Interview

映画『世界から猫が消えたなら』HARUHI×川村元気対談

映画『世界から猫が消えたなら』HARUHI×川村元気対談

映画を観終わった後にはその余韻に浸りながらも思わず「自分の人生にとって本当に大切なものは何か」について改めて考えてさせられる映画『世界から猫が消えたなら』。劇中クライマックスのシーン、そしてエンドクレジットで流れる主題歌『ひずみ』を歌うHARUHIさんは、まだ17歳のシンガーソングライター。その彼女を主題歌の歌い手として熱望した原作者・川村元気のふたりが、年の差もジャンルも超えて共鳴した「言葉にできない何か」について話を聞きました。

「こんな声の人がいるんだ」っていう新鮮な驚きがありました(川村)

HARUHIさんのデモテープを聴いた川村さんが衝撃を受けて、映画『世界から猫が消えたなら』の主題歌への起用につながったとか。

川村元気 今から4年前くらい、まだ13歳の時のHARUHIさんが作った曲のデモを聴かせてもらって、それが結構衝撃だったんです。説得力がある声だと思ったし、映画のエンドロールに流れる曲って、取ってつけたような曲じゃなくて、曲自体が映画の一部としてストーリーを担わないといけないと常々思っていることもあって、「いつか一緒にやってみたいなあ」と思いました。

HARUHI 本当ですか。自分はまだまだだと思っているし、他のアーティストと比べてどうだろうと考えちゃうこともあるので、そんな風に言ってもらえて、嬉しいです。

川村 HARUHIさんの曲を聴いた時に、「こんな声の人がいるんだ」っていう新鮮な驚きがありました。ビョークがデビューした時も、こんな感じがしたんですよ。ビョークって、男の子だか女の子なんだか、子どもなのか大人なのか、国籍からして、よくわからない。ニュートラルで正体不明な感じがおもしろいなあって。

H  Thank you(笑)

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いろんな想いが込み上げてきて泣いちゃって(HARUHI)

普段、映画を製作している川村さんにとって、音楽と映画の関係はどういうものなのでしょうか。

川村 売れている有名なアーティストを(映画の主題歌に)起用して、ヒットを狙うこともあるけど、本当に一番いいのは、新人アーティストを起用して、映画と一緒にアーティストが育っていくというのが理想なんです。とはいえ、「新人アーティストを抜擢」と一口に言っても、実際はいろいろ難しいんですよ。日頃から絶えず新人を探していますが、「HARUHIさんでやってみたい」という希望がすんなり通ったのは、僕が原作者だったからかもしれませんね(笑)今回はたまたま自分が書いた小説が映画化になったという背景があったので。そういう意味では、ずっとやりたかったことが叶った作品ではありますね。『スワロウテイル』や『リリィシュシュのすべて』で素晴らしい映画音楽を担当された小林武史さんにやっていただくことも、ついに念願が叶ったという感じです。

©2016 映画「世界から猫が消えたなら」製作委員会

主題歌を歌うにあたって、HARUHIさんに何か特別にお願いされたことはありましたか?

川村 「上手く歌おうと思わないでほしい」とは言いましたね。成長期にあって、これからどんどん歌が上手くなっていっちゃうと思ったんです。でも最初に彼女の声を聴いた時の衝撃と感動を大事にしたいと思いました。『ひずみ』を最初に録音したのは、2年くらい間だったよね?

H そうですね。そのままのテイクが使われています。ハモっている部分は16歳で、あとは15歳の時に録ったものです。

HARUHIさんは、どのように主題歌の世界観を掴んでいったのでしょうか。

H 私は曲を歌う時に、歌詞の意味が自分の中で理解できないと歌うことができないんです。『ひずみ』の歌詞の意味は、最初はよく理解できていない部分もあったんです。でも映画を観た時に、ある映画のシーンと『ひずみ』の歌詞に出てくる<ありがとう>というフレーズがリンクして、それが心に強く響いてきて、映画と音楽のリンクに本当に感動しました。私自身、小さい頃から「ありがとう」という言葉の大切さをずっと教わってきているけど、その意味をよく考えないで使っていたなって思いました。例えば、日本の文化では、人から何か贈り物をされたときにも「すみません」って返すことがあるじゃないですか。でもそれって少し「ごめんなさい」のニュアンスにも近いと思うんです。じゃあ「ありがとう」ってどういうことだろう?と改めて考え始めました。自分自身を振り返ってみても、ああ、あの時は「すみません」じゃなくて「ありがとう」と言えばよかったって後悔したこともあったので、最近はだいぶ言えるようになってきたと思うんですけど、そういう気持ちを大切にしながら歌いました。

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佐藤健君と宮﨑あおいさん、HARUHIさんは戦友みたいになっていた(川村)

映画の中でHARUHIさんの歌詞の歌う『ひずみ』が流れてきた時に、物語と一緒にじわじわと心に沁み込んできたのですけど、「ありがとう」が漢字で書く「有り難い」というニュアンス、そうした感謝だとか慈しむ気持ちがより強く伝わってきた気がしました。

H  映画を観た時に、お父さんが「ありがとう」っていうシーンがやっぱり一番胸に刺さったんです。そこから曲に入りますよね。自分で言うのもアレなんですけど(笑)曲も、まずブレスから入るんです。そこに、本当に、言葉にならない想いだったり、生きていることへの感謝の気持ちがぎゅっと詰まっていて、映画を観ていて、いろんな想いがこみ上げてきて、泣いちゃって。

川村 そのシーンは、永井聡監督がかなり狙って、めちゃくちゃこだわって作ったシーンですね。主題歌に関しても「ボーカル先行で、しかもまずブレスから使いたい」って言ってましたから。

ブレスは、何テイクが重ねたんですか?

H 結局、本当に最初に録ったテイクが使われました。

川村 15歳の時に歌った最初のテイクをそのまま使っているという(笑)途中何回かトライはしたんだよね?

H まだ15歳だったし、初めて歌った日本語の曲が「ひずみ」だったので、日本語を間違えないようにしないとって緊張して歌っていた部分もありました(笑)でも、ひとつひとつ、言葉の意味を考えて歌いました。

川村 HARUHIさんは、英語がネイティヴだから、日本語を話している時って、すごく一生懸命伝えようとして、一言ひとこと「ありがとう」の「う」までちゃんと一語一句きちんと発音しているのが、すごく新鮮だったし、おもしろいと思って。今回、佐藤健君と宮﨑あおいさんも映画の中で、台詞の一言ひとことを丁寧に言っていうのを心がけていたみたいです。だから、奇せずして、みんな全然違う場所で、同じ作品に向かって同じことをしていた。台詞が多い映画じゃないから、言葉数が少ない中で、ひとつひとつの台詞をちゃんと伝えるということをしてた。健君とHARUHIさんは同じ日に完成した映画を見たのですが、傍目から見ると、戦友みたいになっていたよね。

H そうですね。

©2016 映画「世界から猫が消えたなら」製作委員会

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