Interview

『心が叫びたがってるんだ。』制作陣インタビュー

『心が叫びたがってるんだ。』制作陣インタビュー

長井龍雪(監督)×岡田麿里(脚本)×田中将賀(キャラクターデザイン インタビュー

『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の大ヒットを経て、また3人で映画を作ることになった経緯を教えてください。

長井 実は「あの花」が終わる頃「3人でなんか作っていいよ」と言われたんです。そのときは「また3人で作れる」って喜んだんですけど、「でもその前に『あの花』の劇場版作ってね」って言われました(笑)。一応、最初から劇場でという話でした。

田中 劇場作品で、僕らのオリジナルストーリーということだけ決まってスタートした感じですね。

岡田 高校生がみんなで何かする話にしたいというのは最初からあって、それは部活なのかと話し合っていたときに、飲みに行って「ミュージカルはどうか?」という話が出てきたんです。

田中 その前に、もっとファンタジー要素の強い話のアイデアもあったんですよ。もっと妄想チックというか。その残り香の残り香みたいなものが“玉子”の要素に残ってるんですけど。

岡田 そうですね。閉ざされた世界的な部分は、たしかに残ってる気がします。

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話を考えるときに役割分担はあるんでしょうか?

長井 基本的には岡田さんが作ってくれて、俺と田中さんが「え~?」とか「いいね~」とか言う、つまり感想ですね(笑)。

岡田 でも今回は本当に3人で書いたなっていう感じがしてます。自分だけでは考えられない話になっています。自分の手癖、趣味嗜好というか、どうしても自分が陥りがちなところがあるんですけど、今回はそれがあまりない。「あの花」っぽくない、ちょっと違う文法の作品になっていると思います。

長井 もともと「あの花」と同じようにしようなんてことはひとつも思ってなくて。

田中 「あの花」をふまえてという方法論で最初からやってるとたぶんグチャグチャになってたと思うんですよね。キャラクターを描くときも最初は「あの花」のキャラがチラつくんですけど、すぐいなくなっちゃいましたね。忘れっぽいんで(笑)。

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キャラクターデザインに関してはどういう話し合いをされるんですか?

長井 ある程度話が固まってきたところで田中さんが「こんなんでどう?」と出してくれます。

岡田 話しているその場ですぐ描いて見せてくれたりもしますね。

田中 今回、順は最初に描いた瞬間「あ、いいかも」と思って、2人に見せたら「いいね」と言われたんですね。順がぶれなければもう大丈夫って思いました。

長井 そうですね。逆に拓実に関しては、「もうちょっと主人公感というかヒーロー感があってもいいんじゃない?」と俺がけっこう言ってた気がします。

岡田 (笑)。最初はかわいいわんこちゃんタイプでしたからね。まゆ毛が太くて。

田中 「あの花」のときは恋愛ものという意識がほとんどなかったんですけど、今回は最初から恋愛ものというお題があったので、メインヒロインができたら単純にそのまわりに人を立たせていくという感じで、それぞれのキャラクターの立ち位置が決まっていきましたね。

今回の作品でご自身の青春エピソードが再現されていることはあったりするんでしょうか?

長井 ないですね(笑)。

岡田 付き合ってるけどメアドも交換したことがないという描写は、田中さんと電話してるときに盛り上がった話だったような。

田中 あー思い出した。喋った喋った。

岡田 「それ付き合ってないだろ」って感じなんだけど、一応付き合ってることになってるみたいな(笑)。中学のときはそういうことあるよねみたいな話をしました。まあ今の中学生はないのかもしれないですけど。

田中 岡田と電話したときにそういうあるある話みたいなので締めくくるっていうのが一時期あったんですよ(笑)。

岡田 でもそれは自分がそうだったわけじゃなく周りの話ですけど……。私は全然浮かない青春時代だったので(笑)。

長井 俺も地味を絵に描いたような青春時代でした。八百屋とかいろんなところでバイトしましたけど、そんな話はまったく映画には使えないですね(笑)。

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でも何か叫びたいことがある青春時代だったんじゃないですか?

長井 ないですね(笑)。もう忘れました(笑)。ただ本心なんてだいたいしゃべれないもんじゃないですか。本心をぶちまけて生きてる人だけだったら、ぶっちゃけ生きづらい世の中だと思うんです。本心を言えない人たちが多いよねと思いながら作りました。それが作品のテーマになっていると言えると思います。

今回はミュージカルシーンも見どころですが、描くのに難しさを感じることはありましたか?

長井 いや、難しいも何も本当に手探り状態で。一応劇中劇として、ミュージカルの話じゃなくてミュージカルをする話だからっていうのでなんとかやった感じです。あとは(クラムボンの)ミトさんがいろいろイメージを固めてくれてすごく助かりました。

岡田 ミトさんと何度かお仕事をご一緒させていただいていた経緯があって、「こういう企画があるんですけど」とお話したところ、すごく盛り上がってくださって。音楽一家で、ミュージカルの曲にもすごく詳しくて、私たちが知らない曲もいっぱい提案してくれました。

長井 ミトさんのおかげで「そっか、俺らこういうの作るんだ」っていう気持ちになれたんですよね。

実際にミュージカルシーンを収録してみていかがでしたか?

長井 いわゆる曲収録は初めての経験だったので、単純に面白かったです。

岡田 「この人の声が強いから半歩下がって」とか言われたりとか(笑)。

長井 そういうのを見るだけでも面白かったですし、みんなで一気にやっている感じが作品の中にも熱量として表れるのかなって思いました。

田中 確かに歌を歌っているっていうシーンは来るものがありました。やっぱりひとつのことを大勢でやってる熱量ってすごいものがあるんですよね。

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この作品は、バラバラだった登場人物たちがミュージカルに取り組むことで結びつきを強めていきますが、皆さんにもそういうきっかけや瞬間はあったんでしょうか?

長井 『とらドラ!』のときに会ったわけですけど、まだ俺もみんなも若くて、やりたいことはあるけどどうやったらできるんだって、もがいていた時期だったと思うんです。そういう時期を一緒に過ごしてきたのは大きいですね。

田中 『とらドラ!』のときはたまたま3人が集っただけでしたけど、「あの花」で初めて「3人で」というお話をいただいたのが大きかったですね。同じ3人でまたやれるんだと驚きました。だから3人という意識は「あの花」で初めて持つようになった気がします。僕ら3人にお仕事をくださった方たちに感謝です(笑)。本当にありがたい話です。

岡田 確かに3人で指名されることってないですもんね。それと、「あの花」のときは『とらドラ!』の皆さんと言われていたんですけど、それが今回は「あの花」の皆さんと呼ばれるようになって、ああそういうふうに見方が変わっていくんだって実感しました。

長井 ちゃんと順繰りにしてもらえるのがうれしいですね。次は「ここさけ」のって言ってもらえるような作品になるといいなと思います。

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スタッフプロフィール

監督:長井龍雪

1976年、新潟県生まれ。
木村真一郎のもとで演出を学び、2006年放送の『ハチミツとクローバーⅡ』で監督デビュー。以降、『とらドラ!』『とある科学の超電磁砲』などで監督を務める。2011年に放送されたオリジナルアニメーション『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』が高く評価され、第62回芸術選奨新人賞メディア芸術部門を受賞。同作は後に劇場版も公開され、興行収入10億4000万円を記録した。その後も『あの夏で待ってる』などコンスタントに作品を発表し、『心が叫びたがってるんだ。』は2本目の劇場版監督作となる。

脚本:岡田麿里

1976年、埼玉県生まれ。
Vシネマ、ゲームシナリオ、ラジオドラマなどの脚本に携わる。1998年に放送された『DTエイトロン』の第9話よりアニメ脚本を手がけ始め、以降、『とらドラ!』『花咲くいろは』『凪のあすから』などで脚本やシリーズ構成を担当。その後も精力的に活動を続け、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』では、企画原作からノベライズまでを手がけた。2013年には、これまでの功績が認められ第16回アニメーション神戸賞を受賞している。

キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀

1976年、広島県生まれ。
代々木アニメーション学院を卒業し、1998年放送の『プリンセスナイン 如月女子高野球部』でアニメーターデビュー。以降、『ちょびっツ』『僕等がいた』などに作画監督として参加。2006年から放送された『家庭教師ヒットマンREBORN!』で初めてキャラクターデザインを務める。『とらドラ!』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『あの夏で待ってる』など複数の作品でキャラクターデザインを担当して長井龍雪とタッグを組んでおり、『心が叫びたがってるんだ。』ではキャラクターデザインのほか、総作画監督を担当する。

原作:超平和バスターズ 
監督:長井龍雪 
脚本:岡田麿里 
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
主題歌:「今、話したい誰かがいる」乃木坂46 (ソニー・ミュージックレコーズ)
音楽:ミト(クラムボン)/横山 克 
演出:吉岡忍 
美術監督:中村隆 
プロップデザイン:岡真里子 
色彩設計:中島和子
撮影・CG監督:森山博幸 
編集:西山茂 
音響監督:明田川仁 
企画・プロデュース:清水博之・岩田幹宏 
プロデューサー:斎藤俊輔 
アニメーションプロデューサー:賀部匠美
製作代表:夏目公一朗・植田益朗・清水賢治・中村理一郎・久保雅一・落越友則・坂本健
製作:「心が叫びたがってるんだ。」製作委員会(アニプレックス/フジテレビジョン/電通/小学館/A-1 Pictures/ローソンHMVエンタテイメント)
制作:A-1 Pictures 配給:アニプレックス 宣伝:KICCORIT

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