Interview

ZARDの志を継ぐライブがDVD化。バンマス大賀氏とディレクター寺尾氏に話を聞く(前編)

ZARDの志を継ぐライブがDVD化。バンマス大賀氏とディレクター寺尾氏に話を聞く(前編)

自分たちがライブでやる時は、さらに息遣いが聞こえてくるような演奏をしようという意識を持って

今回のDVDに収録されている、5月に行われたZARDの25周年ライブですけれど、最初は行う予定ではなかったそうですね?

寺尾広 そうなんです。20周年ライブが2011年にあったんですが、あの時が節目で最後であろうと発表していたんです。ただ、あまりにも問い合わせが多くて。じゃあ、25周年をちゃんとした形でやったほうがいいんじゃないかなということになりました。まず、前哨戦で2015年2月にモバイルファンクラブ限定のイベントを東京と大阪でやりまして。そこから、ライブをやったほうがいいという話が出てきたんです。どんなことをやったらファンのみなさんに喜んでいただけるのか、ZARDを知らない方に伝えていけるのかと考えて、昨年の12月31日にパシフィコ横浜で25周年のキックオフイベントとしてScreen Harmony(フィルムコンサート)ZARDギャラリーを開催して、今年2月にはニコ生(25時間特番)も行いました。ライブに関しては、去年の秋頃にはライブを具体的にやろうということで場所を押さえまして、最終的に選曲したりメンバーとの打ち合わせをしたりというのは結構ギリギリでしたけれど。

選曲はどなたが中心になって進められたんですか?

寺尾 長戸大幸プロデューサー(ビーイング創設者。ZARD、B’z、大黒摩季、T-BOLAN、WANDS、倉木麻衣など数多くのアーティストを発掘し育てた)ですね。特に今回長戸プロデューサーは映像未発表曲やライブでやったことのない曲をきちんとお届けしていきたいという思いが強くあられました。もちろん、叩き台はあらかじめ僕と映像スタッフで作るんですけど、長戸プロデューサーからさらに細かいチェックや指示を頂きました。「サヨナラ言えなくて」に関しては、念押しのお電話を頂きました。“あれ、入れてるよね”。“前半のほうに入れよう”と。

前半がいいというこだわりは、どうしてなんですか?

寺尾 最初のほうに未発表映像が多いと思うんですけど、緊張感がある状態でじっと見てもらいたいんですよ。後半はだんだんみなさん、スタンディングになってライブっぽくなるので、前半はちゃんと聴いてほしい、見てほしいというのがあったと思いますZARD/2016live_cap_p2_3

大賀好修 ただ、曲順はリハーサルをやりながら聴いていただいて、それで流れを変えたりもありました。

今回、初演奏曲が5曲あるというのが意外でしたけれど。

寺尾 未発表映像はまだあるんじゃないかって言われていますね、ファンの方からは。今回は映像のクオリティ、雰囲気を見て、演奏しやすいかどうかも含めて考えています。

大賀さんは、初演奏する曲は新鮮だったりしました?

大賀 ZARDは最初のライブもレコーディングもやらせてもらっているので全曲、自分にとって身近な存在なんですけど、久しぶりに聴いたこともあって、何か新鮮な気持ちで曲を演奏する感じでした。

打ち合わせはギリギリという話でしたけど、リハのスケジュールもタイトで?

寺尾 2週間ぐらいですね。休みもはさみながらありましたけど。その手前の段階でみんなに集まってもらって、弾き分けの打ち合わせをしたんですよ。大賀君に音頭をとってもらって、森丘直樹君(ギター)にはここを弾いてもらおう、大楠雄蔵君(キーボード)にはこうしてもらおうとか。

大賀 CDに入っているフレーズに関しては、その音を大切にしようというテーマがあって、全員が受け持つ各パートを聴き込んで(臨)んでいます。僕はZARDはバンマスもやらせてもらっているので、全員のパート、セクションのフレーズも全部覚えるようにしています。ギターがこのフレーズだから、メンバーにこう弾いてほしいとか。

寺尾 ドラムも、CDの通りに叩きつつも、ちょっと後ろのタイミングに引っ張って、フィルに行って、次のところで戻ったほうがいいとか。「My Baby Grand~ぬくもりが欲しくて~」の最後の「Just leave a tender moment alone」は、坂井さんがちょっとゆっくり歌を合わせているので、クリック通りにポンポン演奏すると何かおかしいんです。そこを大賀君が感じ取ってくれて、全員に“ここはもうちょっと溜めたほうがいいんじゃないか”とか。

大賀 そういう意味で、普通のライブはドラム中心ですけど、このライブに関しては歌中心です。もちろん、全ての音楽は歌中心ですけど、完全にドラムのリズムに合わせるんじゃなくて、歌のリズムに合わせる。

そうですね、歌のトラックは動かせないですから。

寺尾 動かせないですね。

大賀 それがかえって面白いなと。やっていて、ここで坂井さんはこう思われて歌われていたのかな、こういう気持ちを表現されたくてこういうタイミングにされたのかなとか感じられて、面白いですね。

寺尾 面白くて楽しいけれど、プレッシャーでもありますね。坂井さんは現実にここをこうしたいとリハで我々に言うわけじゃないですけど、歌で示してくれているので。それをきちんと完全なものにしてお客さんに届けようという感じでリハをやりますね。

寺尾広

寺尾広

大賀君は指揮者としてエンディングのタイミングを合わせる

不思議ですね、音源のタイミングと違うほうがライブで合うというのは。

大賀 そこは極端に言うと、音源の音もベストなんですけど、自分たちがライブでやる時は、さらに息遣いが聞こえてくるような演奏をしようという意識を持っているからなんです。ご本人がそこにいらっしゃって、見に来てくださるお客さんと一緒に楽しんでいるという雰囲気になるように考えながら演奏しています。

寺尾 完全コピーを目指しながらも、その先にあるもの、音楽の持っているものを届ける、ということですね。

大賀 フレーズはしっかりコピーして、そのうえでライブ感はちゃんと出したいんです。だから、エンディングもメッチャ大げさだったり。あと、映像を見ながらエンディングを締めるよう、考えてやっています。実際に見ながら、映像とともに音を切るようタイミング合わせをする。全曲、そうしていますね。

寺尾 それは音楽に対する気遣いでもありますけど、映像は止まってくれないので、それに合わせないと変な感じがするということでもあるんです。坂井さんがそこにいて歌っているということを最大限に意識するために、大賀君は指揮者としてエンディングのタイミングを合わせるという。

このライブはこれまで何度か行われていますけど、今回ならではの違いというのはありました?

大賀 前回の2011年の時はこれがファイナルと言われていたんですけど、ステージに上がる前に気を引き締める円陣で、“これがファイナルだと思っていないので、次につながる素敵なライブにしよう!”って言っていて。それが現実化したので、メンバー一同、これまでとは違う特別な気持ちでやれたんじゃないかと思います。

演奏する側も、待っていたライブをやれている!という実感が強かった?

大賀 そうですね。できたことに感謝しているというか。僕たちも参加できて光栄だと、改めて思えたライブでした。

寺尾 確かにそうですね。関係しているスタッフ全員、お客さんももちろんそうでしょうけど、バンドメンバーもそうでした。いずれにせよ25周年を無事にお届けできて良かったと思います。

大賀好修

大賀好修

入れ替わりゲストが登場する構成は、華やかで貴重なものになったと思います

あと、d-project with ZARDのアレンジバージョンがいくつかありましけれど、これまでと違うアレンジでの演奏も新鮮だったのでは?

大賀 内容がちょっとダンサブルになっているので、そこはこれまでと違う軽快な部分を意識して演奏しました。

寺尾 d-projectは長戸プロデューサーの元に集まったクリエイター集団。第一弾がZARDの曲と歌を新しく蘇らせた「d-project with ZARD」です。体を思わず動かしたくなるようなダンサブルなロックで、中盤戦の目玉になったのではないかと思います。

大阪公演では「愛が見えない」がそうでしたね?

寺尾 そうです、大阪公演は森丘君がd-projectで手掛けたアレンジでやりました。ちなみに「愛が見えない」の曲に関して東京公演では、ゲストの小澤正澄君(ギター/ex.PAMELAH)に来てもらい、往年のZARDのアレンジでやりました。一方、大阪で「愛が見えない」のd-projectをやった枠で、東京では「愛は暗闇の中で」をd-projectアレンジでやっています。

その小澤さんも含め、ゲストの方たちと細かく合わせる時間も大変だったのでは?

大賀 いえ、皆さんとは一回ずつ合わせただけです。小澤さんとは何度か一緒にライブをやったことがあったので、気心知れていましたね。池田大介さん(キーボード)もそうだし、古井弘人さん(キーボード/ex.GARNET CROW)、岡本仁志君(ギター/ex.GARNET CROW)も、よく知っているメンツなので、そこは気楽にできました。事前に寺尾さんと内容を確認して頂き、実際にゲストのリハの日は結構スムーズにできました。

東京・大阪公演には大野愛果さん(キーボード&コーラス)、徳永暁人さん(アコースティックギター&コーラス/doa)も参加されていますね。

大賀 大野さんは99年の船上ライブでもご一緒したのでよく知ってますし、徳永君は同級生なのでよく知ってますね(笑)。ZARD/2016live__cap_p1_3

むしろ、ゲストで参加してもらったほうが曲が活き活きしてくるような?

大賀 これだけの曲数をやるので、ゲストの方が入ることによってステージがいっそうフレッシュになりますね。そういう意味ではいい刺激をもらって良かったなと思います。

途中の「心を開いて」から、大野さんと徳永さんが参加されていて。

寺尾 大野さんと徳永君のコーナーは前半にちょっとだけあって、一旦退出して。中盤にはさらにゲストのコーナーがあり、後半の「心を開いて」から大野さんと徳永君が再び登場して、ずっといるパターン。あとは最後の2曲で中盤のゲストも含めて全員が参加するんですけど、これが非常に変化があるというか。大野さんは1999年の船上ライブにも参加している。徳永君は2007年の追悼ライブからですが、二人ともZARDのライブにはお馴染みで、我々とも非常に近いところにいる。あとは本当の意味でのゲストというのでしょうか、それを東京、大阪の公演で変えました。小澤君、池田君はZARDを一緒にやったことはないんですよね。長戸プロデューサーからはゲストの価値を高めるためにも参加曲は多くない方がかえって良い、というお話を頂きました。なので小澤君、池田君は東京のみの参加になり、大阪のゲストを元GARNET CROWの岡本君と古井君にして、特別感のあるライブになりました。先ほどお話したように、入れ替わりゲストが登場する構成は、華やかで貴重なものになったと思います。

大賀 特に岡本君はずっとZARDのライブに携わってたので、熟知してましたし。だから逆に僕にとってはゲストなのが面白いというか。“おや?岡本さん今回はゲストに回られましたか?”とからかったり (笑)。

寺尾 (笑)。しかし「気楽に行こう」(大阪公演の映像は未収録)のイントロの岡本君のフレーズとか、もう本当に彼ならではですね。もともと彼がやっていた曲ではないですけど、彼が入ったことで独特のタイミング感が出た。ちょっと後ろにためる感じ。あと、古井君が入って「心を開いて」「Today is another day」(どちらも大阪公演映像は未収録)をやると、なぜか2004年や2007年などに彼が入っていた時のZARDのライブになる、それがまた不思議ですね。

大賀 2004年のライブはさんざんタイミングに関して、“ここはもっと前で弾いて”、“ここは後ろで弾いて”ってみんなに言ってて。その時にやっていたメンバーなんですよ、古井さん、岡本君は。それを最初から分かってくれつつ、入ってくれて。逆に、池田さんはもともとアレンジをされている方なのに、ライブならではのパートのタイミングがあるわけです。そこでも“ここはもっと後ろで弾かないとダメなんだね”、という話が出たり。そういう相乗効果があって面白かったです。

寺尾 池田君がZARDでアレンジをしている「心を開いて」「Today is another day」を演奏することで、CDの再現のその先にあるものが見えたかなと思います。彼のパフォーマンスも含めて。

大賀 「心を開いて」のピアノのイントロラインは、今までのライブでは大楠君が弾いてきてバッチリだったんですが、なぜか池田さんが弾かれるとCDが思い浮かぶというか。“あ、本当に作った人のラインなんだな”ということを感じさせてくれました。

寺尾 アレンジャーがCDでレコーディングしたフレーズを弾くというのは、ある意味セルフカバーですね。

大賀 そして池田さんならではのメルヘンな感じですね。

寺尾 そう、メルヘン(笑)。そして小澤君はもう本当に当時と変わらないルックスで、それも見せ場になっているくらい、カッコよかったですね。ZARD/za160527-0406

取材・文 / 岡本明 撮影 / 森崎純子

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大賀好修

ギタリスト、アレンジャー、作曲家。
B’z、ZARD、松本孝弘、稲葉浩志、倉木麻衣、など数々のライブにギタリストとして参加。B’zや稲葉浩志など様々なアーティストのアレンジやレコーディングにも参加しており、2012年にインストロックバンド[Sensation]を結成。
ZARDでは、『hero』『窓の外はモノクローム』などの編曲を手がけたほか、数多くの楽曲でレコーディングに参加。
1999年の船上ライブ、2004年の全国ツアー“What a beautiful moment Tour”、追悼ライブに、ギタリストとして全公演参加。

寺尾広

東京都出身。レコーディング・ディレクター。デビュー当初からディレクターとして数々のZARD作品に携わる。その後、A&Rとして制作に幅広く関わった。