特集・進化するトライセラトップスという恐竜  vol. 1

Column

序章~ デビュー20年を迎えるロックトリオの音楽力の凄さ

序章~ デビュー20年を迎えるロックトリオの音楽力の凄さ

僕が初めてトライセラトップスと出会ったのは、1996年の暮れのことだった。僕が司会をしていたテレビ神奈川の名物年越しライブ番組に、デビュー前の3人が出演してくれた。

この年、僕と一緒に司会をしてくれたのは、デビューしたばかりのPUFFYの大貫亜美だった。「アジアの純真」が空前の大ヒットをして紅白歌合戦から声がかかったものの、こちらの番組の方が先にオファーしていたので、紅白を蹴ってでの司会だった。亜美ちゃんの相方の吉村由美は、直前に自転車事故で欠場したので、由美ちゃんの実物大パネルを置いての司会進行となった。

そんなドタバタ劇の中に登場したトライセラトップスは、世の中のもろもろの騒ぎを軽く飛び越して、衝撃的なパフォーマンスを披露してくれた。

会場の渋谷公会堂は、武道館と並んで日本のロックの聖地と呼ばれ、数々の有名ミュージシャンがライブを行なっていた。トライセラトップスはそのステージにまったく物怖じせずに登場して、デビュー曲となる「Raspberry」を演奏。カッコいいギターリフと憶えやすいメロディで、オーディエンスにその存在を印象付けた。

特に和田唱のギター・テクニックは、その年越しライブに出ていた先輩バンドたちと比べても、飛び抜けて優れていた。たとえるならCharのように、日本人離れしたセンスのギターワークだった。ギターの名手のプレイを少し離れたところから観察すると、きれいに平行に並んでいる6本の弦がそのまま見える。左手の指で押さえているのに、弦は歪まずにネックの上にあるのだ。普通のギタリストだと、どうしても押さえている場所が曲がる。和田のギターの弦は真っ直ぐに並んだまま“弾かれて”いた。名ギタリストにまた一人、出会えたライブだった。

あの夜でもう一つ覚えているのは、インタビューの際の和田の受け答えだった。僕の質問に対して和田は、ギターと同じく、まったく物怖じせずに堂々と答えてくれたのだった。ある質問に対しては、「答えなくちゃいけないんですか?」ときっぱり拒絶してみせた。インタビューにおいて、答によってはリスナーの想像力を邪魔してしまうタイプの質問というものがある。和田は無意識にそれを感じて拒否したのだと思う。たいしたものだと僕は思った。

その時、和田唱は21才、林幸治は20才、吉田佳史は26才。今から20年前の話だ。

トライセラトップス

次に印象に残っているのは、2005年に渋谷AXで行なわれた奥田民生と寺岡呼人のユニット“寺田”の復活ライブだった。ゲストはフジファブリックの志村正彦とMr.Childrenの桜井和寿、そして和田唱だった。和気あいあいと進むライブで、ビートルズの「I’ve Just Seen a Face」をカバーしたとき、和田唱が先輩方の歌唱指導のようなことをした。またしても、物怖じしない態度! 僕は一瞬、ヒヤッとしたのだが、これが和田唱だと改めて思ったものだ。彼にとっては、先輩も後輩もみんな“音楽仲間”なのだ。

その和田が、昨年の奥田民生「生誕50周年伝説“となりのベートーベン”」の第2部でバックコーラスを担当。真剣なその表情に、この男のミュージシャンシップの素晴らしさをひしひしと感じた。それこそ和田が、小田和正の渾身のイベント「クリスマスの約束」に重要な役割として呼ばれるのは、こうした“音楽に対する真摯な態度”があるからこそなのだ。

和田ばかりでなく、ドラムスの吉田もベースの林も、多くのアーティストから信頼を寄せられている。吉田は、吉井和哉のソロのライブバンドでのパフォーマンスが光る。ミュージシャン選びにおいてはシビアなことで有名な吉井が、吉田のドラムに惚れこんだ。ツアーを重ねるごとに吉田の存在感が増しているのは、吉井の数々のインタビューをみればわかる。

一方で林は、90年代J-ROCKの重要バンド“PLAGUES”が活動を再開するにあたって、サポートメンバーとして呼ばれている。来年1月にリリースされるPLAGUESのニューアルバム『Free will』のレコーディングにも参加していて、PLAGUES深沼元昭の林に対する信頼の厚さがわかる。

こうしてロックシーンにおけるポジションを確立してきた3人のホームグラウンドであるトライセラトップスが、来年、20周年を迎える。それに先立って、今年の11月から12月にかけてアコースティック・ライブツアーが行なわれた。僕は12月4日にZepp DiverCity TOKYOで観たのだが、そこで演奏された1曲1曲には、彼らの歴史と今がしっかりと刻み込まれていた。

和田はアコースティックギターと、柔らかい音色のフルアコ・エレキギターを使用。林もアコースティック・ベースを抱えている。吉田はいつも使うスティックの他に、ジャズで使われる“ブラシ”を用意していて、3人とも「聴かせる」スタイルの演奏に没頭する。特にこの夜は和田のボーカルが素晴らしかった。歌詞の解釈が的確で、20年前とはまったく異なるボーカリストになっていた。

いつもと違う音楽のタッチに、オーディエンスは聴き入り、拍手する。ピアノによるカバーナンバーや、アコースティックにアレンジし直されたオリジナルなど、聴きどころが満載だった。

とあるスタンダード・ナンバーでは3人の深みを増した味わいが、オリジナルでは長年つちかってきたボーカル・ハーモニーが楽しめた。アコースティックだからこそ、一人一人の音楽性が高い透明度で伝わってくる。それでも、穏やかに円熟してはいないところが、ロックバンド“トライセラトップス”の証だった。

20年間走り続けてきたバンドが、満を持して次のステップに進もうとしている。天才・和田唱を擁するトライセラトップスが、来年、真の“最強のロックトリオ”に進化する瞬間を見届けたいと思う。

文 / 平山雄一 撮影 / 山本倫子

ライブ情報

TRICERATOPS
ACOUSTIC LIVE TOUR 2016 -追加公演-
2016年12月30日(金) 赤坂BLITZ
15:45 OPEN 16:30 START
券種・料金:1F立見 ¥4,950(税込)※ドリンク代別

チケットぴあ 
TEL:0570-02-9999 (Pコード:311-514)
ローソンチケット 
TEL:0570-084-003 (Lコード:75146)
イープラス 
TRICERATOPS(トライセラトップス)チケット情報
お問い合わせ
https://www.red-hot.ne.jp/live/detail/27351
HOT STUFF PROMOTION
TEL:03-5720-9999 

TRICERATOPS

和田唱(vo、g)、林幸治(b)、吉田佳史(ds)の3名からなるロック・バンド。1996年に結成。1997年7月にシングル「Raspberry」でメジャー・デビュー。1998年3月にメジャー1stアルバム『TRICERATOPS』をリリース。2014年12月には11枚目のアルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』を発表。

オフィシャルサイトhttp://www.triceratops.net


vol.1
vol.2

編集部のおすすめ