲得。同年、横浜スタジアムで10周年記念ライブを開催、夏には初の野外ツアーで4都市5公演で5万人を動員し大成功を収める。2014年には香港・台湾を含む全国ツアーも開催した。
2018年にバンド結成15周年を迎え、8月にはキャリア初のミニアルバム『いちばん好きな場所』をリリース。9月からは全公演SOLD OUTの中、<SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 「いちばん好きな場所 2018」>を開催。
そして、今年2月にアジアツアーを開催、3月10日には15周年アニバーサリーイヤーのグランドファイナルとして、横浜アリーナでの公演を実施した。
9月4日に2年ぶりとなるアルバム『承認欲求』をリリースし、全国ホールツアーを開催。振替公演を残しつつも、11月21日に東京国際フォーラム ホールAでファイナルを迎えた。

オフィシャルサイト
https://sid-web.info/

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