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倉持裕と竹中直人の『磁場』上演。圧倒的な力を前にあなたなら?

倉持裕と竹中直人の『磁場』上演。圧倒的な力を前にあなたなら?

劇団ペンギンプルペイルパイルズを主宰するほか、『信長のシェフ』(EX)をはじめとするテレビドラマの脚本や、『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK)のコント執筆も手がけるなど活動のフィールドを広げている劇作家・演出家の倉持裕。彼の書く脚本に魅了され、「一緒に舞台を作りたい」と熱烈オファーした竹中直人。彼ら2人がコンビを組んだ舞台『磁場』が、東京・下北沢の本多劇場にて12月11日に幕を開けた。その前日に行われた囲み取材と公開舞台稽古に潜入。果たして、今回の作品が作り出す“磁場”の正体とは?

取材・文 / 猪又孝 撮影 / 柴田和彦


強力な磁力を持つ者が現れ、磁場が歪み始めたとしたら……

竹中と倉持が初めてタッグを組んだのは今から3年前の2013年。“直人と倉持の会”という演劇ユニットを立ち上げ、竹中以外はオール女性キャストという作品『夜更かしの女たち』を上演し話題を集めた。今回の『磁場』はそれに続く“直人と倉持の会”第2弾作品。竹中が倉持作品に出演するのは、竹中と生瀬勝久による“竹生企画”で昨年上演された『ブロッケンの妖怪』などを挟み、これが4作目となる。

共演は、竹中と約20年ぶりの共演となる田口トモロヲ、映画やドラマ、舞台で独特の存在感を放つ渡部豪太、そして元宝塚で演劇のメッカである本多劇場に初登場となる大空祐飛が紅一点として出演。さらに、大河ドラマ『真田丸』で伊達政宗を演じる元ジョビジョバの長谷川朝晴や、劇団THE SHAMPOO HAT所属の黒田大輔、劇団猫のホテル出身の菅原永二、劇団ペンギンプルペイルパイルズの一員である玉置孝匡といった舞台経験豊かな役者が脇を固める。

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会見には竹中、田口、大空、渡部の4人が登壇。今回の企画は「倉持裕さんに、またお芝居を作りたいねっていう話をして始まった」(竹中)そうで、アイデアは「すべてお任せした」(竹中)とのこと。竹中は「また大好きな倉持裕さんと素敵な俳優さんたちが集まってくださった。始まってみないと何が起きるかわかりませんが、これから最後まで一生懸命頑張りたいと思います」と意気込みを語った。3人と初共演となる大空は「今回素晴らしい出演者のみなさんとご一緒できることがとても嬉しいです。稽古での日々が刺激的で一日一秒も無駄にはできないと思いながら過ごしてきました」とコメント。

作品の内容について訊かれると、竹中が「そういうのは大空さんが話すのが得意なんで……」と突然ノールックパスを出し、慌てた大空が「そういうのは先輩お願いします」と田口にパス。すると田口が「いや、そういうのは若い方が……」と切り出し、竹中が「豪太に任せますか」とフォローして、お鉢が回ってきた渡部がたったひと言「サスペンスです」と返して場が笑いに包まれる場面も。

「サスペンスということは誰かが殺されるのか?」という核心を突いた質問には、「もしかしたら誰かが生き返るかもしれないし……」(田口)、「突然SFになっちゃうかもしれないし、ホラーになってしまうかもしれない(笑)」(竹中)と2人で抜群のコンビプレーを披露。久しぶりの共演に関して田口が「お互い歳をとりましたね(笑)」と竹中に水を向けると、「そうじゃのぅ」「そうですねぇ」と2人で爺さん口調で話し始めるなど、息の合ったところを見せた。

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舞台の内容に絡め、「稽古中に竹中に追い詰められることがあったか?」と訊かれた渡部は「ないと言ったら嘘になります(笑)。でも竹中さんはつねに熱くて、キャストのみなさんを引っ張ってくださって、とても優しくて温かい……ブルース・リーです(笑)」と、こちらも竹中にナイスなフリ。それを受けて竹中が得意のブルース・リーの物真似を披露するサービスもあった。さらにその質問に竹中は「今回の衣装合わせで田口さんが追い込まれてました」と暴露。田口によると、スタイリストがGジャンを着せることに強く固執していたそうで、「どういう作品を撮ってもGジャンシリーズになるGジャン監督っていう設定に追い詰められまして、それがかなりのプレッシャーでした(笑)」とのこと。最終的には竹中が救いのひと言を発し「ようやくその呪縛を解かれました(笑)」(田口)。それを受けて竹中も「みんな衣装合わせが終わってるのに、トモロヲさんだけずーっと終わらない。しかもGジャンに納得がいってないから、だんだん追い込まれていってセットの隅の椅子に座ってるのがおかしくて(笑)。そうやって人が追い込まれているのを見てるのは好きですね。自分は追い込まれたくないです(笑)」と大笑い。会見は終始、なごやかなムードで進行し、キャスト同士の仲睦まじい様子が垣間見えるものだった。

ひりついたムードとスリリングな会話劇で描く心理サスペンス

会見はなごやかなムードだったが、作品は緊迫感たっぷり。倉持はコメディーに定評があるし、竹中、田口、長谷川も“笑い”を十分にこなせる俳優だが、今回はコミカル要素控えめ。そこもひとつの見どころだろう。

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物語の舞台は、ホテルのスイートルーム。そこに渡部演じる売り出し中の脚本家〈柳井〉が映画のシナリオ執筆のため、缶詰めにされている。田口が演じるのはその映画の監督〈黒須〉。長谷川が演じるのはその映画のプロデューサー〈飯室〉。彼らはその部屋に集まり、どんな映画にしようかと打ち合わせを始める。竹中が演じるのはその映画の出資者(スポンサー)である〈加賀谷〉。彼は脚本家の才能を高く買っている一方、大空演じる女優〈椿〉を勝手にキャスティングしたり、映画の方向性に口を出したりと、いろいろ無理難題を押しつけてくる。若き脚本家は監督、プロデューサー、出資者、それぞれから求められる過剰な期待に応えようとするものの、その期待が次第に重圧になっていき、追い詰められていく。いろんな人間の様々な思惑が交差するなか、なんとかシナリオを仕上げようとする脚本家の奮闘を、ひりついたムードとスリリングな会話劇で描く心理サスペンスとなっている。

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観劇後に思ったのは、囲い込まれてモノが言えなくなること、知らず知らずのうちに自分の意見を持てなくなくなることの怖さだ。世の中には、権力をふりかざす人間、権力に物怖じしない人間、長いものに巻かれがちな人間、人の意見に同調してばかりの人間、人の弱みにつけ込む人間、歯に衣着せぬ物言いをする人間、自分より弱者には強く当たり強者には媚びへつらう人間、自分の意見を曲げない人間など、様々なタイプがいる。人間が磁石だとしたらS極とN極のようにぴったり引かれ合う相性の人もいるだろう。反対にS極とS極、N極とN極のように反発し合う人間もいる。その磁力の程度は人それぞれだし、だからこそ適度な距離感が生まれ、身の回りの人間関係は構築されている。だがもしも、そこに強力な磁力を持つ者が現れ、磁場が歪み始めたとしたら……。そのときあなたはどう行動しますか? そんなことを考えさせられる作品だと思う。

直人と倉持の会 vol.2『磁場』

【東京公演】2016年12月11日(日)~25日(日)本多劇場
【大阪公演】2017年1月15日(日)サンケイホールブリーゼ
【島根公演】2017年1月17日(火)島根県民会館 大ホール
【名古屋公演】2017年1月19日(木)ウインクあいち 大ホール
【神奈川公演】2017年1月21日(土)湘南台文化センター 市民シアター

【作・演出】倉持裕
【出演】
竹中直人 渡部豪太 大空祐飛 長谷川朝晴
黒田大輔 玉置孝匡 菅原永二 田口トモロウ
【製作】(株)M&Oplays

オフィシャルサイトhttp://mo-plays.com/jiba/