LIVE SHUTTLE  vol. 84

Report

布袋寅泰“8 BEATのシルエット”の完成度の高さと進化

布袋寅泰“8 BEATのシルエット”の完成度の高さと進化

 35周年アニバーサリー・イヤーのプロジェクト“8 BEATのシルエット”もいよいよ終盤。第7弾の“【BEAT 7】Maximum Emotion Tour~The Best for the Future~”をファイナル前日のNHKホールで観た。

 第1弾の“【BEAT 1】~すべてはライブハウスから~”は文字通り原点であるライブハウスを回るツアーだった。その後、ソロデビュー作『GUITARHYTHM』を再現したり、故郷である高崎でのフリー・ライブを行なったり、海外ツアーなど、一人のアーティストとしては破格の活動を展開して、布袋のアーティストとしての器とキャリアをアピールする一年だった。  【BEAT 7】はベストのセットリストを組んだツアーで、コアなファンにとっても、初めて観る人にも血沸き肉躍る内容。メンバーはドラムスにザッカリー・アルフォードを迎えて、この“ベストセットリスト”をプレイするのに最高のミュージシャンを揃えている。そうしたメンバーでツアーを重ね、11月30日は完成度の高いライブとなった。

 クリスマス・イルミネーションが始まったばかりの渋谷の街を通り抜けてNHKホールに向かう。ホールに入ると、舞台の上には5つのランプシェードが置かれている。開演時間が近づくと、布袋のアニバーサリーを祝いに来たオーディエンスから“布袋コール”が巻き起こる。何度、接してもいい景色だ。布袋を祝い、その音楽を楽しみに来たワクワクする気持ちが、そのまま“布袋コール”になっている。きっとその声はバックステージの布袋にも聴こえているはずだ。そんな想像をしていると、武者震いがしてくる。ティンパニーをフィーチャーしたオーケストラのSEが流れ、メンバーが位置に着く。その背後から布袋が現われた。みんなMaximum Emotion=感情マックスで開演を迎える。

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 オープニングは「POISON」。HOTEIモデルのテレキャスターから繰り出されるギターリフは、作られてから20年以上が経つのに、まったく古びていない。個性というものの最大の特徴は、「時を超える」ことだ。布袋の35年の一断面が、この「POISON」にあった。モータウンの熱いR&Bのニュアンスと、ソリッドなロックが融合した画期的なポップ。BOΦWYでそれまでの日本のロックの限界をぶっ壊したソングライター布袋寅泰がソロに転じて編み出した音楽は、自分が歌うことを前提としていることでさらに進化した痕跡をはっきりと残している。
 では、BOΦWYナンバーはどうかというと、3曲目の「NO. NEW YORK」ではバンドのメンバーがアピールする。井上富雄の弾くベースはまるで、スプリングが入っているかのようによく弾む。もう2度とBOΦWYの「NO. NEW YORK」はライブで聴けないのかもしれないが、このメンバーでの演奏を聴いていると、ひとつの完成品として心に響いてくる。
 終わるとすぐに「BE MY BABY」が始まった。イントロがわりのザッカリーのドラムが、一瞬にして場面転換をしてしまうほど強烈だった。これもCOMPLEXと比べる必要はないが、比べようもないほどのシャープさがあった。途中で布袋、井上、そしてもう一人のギタリストの黒田晃年がステージ前に出て演奏する。バンドとしての一体感が目からも感じられて心が騒ぐ。
 「SURRENDER」のギターソロで布袋は、軽快なステップを踏みながらゼマティスのギターの澄み切った音色を響かせる。
 惹きつけられたのは「ラストシーン」だった。ヴィヴィッドなロックナンバーの一方で、布袋はエレガントなメロディを書くのも得意だ。「ラストシーン」はその代表作だろう。頭上のミラーボールが回り、布袋のポルカドット模様のシャツを美しく照らす。そういえばこの模様はボブ・ディランも大好きで、同様のシャツを好んで着ている。奈良のイベントで布袋はディランに会っているので、ふとそんなことを思ってしまった。

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 「今年はライブハウス、初めてのロス、東北地方を回ったり、『GUITARHYTHM』を再現したり、イタリアでライブをしたり、盛りだくさんの1年でした」と挨拶を切り出した後、バンドのメンバーを思いを込めて紹介する。  ザッカリーに大きな声が上がると、「この声援、妬けるぜ」と言い、キーボードの奥野真哉を「彼のバンドのニューエストモデルやソウルフラワーユニオンの曲を、DJをやっていた頃によくかけてました」と紹介する。また黒田は「俺のギターリフは、シンプルだけど独特で、他の人は(表面的には)弾けても、(俺と同じニュアンスで)弾けない。そんな中で黒田くんは初めて観たライブが俺のライブで、俺のDNAを身体に持っている。なので、ギターが2人いないとできない曲をやります」とインスト・ナンバーの「Stereocaster」が始まった。
 布袋は黒いテレキャスター、黒田は黒いストラトキャスターでプレイする。タイトルどおりステレオでフェンダー・ギターの競演だ。ライブ中盤にインストでアクセントを付けられるアーティストが、今の日本に何人いるだろうか。この“ステレオ”は文句なしにカッコいい。

 ベストな選曲で進むライブが、一段ギアを上げたのは「Dreamin`」からだった。オーディエンスは「オイオイ!」と声とコブシを上げる。いつもの景色だ。それは“いつも”であって、懐かしさではない。今を生きる歌として聴こえてくる。オーディエンスも“今の歌”として合唱している。応えて布袋も“今のギターソロ”を弾く。布袋の笑顔が「ありがとう」と言っているように見えた。
 ラストは、これも大合唱の「スリル」。歌詞を♪俺のすべてはお前たちのものさ~今夜、世界は俺たちのものさ♪と変えて歌うと、オーディエンスの声は最高潮に達したのだった。 布袋の手元を見ると、超速いリフのすべてをダウンピッキングで弾いている。生々しいビートは、今も昔もこの手元から弾き出される。

 アンコールで布袋は話し出す。
 「このツアーは“自分を更新する”のがテーマだったんだけど、いいバンド、いいオーディエンスがいてくれたので最高でした。これまでいろんな出会いがありました。氷室京介、吉川晃司、デヴィッド・ボウイとも1曲やれたし、ストーンズのステージにも立てた。月にたどり着くより確率が低いことを、実現してきたんじゃないかな。そしていつかロンドンのロイヤルアルバートホールでやりたいと思っていたら、これも実現しました。昨年、素晴らしいシンガーとの出会いがありました。その夢をかなえてくれたのが、ズッケロです。彼が東京公演のために日本に来てくれました」。
 そう言って呼び込んだのは、 “イタリアの至宝”ズッケロだった。このサプライズに会場は大喜び。セッションは、布袋がレコーディングに参加した「ティ・ヴォリョ・スポザーレ(君と結婚したい) feat.布袋寅泰」を含む3曲。がっしりとした体躯から吐き出される声はブルースそのもので、凄いオーラを発しながら布袋のギターをがっちり受け止める。きっとロイヤルアルバートホールでのコラボも、オーディエンスを圧倒したことだろうことが、容易に想像できた。ズッケロは「You are great!」を連発してステージを去ったのだった。
 そんな重量級のセッションの後には、「ホンキー・トンキー・クレイジー」と「バンビーナ」が待っていた。「バンビーナ」のエンディングでは「Marionnete」や「Bad Feeling」のフレーズをはさみ込んで、布袋自身も楽しんでいる。

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 ダブルアンコールで、布袋はタオルを首にかけて戻ってきた。
 「楽しんでもらえましたか? 初めて布袋を見に来た人はどれくらいいるのかな? 本当に充実した35周年でした。ヤンチャなところを残しながら、いい音をやっと鳴らせるようになりました。よかったらこれからもついてきてください。俺たちのテーマソングです」。
 締めくくりに選んだのは「LONELY★WILD」だった。コード進行に独特の仕掛けをほどこしたこの曲は、切なさと希望をたたえながらオーディエンスの一人一人に沁み込んでいく。最後の最後は、美しいギターのアルペジオが印象的な「DEAR MY LOVE」だった。
 歌い終わって全員でステージ前に並び、深々と頭を下げる。その間、「布袋コール」が起こる。ライブが始まってからどれくらいの時間が経ったのだろう。あっと言う間の24曲だったことを、開演前と同じ「布袋コール」が教えてくれたのだった。
 残すは“【BEAT 8】Climax Emotions~35 Songs from 1981-2016~”のみ。12月30日の武道館まで、更新し続ける布袋寅泰のアグレッシヴなアニバーサリーは続く。

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取材・文/平山雄一 撮影/山本倫子

セットリスト

布袋寅泰 35th ANNIVERSARY『8 BEATのシルエット』
【BEAT 7】Maximum Emotion Tour ~The Best for the Future~
11月30日(水) NHKホール

01.POISON
02.BEAT EMOTION
03.NO.NEW YORK
04.BE MY BABY
05.SERIOUS?
06.SURRENDER
07.ラストシーン
08.WILD LOVE
09.WANDERERS
10.Stereocaster
11.ESCAPE
12.8 BEATのシルエット
13.C’MON EVERYBODY
14.Dreamin’
15.SCORPIO RISING
16.TEENAGE EMOTION
17.スリル

EN1
18 Partigiano Reggiano [with ZUCCHERO]
19 Ti Voglio Sposare / ティ・ヴォリョ・スポザーレ(君と結婚したい) feat. 布袋寅泰[with ZUCCHERO]
20 Iruben me [with ZUCCHERO]
21 ホンキー・トンキー・クレイジー
22 バンビーナ

EN2
23 LONELY★WILD
24 DEAR MY LOVE

35周年アニバーサリーベストアルバム「51 Emotions –the best for the future-」
初回限定盤付属DVD「【BEAT 1】~すべてはライブハウスから~」ダイジェスト映像

ライブ情報

TOMOYASU HOTEI 35th ANNIVERSARY『8BEATのシルエット』2016
BEAT8
Climax Emotions ~35 Songs from 1981-2016~

12月22日(木) 名古屋国際会議場 センチュリーホール Open 17:30/Start 18:30
12月25日(日) 神戸・ワールド記念ホール Open 16:30/Start 17:30
12月30日(金) 日本武道館 Open 16:30/Start 17:30

布袋寅泰

1962 年2月1日生まれ/群馬県出身
日本を代表するギタリスト。

日本のロックシーンへ大きな影響を与えた伝説的ロックバンドBOØWYのギタリストとして活躍し、1988年にアルバム『GUITARHYTHM』でソロデビューを果たす。プロデューサー、作詞・作曲家としても才能を高く評価されている。クエンティン・タランティーノ監督からのオファーにより、「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY(新・仁義なき戦いのテーマ)」が映画『KILL BILL』のテーマ曲となり世界的にも大きな評価を受け、今も尚、世界で愛されている。2012年よりイギリスへ移住し、三度のロンドン公演を成功させた。2014年にはThe Rolling Stonesと東京ドームで共演を果たし、2015年海外レーベルSpinefarm Recordsと契約。その年の10月にインターナショナルアルバム「Strangers」がUK、ヨーロッパでCDリリース、そして全世界へ向け配信リリースもされた。2016年日本においてはアーティスト活動35周年を迎え、35周年アニバーサリープロジェクト『8 BEATのシルエット』の企画も続々と発表されている。その傍らで2月に開催されたベルリン、パリ、アムステルダムでの海外公演は大成功を収めた。2016年は海外の活動と並行し、日本国内でも精力的な活動を行う。

公式サイト http://35th.hotei.com

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