映画『ちはやふる -上の句・下の句-』  vol. 4

Review

【レビュー】『ちはやふる』誰ひとり甘やかされずに己と対峙する青春映画

【レビュー】『ちはやふる』誰ひとり甘やかされずに己と対峙する青春映画

この映画はさまざまな観方が可能だが、まずは競技かるたで結びついた幼なじみの男女三人の物語と言えるだろう。

三人のうち、ふたりはかるたの天才であり申し子である。だが、残るひとりはある意味、凡人。猪突猛進な女子天才のことがこの凡人男子は好きで、彼にとっては恋のライバルであるはずの天才男子は、かるたの世界から離脱する。この、凡人ならではのアンビバレンツな気持ちが通奏低音として流れているからこそ、この二部作は観る者のこころに、なにかを語りかけてくる。

百人一首講座 映画『ちはやふる』【下の句 編】

自分より優れている者に対する憧れと嫉妬はコインの裏表であり、それはあるとき男女間の機微にも影響を与える。明朗快活な部活映画としての側面と、こうした普遍性あるナイーブなゆらぎのドラマが、背中ごしに見つめあっている感覚。かるたにおいては弱者であるはずの凡人男子は、それでも自分にできることを見出し、天才女子を護ろうとするし、天才男子と一対一で向き合おうとする。そんな等身大の潔さをキャスト陣が体現するさまが、胸を打つ。

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全力投球した挙句、毎度昏睡状態になる、ある意味漫画でしかありえない設定のヒロインを、広瀬すずは、ボディアクションのみで成立させており、その身体能力の高さはまさに大器の証明だ。そんな彼女に惹かれる男子を、野村周平はぎりぎりまでカッコつける男の子のクールネスを手放さないまま体現、はっとさせる。そして、一歩も二歩も距離を置きながら、自分自身に決定を下す天才男子の孤独を、真剣佑はあえて柔らかく表現しており、澄んだスープのようなその味わいは格別だ。後半、そんな彼らの前に立ちはだかるクイーンに扮する松岡芙優は、天才とも凡人とも異なる風情で存在し、この三人の関係性に喝を入れる。

登場人物が誰ひとりとして甘やかされてはおらず、それぞれがそれぞれの場所で、己の可能性と対峙する。これは、実に堂々たる青春映画なのだ。

文 / 相田冬二

映画『ちはやふる―下の句―』

映画「ちはやふる」真島太一役 野村周平インタビュー

広瀬すず主演で、末次由紀が原作の大ヒットコミックを実写映画化した映画「ちはやふる」2部作の後編。主人公の綾瀬千早と幼なじみの真島太一、綿谷新の3人を中心に、競技かるたに打ち込み、全国大会を目指す高校生たちの青春と群像劇を前作同様『タイヨウのうた』などの小泉徳宏監督が描く。高校で再会した幼なじみの太一(野村周平)と一緒に競技かるた部を作った千早(広瀬すず)は、創部1年にして東京都大会優勝を果たす。自分をかるたに導いてくれた新(真剣佑)に優勝報告をしたときに、新からの告白を受けて動揺する千早だったが、全国大会のために仲間たちと練習に打ちこむ。そんな中、千早は同い年で日本一となった若宮詩暢(松岡茉優)の存在を知る。

<スタッフ>
監督:小泉徳宏、原作:末次由紀、脚本:小泉徳宏
<キャスト>
広瀬すず(綾瀬千早)、野村周平(真島太一)、真剣佑(綿谷新)、上白石萌音(大江奏)、矢本悠馬(西田優征)、森永悠希(駒野勉)、松岡茉優(若宮詩暢)

<配給>
東宝 (2016年、103分)

コミック『ちはやふる』(末次由紀/講談社)
ちはやふる

2007年から『BE・LOVE』で連載がスタートし、現在も好評連載中の末次由紀の人気漫画。魅力的な登場人物たちの人間ドラマと、かるたの迫力のある試合描写が高く評価されていて、2009年に第2回マンガ大賞2009を受賞、「このマンガがすごい!2010」のオンナ編1位を獲得、2011年には第35回講談社漫画賞少女部門を受賞している。2011年には日本テレビ系でアニメ化され、こちらも人気を呼んだ。


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©2016「ちはやふる」製作委員会
©末次由紀/講談社

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