Interview

声優アーティスト・久保ユリカが差し出す「“ありがとう”の名刺」

声優アーティスト・久保ユリカが差し出す「“ありがとう”の名刺」

約4ヵ月ぶりのリリースとなる3rdシングルで、久保ユリカはまたあらたな表情を私たちに見せてくれた。表題曲「ありがとうの時間」は、前作収録の「記憶コロコロ」に引き続きスムルースが担当。公開から話題を呼んだドラマ仕立てのMVや、彼女が響かせる優しく温かな歌声には、どのような想いが込められているのだろうか。カップリング曲やここからの音楽活動でトライしたいことなどと合わせて、久保ユリカの“今”の気持ちに多岐にわたって迫ったインタビューを、お届けする。

取材・文 / 須永兼次
撮影 / 小賀康子


「ありがとう」って、言葉として大切なものだからこそ、素直に言うのが難しい

まずソロデビューされた今年を振り返ってみて、いかがですか?

 “今年が3日間で終わった”ぐらいの気持ちで……ギリ、4日あるかも? くらいな(笑)。小さなことから大きなことまでいろんな経験をさせてもらえた、本当にあっという間な1年だったような気がします。でもそれも、どっちかって言うと「今、この時間のために」というより、常に先のことのために積み上げているような感覚ですね。

それが花開くのも楽しみではありますが、まずは今回リリースされた3rdシングル「ありがとうの時間」のお話を聞かせてください。その表題曲を、最初に聴かれたときの印象はいかがでしたか?

 チームのみんなで音を聴いてから曲を決めたこれまで2枚のシングルと違って、今回は「この曲」と決まったうえでゼロの状態で聴けたので、特別な感じもしました。しかも学生時代その音楽に触れて過ごしていたスムルースさんが、“私の曲”として1曲仕上げてくださっていたのにも、ちょっと感動しましたね。

スムルースさんに、というのは久保さんから希望を出されていたんですか?

 いや、2ndシングルのカップリング曲「記憶コロコロ」からの流れを汲んで、楽曲チームの方がお願いしてくださっていたみたいなんです。その曲と私の声質とがうまくマッチしていたし、ファンの皆さんからも「こういうの待ってました!」という反応もいただけていたので、改めてそこでゴーが出たんじゃないでしょうか?

ファンの皆さんの「いろんな久保さんを見たい」という気持ちも、やはりあったのでは?

 そうですね。新しく久保ユリカの世界観に入ってきてくださった方にはそう感じていただけたと思いますし、逆にディープに私のことを応援してくださっている方々にとっては「より素に近い部分を見られた」という安心感もあったようで、どちらの立場の方にも面白がってもらえたんだとは思いますね。

その「記憶コロコロ」のときの素朴な歌声に対して、今回はさらに温かさが加わっている印象がありました。

 今回のレコーディングは、「よりよいものを作りたい」という気持ちから、今まででいちばん時間をかけました。箇所箇所でいろんなニュアンスで歌ってみて、いちばんいいものを突き詰めていった結果、優しさがいちばんにじむような歌い方になったんですよ。そうやってしっかり歌う機会をもらえたのはすごくよかったなと思っていますし、結果としていちばんいいところで歌えたとも感じています。

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では歌うにあたって、歌詞からイメージされてきたものはありますか?

 真っ先に浮かんだのは母でした。ここまで自分の人生のなかで、何があっても味方でいてくれたのが母だったので……もちろん父もなんですけど(笑)。こういうときにいつも父をないがしろにするから、「仲悪いのかな?」って思われるんですよねぇ(笑)。

(笑)。まぁ、同性というのは大きいですよね。

 そうなんです。そういう意味でもわかり合える部分も多いから、ですね。でも逆に、完成したものを初めて客観的に聴いたときに思い浮かんだのは、応援してくださってる方々のことで。そのとき純粋に「あ、これはみんなのための歌なんだな」って思いました。

皆さんに、感謝を伝えるための歌になった。

 はい。私にとって、すごくありがたい曲になりました。ファンの方一人ひとりに「ありがとう!」と言う機会がなかなかないなか、こうやって感謝の気持ちを伝える作品ができたことで、「その想いをより多くの人に伝えられるのかな」と、今回のシングルが「“ありがとう”の名刺」のように思えてきました。

じゃあ今は、それの名刺を1枚1枚お配りするようなイメージ。

 そうなんです。だから今回は「買ってください!」というフレーズがあまりするっと出てこなくて……もちろん買ってもらえたほうがいいんですけど(笑)、まずは「聴いてほしい」っていう気持ちが先に出るんです。しかも友達や恋人、奥さんや旦那さん、両親やおじいちゃんおばあちゃんといった、聴く方それぞれにとって大切な人を思い浮かべて、そんな人に贈れるCDになるといいな……って。

そしてこの曲のMVが、ショートムービーのようなテイストになっていて驚かされました。なぜこういった形に?

 やっぱり「今までと違うものを皆さんにお届けしたい」ということですね。それに曲調的にも、物語性のとても似合う曲でもありますし。“MV”というくくりだと相当長いとは思うんですけど、あの映像だけでも完結する部分はありますし、あそこから入っても曲自体を「いいな」と思ってもらえるようにはなっていると思うので……バンバン、CM流してほしいです。それこそ、恋愛モノとかいいドラマの合間に(笑)。

ストーリー的には、母子家庭の親子の物語なんですよね。

 そうですね。「ありがとう」って、思春期越えたぐらいから大人になればなるほど、言葉として大切なものだからこそ素直に言うのが難しくなるじゃないですか? そういう「大切な人に素直になれない」ところが表現されているように思います。

MVの印象から、ある種結婚ソングみたいにとらえた方もいるかも、と思ったのですが。

 そうですね。やっぱり発売前はこのMVが表に出ていたので、そのイメージのままとらえた方ももちろんいたと思うんですよ。私自身まったくその環境にいないので、そのつもりは本当にないんですけど(笑)。でも発売された今、改めて歌詞を追いながら1曲通して聴いたら、どんなことを思い浮かべられるのかはとても気になりますね。

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そしてカップリング曲「Happy Cuty My Snow Man」ですが、こちらはポップでこの時期らしい曲になっています。

 そうですね。とびきり甘々でクリスマスソングっぽくもあって。やっぱり季節の曲ってその時期にしか歌えないものだと思うので、ありがたいですよね。

サウンド的にもキラキラ感があって、イルミネーションを想像させられます。

 私も「イルミネーションの中、ちょっと雪が降ってきて、もこもこのマフラーしてニット帽かぶって……」みたいな女の子の絵が浮かんできて。しかも冬の寒さを心地いいと感じている、すごく元気な子なんだろうなぁ……とか思いながら歌いました。だから皆さんにも、素敵な冬の景色を思い浮かべてもらえたらな、って思います。

しかもノリがいいので、パーティー感もある曲ですよね。

 そうですね。今って、アニソンだけを流すクラブがあるんですよね? だから、クリスマス時期にはぜひそこで、かわいい女の子DJに盛り上げてもらえたらうれしいです。

この曲のレコーディングの雰囲気等も気になるのですが、ディレクションは作編曲のTom-H@ckさんが?

 はい。現場でご一緒するのは初めてだったんですが、ちょいちょい褒めてくださって。「そうやってテンション上げてくれるんだなぁ……」と思いながら(笑)。

いや、そこは疑わなくていいと思いますよ(笑)。

 基本褒められると、疑い深くなっちゃうので(笑)。たぶん曲のイメージも明確にお持ちだったとは思うんですけど、箇所箇所でご提案をいただきながらも基本的にはこちらに歌い方を委ねてくださったので、とてもやりやすかったです。

ということは、久保さんから「ここはこう工夫しよう」みたいにアプローチされた部分もあった?

 はい。繰り返し出てくる「Happy Cuty」というフレーズは、ほかのところに比べて音が重なっているので、完全に雪の妖精ぐらいのキャラ付け感強めに、甘々で歌わせていただいたんです。おかけで、メリハリがすごくできたんじゃないかな? と思ってます。

さて、これでシングルも3枚目となります。そろそろファンの方も、アルバムを期待し始める頃のような気がするのですが?

 いちばんベストなタイミングで、最高のアルバムを出したいな、とは思っています。ここまで3枚、毎回違う“久保ユリカ”を出せるようやってきましたけど、より多くの曲数でいろんなパターンの私や曲調を通して、皆さんを驚かせたり喜んでもらえるようなものを、作れるようになれ……たらいいなぁ(笑)。

前回のインタビューでは、具体的にはテクノポップやラップを挙げられていましたが。

でもラップは韻を踏むのが難しすぎるので、せっかくだから特別なプロとfeaturingしてやりたいです(笑)。あと、曲のジャンル自体は変わらなくても、まったくアプローチを変えた楽曲を2~3曲入れられたらいいですね。例えば同じバラードでも、温かなもの・切ないものみたいに全然違うアプローチをしたり、というような。

今お話していて、そういえばロックって出てこなかったなと思ったんですが。

 元々中高生の頃って邦ロックと呼ばれるジャンルがすごく好きだったんですけど、なにぶん私の声質がギターにかき消されちゃう系の声なんですよ。だからうまくバランスを取れる、低めのトーンの声で歌えるような楽曲に出会えれば、バリエーションのひとつとして面白いかもしれないですね。でもまぁ……3rdシングルが売れないと、爆死しちゃうとちょっと無理なんで(笑)。

なのでまずは3rdシングル、ですね(笑)。では最後に、リリースにあたってのメッセージをお願いします。

 私にとっても、「ありがとうの時間」は本当に大切な曲になりました。ぜひ皆さんもゆったりした時間のなかで、言葉の意味やメロディの雰囲気だったりを、1回自分の中に落とし込んでしっかり聴いてみてください。そして、そのとき思い浮かんだ人にぜひ聴かせてあげてほしいです。皆さんの前で直接歌う機会があれば、私は皆さんのことを思って歌えたらいいなと思っていますので、ぜひ「ありがとうの時間」を、たくさん愛してください。

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久保ユリカ

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