特集・進化するトライセラトップスという恐竜  vol. 4

Report

20周年を迎えるトライセラトップスが示した珠玉のアコースティック・ライブ

20周年を迎えるトライセラトップスが示した珠玉のアコースティック・ライブ

TRICERATOPS ACOUSTIC LIVE TOUR 2016 
2016.12.4 Zepp DiverCity TOKYO

 2016年4月に渋谷CLUB QUATTROで行なわれたアコースティック・ライブが好評だったことを受けて、トライセラトップスが初のアコースティック・ライブツアーを敢行。プレミアムなライブを、全国の数多くの音楽ファンが楽しんだ。

 トライセラトップスは2017年にデビュー20周年を迎える最強のロックトリオだ。メンバーの和田唱(vo&g)、林幸治(b&cho)、吉田佳史(dr&cho)は、高い音楽性と演奏技術を併せ持っている。そのキャリアと表現力からすれば、これまでアコースティックでのライブを行なって来なかったことの方が不思議だったが、満を持してのトライは素晴らしいものになった。

 それは技術だけの問題ではなく、ミュージシャンとして過ごしてきた年月が彼らのアーティスト性を成長させ、“今だからこそできるアコースティック・ライブ”をもたらしたのだ。自分たちのレパートリーをただアコースティック楽器で演奏してみせるだけのライブではなく、幅広いジャンルの名曲カバーも含めて、味わい深い“音楽ショー”になっていた。

 メンバーの心の余裕はステージ進行にも表われていて、3人のユニークなキャラクターが反映されたMCによって予想を超えた展開を生まれ、ツアーを通じて一個の優れたエンターテイメントとして完成したのである。

トライセラトップスZepp

 2016年12月4日。Zepp DiverCityのフロアの椅子は、オーディエンスで満席だった。普段はオールスタンティングで使われることの多い会場だから、その景色は新鮮だ。オーディエンスもそのことを感じているらしく、開演前のZepp DiverCityはザワザワと華やいでいた。
 オーディエンスが椅子席なら、メンバーも椅子席だ。ステージ配置もいつもと違う。通常はセンターにドラムがセットされるのだが、左がドラムス、中央がベース、右がギターで、演奏中にお互いの顔が見えるようにセッティングされている。
 大きな拍手の中、3人が登場してそれぞれの位置に座る。和田はいつものソリッドなエレキギターではなく、ジャズのプレイヤーが使うフルアコースティック・ギターを抱えている。林もギター型のアコースティック・ベースを持つ。 吉田もやはりジャズのドラマーがよく使うブラシを両手に持っている。

 さて、どんな曲から始まるのかと思っていたら、オープニングはスタンダード・ナンバーの「Come Fly With Me」。これはアメリカの大スター、フランク・シナトラが1950年代に歌ってヒットした曲で、とても美しいメロディに、「僕と一緒にボンベイやアカプルコに飛行機で行こうよ」と誘うロマンティックな歌詞が付いている。

 とにかく和田のボーカルがいい。クリアで明るいトーンの声で、リスナーに英語の歌詞の意味をかみ砕いて伝えようとする。この「Come Fly With Me」が名曲なのは、メロディと歌詞のムードがぴたりと合っていて、それを素直に楽しみさえすれば、歌の主人公のようにハッピーな気持ちになれるところにある。だから和田は最大限、ハッピーに歌う。ギターも“オクターブ奏法”というジャズのテクニックを使って、シンプルにメロディを伝える。そんなシンプルさに合わせて、吉田はブラシでシンバルやスネアドラムを優しく撫でるように叩き、林はウキウキする気持ちをアコースティック・ベースの柔らかなビートで表わす。

 普段の“最強のロックトリオ”の演奏とはまったくテイストの異なるサウンドに、オーディエンスたちが戸惑っているのかと言えば、そんなことはなく、トライセラトップスが描くハッピーな恋の始まりの歌をうっとりと楽しんでいる。快心の演奏が終わると、和田は「Yeah!」と声を上げたのだった。トライセラトップスZepp

 序盤で面白かったのは「氷のブルー」だった。元THE BOOMの宮沢和史とタッグを組んで発表した『MIYATORA』に収められていた曲で、それをアコースティックで演奏することで、曲の持っている悩ましさを強調することに成功していた。結果、感情がダイレクトに出る生の楽器を通して、メンバーの持つ“ブルース・フィーリング”がストレートに伝わってきたのだった。
 この序盤の2曲で、今回のツアーで3人が目指したもののひとつがわかった。カバーであれ、オリジナルであれ、曲と真正面から向き合い、自分たちの人間としての経験値をそこに映し出そうとしているのだ。女の子を好きになって世界旅行に誘う歌も、冷たい現実にもがく日々の歌も、どちらも生々しく表現しようとしてこのツアーに出たのだ。そしてそのチャレンジを、真正面から受け取るオーディエンスがいてツアーが成り立っていることも素晴らしいと思った。「こんばんは、TOKYO! 戻ってきました。このスタイルでツアーを回るのは実験的でした。でも、いい感じで来たんだよ。ここまで積み上げてきたものを、お見せできたらと思ってます。楽しんでってね」と挨拶する和田に、自信がうかがえる。

 中盤は、カバーが光る。60年代のイギリス映画『アルフィー』の主題歌のカバーを歌う前に、和田が話し出す。
 「主人公のプレイボーイの男に、女が“あなたの人生、それでいいの?”ってアドバイスしているような歌詞なんだけど、男が歌ってもいい歌。英語はそこがいい。今日は僕が歌います」。

 始まった「アルフィー」は、演奏も歌もしみじみとして引き込まれた。特に和田のギター・ソロは、いつもとは別モノのよさがあった。歌う前のMCが非常に効果的で、複雑な大人の感情の機微が細やかな部分まで伝わってきた。アコースティックだから、カバーだからこそ見ることのできた、トライセラトップスの内面だった。僕はそれに感激した。

 一方、和田がピアノを弾きながら歌ったミディアム・バラッド「虹色のレコード」は、非常にピアノが似合っていた。2014年のアルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』に収録されている曲で、音楽と共に生きる人生を歌っている。この曲もまたじっくり楽しめた。
 吉田と林のセッションをはさんで、ライブは終盤へ。「I GO WILD」では、ストイックにリフを3人で演奏すると、かえってオーディエンスが盛り上がるから面白い。アコースティック編成でも充分に会場を盛り上げることができる。ラストチューンの「SPACE GROOVEⅡ」では貫禄さえ感じさせる堂々たるパフォーマンスを披露した。トライセラトップスZepp

 3人はTシャツ姿で戻ってきてアンコールに臨む。和田がピアノで「僕らの一歩」を弾き語り始めると、自然なタイミングで林のベースが入ってくる。吉田は2コーラス目から加わる。トライセラトップスが10年目を迎えようという時期に発表された“次の一歩”についての歌だ。この場面で歌われると、いちだんと歌の意味が伝わってくる。終わると、会場から穏やかな拍手が起こった。なんだか洋楽のライブを観ているような気分になった。

 「ありがとう。今日までやってきて、新たな可能性が見えた気がします。みんなも楽しんでくれて嬉しいです。トライセラ・ファミリーが増えていくのは嬉しいし、誇りに思います。今日のライブはスタンダードから始まりました。最後も古いスタンダードで締めたいと思います。いいですか? これは1回、レコーディングしたことがある。知ってる人はフリークだね、ちょっとくさいですけど、夢の中でまた会いましょうという歌です」。

 オープニングと同じフルアコースティックギターを抱えた和田が歌い始めたのは「I’ll SEE YOU IN MY DREAMS」。1920年代の名曲だ。和田をこの夜を締めくくるのにふさわしく、丁寧にメロディと歌詞をトレースする。2コーラス目にドラムとベースが休んで歌とギターだけになるパートになると、ギターのリズムの刻みがライブの終わりを告げるように切なく響く。20周年を迎えるバンドにふさわしい、余韻のあるエンディングだった。それはアコースティック・ライブが、完全にトライセラトップスの新しい魅力の一つになった瞬間でもあった。

文 / 平山雄一 撮影 / 山本倫子

TRICERATOPS ACOUSTIC LIVE TOUR 2016
2016.12.4 Zepp DiverCity TOKYO セットリスト

1 .Come Fly With Me
2 .Pumpkin

3 .氷のブルー

4 .New Lover
5 .ホログラム

6 .スターライト スターライト

7 .I Need To Be In Love

8 .Alfie

9 .Happy Saddy Mountain
10. Lady Madonna

11. 虹色のレコード

12. HAYASHI&YOSHIFUMI GROOVE
13. Scar

14. Love Is Live

15 .I Go Wild

16 .夜のStranger

17 .SPACE GROOVEII
EN1. 僕らの一歩

EN2. I’ll SEE YOU IN MY DREAMS

ライブ情報

TRICERTOPS  不定期開催の恒例企画
“DINOSAUR ROCK’N ROLL -7-”
EX-THEATER 2DAYS公演、開催決定‼

2017年3月17日(金) EX-THEATER ROPPONGI
open18:15  start 19:00 
ゲスト:UNISON SQUARE GARDEN

2017年3月18日(土) EX-THEATER ROPPONGI
 open18:15  start 19:00 
Special Secret Guest有り(当日まで一切発表無し)

チケット(整理番号付き): STANDING 1日券¥4,950- / STANDING 2日通し券¥9,300- 
一般券売日:2017年2月4日(土)
プレイガイド:
チケットぴあ http://pia.jp 0570-02-9999 Pコード:320-274
ローソンチケット http://l-tike.com 0570-084-003 Lコード:74950
イープラス http://eplus.jp
お問い合わせ:
HOT STUFF PROMOTION/03-5720-9999(平日12:00-18:00) 
http://www.red-hot.ne.jp

TRICERATOPS “20TH ANNIVERSARY TOUR”

2017年5月~7月、全国各地で開催決定‼
詳細は2017年1月14日(土)オフィシャルサイトで発表。
http://triceratops.net/

トライセラトップス

和田唱(Vo&G)、林幸治(B)、吉田佳史(Dr)により結成。
1997 年、シングル「Raspberry」でメジャーデビュー。胸を締め付けるラヴソング、ロックの苦悩に刃向かう ようなポジティブなリリック、そしてたった 3人で演奏しているとは思えないサウンドと、リフを基調とした楽曲は、 良質なメロディセンスとライブで培った演奏力により、唯一無二の存在感で新たな可能性を拡げ続けてい る。多くのミュージシャンにもリスペクトされている国内屈指の3ピース・ロックバンドである。また Vo&G の和 田唱は、SMAP、藤井フミヤ、松たか子、Kis-My-Ft2、SCANDAL などへの作品提供も多数あり、ソン グライターとしても評価を集めている。
来年 2017 年、メジャーデビュー 20 周年のアニバーサリーイヤーに突入する。

オフィシャルサイトhttp://triceratops.net

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