Review

B'z、待望のデジタル配信シングル2作品を徹底的に読み解く

B'z、待望のデジタル配信シングル2作品を徹底的に読み解く

不思議なものである。

稲葉浩志さんとはシングル「羽」の取材で会ったのが、2015年の師走。

松本孝弘さんとはアルバム『enigma』の取材で、ロサンゼルスと電話インタビューをするべく朝の8:00に音声のみを重要視したPCの前に待機したのは、2016年3月の中旬、それぞれに、実り多きソロの音楽の内奥に迫る取材だったと(勝手に)自負している。

だが、どうにも、何かが足りない。具体的に記すならば、燃焼感が、ない。何をもって「燃焼感がある」と言えるのかと問われるならば、それはもちろん「LIVE-GYM」と即答できる。

僕を含めた聴き手というのは自分勝手で強欲なものであり、松本・稲葉それぞれのソロ活動が充実していることが判っていても、いや、判っているからこそ、2人が一緒になった時の楽曲、ひいてはそれを引っさげてのLIVE-GYMに思いを馳せてしまうのである。

“B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT-”の最終公演は、2015年7月26日ナゴヤドームにてであった。3月13日の壱岐文化ホールでのLIVE-GYMや5月19日の奄美文化センターでのそれを思い起こしながら、終演後のPAアウト楽曲「ひとりじゃないから-Theme of LIVE-GYM-」を聴いていた。

ところで、B’zとしての2015年の52ndシングルは「RED」であり、周知のように、この楽曲はニューヨーク・ヤンキースから広島東洋カープに復帰した黒田博樹投手に向けて書かれたものであった。

その広島東洋カープは今年、四半世紀ぶりのリーグ優勝をし、一方で黒田選手は引退を表明した。黒田選手が最後に相対した打者は、二刀流と形容される大谷翔平選手だった。

ここまで書いてくると、読者諸氏にも当然のこと察しがつくであろう。そう、「RED」に続くB’zの新曲が聴きたくなるのである。そこで、今回は配信限定シングルとなった2曲をReviewすることとする。

10月4日に配信された「世界はあなたの色になる」は、アコースティック・ギターのストロークに松本孝弘の妙技とも言えるワウペダルを使ったエレクトリック・ギターのフレーズが入れ込まれている。こうしたことを書くと「そんなことは佐伯に言われなくとも、楽曲を1回聴けばわかる(から、書かなくともよろしい)」と宣(のたま)う読者がいる。

確かに、1回聴けばアコギもワウを使ったフレーズも耳に“付着するかのように”入ってくる。だが、それは文字として執筆されることで、初めて“付着感”が刻印されるのではあるまいか? 事実、アニメ映画『名探偵コナン 純黒の悪夢』の主題歌となったこの曲に対しメンバーは、「今回は、コナンという作品の持つ影の部分もかなりクローズアップされていて、楽曲の方も今までとは違う気分で制作しました」とコメントを寄せている。

アコースティック・ギターの響きもイコライジング処理をされたボーカルが“くりかえされる不条理 狂いまくるスケジュール”と歌う稲葉さんのリリック一節も“影の部分”に呼応していると言えなくもないだろう。

そして、映画では使われなかった“長いアウトロ”の上昇&下降するストリングスと、いちばん最後に残り香のように出てくるワウ・ペダルによる松本さんのフレーズが、「あなたの色を決定する不安と葛藤」を物語っていると思うのは、おそらく僕だけではあるまい。

もうひとつの新曲「フキアレナサイ」は、東野圭吾氏の小説『疾風ロンド』の実写映画(主演は、阿部寛さん)の主題歌となる。ギターリフとストリングスリフが並走するようにイントロを形成する8ビートの装いをした16ビート楽曲、こうした楽曲スタイルは、ほとんどB’zの“お株”であり、ギャランティード=保証された内容品質を持っている。

さらに、稲葉さんのサビのリリック最終行の「フキアレナサイNOW」の“NOW”が、断定的諭(さと)しの効果を超然と放っており、僕を含む聴き手は「ああ、楽曲を聴いて稲葉さんに諭されたかったんだな」と自己確認するであろう。

吉田照幸監督が「あまりに印象深い曲なので、(映画を観終わって)劇場を出るお客さんが映画を忘れてしまわないか…心配です」とコメントしたのも、判らないではない。

「世界はあなたの色になる」と「フキアレナサイ」は、結果として映画作品との共同作業となったが、楽曲だけを集中熟聴すると、ストリングスの配し方に現在的B’zの志向があるのかもしれない…と思う。

この2曲が披露されるであろうLIVE-GYMまでは、まだ時間を要するだろうけれども、注意深く何百回も聴いて、待つこととしたい。

文 / 佐伯明

世界はあなたの色になる(mora)
フキアレナサイ(mora)

B’z

TAK MATSUMOTO/松本孝弘。ギター及び作曲、プロデュースを担当。
3月27日生、大阪府出身。
KOSHI INABA/稲葉浩志。ヴォーカル及び作詞を担当。
9月23日生、岡山県出身。
1988年9月に、1st ALBUM『B’z』、1st SINGLE「だからその手を離して」をリリース。

オフィシャルサイトhttp://bz-vermillion.com