映画『アズミ・ハルコは行方不明』  vol. 4

Interview

枝見洋子プロデューサーと松居大悟監督の最強タッグでここだけの製作秘話

枝見洋子プロデューサーと松居大悟監督の最強タッグでここだけの製作秘話

松居大悟監督の最新作『アズミ・ハルコは行方不明』公開特別連載。12月3日〜の公開直前の最終回の対談ゲストは、松居監督と同い歳の枝見洋子プロデューサー。27歳で出会い、29歳で撮影し、現在、31歳を迎えた2人は、この3年間でどんな人たちと関わり、どんな時間を重ねてきたのか。本作が生まれるきっかけとなった、2人の出会いから話を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 関信行

松居さんとなら、青春映画の新しい形ができるんじゃないか

映画『アズミ・ハルコは行方不明』で初タッグを組んだお2人ですが、初めて会ったのはいつでしたか?

枝見 ハロウィンの季節になると思い出すんですけど、ちょうど3年前ですね。ハロウィンで浮き足立つ街の中を歩いて、渋谷のユーロスペースで上映されていた(松居監督作)『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(13)を観に行ったんです。同い歳の映画監督で、自主映画ではなくメジャーの『アフロ田中』(12)でデビューしたっていうニュースも見ていたので興味があって。

松居 僕はお客さんの顔が見たいと思っていたから、イベントがない日も劇場に行っていて。ユーロスペースのロビーに立っていたら、クリープハイプのファンであろう子たちの中から、ひとり、僕の方に向かって歩いてくる人がいて。

枝見 当時は面識がなかったんですけどね。

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もともとはどんな印象を持っていました?

枝見 “童貞監督”みたいな、男子っぽい売り方で取り上げられていらしたので、最初は一緒に作品を作るイメージを描けずにいました(笑)。ただ、周りに自主映画を撮ってる人がいっぱいいるなかで、ちゃんと大きい作品を手がけてらしたので「おぉ!」とは思ってましたね。

松居 僕も枝見さんが『桐島、部活やめるってよ』(12)のプロデューサーのひとりとしてお名前を連ねていることは知ってて。その『桐島〜』の別のプロデューサーの佐藤(貴博)さんから「お前に紹介したいヤツがいるんだ。同い歳の女性プロデューサーで、『桐島〜』をやろうって言い出した人なんだよ」っていう情報は得てて。

枝見 私も佐藤さんから松居さんと飲んだっていう話は聞いていて。『自分の事ばかり〜』の宣伝やポスターの雰囲気が『アフロ田中』のときとは全然違う方向で、観に行かないといけない気がしたんですよ。

松居 公開されて結構、すぐに来てくれましたよね。始まってすぐ。

枝見 2日目かな。そしたら、20代後半に差しかかってる女の子の描き方に、ほかの映画ではあまり見たことのないリアリティと品の良さを感じて。押しつけがましい悲しさや苦しさじゃなくて、そのひとつ上をいってると思ったんですよ。だから、映画を観ながら「早く連絡しなきゃ」ってすごく焦って。そしたら、上映後のロビーにふわふわした感じで立ってる人がいて(笑)。「あ、松居さんだ!」って。

松居 そこで「枝見さん、名前聞いてます」って名刺交換をして。僕もそのときに「すぐにメールしなきゃ」って思ったんですよね。なんか一緒にやれる気がするって。

枝見 だから、具体的な作品がどうとかいうよりは、ただ、松居さんと何かやってみたいっていうのが最初でしたね。

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2013年10月末に出会って、この企画が動き出すまでにどのくらい時間がかかってますか?

松居 最初の2ヵ月くらいは、お互いに「こういうのはどう?」っていう作品を持ち寄って話していました。女性作家さんの本をいっぱい読んで。

枝見 『自分の事ばかり〜』を観て、松居さんは女の人の描き方が面白いなと思ったので、なんとなく女の人の話がいいかなと思っていました。あと、せっかく同い歳だから、等身大のものを作りたいという思いもありました。松居さんとなら、青春映画の新しい形ができるんじゃないかって。

松居 それで、その年の12月に山内マリコさんの小説『アズミ・ハルコは行方不明』が出て。

枝見 そのとき私はちょうど27歳で、主人公の〈安曇春子〉と同い歳で。すごく共感したんです。“死にたい”ではなく“消えたい”っていう感覚とか、男性との関わり方とか、年齢のこととか、いろんなことが自分ととても近くて、松居さんにも読んでもらって。

松居 いわゆる女性小説とも違った感覚があったのと、僕は単純に、ステンシルがすごく映像的だからやってみたいなと思って。

枝見 〈ユキオ〉と〈学〉と〈愛菜〉っていう20歳の3人の話が、若い子たちのダメな青春みたいなものだったので、わりと松居さんの得意分野だと思ったし、そこから手がかりが見つけやすいっていうのもあったかもしれないです。時間軸がずれてる構成や、春子が行方不明になるっていうことも映画的だし、文字から動き出して立体的になりそうな匂いみたいなものがあった気がします。だから、わりと読んですぐに2人で「これだね!」ってなりました。

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原作が決まって、脚本は劇団ミナモザの主宰で、パキスタンで起きた日本人大学生誘拐事件を描いた『彼らの敵』などを手がけた瀬戸山美咲さんが入られています。松居監督はこれまで脚本も自分で手がけることが多かったと思いますが。

松居 「松居さんが書かないほうがいい」って言われました(笑)。

枝見 単純に、2人で話してると一対一だから、三角形にしたかったんです。やっぱりどこか不安だったから。2人じゃ弱小だし、もうひとり欲しいっていうのは、最初から考えていました。

松居 そうそう。味方を増やしたかったのもあるし、もうひとつ目線も増やしたかった。だから、自分で書かないっていうことに関しては抵抗もなかったし、むしろ、そのほうがいい。この原作は技術というか、説得力がないと書けないと思ったから。

枝見 瀬戸山さんは年上なんですけど、社会派というか、わりと男っぽいものを書いてらしたんです。ちょうどその頃、マイルドヤンキーが社会のブームになっていた頃だったので、現代の若者の閉塞感や郊外文化を扱うときに、瀬戸山さんみたいな角度で、社会や今の若者を見ている人がこの作品には必要だと思って。自分のことを表現したいという主観的な欲求よりも、瀬戸山さんはもっと、客観的な視点を持っているという印象で、松居さんとも全然違うから面白いかなって。

松居  “演劇”っていう共通言語もあったからね。

枝見 そういう縁で、するすると運ばれて、結果こうなったという感じです。

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プロデューサー、監督、原作、脚本家が揃って、次はキャスティングですよね。

松居 それぞれに〈春子〉のイメージを持ち寄って、「せーの」で言う会があって。2人とも蒼井優だったから、「じゃあ、そうしよう」ってなって。なんとなく感覚的に同い歳がいいなと思っていたので、僕は蒼井優しか考えてなかったんですね。

枝見 蒼井さんには照れてしまって言えないですけど、映画を観るようになったきっかけが、『リリィ・シュシュのすべて』(01)とか『害虫』(02)(主演は宮﨑あおい)とかなんです。同世代だからこそ、ずっと憧れがありました。

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先ほどから“同い歳”や“同世代”という言葉がやはりキーワードのように出てきますよね。

枝見 私は単純に、松居さんの作品を観たときに、若い人たちで作ってるイメージがあったし、松居さんとやるなら、ほかの人とできないことをやりたいって思ってました。

松居 『アフロ田中』のときは上の世代の方たちとやったんですけど、そこで結構、こてんぱんにされて。その後、クリープハイプの映像作品で、1個上の尾崎(世界観)くんと作ったときに共通言語がいっぱいあって、それがちゃんと絵に反映されていった手ごたえがあったんですよね。環境的にはまだ同世代で作ることはなかなか難しくて、映画界の上が詰まってる閉塞感みたいなものも感じていたんですけど、今はやっと、枝見さんもひとりでプロデューサーを張れるくらいになってきているし、ようやくカウンターが始まるぞっていうモチベーションがありましたね。

枝見 世代間の意識というのはあります。

松居 僕は、上の世代が作ったものを、上の世代がいいっていうことが腑に落ちなくて。

枝見 あはは。『桐島〜』は珍しいタイプの盛り上がり方をした作品だったんですけど、作ってるのは結局全員、上の世代の方々だったから、行き止まりを感じたというか。本当は若い人たちがやるべきなのかも、という悔しさがありました。自分が10代の頃に見ていた20代の活躍って、すごかったから。そこに、自分がもう年齢的に入ってしまうから、同年代の仲間を探している感じはつねにありました。同じように感じている人がいるはずなのに出会えないっていうもどかしさはすごいありましたね。

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