es執筆陣が独断で選ぶ2019年 BEST MUSIC  vol. 6

Column

聴き心地最高で楽しい気分を満喫できるアイドルのアルバムを3枚

聴き心地最高で楽しい気分を満喫できるアイドルのアルバムを3枚

当然のことながら、いい曲と思う判断基準は人それぞれ。ここでは、完全に自分目線でヒットした聴き心地最高で楽しい気分を満喫できるアイドルのアルバムを3枚ピックアップしました。

文 / 土屋恵介


『octave』/桜エビ〜ず(現・ukka)

2015年にエビ中の妹グループの桜エビ〜ずとして結成。2019年11月のワンマンライブを機に、さらに羽ばたくためにukka(ウッカ)に改名した6人組だ。スターダストのアイドルというと、バラエティ的な笑いの要素の入った楽曲を想像する人もいるかもしれない(もちろんそれだけではないですが)。ukkaはそのイメージを覆すように“脱スタダ”を掲げ、楽曲のよさに振り切ったグループとして活動している。曲のクオリティが高ければ、当然のごとくパフォーマンスもハイレベルなものが要求されるわけだが、ukkaはそうした難題を見事にクリア。約4年の活動を経て、歌もダンスもぐんぐん成長を続け、もはやライブで惹きつけるパワーはかなりの水準に到達している。

これまでもいい曲をたくさん届けてくれた彼女たちだが、8月21日にリリースしたセカンドアルバム『octave』は、さらにブラッシュアップした音楽をたっぷりと聴かせてくれる作品となっている。アルバムは、2018年6月からスタートした12ヶ月連続リリース企画の楽曲を中心に構成。作家陣もなかなかすごい。「帰れない!」を始めアレンジを多く手がける高野勲は、GRAPEVINEやサニーデイ・サービス、Yogee New Wavesなどのワークスで知られるキーボーディスト。「Magik Melody」を手がけるのはSUGIURUMNこと杉浦英治。彼女たちのライブのキラーチューンとなっている「リンドバーグ」は、Have a Nice Day!の浅見北斗が作詞作曲を担当。さらには、ヤマモトショウ(元ふぇのたす)や理姫(アカシック)が歌詞を手がけている。

アルバムの中でもかなりグッと来たのが、ONIGAWARAが手がけたキャッチーなディスコポップチューン「それは月曜日の9時のように」。タイトルからもわかるように、サビに“ラブストーリーは突然に”と入っていたり、80〜90年代の月9ドラマのキラキラしたエッセンスが散りばめられている。ただ、それはちょっとしたモチーフ。言いたいのはアイラブユーの、ど直球のラブソングである。高揚感溢れるメロディは、ドリカムや広瀬香美的な90’s J-POPフレイバーを感じさせつつ、それを上書きして突き抜けていく。力の入った水春のボーカルもとてもいい。ファンキーで痛快でたまらない、この前のめりなワクワク感をぜひ味わって欲しいです。

『アオハル1st』/アップアップガールズ(2)

続いて、別の妹グループの登場。アップアップガールズ(仮)の妹グループ、アップアップガールズ(2)。アスリート系アイドルのアプガ(仮)とはグループの方向性が違い、青春をコンセプトに活動する8人組だ。彼女たちが2019年11月12日に発売したファーストアルバム『アオハル1st』は、2017年の結成からこれまで発表してきたシングルがギュッと詰まった、約2年半のアプガ(2)の成長と変化が丸わかりの1枚となっている。

アプガ(2)のメイン作家を務めるmichitomoは、ももクロの「走れ!」の作曲家・アレンジャーとして知られているサウンドクリエイター。同曲で作詞を務めるNOBEと、michitomoとともに作曲で名を連ねるKOJI obaも、アプガ(2)のいくつかの曲に関わっている。他の作家陣は、ハロー!プロジェクトで大活躍の作詞家の児玉雨子や、PandaBoY、fu_mouといったゲーム系楽曲のクリエイター。さらには御大・つんく♂のサウンドプロデュース楽曲が4曲もある。なかなか他の若手クラス規模ではあり得ない豪華さだ。

ポップチューンからハードなダンスミュージックまで様々なサウンドが並ぶ中、アルバムの新曲として収録された「ブルースカイブルース」は、アプガ(2)にとって新しいタイプのナンバー。同人ネット系バンド、からっぽペペロンチーノが楽曲制作したこの曲は、爽快感とエモさたっぷりな疾走感溢れるギターロックチューン。歌詞は、一度しかない青春の儚さと前向きさを、澄み渡る青空に投影するように描かれている。10代20代の彼女たちが歌う空の色は、まさによどみのない青さ。それを大人目線の振り返りフィルターを通すと、バック・イン・ザ・デイズ的なまた違った青さに感じられるから面白い。タイトルの“ブルースカイブルースカイブルー…”がループ感があり、それがアナログレコードの最後の溝や涼宮ハルヒ的に感じられ、切なさと永遠を感じてしまったりと聴き手の勝手な解釈の余地があるのもまたいい。映画などを見るように、音楽からもありったけの青空を感じましょう。

『BEYOOOOOND1St』/BEYOOOOONDS

最後は、今年話題をさらったハロー!プロジェクトの新グループBEYOOOOONDS。CHICA#TETSU、雨ノ森川海、専属メンバー3人からなる、総勢12人の彼女たち。歌とダンスはもちろん、演技もしっかりとこなしていくというのが彼女たちのテーマ。8月7日に発売されたファーストシングル「眼鏡の男の子/ニッポンノD・N・A!/Go Waist」が、ハロプロ史上初のメジャーデビューシングル1位を獲得し、その後も破竹の勢いで爆進。11月27日にはファーストアルバム『BEYOOOOOND1St』を発売した。新人ながらいきなりアルバムリリースというのは、ハロプロでは異例中の異例。それだけ、彼女たちのポテンシャルと可能性がすごいということだ。

このアルバム『BEYOOOOOND1St』は、いわゆる普通のいいアルバムではないところが面白い。BEYOOOOONDSの楽曲には、笑いの要素や寸劇が盛り込まれているが、アルバム全体を通じてそのポリシーが貫かれている。「眼鏡の男の子」ではメンバーそれぞれが役柄を演じており、そのキャラたちがスピンオフ曲「恋のおスウィング」「文化祭実行委員長の恋」で活躍している。また、前山田健一が手がけた「きのこたけのこ大戦記」は、メンバーごとのパートで、もはや違う曲のようなアレンジが施され、最終的には最後大合唱して大団円というドラマチックさがある。とにかく全てがいい意味で振り切っているのだ。「アツイ!」の80年代メタルなどをモチーフにしたMVも話題になったが、アルバム全体がレイヤーにレイヤーを重ねものすごい情報量となっている。笑えて音楽としても素晴らしい作品というところで、ロッククラシックスのモンティ・パイソンや、ジャック・ブラックのテネイシャスDを連想してしまった。楽しんで盛り上がってハッピーエンドという感覚は、大衆演劇を今の時代感でパッケージングしたアイドル作品と言ってもいいかもしれない。実にチャレンジ精神あふれる、面白い切り口のアルバムだ。

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