HEATWAVE結成40周年企画  vol. 5

Report

HEATWAVE 結成40周年ライブで見せたバンドの原点と頂点。極め続けてなお進化を続ける最強のトリニティに、感謝と祝福が溢れたツアーファイナル

HEATWAVE  結成40周年ライブで見せたバンドの原点と頂点。極め続けてなお進化を続ける最強のトリニティに、感謝と祝福が溢れたツアーファイナル

HEATWAVE結成40周年企画第5弾
HEATWAVE 40th Anniversary Tour 2019
2019年12月22日(日) 日本橋三井ホール


2019年、結成40周年のアニバーサリーイヤー最後を飾ったのは、40th Anniversary Tour 2019ファイナル、東京・日本橋三井ホールでのライブだった。ファンへの感謝を込めて、あえて3人だけで進化を続けるバンドの姿を刻み付けた。選び抜かれた一曲一曲はHEATWAVEの歴史であると共に、オーディエンスの歴史でもあり、感謝を伝える長い拍手が続く。アンコールが終わり、楽器が片付けられても、オーディエンスは帰ろうともせず拍手を贈り続けた。バンドとオーディエンスの密度の濃さ、信頼関係の深さが窺い知れるシーンが何度もあり、重ねてきた月日が感謝となって会場中に溢れていた。そんな中、オープニングとラストを飾ったのは、最新アルバム『Blink』からの選曲。卓越した技量と信頼感が生む有機的なグルーヴ、繊細さとダイナミックさを併せ持つ究極のバンドサウンドを奏でながら、その場に安住することなく常に頂を目指して前進し続けてきた姿勢は、一貫して変わらない。今、同時代を生きるバンドとして、私たちに投げかけたメッセージを読み解く。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 三浦麻旅子


ドアが閉じられた瞬間、三井ホールはアニバーサリーを迎えたバンドと、それを祝うオーディエンスの空間になった

バンドシーンの重鎮、HEATWAVEは、2019年に結成40周年を迎えた。周年ライブといえば、関わりのあったアーティストやバンドを多数呼んでコラボするイベントを行なう場合が多いが、HEATWAVEはそのスタイルを選ばず、潔くワンマン・ツアーを敢行。東京・日本橋三井ホールでツアーは最終日を迎えた。

骨太の音楽をストイックに追求してきたこのベテランバンドが、銀座のステージに立つ。HEATWAVEがこの街に似合うのか、似合わないのか。そんなことは問題ではない。開演が迫って入口のドアが閉じられた瞬間、三井ホールはアニバーサリーを迎えたバンドと、それを祝うオーディエンスたちの空間になった。

ベースが脱けて3人になったHEATWAVEだが、何の不足も感じない。バランスの取れたサウンドが、説得力を増してさえいる

山口洋(vo&g)、細海魚(kyd)、池畑潤二(dr)の3人のメンバーがステージに入ってくる。会場をぐるっと見回した細海が、両手を上げて拍手する。応えてオーディエンスも祝福の拍手を贈る。バンドとファンの相互の信頼の厚さが伝わってくる。

オープニング・ナンバーはリリースされたばかりの最新アルバム『Blink』の1曲目「FREEDOM」だ。アルバムで聴いたときも印象的だった、山口のギターの力強いコード・カッティングが会場に響き渡り、ライブがスタート。『Blink』制作の最後にレコーディングされたという「FREEDOM」には、山口の最近の境地が描かれている。♪失うものがある限り 自由になんてなれないことはわかってる♪という極限の思いを、山口はアジテーションするように叫ぶ。その思いの強さを象徴するように、歌にかけられたディレイがこだまする。ベースが脱けて3人になったHEATWAVEだが、何の不足も感じない。バランスの取れたサウンドが、説得力を増してさえいる。気合いの入ったオープニングに、会場から大歓声が上がったのだった。

2曲目は「明日のために靴を磨こう」。メジャー第3作アルバム『陽はまた昇る』(1992年)に収録されている初期の代表曲だ。細海のオルガンから始まって、そこに山口のコード・ストロークが加わる、ミディアム・テンポの曲だ。アニバーサリー・ライブだからなのか、少しはやる山口の歌を「まあまあ」となだめるように、池畑のスネアドラムが少し遅れてリズムを刻む。その気持ちが山口に伝わって肩の力が抜けると、今度は池畑のドラムが山口の歌の背中を押す。このあたりのメンバー間の“音楽の会話”が興味深い。山口は歌詞を少し変えて♪日本橋へ空を飛んできたんだよ♪と歌うと、場内から歓声が上がった。軽快な口笛のような音色の、細海のオルガン・ソロが心地よい。

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3人は必要最小限の音で、ソウルフルなグルーヴを繰り出す。山口のロマンティックな側面が、フロアを柔らかく包み込む

「よく来たね、あんたたち。今日は楽しんで帰りんしゃい。次は東京の歌をやるね」と山口。最初のピークは、3曲目の「トーキョー シティー ヒエラルキー」(1996年)だった。山口のギターがメジャーセブンス・コードを美しく奏でる。細海のエレピが滲んだ雰囲気を醸し出す。池畑は右手でシェイカーを振り、左手でリムショット(注:スネアドラムの縁を叩く)をし、右足でキックドラムを踏む。3人は必要最小限の音で、ソウルフルなグルーヴを繰り出す。東京で生きるルールを優しく説く歌詞が、フロアに沁みていく。山口のロマンティックな側面が、フロアを柔らかく包み込む。桜井和寿がBank Bandとしてこの曲をカバーしているが、それも納得のビューティフルなパフォーマンスとなった。

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夕陽が海に沈む様子を彷彿とさせる“音の景色”は、歌詞と呼応して、しみじみとした余韻を耳に残した

「40年前、HEATWAVEを作って、まさかここまでやれるとは思っていなかった。メンバー、スタッフ、あんたたちのお陰。いや、あなた方のお陰(笑)。本当にありがとう。次は新しいアルバムに入ってる、40年目の景色の歌」。

「HEAVENLY」(2019年)はシンプルな情景描写の中に、この40年間の思いが込められている。山口はその思いをロングトーンで表わす。信じられないくらい長く続く歌声に、観客から拍手が起こる。エンディングは、“自力フェイドアウト”。3人が次第に楽器の音量を絞り、音が消え入りそうになるまで集中を続ける。夕陽が海に沈む様子を彷彿とさせる“音の景色”は、♪夕暮れの海に 太陽が輝き 描きだすひかりの道♪という歌詞と呼応して、しみじみとした余韻を耳に残した。この“自力フェイドアウト”はこの夜のライブで何度か聴くことができたが、どれも素晴らしいものだった。

続く「灯り」(1991年)は一転して、シビアな言葉で山口の変わらない人生観を表わす。誰かを憎むために生れてきたんじゃないと歌う裏側に、かつて憎しみと過ごした日々の傷が見えてくる。その困難な道をシンボライズするように、山口の吹くマウスハープ(注:ブルースハーモニカ)が鋭く響く。この歌は、人々が何かに追われているように街を歩き回る年の瀬にピッタリだ。歌い終わると山口は「長谷川博一さん、ありがとう」と、昨年亡くなった古い友人の名前をそっと呼んだのだった。

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今、伝えたいことがあるからこその選曲。HEATWAVEが40年かけて獲得したエンターテイメントがここにあった

ここまで聴いて思ったのは、セットリストに一本、芯が通っていることだった。40周年を記念して作られた『Blink』からの最新曲と、HEATWAVEの屋台骨を支えてきた曲たちが、バンドのヒストリーを示唆しながら並べられている。代表曲を連発するお祭り的なサービスメニューではなく、今、伝えたいことがあるからこその選曲になっている。その上で、お祝いに駆けつけてくれたオーディエンスたちに楽しんでもらおうという意図もある。HEATWAVEが40年かけて獲得したエンターテイメントがここにあった。

中盤では2017年のアルバム『CARPE DIEM』の核となった「BLIND PILOT」、2007年のアルバム『land of music』からの「フリージア」で、ダイナミックな演奏を披露する。ちなみに「フリージア」は、「みんながバカ騒ぎする桜は苦手だけど、フリージアはいいね」という実に山口らしい自然観から生まれた曲だ。

リスペクトするジョー・ストラマーとのエピソードを披露した「STILL BURNING」(2004年)は、タイトル通り“心の火”をテーマにした曲。山口の火の出るようなコード・カッティングを強調するように、客席に向かってライトが当てられる。逆光に浮かぶシルエットから吐き出されるシャウトは、HEATWAVEのこれまでの孤独な闘いをそのまま表わしていた。

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♪魂は荒野をめざす♪という歌詞が、改めてこのバンドの姿勢を伝えてくれる

ライブが終盤に差し掛かると、「そろそろ魚のアコーディオンを聴きたくないか?」と山口が叫んで、愛用のグレッチを掻き鳴らす。池畑がヘビーなキックドラムを打つ。そして細海がアコーディオンを身体を揺らしながら全身で弾き始めると、観客は大拍手。「荒野の風」(1995年)だ。HEATWAVEならではのアイリッシュ風ダンスミュージックに、会場も揺れ出す。歌の後半をオーディエンスが歌う。♪魂は荒野をめざす♪という歌詞が、改めてこのバンドの姿勢を伝えてくれる。終わると山口は「Ladies & Gentlemen,ホソミサカナー!」と敬意を込めてコールしたのだった。

すかさず池畑がビートを叩き出す。山口が「トーキョー!」とオーディエンスに呼びかける。HEATWAVEのアンセムといえる「ボヘミアンブルー」(1996年)で、場内が♪ハレルヤ イェー!♪と叫ぶ。曲の途中で山口が、出身地を織り込んで細海と池畑を改めて紹介する。一気に会場が熱を帯び、盛り上がっていく。この曲のエンディングで池畑が、ドラムの見事なカデンツァを決めた。本当に存在感のあるドラミングだった。

「みんな、元気になったかな? 魚と池畑さんのお陰でここまでやって来れた。幸せだよね。二人に拍手! 来年、いい年にしてね。あと1曲だけ、風を吹かせるよ」と、ラストナンバーの「新しい風」(1997年)をアカペラで歌い出す。観客は立ち上がってハンドクラップをする。一体感に満ちたエンディングになった。

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これ以上ないほどの「満月の夕」が、HEATWAVEとオーディエンスたちの歴史を祝福していた

アンコールで山口が感謝を述べる。「40年、やってきて、今がいちばん楽しい。辛いことがあったら、この風景を思い出すよ」。アコースティックギターとマウスハープでスタートしたのは「STARLIGHT」(2011年)。ロッカバラードのリズムに合わせるように、ミラーボールがゆっくりと回り出す。

そして、この日のいちばんは「満月の夕」(1995年)だった。細海のシンセと山口のアコギ、池畑のハイハットとリムショットが、淡々と背景を作る。いつもよりゆったりしたテンポで、そのテンポの絶妙さは歌に入ると一層際だった。特にサビで、山口の歌が哀しくもたくましく響く。ハーモニーボーカルが無いせいもあって、むき出しの感情がストレートに伝わってきて感動的だった。これ以上ないほどの「満月の夕」が、HEATWAVEとオーディエンスたちの歴史を祝福していた。

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「40年なんて、一瞬だった。みんなが慣れてない曲で終わるってHEATWAVEらしいよね。HEATWAVEを愛してくれてありがとう」

「40年なんて、一瞬だった。『Blink』の最後に入れた曲をやります。みんながまだ慣れてない曲で終わるって、HEATWAVEらしいよね(笑)」。最後の曲は「夢に取り組んでみよう」。10分近い熱演の果てに、自力フェイドアウトでライブは終わった。

「HEATWAVEを愛してくれてありがとう」と山口。池畑は珍しく会場にドラム・スティックを投げ入れる。魚が加わって、3人並んで深々とお辞儀をしてステージを去っていった。まだ熱の残る会場に、ジョン&ヨーコの「ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)」が流れる。オーディエンスはそれを聴きながら、立ち尽くしていた。

40年のキャリアならではの充実と、40年とは思えないフレッシュさが交錯する、ファンへの感謝に満ちたアニバーサリー・ライブだった。

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HEATWAVE 40th Anniversary Tour 2019
2019年12月22日(日) 日本橋三井ホール

SET LIST

1.FREEDOM
2.明日のために靴を磨こう
3.トーキョー シティ ヒエラルキー
4.MR.SONGWRITER
5.HEAVENLY
6.灯り
7.オリオンへの道
8.BLIND PILOT
9.フリージア
10.GIRLFRIEND
11.STILL BURNING
12.荒野の風
13.ボヘミアンブルー
14.新しい風
EN
1.STARLIGHT
2.満月の夕
3.夢に取り組んでみよう

HEATWAVE OFFICIAL SHOP

ライブ情報

50/50 (山口洋&古市コータロー) first tour 2020『俺たちの場所』
1月28日(火) 浜松 窓枠
2月4日(火) 神戸 VARIT. ※SOLD OUT
2月14日(金) 仙台 CLUB JUNK BOX ※SOLD OUT
2月19日(水) いわき club SONIC iwaki
3月5日(木) 吉祥寺 STAR PINE’S CAFÉ ※SOLD OUT

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新日本製薬 presents SONGS&FRIENDS 佐野元春『Café Bohemia』*イベント出演
2月8日(土)  LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
【出演】佐野元春
GLIM SPANKY、小坂忠、田中和将(GRAPEVINE)、堂島孝平、中村一義、山口洋(HEATWAVE)、山中さわお(the pillows)、RHYMESTER、LOVE PSYCHEDELICO ※五十音順
THE HOBO KING BAND <古田たかし(Dr)、井上富雄(B)、Dr.kyOn(Key)、長田進(G)、山本拓夫(Sax)>

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山口洋 (HEATWAVE) solo tour『Blink 40』
2月16日(日) 青森県弘前市 Robbin’s Nest(ロビンズネスト)
2月24日(月・祝) 千葉県千葉市 Live House ANGA(アンガ)
2月27日(木) 静岡県静岡市 LIVE HOUSE UHU(ウーフー)
2月29日(土) 岡山県岡山市 BLUE BLUES(ブルーブルース)
3月3日(火) 愛知県名古屋市 TOKUZO
3月14日(土) 茨城県水戸市 Jazz Bar Bluemoods(ブルームーズ)
3月26日(木) 京都府京都市 coffee house 拾得(Jittoku)
3月28日(土) 高知県高知市 シャララ
3月30日(月) 香川県高松市 Music&Live RUFFHOUSE(ラフハウス)
4月1日(水) 大阪府大阪市 南堀江 knave(ネイブ)
4月3日(金) 愛知県豊橋市 HOUSE of CRAZY(ハウスオブクレイジー)

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HEATWAVE

山口洋(vocal,guitar)、細海魚(keyboard)、池畑潤二(drums)。1979年、福岡にて山口洋を中心に結成。以来アルバム14枚、ミニアルバム3枚、ベスト盤1タイトル、セルフカヴァー・アルバム1タイトル、BOXセット3タイトル、ライヴ盤7枚を発表。1995年発表のアルバム『1995』には、阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。2018年3月に渡辺圭一が脱退し、その後3人で新生HEATWAVEとしての活動を開始。バンド結成40周年となった昨年は、高松、長野、仙台、福岡、大阪、東京と6カ所を廻るHEATWAVE 40th Anniversary Tour 2019を開催。12月22日の日本橋三井ホールでファイナルを迎えた。スタジオ・アルバムとしては2年ぶりとなる新作『Blink』を、ライブ会場とオフィシャルショップで販売しているが、1月8日より、店頭などでの一般発売ならびに配信がスタート。
山口洋は、1月28日浜松 窓枠を皮切りに古市コータロー(ザ・コレクターズ)とのユニット“50/50”によるfirst tour 2020『俺たちの場所』をスタートするのに加え、2月16日青森県弘前市 Robbin’s Nest(ロビンズネスト)から山口洋(HEATWAVE)solo tour『Blink 40』も決定しており、精力的なライブ活動で2020年の活躍も期待される。2月8日には佐野元春の名盤『Café Bohemia』を複数のミュージシャンで演奏するイベントにも出演する。

オフィシャルサイト
http://no-regrets.jp/

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