Interview

役者道を突き進む男・井之脇 海が語る、“教官”木村拓哉から学んだこと

役者道を突き進む男・井之脇 海が語る、“教官”木村拓哉から学んだこと

笑うと大きく横に広がる口は、あどけない少年の面影が残る。今時の20代の男性には珍しい古風な趣は、間違いなく俳優としての武器だ。俳優・井之脇 海は今、誰にも似ていない足取りでその役者道を突き進んでいる。
わずか9歳で子役デビュー。近年は連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)やドラマ『義母と娘のブルース』(TBS)と話題作が相次ぎ、直近では大河ドラマ『いだてん』(NHK)で最終聖火ランナー・坂井義則を演じ、強い印象を残した。
そして、1月4日(土)、5日(日)に二夜連続で放送されるスペシャルドラマ『教場』(CX)にも出演。本作の舞台は、“教場”と呼ばれる警察学校の教室。6ヶ月間という初任科教養を乗り越え、卒業試験をくぐり抜けた者だけが警察官になれる“ふるい”の場だ。過酷な訓練。厳格な規律。次々とふるい落とされていく生徒たち。そんなサバイバルゲームの様相を呈した異色の警察ミステリーで、井之脇 海は拳銃マニアという趣味が高じて警官を目指す南原哲久を演じる。
成長著しい24歳は、この大作でどんなものを見つけたのだろうか。

ドラマ『教場』より ©フジテレビ

取材・文 / 横川良明 撮影 / 冨田 望


厳しい所作訓練をみんなで励まし合いながら乗り越えた

前編を拝見しましたが、“教場”という閉鎖的な空間の中で次々と暴かれていく生徒たちの本性に惹きつけられました。井之脇さんは南原という役を立体化する上でどんなことを考えましたか?

南原は、みんなといるときは社交的。でも実はガンマニアという一面を持っていて。内に秘めているものと、外に出ているものの二面性は意識しようと心がけました。ただ、クランクインまではそう考えていたんですけど、実際に撮影に入ってみるとなかなか難しくて。

と言うと?

やっぱり警察学校は個性を殺す場でもあるので。自分がやろうと思っていたこと、考えていたことがなかなか出せないことも多かったんです。ただ、これは結果論にはなっちゃいますけど、前編を観て逆にそれが良かったのかなと。何かしら制限されているのはみんな同じ。そんな厳しい集団の中で各々の魅力がちゃんと出ていたかなと感じました。

教場 井之脇 海 エンタメステーションインタビュー

中江 功監督からはどんなオーダーがありましたか?

重厚感のあるストーリーの中で、僕の役に関してはどこかお客さんの息抜きになるような存在になってほしいと。なので、南原は(大島優子演じる)しのぶのことが好きなんですけど、その想いが空回って、しのぶの前では変な顔になっちゃったり(笑)。特に前編に関しては、そんなふうにほっこりできるポイントをつくっていけたらと考えていました。

撮影前には所作訓練もあったそうですね。

主に「点検」と呼ばれる、警棒を持っているかとか、笛を吹けるかという検査の所作をやったんですけど。所作を覚えるだけでも大変なのに、それをみんなで揃えるのが本当に大変でした。あとは行進とか、盾を持って走ったりとか、いろいろとやって。

警察学校は本当に厳しい世界。そこが嘘になるとこのドラマはダメになるとわかっていたので、事前に練習する機会を設けてくださったスタッフさんに感謝ですし、苦しいけど頑張って乗り越えようって、みんなで励まし合っていました。

ドラマ『教場』より ©フジテレビ

生徒役のみなさんとのお話もぜひ聞かせてください。

撮影が始まってからも三浦翔平さんと工藤阿須加さんがみんなに「自主練をやろう!」って声をかけてくださって。動きを全員で揃えられるよう日々トレーニングをしました。それこそちょっとした撮影の合間とかも、誰かがボーッとしていたら「おい、警笛」って声をかけて。どれだけすぐに反応できるかをゲームみたいにして遊んでいました(笑)。

教場 井之脇 海 エンタメステーションインタビュー 教場 井之脇 海 エンタメステーションインタビュー

木村さんは職人だなと思いました

主演の木村拓哉さんとは今回が初めましてですよね。

はい。ずっとテレビや映画で見てきたスターだったので、他の尊敬する役者さんたちとお会いするのとはまた違う緊張がありました。顔合わせのときにご挨拶をしたら「頑張ろうね」と声をかけていただきました。そのときは優しい木村拓哉さんだったんですけど…所作訓練が始まると、もう冷徹な風間教官(=木村の役)でした(笑)。

なんでも生徒たちの所作訓練にも木村さんがいらっしゃったとか。

そうなんです。僕らに対して喝を入れてくださったり。風間教官が木村さんじゃなかったら、こういう作品になっていなかったかもしれないですね。

特に後編では木村さんとお芝居でもがっぷり四つに組む場面がありますよね。実際に対峙してみてどんなことを感じましたか?

木村さんはその場で起こっていることを敏感に察知される方なんだなと思いました。本番中にイレギュラーなこと、たとえば僕が拳銃を落としたとして、そのとき、普通、相手が目の前で物を落としたら反射的に拾ってしまうところを、木村さんは冷たくすっと見るだけだったんです。その目が風間教官そのもので、何があってもカメラがまわり続けている限りは、風間として反応されているんだなと。

ドラマ『教場』より ©フジテレビ

やはり風間教官と対面すると圧を感じますか?

そうですね。あの義眼の目がすごく怖くて。義眼になると、木村さんの感情の入り口が狭くなっているというか、こっちから入り込めない感じがして。木村さんの右目が義眼だったんですけど、お芝居をしているときは木村さんの右目は見られませんでした。逆に、木村さんの左目を見ると、繊細に物事を察知している様子が伝わってきて。あの役づくりは本当にすごいと思います。

対面することで何か引き出されるものが?

木村さんの圧倒的なパワーを目の前にすると、僕はただただ受け身というか。何か仕掛けたいなと思いましたけれど、最終的には木村さんにやられましたね(笑)。

いち仕事人として木村さんから学んだことはありますか?

木村さんはスタッフさん全員の名前を覚えていますし、現場でも絶対に座らないで常に立っていらっしゃいるんです。そういう姿を見て、この方は職人だなって思いましたね。間違いなくスターなのに、決して自分のことをスターだとか思わず、いち俳優部としてそこにいる。その姿勢がカッコよくて、僕ももっと学ばなきゃなと思いました。

教場 井之脇 海 エンタメステーションインタビュー

小学生のときにお世話になった石原先生が、恩師です

では、ここからは井之脇さんの素顔を伺わせてください。本作は学校が舞台ですが、井之脇さんの学校の思い出と言えば?

やっぱり大学ですね。

井之脇さんは、日本大学藝術学部映画学科演技コースのご出身ですよね。

どうしても高校まではいろんなことを学ばなきゃいけなくて、それはそれでいいんですけれど、大学は本当に好きなことを専門的に学べたことが楽しくて。そこでできた友人は今でもかけがえのない存在ですし、大学で学んだことは今の仕事でもすごく役に立っている。実りのある4年間でした。

ちょっとうがった質問で恐縮なんですけど、大学に入る前からプロの現場にいた井之脇さんが、改めて大学で同年代の子たちと学ぶのって、意識の面でバランスが難しかったりしなかったでしょうか?

全然ないです。基本的に映画の話をしているときは僕も子どもみたいになりますし(笑)。自分が他の人より勝っているとか、そういうことはまったく思わなかったですね。

芸術系の大学だと卒業制作もあったりしました?

しました。僕は演技コースだったので出る側ですけど、みんなで話し合って、お金を出し合って、時には一緒に泊まりがけで撮影をしたりして。青春ですよね、やっぱり。

プロの現場での作品づくりとはまた違う喜びが?

映像をつくることの喜びが僕はすごく強いんで、核になる部分は一緒です。ただ、自分たちでやる分、お仕事で関わっている以上の関わりができるのが幸せで。最後に卒業に対しての審査があるんですけど、1学年に30人ぐらい監督がいるから、完成した映画も30本ぐらいあって、それがどれも面白いんですよ。すごくいい友達もできましたし、大学に行って良かったなって思います。

ドラマ『教場』より ©フジテレビ

では、風間教官は生徒にとって先生となる存在ですが、井之脇さんにとって恩師と呼べる先生を挙げるとすれば?

あえてひとり挙げるなら小学4〜5年のときに担任だった石原先生という男性の先生です。僕は小3からこの仕事を始めて。最初はエキストラが多かったんですけど、エキストラってすごく仕事があるので、毎日現場に行くんです。だから、学業との両立が難しかったり、友達にいじめられたりしたんですけど、そのときに寄り添ってくれたのが石原先生。僕が休んだ分、補習をしてくれたり、プリントを用意してくれたり、たくさん助けてもらいました。

いい先生ですね。

すごく優秀な方で、5年生の終わりのときに教育委員会に異動されて、それ以来、一度もお会いしていないんです。

きっと今の井之脇さんのご活躍を喜んでいらっしゃるんじゃないですか。

見てくれているといいですね。あ〜、会いたいなあ。なんかそういう番組の企画とかないですか(と、周りにいるスタッフをチラチラと見てアピール)。

いつか叶うことを応援しています(笑)。

教場 井之脇 海 エンタメステーションインタビュー 教場 井之脇 海 エンタメステーションインタビュー

葛藤の2019年をバネに、2020年はもっと跳ねたい

では最後に、せっかくの新年ですから、2019年の振り返りと2020年に向けての抱負を聞かせてください。

2019年は僕は本厄で、そのせいとは言わないですけど、うまくいかないことが公私共にあって、それに耐えてきた1年間だったかなという気がします。もちろんいろんなお仕事をさせていただいたんですけど、その中で「もっとこうできるのに」とか「なんであんなミスしたんだろう」という葛藤があって。それを頑張って耐えてきたという感じでした。

そういう苦しい時期ってどうやって乗り越えるんですか?

難しいですけど、とことん向き合うしかないですよね。結局何か娯楽に走ったりお酒に走ったりしても逃げでしかないと思うので。

ドラマ『教場』より ©フジテレビ

葛藤というのは、たとえば現場で監督に何か言われて悔しかったとか、そういうことですか?

いろいろありますね。言われないのも嫌ですし、言われた方が自分の悪いところを再認識できるので。もちろん常にベストは尽くしていますけど、うまくいった、やりきったと思える日が2019年は少なかったので、これ以上ないって胸を張れる日を2020年は1日でも多く過ごせたらなと思います。

それは、ご自身の視座が上がったからかもしれないですね。

追っかけっこ状態ですよね。たぶん去年の今頃だったら、今の自分に満足していたかもしれないですけど、今の自分は今の自分に満足できていないので。早く追い越したいです。

期待して応援しています。

ありがとうございます。2019年は僕にとっては社会人2年目。1年目は準備運動で、2年目に跳ねたいと当初は考えていたんですけど、なかなかそう簡単にいかないなというのを知った1年でした。そんな1年がもうじき終わるので、来年は後厄ではありますが、もっと突き抜けたいというか。ぐっと沈んだプレートが一気に跳ね上がるように、溜め込んだフラストレーションをバネにして僕も跳ねられたらいいなと思います。

教場 井之脇 海 エンタメステーションインタビュー

井之脇 海

1995年11月24日生まれ。
映画『トウキョウソナタ』(18/黒沢清監督)で第23回高崎映画祭 最優秀新人俳優賞、第82回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞。連続テレビ小説『ひよっこ』(17/NHK)、ドラマ『義母と娘のブルース』(18/TBS)、日曜劇場『集団左遷!!』(19/TBS)など話題作に多数出演し、注目を集める。2020年は、フジテレビ開局60周年特別企画『教場』(CX)、映画『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』(波多野貴文監督)への出演が控えている。

オフィシャルサイト
http://www.humanite.co.jp/actor.html?id=37

フォトギャラリー

フジテレビ開局60周年特別企画『教場』

1月4日(土)、5日(日)
二夜連続 21時00分より放送

【STORY】
“教場”と呼ばれる警察学校の教室。冷酷無比な教官・風間公親(木村拓哉)が務める初任科第198期短期課程の教場では、生徒たちが日々、早朝6時起床から激しいトレーニングにさらされている。何より厳しいのがルール厳守。その行動は、常に監視体制に置かれ、誰かのミスは連帯で責任を負う。携帯電話も没収され、外出するためには許可が必要。そんな辛苦ともいえる究極の試練が待ち受ける警察学校には、様々な背景を持つ生徒たちが様々な動機で集まってきている。
また、警察学校という閉塞した極限状態で生徒たちが抱える葛藤も様々。「警察学校とは適性のない人間をふるい落とす場である」と考える教官・風間は、生徒がトラブルを抱えた途端、退校届を突きつける非情な男だ。また、いつも生徒たちに突然理解しがたい指令だけを告げて、その場を立ち去ってしまう。次々とふるいにかけられる“教場”という名のサバイバルゲームを生き抜くため、生徒たちの秘密と思惑が渦巻き、いろいろな事件が巻き起こっていく…。
“風間教場”のクラスメートは30人。果たして最後までふるい落とされずに生き残り、何人の生徒が卒業証書を手にすることができるのか?さらに風間は、生徒たちが起こす事件の複雑に絡み合った真相を解決していくことはできるのか?そして、生徒たちに非常識ともいえる謎の試練を与え続ける風間の真の狙いとは?

出演:木村拓哉、工藤阿須加、川口春奈、林 遣都、葵 わかな、井之脇 海、西畑大吾(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、富田望生、味方良介、村井良大、佐藤仁美、和田正人、石田 明(NON STYLE)、高橋ひとみ、筧 利夫、光石 研(友情出演)、大島優子、三浦翔平、小日向文世 ほか

原作:長岡弘樹「教場」シリーズ(小学館)
脚本:君塚良一
演出:中江 功
プロデュース:中江 功、西坂瑞城、髙石明彦(The icon)
制作協力:The icon
制作著作:フジテレビ

オフィシャルサイト
https://www.fujitv.co.jp/kyojo/

オフィシャルTwitter
@kazamakyojo

©フジテレビ

原作本『教場』