Interview

Maison book girl エモーショナルな歌声を軸に仕上げたニュー・アルバム。その世界観を4人に訊く。

Maison book girl エモーショナルな歌声を軸に仕上げたニュー・アルバム。その世界観を4人に訊く。

矢川 葵、井上 唯、和田 輪、コショージメグミからなる4人組のアヴァンポップユニット、Maison book girlがニューアルバム『海と宇宙の子供たち』をリリースした。
前作『yume』以来、1年ぶりとなる通算4枚目のアルバムは、シングルとしてリリースされていた「鯨工場」「長い夜が明けて」「闇色の朝」「シルエット」を含む全11曲が収録されているが、これまでになく、個々の歌声に焦点をあてた作品となっている。結成から約5年。混沌とした感情を整理された音で表現し、「無機質でカッコいい」と言われていたデビュー当時から一転、聴き手の心を揺さぶるエモーショナルな歌声を軸に、有機的な身体表現を獲得した彼女たちに、本作に収録された新曲について話を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 森崎純子


アルバムの曲たちが、海と宇宙からできた子供っていう感じなんです(コショージ)

Maison book girl コショージ エンタメステーションインタビュー

最初に衣装のコンセプトから聞いてもいいですか。今、目にしていて、すごく気になってるので。

コショージ 海と宇宙です。(透明な袋状の部分を指して)ここ、妊娠してるんですよ。宿してるんです。ぱっと見はゴミですけど。

和田 西友のチラシも入ってます(笑)。

コショージ このアルバムの曲たちが、海と宇宙からできた子供っていう感じなんです。「SOUP」と「umbla」っていうシングルを出したんですけど、「SOUP」が海で、「umbla」が宇宙というイメージだったので。それを合わせたアルバムっていう感じですね。

アルバムが完成した感想は?

井上 2枚のシングルに入ってた曲も入ってるんですけど、また新しい一面が見れる1枚になったんじゃないかなと思います。

矢川 ブクガの良さは損なわずに、すごいポップになったなと思って。ずっと言ってるんですけど、やっぱりたくさんの人に聴いて欲しい。バラエティに富んだ曲たちが集まったので、どれか1曲でも、多くの人に刺さればいいなと思うし、街で、できたよ!って見せたいアルバムになりました。

和田 葵ちゃんが言ったように、今回、間口の広い曲が多いと思うんですけど、その中に刺すような曲もあって。いろんな人に聴いてもらって、好きになってもらえたらいいなと思います。

和田さんはライブで「レコーディングで泣きました。ヤバいアルバムができたし、今の最高を届けたい」って言ってましたよね。

和田 みなさん、そのことを聞いてくださるんですけど、そんなにいい話でなんでもないんですよね。

感動で泣いたわけでない?

和田 そういうんじゃないです。大変で泣いた方です。

コショージ そういうの聞きたいですよね?

いや、みなさんが聞いてるなら大丈夫です。

コショージ ふふふ。アルバムの制作が結構大変だったんですよ。だから、やっとできたなっていう感じですね。

大変だったのはどんな部分ですか?

コショージ 最近、ボイトレもしてて。だから、これまでは、サクライさんからきた曲を覚えて、ただ歌うっていう作業をしていたのが、先生と練習することができるようになったんですね。1曲に対する熱のかけ方が違ったというか。1日1曲ずつ録っていたので、やっと完成したなっていう感じです。

歌詞の通りに膝を抱えてたり、みんなで手を合わせたりしてて。歌詞もどんどんストレートになってきてるので、初めて聴いても伝わりやすい曲かなと思います(矢川)

Maison book girl 矢川 葵 エンタメステーションインタビュー

では、アルバムに収録された新曲たちについて聞かせてください。「海辺にて」はすでにライブで披露していますが、とても感動を覚えました。

井上 やったー! 嬉しいです。アルバムの新曲の中では一番最初にきたけど、一番最初に披露したのは、渋谷のWOMBで。曲がきてから、何時間後だろ?

矢川 夜中の3時にきて、12時間後にはもう歌ってたね。 

井上 新曲を1曲歌えたらいいよねっていう話をしてて。フリもなしで、歌を覚えるだけだったんですけど、そこからまたボイトレの先生と練習してからレコーディングして。最初に聴いたときは覚えるので精一杯だったんですけど、ライブで披露していくにつれて、すごい好きになりました。壮大な景色が見えるし、個々の歌声に合ってて好きです。

コショージ アルバム制作で1曲目にサクライさんが出してきた曲なので、一番アルバムのイメージに沿っている楽曲なんだろうなって思ったので。歌詞も「長い夜」とか、前のシングルとつながっている部分があって。結構、優しい感じかなって思います。

矢川 振り付けもついてるんですけど、歌詞の通りに膝を抱えてたり、みんなで手を合わせたりしてて。歌詞もどんどんストレートになってきてるので、初めて聴いても伝わりやすい曲かなと思います。

和田 最初に聴いたときは、歌詞的にも、メロディや歌割りも、ここまでストレートなものをいよいよやるようになったか!って思いました。今まではキャッチーだけど一癖ある曲が多かったし、歌声にかかってるような曲を任せられるようになったなんだなって。アルバムの1曲目だったので、特に思いました。

これまで部屋の中での孤独をたくさん歌ってきたからこそ、今、やっと歌えることだなと(和田)

Maison book girl 和田 輪 エンタメステーションインタビュー

アルバム全体としてもそれぞれの歌声が前に出てますし、この曲では特に<僕らはひとりじゃない>っていうフレーズがまっすぐに届いてきました。

和田 初期の方にこれをやってたら嘘っぽかったと思うんですけど、これまで部屋の中での孤独をたくさん歌ってきたからこそ、今、やっと歌えることだなと思いました。

「悲しみの子供たち」はかなりのアップテンポの楽曲で。

コショージ カッコいいですね。唯一、新曲で5拍子。今までのブクガ感もありつつ、なんか聴きやすいなって。

すごい勢いを感じてます。

コショージ そうなんですよ。ガーってきて、ガーっていなくなる、みたいな。でも、ずっと焼きついてる感じがあって。これはライブでもめちゃくちゃ頑張りたいなっていう曲です。

井上 鬼気迫る感じがあるよね。ライブハウスやホールで大きい音で聞いたら、すごい迫力あるんだろうなって思います。今、フリ入れをしてるんですけど、歌うのがすごい大変です。がんばらなきゃ!って感じです。

どんな振りになってます?

井上 手数がバカくそ多いです!

矢川 あははは。言葉使い!!

あはははは。歌もバカクソ早いですよね。

井上 そう! だから、ボーッとしたら終わるんですよ。

コショージ 逆にぼうっとするよね。

井上 わかる。気づいたら終わってます。

矢川 一拍も休むことがない感じ。レコーディングのときから、とにかくカッコ良くって意識して歌いましたね。デモの時点ですごくカッコいい曲だなって思っていたので、歌が入ることでより迫ってくる感じが強くなったし、ライブ映えしそうな曲だなって思います。

和田 変拍子だけど速くて乗りやすくて。振り付けをつけるときに、先生が曲を聞いて、「ここは、2:2じゃなくて、3:1がいい」みたいに汲み取ってくれた。ライブでの振り付けがガイドラインになってて、より乗りやすくなってるなって思います。あと、今回のアルバムの他の曲は4拍子が多いので、この曲を気に入って、「変わったリズムも面白いな」って思ってくれた人がいたら、ブクガの昔の曲も聴いて欲しいなって思ってます。

「ノーワンダーランド」だからね。幻想です、全て(井上)

Maison book girl 井上 唯 エンタメステーションインタビュー

続く、「ノーワンダーランド」もすでにライブでやってます。コショージさんは「楽しい感じの曲です」と説明してました。

コショージ はい。振り付けがちょっとアホっぽいというか、お洒落な感じというか……。

井上 あははは、可愛げがあるよね。

コショージ お客さんもサビの振り付けを覚えてくれて。「かわいいね、あれ」って言ってくれたりするので。もしよかったら、一緒にやって欲しいです。

フリには何か名前はついてますか?

矢川 先生は「ワンダーランド感」って言ってました。

井上 ただ、「ノーワンダーランド」だからね。幻想です、全て。

(笑)矢川さんは何かを拾って投げるフリがありましたよね。

コショージ 蛍だよね、あれ。

矢川 光を掴んで、これから飛び立つ私たちを思ってやってます。

井上 テンポ感がすごい乗りやすくて、やってても楽しいです。

和田 歌入れのとき、どうだっけ? あんまり覚えてないっていうことはスムーズだったんですかね。

矢川 みんなでボイトレしてからレコーディングできたので、すんなりいった曲です。まだあんまり上手にできてないかもしれないですけど、これから上手くなればいいかなと思います。

ある意味、今のMaison book girlを象徴してるだろうし、これからも見えるんじゃないかと思います(コショージ)

Maison book girl コショージ 井上 唯 エンタメステーションインタビュー

この曲も歌い方には熱を感じました。そして、「LandmarK」にはハモリや追っかけコーラスもあります。

和田 はい。ハモリや追っかけもライブでやるので、今、ちょっとドキドキしてます。でも、今までなかった分、できたら面白いし、好きになってもらえたらいいなと思います。

矢川 Bメロで私が歌うところは和田がハモって、和田が歌うところは私がハモってやってるんですけど、支えられている感があって頼もしいし、歌ってて楽しいところですね。

コショージ ちょっと高いから頑張らないと歌えなくて。でも、ある意味、今のMaison book girlを象徴してるだろうし、これからも見えるんじゃないかと思います。「LandmarK」を歌えているかどうかで成長具合がわかるかなって思いますね。

矢川 メンタルの成長というより、本当に技術的な成長がないと歌いこなせないからね。

井上 構成もそうですけど、淡々と歌ってるようで技術が要される曲なので、集中して歌うことが大事になると思うので、頑張ります!

ライブで聴くのが楽しみです。「ランドリー」はワルツっぽく弾んでて。

和田 そうなんですよね。跳ねるリズムなので、サクライさんもボーカルのリズム感を結構、気にしてて。サクライさんに言われたことに合わせて歌うのが楽しかったっていう覚えがあります。

井上 なんだったっけな〜。サビの後ろで、ちょっと不快というか、気持ち悪い音が鳴ってて。でも、メロディと変に合わさってて不思議な感じがして好きです。

Bメロの最後<笑って空を切る>の上がっていくところでグッときました。

コショージ (矢川を見ながら)あっ!

矢川 その話いる? ま、本当にしょうもない話なんですけど、私のBメロのとこの歌が、こしょが「ハロプロさんの曲で聞いたことある気がする」って言ってて。

コショージ でも、なんの曲かわからないんですよ。今、探してるので、「これじゃないか?」って言われたいんですよ。

矢川 ハロプロファンの皆さん、教えてください!

コショージ まーちゃんか、小田さくらさんか、福ちゃん。

和田 まーちゃんぽいね。

コショージ あと、歌詞は「bathroom」と似てて。

1stアルバムのタイトル曲ですよね。いわば、ブクガの始まりの曲でもある。

コショージ 最初とか、バスルームで洗濯したんかな? っていう感じがしませんか? 

和田 バスルームから脱衣所(ランドリー)に出たよね。

井上 ああ、そういうことか。

和田 ドアを1つ開けたんじゃないかな。

コショージ でもさ、最初に服を脱ぐやん。どっちが先なのか謎だよね。

井上 確かに。風呂が先行してる。

コショージ だから、もしかしたら、1曲目が「bathroom」じゃなくて、「ランドリー」だった可能性もあるなって思いますね。Maison book girlの世界観が。

なるほど……。考察し始めるとキリがないので、ひとまず、最後のポエトリーリーディング「思い出くん」について聞かせてください。このアルバムをどうまとめようと考えてましたか。

コショージ 特に毎回、まとめっていう意識はしてなくて。しかも、今回、最後じゃない可能性もあったんですよ。あと、次に書くならこういうのがいいかなって思ってたのがあったんですけど、アルバムの新曲ができてきてから、変えて。ある意味、今までのMaison book girlをなぞっていたりして。だから、結果的には、本当にこのアルバムのために書いた!っていう感じが強いです。アルバムを意識して、今、思ってることや感じてることを全部書いた。本当に“今、現在”を詰め込むことができたなって思います。

“激落ちくん”みたいなノリってことだ。ネーミング的には。洒落てんな(井上)

タイトルにはどんな意味があるんですか?

コショージ 画材屋さんに行ったときに、“想い出くん”って書いてあるものが売ってて。

井上 へー。それ、何?

コショージ 田舎のおばあちゃん家とかに、でっかい額縁が飾ってあったりするじゃん。それを支えるフックのクッション。しかも、本当は“想い出”じゃなくて、ヘヴィーな方の“重いでくん”なの。

井上 あぁ! “激落ちくん”みたいなノリってことだ。ネーミング的には。洒落てんな!

コショージ 座布団みたいなクッション。思い出くん、かわいいなと思って。思い出って記憶だから、記憶自体が、自分はなんだろうなっていう旅をするのはいいなと思って。思い出を擬似化してみました。

<ジリリリリリン>のヘタクソ感は上手だなって思ったけど(笑)(矢川)

Maison book girl 矢川 葵 和田 輪 エンタメステーションインタビュー

矢川さんは、ふわふわのウサギさんですね。

矢川 出来上がったのを聞いて、もうちょっとうまくできればよかったけど……。

コショージ え? めっちゃよかったけど。

矢川 本当に? なんか、無理してる感あるなと思って。

コショージ 不自然感が私は好きだけどな。

矢川 <ジリリリリリン>のヘタクソ感は上手だなって思ったけど(笑)。

コショージ そうそう。ヘタクソにしてほしくて、「練習しないで」って言ったんですよ。

矢川 もっと上手に言えるんですよ、本当は! 

(笑)わざと下手にやってるんだってことは強調しておきます。和田さんは海ですよね。

和田 サクライさんとコショージが、ピアノと言葉だけで聞かせる感じにしようかなって相談しているのを聞いて、フーンって思ったんですけど、録るときも、私は「すすり泣く音が入ってもいいかも」って言われて。葵ちゃんが「下手でいい」って言われたり、唯ちゃんは、「ここは優しいけど、ここは強さ」みたいなディレクションを二人から珍しく受けて。曲たちも私たちの声に重きを置かれていたので、「あ、こっちもだ」って思って、ちょっと楽しかったです。

井上さんは影ですね。

井上 コショージから、「優しい感じ」というか、「包容力を出して」って言われて。それを出せるように、めちゃめちゃかわいい子猫を思い浮かべながらやりました。

コショージ 子猫に対して言ってる感じなんだ? ちょっと母性が出てるよね。

井上 そういう気持ちを作らなきゃと思って。でも、私ももっとできたと思う。

矢川 私、好きだよ。<私は許さないけど、あなたは許してあげて>ってとこ。愛おしい気持ちが出てた。

井上 実際にぬいぐるみとか抱いてやればよかった。

コショージ こしょ、持ってたのに、カワウソ。

井上 そしたらもっといけたと思う。

Maison book girl エンタメステーションインタビュー

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Maison book girl

矢川 葵、井上 唯、和田 輪、コショージメグミ、による4人組グループ。通称「ブクガ」。音楽家サクライケンタが楽曲から世界観の構築まで、トータルでプロデュースを行う。その独特且つ前衛的な音楽性、他には類を見ないパフォーマンスが話題となり2016年にメジャーデビュー。2018年よりポニーキャニオンに移籍し、「ビバラポップ」への出演や、イギリス・ブライトンでの国際音楽フェス「THE GREAT ESCAPE FESTIVAL2018」に日本代表として出演、「ピッコマ」のCMタイアップ獲得、NHK「シブヤノオト」での初歌唱パフォーマンス披露、など活動の幅を拡げる。12月18日にはニューアルバム『海と宇宙の子供たち』をリリース。

オフィシャルサイト
https://www.maisonbookgirl.com

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