原田泰造xコトブキツカサの<試写室噺(ばなし)>  vol. 5

Interview

原田泰造とコトブキツカサの映画話。オアシス、ヒッチコック、2組の伝説を観る

原田泰造とコトブキツカサの映画話。オアシス、ヒッチコック、2組の伝説を観る

リアム&ノエルのギャラガー兄弟が率いた伝説のバンド・オアシスの成功にいたるまでの日々を貴重な映像資料とインタビューをもとに綴った『オアシス:スーパーソニック』。そして、伝説的な映画書『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』の制作過程を紐解きながら、現代の巨匠監督たちの解説を加えた映画ファン必見の『ヒッチコック/トリュフォー』。ドキュメンタリー作品はあまり観ないという原田泰造と、ドキュメント大好きというコトブキツカサが、同時期に公開される珠玉のドキュメンタリー映画2本についてタップリと語り尽くします。

メイン写真 / (C)Jill Furmanovksy


この映画で、本当にオアシスっていう伝説を観たなと思った

コトブキ 今回はドキュメンタリー作品を2本語りたいと思います。まずは伝説的ロック・バンドのデビューからの軌跡を追った『オアシス:スーパーソニック』。僕はオアシスが好きなので、これは本当に面白かったですね。

オアシスの楽曲はこちら
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原田 僕はオアシスっていうバンドの存在は知ってたけど、ちゃんと聴いたことはなかったんだ。僕が洋楽を聴いてたのは、80年代の『ベストヒットUSA』とかで、そのあとの時代はちょっと離れてたんだよね。だからこの映画を観て、オアシスってすごかったんだなって知ったし、舞台裏もいろんなドラマがあったんだね。

コトブキ オアシスファンは、このあたりのエピソードは知ってはいるんですよ。“悪童”って呼ばれてきたリアムと、それを見守ってきたノエル。シャイなくせに、たまに爆弾発言して物議を醸すとか、兄弟揃って世間を騒がせ続けてきた歴史を。

原田 この映画は、それを実際の映像で見せてくれるじゃない。だから説得力が違うんだよね。

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(C)Jon Gorrigan

コトブキ 僕は音楽ドキュメンタリーが大好きで、エイミー・ワインハウスの『AMY エイミー』とかは、年間ベスト10入りするぐらい好きなんですけど、やっぱり映像が残ってないことが多いんですよ。でも、この作品は驚くほど残ってる。彼らがビッグになってからならまだわかるんですけど、それ以前のホームビデオからありますから。それに、現在のリアムとノエルが本当に喋ってるっていうのがすごいし、このドキュメンタリーの価値があるところですよね。

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(C)Jon Gorrigan

原田 ノエルとリアムはやっぱり兄弟だから、仲悪くても、どこかで通じ合っている感じがするんだよね。

コトブキ 兄弟だからこその気恥ずかしさっていうのはありますよね。漫才コンビとかもそうですけど、仲良いし、繋がってるけども、楽屋でずっと喋ってるということはおそらくない。でも、お互いに「アイツのことは俺にしかわからない」みたいな感覚はある。

原田 でも難しいのが、憎しみ合うと深くなってしまうのも兄弟じゃない? 2人とも天才だから、一緒にいたらパワーとパワーがぶつかっちゃう。だからこそ、離れなきゃいけないのかなって思ったよ。

コトブキ イギリス出身というのも含めて比べちゃうんだけど、ザ・ビートルズもジョン(・レノン)とポール(・マッカートニー)という天才が、たまたま同じグループで競い合ったから素晴らしいモノが生まれたというのがあったと思うんですよ。あそこはたしか、ジョンが先輩なので、パワーバランスがキッチリしてて、本当の意味での仲違いを見せなかったじゃないですか。でも兄弟だと……。

原田 兄弟だから言えるというか、言っちゃう。

コトブキ 言っちゃうんですよ! 「この野郎」とか「ふざけんじゃねー」とか。

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(C)Tim Abbot

原田 映画を観てると、ノエルのほうが、リアムに対してケンカを吹っかけてるんだよね。お兄ちゃんなんだから抑えればいいのにって思うんだけどさ。

コトブキ これも複雑で、ノエルは作詞作曲担当で本来は裏方じゃないですか。それがソロ曲とかで自分も歌い出して、バランスがおかしくなっていくんですよね。

原田 でもノエルが自分で歌い出したのは、リアムの素行が悪かったせいもあるんだよね(笑)。

コトブキ ドラマチックというか、スリリングな展開というか、お互いどこからどこまで駆け引きをしていたのかなって考えちゃいますよね。

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(C)Ignition

原田 オアシスが来日してたときの映像もすごかったね。女のコがキャーキャー言ってて、熱狂的に迎え入れられていてね。

コトブキ 泰造さんもすごかったじゃないですか。昔、テレビでネプチューンさんの密着ドキュメンタリー番組を観たことがあって、原宿のクレセントホールに車を横付けするんですけど、ファンがいっぱいで入れないみたいな映像が目に焼き付いてますよ。もうアイドルみたいな人気で。

原田 あの頃は『ボキャブラ天国』のブームだったんだけど、あの番組をやる前は、イベントに行って3公演あっても、お客さんが集まらなさすぎて、1回やってもういいですって帰らされたんだけど、それから『ボキャブラ』に出て、同じ場所のイベントに行ったら今度は人が集まりすぎて、2公演目ができなくなったってことがあった。1年も経ってないのに、テレビの力ってすごいなぁって思ったんだ。

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コトブキ 伝説の富士急のライブもすごかったじゃないですか。『ボキャブラ』のメンバーが集まって。何万人もお客さんが入って。

原田 あったけど、なんにも覚えてないよ(笑)。やってる側からすると、危機感しか感じないんだよね。あれだけのお客さんを前にしてウケなかったらどうしよう、とか思ってしまって。

コトブキ オアシスもデビューから3年で25万人集めてますからね。あの熱っていうのは、90年代独特のものですよね。今はネットが発達してしまって、ああいう盛り上がり方ってしないと思うんですよ。

原田 観客も含めて、みんなで伝説を作ろうとしてたのかもしれないね。この映画を観て、本当にオアシスっていう伝説を観たなと思った。

コトブキ ただ、この伝説はまだ終わってないんですよ。この映画はノエルとリアムが製作に加わってて、インタビュー出演もしてるじゃないですか。まだ繋がりはあるし、これを機に再結成という流れもあるかもしれないですよね。

原田 現実とリンクしてるのが、ドキュメンタリー映画の面白さだよね。


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