山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 3

Column

ニール・ヤング / 変化という不変

ニール・ヤング / 変化という不変

HEATWAVE 山口洋がこれまでに出逢ったミュージシャン、R&Rの魔法について書き下ろす好評連載!
2017年の幕開きはこの人、ニール・ヤングから。


編集部から「次はニール・ヤングで」とのオファー。いやはや、ファン歴もこう長すぎると、いったい何から書いていいものか。でも御年71歳の彼は、近年、前にも増して輝き、溢れ、叫び、奏で、我が道を往く。今を存分に生きている。老成、円熟、エトセトラ。その手の言葉とはまるで無縁。誰も彼を止められない。いつも旬。僕がヒーヒー云いながら、一枚のアルバムを制作している間に、彼は三枚もリリースしてしまった。おそるべき、溢れる71歳を通じて、この混迷の時代を生きぬくヒントを探ってみることにしよう。

earth%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%8a%e3%83%bc_s

ここ数年の彼を思い返してみる。

1. 圧縮音源mp3を極端に嫌い、高音質デジタル音源システム「ポノ」を開発。携帯プレイヤーなどのハードも含め、自ら普及に取り組む。 

2. 2015年5月。遺伝子組み換え作物種の世界シェア90%を占める多国籍バイオ化学メーカー、モンサントに対し、アルバム「ザ・モンサント・イヤーズ」をリリース。美しいハーモニーとグルーヴで激しく噛みつく。

3. モンサントを支持したスターバックスにも不買を宣言。

4. 重度のハンディーを抱えた子供たちのために、ブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサートを例年開催。今年はそのステージでメタリカ(!)と共演。素敵。

5. 2016年6月。アルバム「EARTH」で雷、雨、風、熊、鳥、コオロギ、牛などと共演。素敵、アゲイン。

6. 離婚する。

7. 大統領選で自分の曲を無断で使ったドナルド・トランプに対し、四文字言葉で噛みつく。

8. ネイティヴ・アメリカンの大地を通る、ダコタ・アクセス・パイプラインの建設に反対している抗議者たちにふるわれた暴力を痛烈に批判。オバマ大統領に暴力を止めるよう呼びかける。

9. 2016年12月。「Auto-Tune8」の内容なども含むニューアルバム「PEACE TRAIL」を発表。

10. アメリカ大陸を電気自動車で横断するTV番組を立ちあげる。

もはや、シンガー・ソングライターを遥かに超えて、職業ニール・ヤング。箇条書きにしてみると、たいせつなことが見えてくる。彼のアクションは自らの欲やエゴに基づいてはいない。世界をより良い場所にするためのコンパッション(思いやり)に突き動かされている。自分のことより前に、誰かを思いやる。簡単そうで、難しい。そして、それは現代社会に一番欠けていると常々感じていることでもある。思いやりは世界を変えるよ。ほんとだよ。

1945年カナダのトロント生まれ。
バッファロー・スプリングフィールド、CSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)等を経て70年、ソロとして『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』、翌71年『ハーヴェスト』を発表。シンガー・ソングライターとして際立った存在感と人気を確立する。 パール・ジャムとのコラボレーションや、セックス・ピストルズのジョニー・ロットン、ニルヴァーナのカート・コバーンに捧げる曲を発表するなど若手ミュージシャンらとの交流もはかりながら、革新的なギター・プレイ/サウンド、社会への痛烈なメッセージを放ち続けている。1986年からは、重度のしょうがいを持つ子どもたちの学校を支える「ブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサート」を主催。

1945年カナダのトロント生まれ。
バッファロー・スプリングフィールド、CSN&Y(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)等を経て70年、ソロとして『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』、翌71年『ハーヴェスト』を発表。シンガー・ソングライターとして際立った存在感と人気を確立する。
パール・ジャムとのコラボレーションや、セックス・ピストルズのジョニー・ロットン、ニルヴァーナのカート・コバーンに捧げる曲を発表するなど若手ミュージシャンらとの交流もはかりながら、革新的なギター・プレイ/サウンド、社会への痛烈なメッセージを放ち続けている。1986年からは、重度のしょうがいを持つ子どもたちの学校を支える「ブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサート」を主催。

アーティストの評価は受け手の経験や加齢とともに移り変わる。あれだけ好きだったロックン・ロールバンドが、ある日を境に、株式会社にしか見えなくなることもある。その一方で、ニール・ヤングはどんどんこころに食い込んでくる。「お前はそれでいいのか?」と。いい訳がない。だから、僕も自分にできることをやる。

変化という不変。

彼はどんなときも変化と批判を怖れない。独自のやり方と閃きで、変わりゆく世界とコミットし、新しい歌を書き、アクションを起こし、変化という運命を貫いてゆく。その歌や姿勢が、世界じゅうの人間たちを鼓舞し続ける。彼のように、今を生きるアーティストは数少ない。要はやるのか、やらないのか。ただ、それだけのことなのに。

今日のこと。ラジオから1970年の作品「AFTER THE GOLD RUSH」が流れてきた。続いて46年後の新譜から「PEACE TRAIL」が。ほぼ半世紀を超えて、微塵もブレない通底するスピリットが2曲の間に橋を架けた。声質が変わらないことにも驚いたけれど、不変という普遍性も彼にはある。

山口洋がいちばん好きなアルバム、『On The Beach/渚にて』。『ハーヴェスト』から2年、クレイジー・ホースのダニー・ウィットンが亡くなった後に発表された。74年リリース。

筆者がいちばん好きなアルバム、『On The Beach/渚にて』。『ハーヴェスト』から2年、クレイジー・ホースのダニー・ウィットンが亡くなった後に発表された。74年リリース。

か細く頼りない自分の声がコンプレクッスだったのだと、彼は云った。でも、コンプレックスは力で、欠けたところは個性になり得る。あの声とギターから、僕はどれだけの励ましを受け取ってきたことだろう。視点を変えれば、あなたのコンプレックスは力になり、欠けたところは個性になる。問題は続けられたかどうかだけ。それが一番難しいんだけれど。苦しいときに彼の音楽を聴くと、身体に力がみなぎってくる。

彼のライヴは何度体験しても素晴らしい。打率は高い。当たり外れが少ない一級品のアーティスト。一般的に爆音だと云われているけれど、それはメディアが作り上げた幻想で、実際にはそんなことはない。いつだって心地よい小さめの音量で、痺れるくらいにいい音を届けてくれる。僕はギタリストでもあるから、彼のギターについても語りたいけれど、長くなるからそれは次の機会に。ううっ、語りたい(笑)。

随分前にアイルランドのスレーン城で見た、ブッカーT&ザ・MG’sを従えたニール・ヤング。ブッカーT、スティーヴ・クロッパー、ドナルド・ダック・ダン、ジム・ケルトナー、そしてニール・ヤング。嗚呼。延々と続く「Like a Hurricane」のギター・ソロで僕は昇天。この瞬間は永遠に続くんじゃないか、あるいは続いて欲しい、と思った。人生のハイライトのひとつ。ロックンロールという夢の乗り物に乗って、確かに僕は宇宙に行った。そして、そのロケットの燃料はコンパッション(思いやり)で出来てるんだよ。素敵だよ。おかげで、未だに帰還できてないんだけどね。

変化という不変。不変という普遍。そして怖れることなく、運命を貫いていくこと。2017年が美しい年になりますように。

深い感謝とともに、今を生きる。


ウィリー・ネルソンの息子たち(ルーカス&マイカ・ネルソン)のユニット“プロミス・オブ・ザ・リアル”とタッグを組んで完成させた『ザ・モンサント・イヤーズ』。2014年、ヴァーモント州が遺伝子組み換え食材を規制する法案を通過させたところ、遺伝子組み換え種子や農薬の販売大手、モンサント社がこれを法廷に訴えて覆そうとしていることが報じられ、ニール・ヤングは激しく抗議。未来へと続く自然環境を守るために、前作から半年でこの作品を完成させた。基本的に一発録り。生々しいエネルギーと緊張感が漂いながらもギターの音色は極めて美しく、怒りよりも祈りが迸る。全曲分のレコーディング・パフォーマンスに加え、ボーナス映像を収録したDVDとの2枚組。2015年7月リリース。

ウィリー・ネルソンの息子たち(ルーカス&マイカ・ネルソン)のユニット“プロミス・オブ・ザ・リアル”とタッグを組んで完成させた『ザ・モンサント・イヤーズ』。2014年、ヴァーモント州が遺伝子組み換え食材を規制する法案を通過させたところ、遺伝子組み換え種子や農薬の販売大手、モンサント社がこれを法廷に訴えて覆そうとしていることが報じられ、ニール・ヤングは激しく抗議。未来へと続く自然環境を守るために、前作から半年でこの作品を完成させた。基本的に一発録り。生々しいエネルギーと緊張感が漂いながらもギターの音色は極めて美しく、怒りよりも祈りが迸る。全曲分のレコーディング・パフォーマンスに加え、ボーナス映像を収録したDVDとの2枚組。2015年7月リリース。

地球に生きるすべての生命体をテーマに、馬、犬、豚などの動物や鳥、虫とも共演した2枚組のライヴ・アルバム『アース』。「マザー・アース(自然の讃歌)」に始まり、音源初収録になる「シード・ジャスティス」、初期の名曲「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」、29分に及ぶロング・ヴァージョンの「ラヴ・アンド・オンリー・ラヴ」など圧巻のライヴ・パフォーマンスをそのままパッケージ。日本盤は2016年7月リリース。

地球に生きるすべての生命体をテーマに、馬、犬、豚などの動物や鳥、虫とも共演した2枚組のライヴ・アルバム『アース』。「マザー・アース(自然の讃歌)」に始まり、音源初収録になる「シード・ジャスティス」、初期の名曲「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」、29分に及ぶロング・ヴァージョンの「ラヴ・アンド・オンリー・ラヴ」など圧巻のライヴ・パフォーマンスをそのままパッケージ。日本盤は2016年7月リリース。

 

ジョン・ハンロンとの共同プロデュース。リック・ルービンのシャングリラ・スタジオでジム・ケルトナー(dr)、ポール・ブシュネル(b)とのトリオ編成でレコーディングされた最新作『ピース・トレイル』。アコースティックなサウンドを主体に“オートチューン8”を使ったニール自身のヴォーカルも収録。『モンサント・イヤーズ』に続き、世界が抱える問題にかみつく内容となっている。2016年12月リリース。

ジョン・ハンロンとの共同プロデュース。リック・ルービンのシャングリラ・スタジオでジム・ケルトナー(dr)、ポール・ブシュネル(b)とのトリオ編成でレコーディングされた最新作『ピース・トレイル』。アコースティックなサウンドを主体に“オートチューン8”を使ったニール自身のヴォーカルも収録。『モンサント・イヤーズ』に続き、世界が抱える問題にかみつく内容となっている。2016年12月リリース。

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

yamaguchi_s

1963年福岡県生まれ。1979年に結成したHEATWAVEのフロントマン。
90年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。95年発表の『1995』には佐野元春プロデュースの2曲のほか、阪神・淡路大震災後に書かれた「満月の夕」(中川敬/ソウル・フラワー・ユニオンとの共作)を収録。
2003年より渡辺圭一 (Bass)
、細海魚 (Keyboard)
、池畑潤二 (Drums)と新生HEATWAVEの活動を開始。東日本大震災後、福島県相馬市の仲間とともに現地を応援するプロジェクト“MY LIFE IS MY MESSAGE”を立ち上げ、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らとともに活動している。
2016年4月に発生した熊本地震を受け、9月からFMK エフエム熊本で“MY LIFE IS MY MESSAGE RADIO”をオンエア開始。毎月第4日曜日20時〜、DJを務める。
2017年1月17日(火)には熊本・ ぺいあの PLUSで“MY LIFE IS MY MESSAGE Radio LIVE Smile”として矢井田瞳、熊本在住のシンガー・ソングライター:東田トモヒロと共演。予約・問合せ:TSUKUSU(つくす)→ www.tsukusu.jp

2017年1月20日(金)には横浜・THUMBS UPで“山口洋 2017 SPECIAL! 聞きたい歌と、今歌いたい歌”としてアコースティック・ソロLIVEを行う。
ROCK’N’ROLL ASS HOLE→http://no-regrets.jp

2015年12月26日のLIVEを収録した『OFFICIAL BOOTLEG SERIES #004 151226』が好評発売中

vol.2
vol.3
vol.4