映画『アズミ・ハルコは行方不明』  vol. 3

Interview

太賀&葉山奨之と松居大悟監督の男子鼎談。20代の本音、裏話

太賀&葉山奨之と松居大悟監督の男子鼎談。20代の本音、裏話

痛みやどうしようもなさも笑い飛ばすような女性の強さを感じたし、たくましい

太賀さんは現在23歳ですが、ご自身の20歳の頃の経験や記憶を使ったりしました?

太賀 具体的なものは使ってないですけど、ユキオが、何者でもないんだけど、何者でもないことに気づいてないことに対して、すごく共感できるんですよね。今の自分は、ユキオよりも自分に対してあきらめてるというか気づいているというか。でも、ユキオはまだあきらめてないし、もっと期待してる。その感じは、過ぎたことなんでわかるんですよね。

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松居さんの20歳の頃はどうでした?

松居 まさに、キルロイの2人のようでしたね。福岡にいた兄貴から「大ちゃん、『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を観ろ、やべーぞ」って言われて、すぐに観て「ヤベェ!」ってなったけど、グラフィティするわけでもなく、チャリで爆走するくらいで(笑)。結局、オナニーをするっていう。吐き出す場所がね、それくらいしかなかった(笑)。そういう意味では、当時から何も変わってないですね。ギリギリ演劇をやってはいたけど、何者かになりたいとか、自分はもっとできるはずだ、俺はこんなところで終わらないと漠然と思いながらもオナニーしてるだけみたいな。

太賀 最後の言わなくていいじゃないですか(苦笑)。

松居 なんか気に入っちゃった(笑)。だからもし、ユキオみたいなヤツに「一緒にやろーぜ」って言われたらやってたと思う。そしたら、演劇をやってなかったと思うな。20代前半はオナニーのことしか考えてなかったから(笑)。

葉山 本当、参考にならない(苦笑)。

松居 あはは! もがいてましたからね。だって、今の太賀や奨之にも全然辿り着けてなかったし。大学のちっちゃな地下の劇場で演劇してただけだから。だから、「20代をどう過ごしたらいいですか?」っていうアドバイスを求められても、何も出てこなくて……。自分が意識していたことが正しいともかぎらないし。

太賀 年齢はきっと関係ないんじゃない? この映画に出てくる男なんて、総じてクズだし。

松居 (春子が働く会社の)社長もユキオたちと変わらないからね。撮るほうとしては、男側は感情がわかるからやりやすかったんですよ。でも、春子側のほうは迷うというか、女性サイドの本音はわからなかったから難しかった。キルロイ、特にこの2人は自分の拠りどころになってたし、単純に楽しかったですね。

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監督も「わからない」という女性側の各年代の悩みや迷いについては、20代前半の男性としてどう感じました?

葉山 つかみどころがないなと思いました。女の人ってやっぱ難しいなって。何を考えてるかわからないというか、女性と男性ってこんなにも違うんだっていうことがわかった気がしますね。

太賀 この映画のラストに一番強いメッセージが込められてるなと思いますね。最後の蒼井さんの表情がすべてだと思います。痛い映画だとは思うんですけど、そんな痛みやどうしようもなさも笑い飛ばすような女性の強さを感じたし、たくましいなって思えましたね。

葉山 あと、“失踪”とか“行方不明”っていう言葉って、ちょっと怖いイメージがあるじゃないですか。そういうイメージを持って観ると、観終わったあとに全然違うふうに感じると思うんですよね。僕はこの言葉に対してギャップを感じて。もっと軽い感じで捉えてもいいのかなとも思ったし、いい意味でもあるなって思いましたね。

松居 うんうん、それはまさに狙っていたことでもあって。台本の1ページ目に“行方不明という名の自由”って刷ってもらったんですね。ニュースで“行方不明”って文字を見ると、ネガティブな情報だけで終わるじゃないですか。みんなそれに振り回されたりもするから、ちょっと落ち込んだりもするけど、そうじゃなくて、ニュースの向こう側、情報の向こう側で、行方不明と言われる人物が笑っていたりしたら、すごくいいなと思って。ステンシルがSNSで拡散していって、キルロイたちが調子に乗る結果もそうなんですけど、一方的な情報だけじゃないものを大切にしたいなと思って。だから、“行方不明”っていう言葉が全然違うニュアンスに聞こえたらいいなっていうのも、今回の映画の目標のひとつでしたね。

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いよいよ公開が迫ってきました。

太賀 お客さんがどう受け取ってくれるのかが楽しみですね。松居さんはじめ、みんなの思いが、観てくれた人の心に響いて欲しいです。もちろん、「わからない」という感想でもいいんです。ただ、何かが残ってくれればいいなと思います。

葉山 僕は、今、20歳の自分が観てわからなかったので、ゆくゆく、歳をとってからもう一回観たときに、どう思うのかを感じたいなと思っていて。そういうふうに、自分が重ねていった年齢ごとに観る楽しさもあると思うんですよね。僕と同じように、10代や20代のときに観てわからなかったことが、30代や40代になって観たときにわかることがあるかもしれない。何年か経って改めて観て、「こういうことだったんだ」っていう答えがわかるような作品になってくれてたらいいなと思いますね。……俺、今日イチ、いいこと言ったんじゃない?(笑)

松居 うん、良かった! それ、これから毎回、言ってね(笑)。


After Talk vol.3 太賀&葉山編

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Q. 太賀さんと葉山さんだけが知っている松居監督の秘密を教えてください。

葉山 『アズミ・ハルコは行方不明』に関わった人の中で松居さんが一番ミステリアスかもしれない。「松居さん、どうなんですか?」ってプライベートなことを聞いても、「いやいや」ってなんも言ってくれないし。

太賀 照れてるだけじゃない?

葉山 「松居さんの家って、どんな感じですか?」って聞いても、「いいよ、俺の話は」って言う。

太賀 たしかに。出会ってから結構経つけど、わからないこといっぱいあるかもしれない。プライベートのことは、そんなに突っ込んで喋ったりしてないから。

松居 単純に、俺の話はいいでしょって思っちゃうんだよね。

葉山 お酒を飲んでいい気分で酔っ払ってるときでも、全然話さないですよね?

太賀 ほとんど変わらないですよね?

松居 うん。打ち上げのときだけかな。打ち上げのときだけは、記憶が飛ぶくらい飲むんですよ。

葉山 あー! 受付の人かなっていうくらい、ずっと受付にいたり(笑)。

太賀 床に寝転んでたりしたね(笑)。普段は自制してるんですか?

松居 いや、ずっと気持ちが張ってて、心から飲めないだけなの。まだ終わってないものがあると。

太賀葉山 そうなんだ。やっぱりミステリアスですね(笑)。


映画『アズミ・ハルコは行方不明』

2016年12月3日公開

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とある地方都市に住む27歳の〈安曇春子〉は独身で恋人もなく、実家で両親と祖母と暮らしている。会社では社長と専務に「女性は若いうちに結婚するべきだ」とセクハラ三昧の言葉を37歳の先輩〈吉澤ひろ子〉と共に浴びせられ続けていた。ある日の仕事帰り、春子の目の前を女子高校生たちが軽やかに走り抜けていく。それを追って公園へ向い、暴行され倒れている同級生の〈曽我雄二〉の姿を見つける。そこから春子と曽我はお互いのむなしさを埋め合うように関係を重ねていくのだが……。
とある地方都市に住む20歳の〈木南愛菜〉は成人式の会場で同級生の〈富樫ユキオ〉と再会、付き合い始める。ある日、2人はレンタルビデオ店でバイトをしていた同級生の〈三橋学〉と出会う。ユキオと学はグラフィティアーティストのドキュメンタリー映画に共感し、〈キルロイ〉と名乗り、グラフィティアートを始め、28歳で行方不明の安曇春子を探す張り紙をモチーフに街中に春子の顔とMISSINGという文字を拡散していくのだが……。
異なる時間軸が交錯。2つのストーリーの意外な結末とは?

【監督】松居大悟
【原作】山内マリコ(幻冬舎文庫刊)
【キャスト】
蒼井優 高畑充希 太賀 葉山奨之 石崎ひゅーい
菊池亜希子 山田真歩 落合モトキ 芹那 花影香音
/柳憂怜・国広富之/加瀬亮
【劇中アニメーション】ひらのりょう
【音楽】環ROY
【主題歌】「消えない星」チャットモンチー
【配給】ファントム・フィルム

オフィシャルサイトhttp://azumiharuko.com/

©2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会


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アズミ・ハルコは行方不明

山内マリコ (著)
幻冬舎

地方のキャバクラで働く愛菜は、同級生のユキオと再会。ユキオは意気投合した学と共にストリートアートに夢中だ。三人は、一ヶ月前から行方不明になっている安曇春子を、グラフィティを使って遊び半分で捜し始める。男性を襲う謎のグループ、通称“少女ギャング団”も横行する街で、彼女はどこに消えたのか? 現代女性の心を勇気づける快作。


太賀

1993年生まれ、東京都出身。2007年に映画『フリージア』(熊切和嘉 監督)でスクリーン・デビュー。2014年にTAMA映画賞最優秀新進男優賞を受賞。近年の出演作に【映画】『桐島、部活やめるってよ』(12/吉田大八 監督)、『ほとりの朔子』(14/深田晃司 監督)、『私の男』(14/熊切和嘉 監督)、『アゲイン28年目の甲子園』(15/大森寿美男 監督)、『あん』(15/河瀨直美 監督)、『マンガ肉と僕 Kyoto Elegy』(16/杉野希妃 監督)、『闇金ウシジマくん the Final』(16/山口雅俊 監督)、『淵に立つ』(16/深田晃司 監督)、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』(中川龍太郎 監督)【テレビドラマ】『仰げば尊し』(16/TBS)、『ゆとりですがなにか』(16/NTV)、『恋仲』(15/CX)などがあるほか、公開待機作に『追憶』(17/降旗康男 監督)がある。

葉山奨之

1995年生まれ、大阪府出身。2012年に『トテチータ・チキチータ』(古勝敦 監督)でスクリーン・デビュー。近年の出演作に【映画】『今日、恋をはじめます』(12/古澤健 監督)、『渇き』(14/中島哲也 監督)、『十字架』(16/五十嵐匠 監督)、『海よりもまだ深く』(16/是枝裕和 監督)、『青空エール』(16/三木孝浩 監督)【テレビドラマ】『逃げるは恥だが役に立つ』(16/TBS)、『死幣-DEATH CASH-』(16/TBS)、『サマー・ストーカーズ・ブルース』(15/CX)、『まれ』(15/NHK)、『Nのために』(14/TBS)などがあるほか、公開待機作に『古都』(16年12月3日全国公開/Yuki Saito 監督)、『きょうのキラ君』(17年2月25日公開/川村泰祐 監督)がある。

松居大悟

1985年生まれ、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰、全作品の作・演出・出演を担う。2009年にNHK『ふたつのスピカ』で同局最年少の脚本家デビュー。2012年に『アフロ田中』で長編映画初監督。その後、『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『スイートプールサイド』などを発表。『ワンダフルワールドエンド』でベルリン国際映画祭出品、『私たちのハァハァ』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて2冠、両作でTAMA映画賞最優秀新進監督賞受賞。MOROHA、クリープハイプなどのミュージック・ビデオ制作など活動は多岐にわたる。原作を手がけた漫画『恋と罰』が10月末より連載開始。

ウェブコミック連載『恋と罰』
オフィシャルサイトhttp://www.gorch-brothers.jp

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