映画『海賊とよばれた男』特集  vol. 4

Interview

岡田准一が演じた「鐡造」は完璧な仕事 『海賊とよばれた男』山崎貴監督

岡田准一が演じた「鐡造」は完璧な仕事 『海賊とよばれた男』山崎貴監督

明治から昭和にかけて石油で一大事業を成し遂げた男・国岡鐵造の波乱万丈の生涯を描いた物語『海賊とよばれた男』。『永遠の0』と同じく百田尚樹の原作を山崎貴監督と岡田准一のタッグで映画化した。
海外メジャーの圧力に屈せずしぶとく戦いを挑み続ける国岡鐡造と、国岡商店の仲間たちを主演の岡田准一をはじめ、山崎組ではおなじみの吉岡秀隆、堤真一、染谷将太が脇を固めたほか、豪華なキャスト陣が演じている。幾多の難題に苦悩し、抗い、痛快にのしあがっていくストーリー展開には誰しも熱くなるものを感じるはずだ。
20代~90代までの国岡鐡造を演じた岡田准一への思い、時代の変遷をリアルに映し出したVFXについて、監督自身が歌詞を手掛け、劇中のキーとなる国岡商店社歌についてなど、山崎貴監督に様々な話を訊いた。

取材・文 / 大谷弦 撮影 / 吉井明


『永遠の0』と『海賊とよばれた男』は終戦を境に対となる作品

山崎監督は、自作の公開前にキャバクラに行って、女のコの反応で作品がヒットするかどうかを確かめるということですが、新作リサーチはされましたか?

ええ。これが意外といいリサーチになるんです。今回は思いのほか喰いつきが良かったので、ヒットの兆しを感じましたね。『海賊とよばれた男』って、『永遠の0』の次のやつでしょ? という感じで知られていたので、そうですって答えておきました(笑)。

確かに『海賊とよばれた男』は、大ヒットした『永遠の0』と、原作者も主演も同じで、姉妹編のようなイメージがあります。

この2作は連なるものという意識はありました。戦争で翻弄された人々たちを描いたのが『0』だとすれば、『海賊~』は戦後に志のある人々がどうやって生き抜いていったかというのがテーマだと思うんですね。終戦という節目を境にして対になる作品だと思っています。

『海賊とよばれた男』は、監督のフィルモグラフィの中では『ALWAYS 三丁目の夕日』にも連なるものも感じました。

「昭和シリーズ」になってますよね。僕はそれと「SFシリーズ」を交互に撮っているようなイメージがあるかもしれないです。そのなかでも『海賊~』は、僕のなかではより大人っぽいタイプの作品だと思います。

原作も長編で、脚本化する作業も大変だったのではと思います。

最初に原作を読ませていただいたとき、これは映画にするのは難しいので、近づかないでおこうと思いました。でも、オファーをいただいて、なかなか苦しい戦いになるのはわかっていたんですけど、ほかの人にやらせるのもシャクだなっていう部分もあったので、挑戦してみようと。

どのあたりに苦労されましたか?

まず、石油をめぐる経済の物語を映画としてエンタテイメントにしていくのは難しいな……と思いました。下手をすると、会議室で喋っているだけで終わってしまうんですよね。そこで、どうやってメリハリをつけるのか考え、時系列を変えてみたり、試行錯誤しました。撮影は、会議や会話している場面でも、なるべく画変わりを考えて、感情に合わせてドラマチックに画面を動かすように撮ることを心がけました。

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岡田くんは、内面から60代であることがにじみ出るほどの努力をしてくれた

キャスティングは岡田さんから始めたのですか?

岡田くんが最初です。僕たちはいつも主演から決めるんですけど、岡田くんにオファーして「無理です」って言われたら「そうだよな」って諦めようと思っていました。でも、受けてくれたということは、岡田くんの中では勝算が見えてるのかなと思って、ちょっと安心したんですよ。でも、後から聞いたら岡田くんは岡田くんでものすごく不安だったみたいで、自分に声をかけてくれたということは、監督には勝算があるんだろうって思ってたらしいんですよ(笑)。

岡田さんは国岡鐡造という主人公を20代から90代まで見事に演じあげていました。

鐡造を演じた岡田くんは、パーフェクトに近い仕事だったと思います。衣装やメイクで外見はいくらでも作り込めるんですけど、やっぱり内面から60代であることがにじみ出ていないと、ただのコスプレしてる人にしか見えなくなっちゃうんですよ。そこを超えて説得力を生み出してくれた岡田くんにはもの凄い努力を感じました。

国岡鐡造は、立志伝中の人物ですけど、そこまで聖人君子ではないというか、陰影のあるキャラクターになってました。

そこは意識した点です。こういう伝記のような映画って、主人公を立派な人物として描きがちだと思うんですけど、個人的には苦悩して、覚悟を決めて、ときには汚い手を使ってでものし上がる、というプロセスを観たい。そういう意味で人間臭さというか、等身大の人間としての国岡鐡造というものを大事に描こうと思っていました。
鐡造は発想力がすごくあって、無茶なことを言い出すんだけど、部下たちにとっては、期待に応えるため「いっちょやってやるか!」って思えるような人だったんだと思うんですよね。あの時代に自分の船をイランのアバダンに送るというのは、無茶だけど、やり遂げたときは痛快だったはず。そういう意味で、鐡造だけでなく国岡商店の面々も海賊だったと思います。

国岡商店社歌は結果的にキャストの団結力を高める効果が

劇中で何度も歌われる国岡商店の社歌も印象的です。作詞は山崎監督が担当されました。

あの歌は、素人臭いものがいいかなって思ったんです。労働のなかから自然と産まれていったような。偉い先生に頼んで作ってもらうような歌ではない。だったら、作詞に関しては素人の僕がやってもいいかなと。

作詞の制作期間は?

最初に形になるまではひと晩というか数時間くらいでしたね。その後、曲と合わせるときにちょっと直しましたけど、あまり時間をかけないで出来ました。あの歌詞は、僕が脚本に苦しんでいるときの気持ちをそのまま綴った応援歌でもあるんですよ。会議で脚本にダメ出しされ、でも仲間を信じて明日また頑張ろうっていう気持ちを込めてるんです(笑)。

実際に国岡商店の面々が歌うのを聞いた感想はいかがですか?

あのメンバーが歌うわけですから、そりゃあ素晴らしいですよね!レコーディングのときに、ピエール瀧さんが仕切ってくれたんですよ。「僕は30年くらいこういうことやってるから」って(笑)。改めて考えると、岡田くんも歌手だし、吉岡さんもCDデビューしてますから、実績のあるアーティストが揃った豪華な音源になったと思います。打ち上げのときにも、吉岡秀隆さん率いる「タンク班」のキャストのみなさんが自然発生的に歌いだして、本当に感動しました。

キャスト陣の団結力も高める歌だったんですね。

「タンク班」もまとまってましたけど、国岡商店の丁稚を演じた役者たちで「丁稚ーズ」というのもあって。そのグループもすごく団結してて、「次に監督の作品があるときはまとめて“丁稚ーズ”で呼んでください」って言われてて。この間、吉野家(吉の表記は「土」の下に「口」)のCMを撮らせてもらったんですけど、そのときはちゃんと「丁稚ーズ」をみんな呼びましたよ。

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お正月にふさわしい邦画の大作を目指した

撮影で苦労された点はありますか?

全編を通して、どうやってこのシーンを撮るかっていうことを考えるだけで大変な映画でしたね。VFXに頼るとしても、どの場面で、どのように頼るのがいちばん正解なのかに知恵を回しました。限られた予算の中で、何を作って、何を省くのか、その取捨選択のジャッジが今までの作品でいちばん大変だったかもしれないです。

そのジャッジといいますか、どこにどうやってVFXを投入するかというノウハウが、日本で一番優れているのが山崎監督だと思います。

それは、そうだと思います(笑)。今回はさすがに自分でそう言ってもバチが当たらないぐらい、本当にたくさんのことをやりましたね。広い駐車場に、国岡商店の内部の半分だけとか、タンカーの一部分とか、拠り所になるセットをバラバラに作って、足りない部分をCGで足すという作業の連続なんですよ。その計算と組み立てが大変で、自分でもよくまとまったなと思います。

どうやって撮っているのかわからない、スケールの大きいシーンの連続でした。

アバダンに日承丸が入港するシーンも勝浦にある駐車場で撮りました。千葉にいる大勢のイラン人の方に集まってもらって、線を一本引き「こちら側が海です、こちら側がアバダンです」って説明して、そこでみなさんに手を振ってもらって。その様子をクレーンから撮ったのが実景部分のすべてで、あとは全部デジタルで加工するんです。日本に帰ってきたときのシーンも、同じ場所で、港に出迎える人たちを変えて撮っただけなので、加工前の映像をみると、どちらも駐車場で手を振ってるだけですから、何がなんだかわからないと思います。

監督の頭のなかで最終形が全部見えてないと撮れないですね。

邦画としては、大きな予算の作品だとは思いますが、それ以上のスケール感は出せていると思いますし、コスパはめちゃくちゃいいと思います。シチュエーションだけで45箇所ぐらいあって、どれもそれなりにダイナミックな画を作らなきゃいけないので、そこは苦労しました。

山崎監督は、邦画界では大きなスケールの作品を撮れる監督だと思いますが、今後は国岡鐡造のように海外メジャーと対決するといいますか、世界に打って出たいというような想いはありますか?

それはないです(笑)。むしろ、今回の作品は“邦画らしいものを撮る”ことがテーマのひとつだったんです。日本人だからこそわかるドメステイックな面白さがあり、お正月映画として相応しい作品を目指しました。

確かに、オールスターキャストで、重厚感もあって、邦画の超大作としてお正月に観たい1本だと思います。

2016年の邦画界はすでに大ヒット作が2本もあるので、『海賊~』も入れて「あの3本の年」って言われたいですね。キャバクラでのリサーチ結果をみるかぎり、ヒットしてくれると思います(笑)。

映画「海賊とよばれた男」の公開を記念し、劇中にも登場する国岡商店名前入り、オリジナル法被(はっぴ)を5名様にプレゼントします。
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映画『海賊とよばれた男』

12月10日(土)全国東宝系にて公開

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明治・大正・昭和の激動の時代を舞台に、名もなき一青年から身を興し、やがて戦後の日本に大きな勇気と希望を与える大事業を成し遂げて行く主人公・国岡鐡造の姿を描いた同名小説(百田尚樹著/講談社文庫)を映画化。本作の映画化にあたり、2014年年間邦画興行収入ランキング1位に輝いた『永遠の0』チームが再結集した。
――8月15日、終戦。その2日後廃墟と化した銀座の中で奇跡的に焼け残った国岡商店本社に集まった店員たちを前に鐡造の声が響いた。「愚痴をやめよ。日本人がおる限りこの国は必ず再び立ち上がる。下を向いとー暇などない!」
そして最後に力強い口調で、彼らに伝えた。「心配ばすな。一人も首にはせん」――
あの時代、誰よりも“日本人の誇り”を追求し、海賊とよばれ恐れられた国岡鐡造と、彼を支える仲間たち、そして最愛の妻との絆が織りなす重厚な人間ドラマ。

【監督】山崎貴
【原作】百田尚樹「海賊とよばれた男(上下)」(講談社文庫)
【音楽】佐藤直紀

【出演】
岡田准一 吉岡秀隆 染谷将太 鈴木亮平 野間口徹 ピエール瀧
須田邦裕 飯田基祐 小林隆 矢島健一/黒木華 浅野和之 光石研
綾瀬はるか 堤真一 近藤正臣(特別出演)/國村隼 小林薫

【配給】東宝
©2016「海賊とよばれた男」製作委員会 ©百田尚樹/講談社

オフィシャルサイトhttp://kaizoku-movie.jp/


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「海賊とよばれた男」オリジナル・サウンドトラック (Selected Edition)

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原作コミカライズ「海賊とよばれた男」
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12月15日まで無料!
「海賊とよばれた男」 1巻

著者:百田尚樹 (原作)、須本壮一 (作画)
出版社:講談社

vol.3
vol.4
vol.5