Interview

映画『艦これ』と主題歌「帰還」を巡って西沢幸奏が思うこと

映画『艦これ』と主題歌「帰還」を巡って西沢幸奏が思うこと

現在、全国の劇場にて絶賛ロードショー中の映画『劇場版 艦これ』。大反響を呼んだTVアニメ『艦隊これくしょん -艦これ-』の放送から早1年半、今度はスクリーン上で活躍する“艦娘(かんむす)”たちの勇姿を目撃したファンは、すでに大勢いるのではないだろうか。ここでは、TVシリーズのEDテーマ「吹雪」に続き劇場版の主題歌「帰還」を歌った西沢幸奏のインタビューを掲載。映画を観た人も、まだ観てない人も、この1年半を通じて彼女のなかに育った『艦これ』への想いをぜひ感じてほしい。

取材・文 / 西原史顕
撮影 / 山本哲也


「帰還」を巡る“艦娘”たちの運命の行く末は、劇場にて

4thシングル「帰還」は映画『劇場版 艦これ』の主題歌です。デビュー以来となる、『艦これくしょん-艦これ-』とのタッグですね。

 『艦これ』の曲を歌うのが2度目だということは、もちろん意識していました。あのときの自分に負けない気持ちで歌わせていただいています。

やはり1stシングル「吹雪」の頃のことを思い出しましたか?

 思い出しましたね。あのときの経験は大きなものばかりで、レコーディングも人生初でしたし、写真やMVの撮影も、こういったインタビュー取材を受けるのも初めてのことでした。「吹雪」というシングルによって世界がガラッと変わったという感じだったので、ひと言では言い表せない思い出があります。そのなかでも初めてTVの映像に自分の歌が乗った瞬間というのは強烈で、それを目の当たりにしたときに、自分の歌手としての活動がスタートしたんだなと実感したのをよく覚えています。

それから早いもので……。

 もう1年半ですね。

この期間に積み上げてきたことは、今回の「帰還」に活かすことができましたか?

 私自身としては、何もかもがあの頃とは違うという意識があるので、そのことを歌から感じてほしいという気持ちでいっぱいです。1年半前との違いをあえてひとつ挙げるなら、ファンのみなさんの存在ですね。「吹雪」の頃にはまだ何も見えていなかったんですが、今ならファンのみなさんがいて、応援してくださっているからこそ私がいるんだと思っていますし、だからこその決意も固まっているので、自分の意思でちゃんと歌えているんじゃないかと思っています。

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ではその「帰還」について。非常に荘厳な、「吹雪」とは異なる印象の楽曲に仕上がりましたね。

 そうですね。「壮大なバラードですね」とおっしゃってくれる方は多いんですが、私の中では吹奏楽の音色とか、「吹雪」との共通点は多いなという印象でした。ただ、違うのは思いの強さ。「吹雪」のときは「さあ、海へ飛び出していくぞ」という前向きなメッセージだったんですけど、「帰還」はあのときからだいぶ成長した“艦娘(かんむす)”の気持ちを歌っているんじゃないかと感じています。

具体的にはどんなメッセージを感じましたか?

 「帰還」というタイトルどおり、「絶対に帰ってくるぞ」という決意がサウンドにも歌詞にも現れているんですけど、サビでその思いを爆発させる前に、AメロやBメロに“艦娘”たちの女の子らしい気持ちが見え隠れしているんですよね。心の中では「怖い」と感じているところにすごく切なくなっちゃって、歌もあれこれ難しいことは考えずに、歌詞の気持ちに沿って歌っていくことだけを考えました。

たしかに、感情の起伏が激しい一曲ですよね。西沢さんの声色もそうですし、段階的にせり上がっていくようなサウンドの構成もドラマチックで。

 いつもは歌う前に「ここはこういう声色で歌ったほうがいいかな」とか考えるんですが、今回は歌詞を読んですぐに「こう歌いたい」というイメージがパッと湧いてきたんですよ。だからレコーディング中は彼女たちの気持ちにすごく入り込んじゃって、いつも以上に感情的になってしまいました。怖さや不安があるからこそ「帰ってくる」というメッセージが切実になって、歌いながらウルッときたり。自然と沸いてきた感情ですが、ここまでストレートな感情が出たのは初めてかもしれませんね。

そこはやはり、2度目のタッグだったからこその歌唱だったのではないでしょうか?

 それは大きいと思います。「吹雪」のときはまだアニメを観る前にレコーディングしましたが、今回はTVシリーズの『艦これくしょん -艦これ- 』を観たうえでの一曲ですし、あのときのキャラクターがこう成長したからこそ、こんな気持ちを抱くことができたんだなという想像ができたので、気持ちの面ではまったく違うと思います。

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歌詞の内容については、かなり物語の核心を突いていそうですね。

 そうかもしれませんね(笑)。特に私が入りこんだのは、Aメロなんですよ。ここってすごく、“艦娘”たちの心の声がそのまま描かれているような気がして。“ごめん”というひと言から、「この言葉をどんな表情で言っているんだろう」って、ものすごく想像を掻き立てられました。“朝焼け空”という言葉からも、あの子たちが佇んでいる風景がくっきり浮かんできて……「帰還」は、切なさと力強さが同居しているような曲なんだと思います。

レコーディングのタイミングでは、映画の内容はご存知だったのですか?

 いいえ、内容は歌詞から想像しながら、歌いました。彼女たちはとてつもない“大決戦”に挑もうとしているんじゃないかな、と……。そうすると“艦娘”たちは女の子なので、「帰ってくるよ」という言葉の裏にある不安がやっぱり気になるんです。彼女たちがどういう思いで海に飛び出していくのか、という点には注目していただきたいですね。

歌詞からはただごとではない雰囲気が漂っていますが、そこは映画館で確かめていただくということで。

 ぜひそうしていただければ。ただ私自身、1stシングルのタイトルが「吹雪」だったので、吹雪というキャラクターには強い思い入れがありまして。彼女がどうなるのかについても、みなさんには特に注目していただければなと思います。

さて、カップリングの「Just One」について。こちらは非常にエモーショナルなギターロックです。

 あんまり爽やかなギターロックを歌ったことはなかったのですが、私が普段から聴いているようなタイプのサウンドだったので、レコーディングが楽しみだったんですけど……いざ歌ってみるとすごく難しかったです。メロディの移り変わりが今までにないような感じで。

高低差が激しいですものね(笑)。この曲では作詞をされていますよね?

 曲から風が吹いている感じがしたんですよ。とても爽やかなサウンドで、誰かが走っている風景が浮かんできました。その第一印象から、自分が何を書くべきか考えていきました。

“僕にだけしか出来ないことをしたい”“いつも誰かになりたくて”といった悩ましいテーマが描かれていて、これまたエモーショナルな感じで。

 自分に言い聞かせている感じですね。私自身がいろんなものを羨ましく思うタイプで、例えば音楽を聴いていても、「この曲好きだな」と思う一方で「私には歌えないな」と落ち込んでしまったりすることがあったんです。でも、「それって意味ないな」って気がついて、その素敵なアーティストさんも、自分がいる環境のなかで一生懸命やっているんだという、私と変わらない条件しか与えられていないことがわかってくると、それを羨ましく思うのをやめました。私も私にしか歌えない歌をうたって行きたいという、そんな気持ちを飾り気のない言葉で書かせていただきました。

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こういう気持ちは20代でも30代でも、いつになっても消えないものだと思うんです。

 私の場合は高校を卒業してまだ2年も経っていませんけど(笑)。“青い 日々”といった言葉は、高校に通っていた頃の自分を思い浮かべながら書いたフレーズです。私がこの世の中で誰よりも悩んでいるんじゃないかと思っていた苦悩の日々とか、それがたいして意味のないものだったと気がついたときの瞬間とか、「青春」という言葉からは痛いくらいの思い出が浮かんできます。

過去を振り返ることは多いほうですか?

 ふと思い出すことって、幸せなことよりも「やっちゃった!」っていうことのほうが多いじゃないですか(苦笑)。「どうしてあのとき……」とは結構考えちゃったりしますね。でもそう思えるのって、自分が前に進んでいる証だなって最近は思うんです。

とても手探りな、焦燥感のある歌詞。「青春」と「大人」というテーマに真正面から向き合っているのが爽やかでした。

 これまで自分で書いた歌詞は、あえて難しい物言いをしていたんですが、今回は素の自分のしゃべり言葉のようなフレーズをすごく意識しました。ストレートすぎて恥ずかしくなっちゃうような歌詞も、胸を張って歌うことで、意味のあるものになるんじゃないかと思っています。

デビューから1年半。すでにトーク&ミニライブを2度開催していますが、そろそろアルバムやワンマンライブも楽しみな時期になってきましたね。

「トーク&ミニライブ“Face to Face”」をやる以前から、“Animelo Summer Live”や“ANIMAX MUSIX”といったいろいろなフェスに参加させていただいていたんですが、やっぱり自分のイベントは、すべてのお客さんが私のことだけを楽しみに待ってくれている場で、私のことを見つめる目線の力が違いますよね。味わったことのないような緊張感。この方たちが私の音楽を聴いてくれているんだという実感が、私に歌手として「前進しよう」と思わせてくれています。

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ファンの存在については、最初の質問にも答えていたことですね。

「いい歌をうたいたい」とか「かっこいいステージをやりたい」といった今の私の気持ちは、すべてが「ファンの方たちに笑顔になってほしい」という願いに繋がります。まだやれていないことは多いので、これからもっと頑張って、アルバムも作りたいですし、ゆくゆくはツアーもやりたいですね。今はそれを実現するために走り抜け中なので、ぜひ楽しみに待っていただければなと思います。

西沢幸奏(にしざわ・しえな)

オフィシャルHPhttp://shiena-nishizawa.com
オフィシャルTwitterhttps://twitter.com/shiena_tw
オフィシャルブログhttp://ameblo.jp/shiena-nishizawa/

イベント出演情報

FM NORTH WAVE 23rd ANNIVERSARY × KRAPS HALL 15th ANNIVERSARY 「Anison-R presents Special Xmas LIVE 2016!!」
場所:KRAPS HALL(北海道・札幌)
日時:2016年12月18日(日)
開場: 16:30/開演 17:00
出演:鈴木このみ、西沢幸奏

「ANIMAX MUSIX 2017 OSAKA」
場所:大阪城ホール 
日時:2017年1月14日(土)
開場:13:00/開演14:00
出演:i☆Ris、every♥ing!、大橋彩香、OxT、GARNiDELiA、KOTOKO、鈴木このみ、鈴村健一、茅原実里、西沢幸奏、fripSide、Minami、ミルキィホームズ and more…(五十音順)

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