相楽樹の「ご一緒してもいいですか?」  vol. 3

Interview

相楽樹×小出祐介(Base Ball Bear)対談-「地獄生まれ」だからわかること!?

相楽樹×小出祐介(Base Ball Bear)対談-「地獄生まれ」だからわかること!?

ゲスト:小出祐介(Base Ball Bear)

注目の女優、相楽樹が気になる人、コト、モノに全力でぶつかっていく新連載。
第1回のゲストは、結成15年を迎え、現在「バンドBのすべて 2016-2017」で全国ツアー中のBase Ball Bearのフロントマン、小出祐介さん。
「いちばん好きなバンド!」と公言する相楽さん、小出さんとの対談を前に緊張気味でしたが、そんな素振りはかけらも見せず、ソングライティングの方法、好きな映画、自意識、学生時代の苦い経験にまで、ぐぐっと切り込みました。

取材・文 / 村崎文香 撮影 / 荻原大志


ベボベに出逢って、音楽の聴き方が変わった

相楽樹 Base Ball Bear(以下、ベボベ)のライヴを初めて観たのは、4年前のカウントダウン(COUNTDOWN JAPAN 12/13)です。最初、ベースの関根さんを観て、映画『リンダ リンダ リンダ』に出てた子だ! って思って。私、『リンダ リンダ リンダ』が大好きで。ああいう青春を送りたいってずっと憧れていたんです。
それから1年後にまたライヴを観て、凄く好きになって。ベボベの音楽に出逢って、音楽の聴き方が変わった。歌詞は、インタビュー記事を参考にしながら読み込んでいます。“ダブル・ミーニング”とかを駆使した立体的で深い小出さんの詞の世界が凄く好きで。詩集も持っています。

小出祐介 とても光栄です。

小出祐介(Base Ball Bear)

小出祐介(Base Ball Bear)

相楽 私、インタビューに答えるとき、いつも言葉が足りないって思っていて。だから、小出さんの言葉を参考にしたり。勝手に先生って呼んでいます(笑)。

小出 大丈夫かな(笑)。

相楽 大丈夫です!現在ツアー「バンドBのすべて 2016-2017」の真っ最中ですが、いかがですか?

小出 サポートの弓木英梨乃(KIRINJI)さんとの演奏が楽しいです。ベスト盤を踏まえたツアーなので、懐かしい曲もたくさんやっています。

相楽 ギターの方が違うというのは、どういう感じなんでしょう?

小出 ギターの腕前にはそこそこ自信がある方ではあるんですけど、弓木さんがまぁ相当な凄腕ギタリストなので、相方がこんなにも上手いとさすがにビビるというか(笑)。ギターの鬼に見える時がありますからね。だから、彼女が鬼になっているときはそれを支える演奏を心がけて、僕はボーカル・ギターらしく、わかる人にはわかる上手さをアピールしていこうかなと(笑)。

相楽樹

相楽樹

“自意識への意識”―人生のテーマ

相楽 山下敦弘監督の『リンダ リンダ リンダ』(2005年公開)には前田亜季さんや香椎由宇さんも出ていらっしゃいますが、そういう方と一緒にベースの関根史織さんが出演されるってことになったとき、正直どんな心境でしたか?

小出 当時は僕らもインディーズでCDを1枚出したばっかりの駆け出しの頃でしたから、正直、複雑でしたよね。今思うと、「なんでお前だけ!」みたいな子供っぽい嫉妬と、「関根が遠くに行っちゃうんじゃないか」っていう不安があったんでしょうね。

相楽 実際映画を観て、どうでしたか? 関根さんのお芝居。

小出 お芝居って言っていいのかどうかはちょっとわからないですけど(笑)、素人なりに頑張っていたと思いますよ。「素」以上「演技」以下みたいな感じでしたよね。でも、そういう「演技するかしないか」っていう自意識への意識って、自分の人生のテーマでもあります。

相楽 自意識への意識……。それって、難しくないですか?

小出 難しいですけど、例えば歌詞を書いていても、常に頭にあります。自分が「気持ち悪いなー」「やりすぎかなー」って思うようなフレーズでも、歌の展開としてはアリにしておいた方がいい場合もある。だけど、そこに自己陶酔成分が多すぎるとちゃんと「気持ち悪い」って思われちゃったりするんですよ。素だとつまらないし、演じすぎると自分じゃないし、酔いすぎると気持ち悪い。今もずっと、自意識への意識のいい塩梅がどこなのかを探っていますね。

相楽 小出さんの歌って、凄く色っぽいです。

小出 ありがとうございます。でも、そこはコントロール外の話なのでちょっと恥ずかしいですね。(笑)。
元々が理屈っぽい人間なので、自分の内にある気持ちを表現しようと思うと、言葉もそのままじゃ足りなくて。だからダブル・ミーニング、トリプル・ミーニングくらいになっちゃうんですよ。立体的にならざるを得なくて。最近はもう、歌詞の設計図を書いてますからね。

相楽 構図フェチ(笑)。

小出 そうそう、構造フェチなので(笑)。おかげで、歌詞への興味は薄れないですね。この仕事って、10年もやっているとだんだん歌いたいことが減ってくるってよく言うんですけど、どんどん出てきます(笑)。

相楽 「それって、for 誰?」part.1を聴いて、よく言ってくれた!! って思いました。

小出 あの曲はSNSを諷刺気味に扱っているが故に、隙があっちゃいけなかったんです。すべってる感じになっちゃうんで。だから論旨を明確に持って、話の展開にも、喩えの1つ1つにも、めちゃめちゃ気を付けました。ニヤニヤすることも、ハッとすることもできる歌詞になっているんじゃないかと思うので、歌詞カードを見て理解を深めてもらえたら嬉しいですね。

相楽 小出さんがそんなふうだから、リスナーも頭を使って学ぶことができます。

小出 言っていることや見えていることだけが表現じゃなくて、描かないことも表現だということを知ってもらえると、もっと色んな楽しみ方ができるんじゃないかと思いますね。音楽だけじゃなく、小説や映画も。

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ごはんの湯気が上がっていくシーンにボロボロ泣いた

相楽 いま、ツアーがないときはどうしているんですか?

小出 曲作りやレコーディングですね。

相楽 アウトプットばかり……。インプットが必要だったりはしないのですか?

小出 必要なので意識的にインプットする時間を作っていますね。ツアー先のホテルで本を読んだり、映画館に行ったり。この間は京都で『この世界の片隅に』を観ました。

相楽 『この世界の片隅に』! 観たいと思いながら、まだ観られていないんです。いかがでしたか?

小出 戦時下の広島県呉市が舞台で、主人公・すずとその家族の終戦までの約3年を描いた物語なんですが、本格的に日本本土への攻撃が起きるのは最後の1年くらいなんですね。だから戦時下とはいえ、穏やかな時間もたくさんあって。すずが嫁ぎ先で、人にも街にも徐々に打ち解けていく様子や、当時の生活・風俗が「表面上は」温かく描写されていくんですね。そこへある日突然、戦闘機が現れて自分たちに向けて機関銃を掃射してくる。それから毎日のように空襲警報が鳴り、夜も緊張状態が続く。だけど、その緊張状態にも徐々に慣れて、余裕もちょっと出てきたりする。そこへもっと本格的な爆撃が始まる…と。なんていうか、その抑揚やグラデーションが、すごく「怖い」と思いました。こうの史代さんの原作を読んでいたので、話自体は知っているのに、太ももが痙攣するほど怖くて。物語としてはその後、戦争が終わり、夜でも灯りが点けられるようになって。街に1軒、2軒と灯りが灯っていき、夕飯の支度をする湯気が窓から上がっていく。そこでもう、ボロボロ泣いてしまって。今度は頬が痙攣するくらいの(笑)。

相楽 それは、絶対に観なくちゃ! 私もドラマ『とと姉ちゃん』で、夜は灯りをしぼったり、窓ガラスに割れないようテープをバッテンに貼ったりして暮らす生活をしていたので、感情移入しそうです。映画は頻繁に観られるのですか?

小出 新作はできるだけ映画館で観たいと思っています。でも、興味があるのは映画だけじゃなくて。好きになると、どんどん辿っていきたくなるんですよね。たとえば『この世界の片隅に』なら、こうの史代さん、のんさん、片渕監督の作品を追ってみたくなる。

相楽 私もどちらかというとそうです。小出さんから岡村靖幸さんを知って好きになりました。共通点を見つけると楽しいですよね。

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