Interview

ZARDの志を継ぐライブがDVD化。バンマス大賀氏とディレクター寺尾氏に話を聞く(後編)

ZARDの志を継ぐライブがDVD化。バンマス大賀氏とディレクター寺尾氏に話を聞く(後編)

当時の楽屋を再現した坂井さん部屋が作ってあるんです

2004年のライブの時に使われていたマイク、テーブル、チェアがステージにセットされていましたけど、あれはライブのたびに用意されていて?

大賀 はい。それに、見に来られるお客さんにお見せできないのが残念ですけど、当時の楽屋を再現した坂井さん部屋が作ってあるんです。

寺尾 そこは2007年の追悼の時から終始一貫していまして。個室の楽屋に坂井さんの写真を置きまして、部屋にはケータリングで、バナナとかお茶が普通に用意してあるんです。

え、そうなんですか?

寺尾 楽屋のセッティングが終わるとノックして入って、“おはようございます、今日もよろしくお願いします”、と声をかけて。最終的に、本番前に円陣を組む時も、坂井さんの写真を持って行き、坂井さんがそこにいると思って気合い入れをやります。この写真はライブの最後にステージにお持ちして、ファンの皆さんにも見ていただいてますね。ちなみに楽屋は、当時坂井さんが使用していたままを再現していて、2004年のライブツアー時に楽屋でよく聴いていたフジコ・ヘミングの「奇蹟のカンパネラ」を流しています。

そういったアイテムがあったほうが、坂井さんがそこにいるような気配を感じつつ、演奏に向かえるということでしょうか?

寺尾 そうですね、普通に当たり前のように用意してあります。

大賀 逆に、ないシーンが想像できないです。

寺尾 客入れの音楽も2004年と同じ曲を使っていまして、坂井さんがこれにしたいと指定してきたキース・ジャレットの「ザ・ケルン・コンサート」です。それをそのまま、2007年以降もずっと使い続けています。ZARD/%e3%82%b5%e3%83%a8%e3%83%8a%e3%83%a9%e8%a8%80%e3%81%88%e3%81%aa%e3%81%8f%e3%81%a6-2

まさに、チーム坂井泉水、チームZARDですね?

寺尾 そうです。それも、チーム全員が同じじゃなくてもいい形で遂行できるんです。例えば今回、照明、メインのPAやバンドのモニターは他のアーティストではご一緒させていただいていた方で、今回、ZARDとしては初めてだったんですけど素晴らしかったですね。前は亡くなってすぐだったので厳かな感じの良さがあり、今回は5年、間が空いたこともあり、ちょっと華やいだ、追悼というよりフェスティバルのような形に落とし込んでいただいたのが良かった。2011年までは追悼をやや引きずっている感じがありましたけど、5年たった今はそこまでではなくて。ZARDの照明って難しいんですよ。あまりバンドに当てすぎると映像の坂井さんが見えなくなる。そこをいい具合に今回はライトアップしてくださったので良かったですね。PAは、エンジニアの島田さんがずっとレコーディングを担当してきていましたので、今回も坂井さんの歌やコード感などを司り、そしてバンド全体はZARDでは初めての方でしたが、躍動感溢れた内容になって良かったです。新しく加入してくださったスタッフの皆さんには本当に感謝です。あと2016年ライブのDVDのミックスは島田さんがやっているんです。島田さんはずっとZARDのレコーディングスタジオにいたのですが、意外なくらいにライブっぽい音に仕上がりました。過去のDVDと比べても一番ライブっぽいですね。

音が生々しいですね。

寺尾 はい、このDVD、本当に25周年の締めにふさわしいんじゃないかなと思います。

ドラムの音もクリアですね。

寺尾 今まで2人だったんですけど、今回初めて1人になったんです。ドラムの車谷啓介君の成長が著しいので、それもあるかもしれません。

大賀好修

大賀好修

最終日には、“もう終わってしまうのか…”という気持ちに

大賀さんを含めた4名は同じバンド、Sensationのメンバーですから、コンビネーションもさすがですね。

大賀 確かに、バンドの軸をSensationのメンバーで固められたのが大きいかもしれないですね。

寺尾 大きいです。本人を前にして言うのも変ですけど、安心できるので。そこにプラスアルファ、ドキドキする感じ、アグレッシブな感じがあるので、すごい嬉しいですね。

同じサッカーチームの選手たちが、そのまま代表チームに核として入ったような。

大賀 気持ち的にはバルセロナのメンバーがスペイン代表に入っているような…言い過ぎですね(笑)。

今回の大阪公演から東京公演までは一週間ほど空いていましたが、リフレッシュして臨めた、みたいな演奏上の違いはありました?

大賀 今回は初日と最終日だけでしたけど、その違いはありました。オリックス劇場は初日独特の緊張感もありましたし。逆にTOKYO DOME CITY HALLの最終日には、“もう終わってしまうのか…”という気持ちになりました。まだこのままやり続けたいという気分になっていたと思いますね。僕はライブをやる時はどんな時も全力で演奏するよう心がけているんですが、気持ち的にはそういう部分もあって、違いはあったと思います。メンバーも、オリックス劇場の初日は緊張感のある表情していましたし、最終日は寂しそうな顔をしていましたね。

寺尾 5年ぶりというのがありますからね。それに、2007年に追悼公演、2008年には色々な会場でライブをやったんですが、回数を重ねるうちにライブが良い形になってきて、この辺で立とうかなとかお客さんのリズムができてきたんです。ただ、今回はゲストが出たり引っ込んだり、予想がつかない。お客さんもどうなるんだろうっていう感じで、後半になるまでは息をつく間もなかったかもしれません。

大賀 2007年の時だと、今からみなさんよかったら一緒に立って楽しみましょうというパフォーマンスをしていたんですけど、今回はみなさんが打ち合わせでもしてきたかのように(笑)、「心を開いて」から立ち上がって。

寺尾 そこからPAの音も変えるんです、人が立つと低音が変わるので。

あと、「遠い日のNostalgia」から青いサイリウムをお客さんがいっせいに振って。

寺尾 あれはあらかじめ書いて入り口でお渡ししてあるんです。この曲は“輝いてるあの星たち”という歌詞が出てくるんですけど。星っぽい演出だし、彼女の服の色とも合うと思ったので。「Forever you」は以前にも一回サイリウムでやったことがあるので、そのままの流れでやっていただいて。ただ、今回は後半、みなさんが立つコーナーに、従来なら前半に持ってくる「雨に濡れて」みたいな曲を後半に持ってきた。そういう予想が外れる面白さもあったんじゃないかな。「雨に濡れて」をこの順序で大丈夫かな、と検討してたんですよ。後半で盛り上がる、お客さんが楽しんでもらうところに入れたことがない曲なので、果たして本当に大丈夫なのか。実際やってみて、大丈夫だったと思うんですけれど。

違和感なかったです。ライブ自体、始まってしまえば、あっという間という感じでしたか?

大賀 33曲あるんですけど、ライブをやっている時はあっという間ですね。リハの時はマラソンぐらいの持久力の練習を重ねましたけど。曲数がすごいので、そこに対する集中力が必要で、リハではどちらかというとそちらのほうが重要でした。それをやり込むと本番ではあっという間というか。

しかも一度もMCがないし。

大賀 そうなんです。どこでチューニングするかとか、メンバーたちとタイミング確認をしていてほしいと話をして。僕はO型なんですけど、A型かというぐらい徹底してやりましたし、メンバーもやっていました。

寺尾広

寺尾広

我々もいつまでも坂井さんのスタッフをやったり届けていければいいなと

25周年ライブを終えられて、今思うことというと?

大賀 ZARDの音楽はいいなと。いつも言ってますけど、99年の最初のライブから関わらせて頂いているので、ある意味、バンドの一員として、ひとつのツアーが終わったなという気持ちでいます。

寺尾 これで本当に25周年の区切りがついてしまったなという寂しい気持ちもありますけれど。僕らとしては、同期や同窓と行う同窓会みたいなものなんです。節目にクラス会を行うとしたら、クラス会の一員である僕が幹事をやらせていただいて、みんながやっているのを見守っている感じですね。いろいろスタッフがいるわけですけど、長戸プロデューサーの下に坂井さんがいて、そこに我々がパッと集まって、ちょっと練習すればいい状態でZARDを届けられる。そういう状態で、5年間、間が空いても問題なかったわけで。今後、もしそういうことがあれば、同期会、同窓会、…緊張のある同窓会ですけど(笑)。久しぶりに会えば変わらぬ形で、同じ感じで、我々もいつまでも坂井さんのスタッフをやったり届けていければいいなと思っています。

あらためて映像を見直されて気が付いたことはありましたか?

大賀 僕は坂井さんの映像のモニターを、実はステージ前にセットしてもらって、映像を確認しながら弾いているんです。ただ、お客さん側の位置から撮った全体像はDVDを見るしかないので、新鮮な気持ちというか。今度はお客さんになった気持ちで見えるので、いいですね。

寺尾 僕はミックスやいろんなものに全部携わりましたし、映像スタジオでも具体的にやり取りしたんですけど。こうして最終的に製品になると、客観的ではなく主観的にお客さんとして見れるというか。逆に、冷静には見れなくて。ギリギリまで映像を差し替えたり細かい作業があったりするので、マスタリングまでは非常に冷静なんです。けれど、実際にその後になってみると、お客さんとして見ることができる。

大賀 映像を見ていると、自分が演奏している部分が細かく聴こえ過ぎて、気になって仕方ないんですよ。だから、僕は軽くお酒を飲みながら見るようにしています。そのほうが気楽に見れるので。

寺尾 2007年に最初に大阪公演をやって、次に東京でやる時、反省会じゃないけれど、内容を確認しようということで、会社の会議室にバンドメンバー全員で集まったんですよ。その時、映像を見ていたんですけど、3曲目まで来て止めたんです。大賀君が止めたのかな。もうこれで十分だから、と言って。坂井さんが亡くなってまだ時間が経っていなかったこともあって、「申し訳ない、もう十分わかりました、東京頑張ります」…って半数が泣きながら帰っていって。残ったメンバーで、反省というより向上に役立てようということで見ましたけど、本当に追悼の初期はそういう状態で始まっていて。なのでライブがDVDになっても2011年の時はまだシビアになっていて、2009年はこうだった、2011年はこうだったと比較検証してしまうんです。でも、今回のDVDはそういうのがなくて、スーッと見れました。マスタリグまでの時と感じが違って、素直にスッと見ることができたんです。泣いて見ていた初期の頃、シビアになっていた頃を抜けて、客観性もありつつ、主観的に楽しんで見ることができましたね。

時間が経ったのが大きいということでしょうか?

寺尾 それもありますけれど、前回から5年空いてもZARDをずっとやってきているというのが、僕の中に浸透しているのかもしれません。バンドもたぶん、いろんな気持ちはあると思いますけど、ZARDという形をいい形で、今、自分自身のものとしてやれているんじゃないですかね。

演奏していても、そういう気持ちが映像になって伝わってくるというか。

大賀 だと嬉しいですけど。追悼というのももちろん大きいですけど、自分の中では坂井さん、バンドメンバーと一緒にライブをやっているという、その気持ちのままやれていたら嬉しいし、これからもやりたいなと思います。ZARD/2016live_cap_p2_2

やっぱりライブで見たいとおっしゃってくださるファンの方が多いので、そこは原動力になっていると思います

ZARDのようにこれだけミュージシャンたちが集まって追悼ライブを続けているというのは世界でも類を見ないわけですけど、その原動力は何でしょうか?

寺尾 ZARDの音楽そのものと坂井泉水さんの声、歌詞、姿、その全てをずっと伝えていく使命感みたいなものがありますね。しかも強制されたものではなくて。極端な言い方をすると、キリストの使徒のような。要は、伝えていく、継承していくことの使命感。それも押し付けじゃなくて、いい音楽なのでぜひ聴いていただけますでしょうか、という気持ちですかね。

音源で残していくというのはよくありますけれど、ライブという形で継承されているのは珍しいですね?

寺尾 ベストアルバムはリリースしていますが、それは限界があるのかなと。未発表音源もそれほど出せるものはないですし。であれば本来のZARDの音楽をライブの形で残していきたい、ということですね。元々は2004年のライブが評判良かったので、もう一回やろうと思ったら亡くなってしまったのですが、ファンの方や関係者から背中を押されて、結果として追悼という形で始まったんですけど。言葉には言い表せない原動力ですかね。

大賀 でも、やっぱりライブで見たいとおっしゃってくださるファンの方が多いので、そこは原動力になっていると思います。ライブで見たいという声をいろんなところから聞くので。

活動歴に比べたら、生前でのライブの数が極端に少なかったですからね?

大賀 そうですね、いまだにライブをやってる時、坂井さんの映像が出た瞬間に嬉しくて泣いていらっしゃる方がたくさんいて、演奏していても感動しますね。ファンの方と坂井さんが繋がっているんだなって。

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2人にとって坂井泉水さんは、どういう存在でした?

大賀 99年からやっているので、怖れ多い言い方ですけど、同じZARDの一員という気持ちでやっています。それは今後も変わらないですね。

寺尾 結果的に同志ですね。僕はディレクターになる前からお会いしていて、年齢的に僕が上なのでどうしてもアーティストとディレクター、という形になりがちなんですけど。フロントとしてやっていく方というのは、どなたも必ず僕らスタッフよりいろんなものが見える状態でやっているんです。最初は僕の方からああしようこうしようというところから始まったのですが、次第に彼女からのレコーディングの相談に乗るようになりました。こういう内容にしたいなあ、なんて言われたことを何とか実現しようとしながら、それを繰り返していき…次どうなるんだろうというところで、2007年の5月27日になってしまい…。ですから、彼女がやってきたことや、今だったらこう思うかな?っていうことを、同志として何か手伝ってあげる、考えてあげる。バンドのみなさんに演奏していただいたり、スタッフのみなさんに協力してもらいながら、坂井さんの言葉、歌、そういうものを同志として手伝っていく。同志としてそれをやり遂げることが、僕の坂井さんへの気持ち、使命なのかなと思います。

志を受け継ぐ、ということですね。

寺尾 次こうしましょうって具体的に提示があるわけではないので、坂井さんの意思を伝えていくことなのかと思いますね。

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取材・文 / 岡本明 撮影 / 森崎純子

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大賀好修

ギタリスト、アレンジャー、作曲家。
B’z、ZARD、松本孝弘、稲葉浩志、倉木麻衣、など数々のライブにギタリストとして参加。B’zや稲葉浩志など様々なアーティストのアレンジやレコーディングにも参加しており、2012年にインストロックバンド[Sensation]を結成。
ZARDでは、『hero』『窓の外はモノクローム』などの編曲を手がけたほか、数多くの楽曲でレコーディングに参加。
1999年の船上ライブ、2004年の全国ツアー“What a beautiful moment Tour”、追悼ライブに、ギタリストとして全公演参加。

寺尾広

東京都出身。レコーディング・ディレクター。デビュー当初からディレクターとして数々のZARD作品に携わる。その後、A&Rとして制作に幅広く関わった。

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