Interview

映画『モヒカン故郷に帰る』松田龍平×前田敦子インタビュー

映画『モヒカン故郷に帰る』松田龍平×前田敦子インタビュー

松田龍平×前田敦子 映画『モヒカン故郷に帰る』を語る。

7年ぶりの帰郷で賑やかな家族が揃ったが頑固オヤジは……。広島・瀬戸内海の島を舞台にした現代版究極のホームドラマ、主人公とその恋人を演じた松田龍平と前田敦子が『モヒカン故郷に帰る』を語る。

『モヒカン故郷に帰る』で売れないバンドボーカル永吉として主役を演じた松田龍平と、その恋人・由佳役として初めて妊婦役を演じた前田敦子。実在しそうなカップルのリアルさは、役者の生身の存在感を引き出す沖田監督ならではの演出が多分にあるが、実際のインタビューでも、独特の掛け合いと間合いに妙味のあるふたり。沖田監督の世界観と撮影の裏側、そしてちょっといびつな家族のかたちについて話してくれました。


ぶっつけ本番で指揮をして演奏がめちゃくちゃになる…… まあ、監督の狙いどおりになりましたね(笑)(松田)

まずは脚本を読んだ時に受けた作品の印象から教えてください。

松田 最初に脚本を読ませてもらった時に、絶対に面白いなぁと思いました。タイトルには「モヒカン」って言葉が入っていたので、ストーリーはもちろん、永吉という役も、すごくイメージしやすかった。でもまだ撮影に入る前に沖田監督と話していた時に、新しい脚本を見たら、モヒカンの文字が消えていて。「モヒカン、消えましたねえ」って監督に聞いてみたら、「いや(松田さんに)モヒカンにしてもらうの、申し訳なくなってきて….外したんですよ」って(笑)。いえいえ、やりますよ!って言って、そこから始まった感じです(笑)。

前田 そうだったんですね! 知らなかった(笑)。私は脚本をいただいた時、沖田監督が書いているものなので絶対(面白い)だろうなと思って読んだら、実際すごく面白くて。沖田さんの脚本ってキャラクターがイメージしやすいんです。私が演じた由佳という女の子の可愛らしさが、すでに文章から溢れ出ているというか……。だから読んでいる時、すごく楽しかったですね。それも、沖田さんの奥さまの妊娠中におもしろい出来事がたくさんあって、そのエピソードをたくさん盛り込んでくださったようです。私は、妊婦役は初めてでしたが、監督からリアルな実体験を聞きながら、由佳役を作れたことが支えになったし、大きかったと思います。

松田さんの独特な間と沖田監督の作り出す間合いがぴったり合っていると思いましたが、そのあたりの相性の良さは、感じられましたか。

松田 自分ではわからないけど、そう言っていただけるのはうれしいですね。沖田監督の撮影現場は居心地が良かったし、その反面スリリングでもありました。吹奏楽のシーンで、親父の代わりに急遽永吉が指揮をする場面があったんですけど、ぶっつけ本番だったんですよ。相手は実際に島で暮らしている吹奏楽部の生徒さんたち。まあ、監督の狙い通りになりましたよね(笑)。ぶっつけ本番で指揮をして、演奏がめちゃくちゃになるっていう……。でもそれもある意味、奇跡を待っているというか、勝負しているなと思いました。冒頭のバンドのライヴのシーンも1回しかリハしていないんですよ。それでいきなり本番に入ったので、焦りました(笑)。でも撮影中はそのライヴ感というか、舞台感にドキドキしましたね。

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それも監督の狙いだったんでしょうか。

松田 わかりません。でも監督は、吹奏楽のシーンでは、生徒の表情を作るのに一生懸命で俺のことなんてそっちのけでしたよ(笑)。

前田さんは元々監督の作品がお好きで、憧れ的な沖田監督の現場に参加していかがでしたか?

前田 監督独特の世界観がすごくある方だと思っていたし、特に男性のことをかわいらしく撮れる方だと思っていました。今回初めて沖田組に参加させていただいて、改めてそれを実感しましたね。それは(柄本)明さんだったり、(松田)龍平くんだったり、すごく魅力的に撮られているなって思うことが何度もあって。それに対して女性は、そういった男性を側で支える存在で、日本人ならではの女性の立ち位置でいさせてくれるんですよね。それが私には新鮮でした。

終盤、おふたりが船に乗っている時、松田さんが前田さんのお腹を触るシーンが印象に残っています。

前田 あのシーンは、元々台詞が全くなかったのですけど、監督がその場で一生懸命考えていましたね(笑)。

松田 もともと脚本には、“永吉が由佳のお腹に耳を当てて目を閉じる”としか書いていなくて。でもそのままやってみたら、ぎこちなくて仕方なくて(笑)。それまでヤンヤヤンヤやっていたっていうのもあるけど、急になんか……。

前田 急になんか、変にラブシーンみたいになっちゃって(笑)。

松田 監督も“なんだ、どうした、何があったんだ?”なんて言って(笑)。それで“もう少しラフな感じで、自由に演じてみて”と言われてでき上がったシーンです。

監督は脚本の台詞にはあまりこだわらないのでしょうか。

松田 そのシーンだけが特別だったのかな。だって、そのわりには前田さんは他のシーンで“脚本通りにやってください”って結構監督に怒られてたもん(笑)。えっ、そこはダメなんだ?って思ったり(笑)。

前田 そうでしたっけ(笑)。私、全然覚えてないです(笑)。

松田 2回くらいあったと思います(笑)。

前田 その一方で、(柄本)明さんは自由に演じられていてすごいなって思いました。

松田 その中でも僕は脚本に忠実に演じる役者なので(笑)。でも前田さんと、もたいさんの2人のシーンとか、最高でしたね。“あんた、あんな息子でいいの?”って前田さんが言われている時の、あの感じがすごく好きです。

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前田 まさこさんには、すごく仲良くしていただきました。すごくノリがよくてお茶目な方で、若者世代ともすごくよく付き合ってくれるんです。最初はごはんに誘っていいのかな?って遠慮していたんですけど、“もちろん行くよ”って言ってくださって、いつもお話できる時間が楽しみでした。

松田 僕は柄本さんと演らせていただくシーンが多かったのですが、柄本さんもやっぱりすごかったです。思わず“大丈夫ですか?”って本気で心配してしまうくらいの演技でした。どこか現実でどこが芝居なのか、その境目がわからなくなる瞬間を作り出してくる人だなって。それはもちろん沖田監督自身がそういう演出をしてくる方だっていうのもありますけど。

龍平さんは、つかみどころない、いい人。もっとクールかな と思っていたけれど、意外に笑ってくれるし(前田)

役者の特性を活かした演出なんでしょうね。お互い役柄に近いと感じた部分はありましたか?

松田 前田さんは由佳みたいに、とにかく明るくて、妙な壁をつくらないから、前から知っていたような感じ。すごく素敵なきらきらした方ですよ。島のおばさんたちとも仲良くしていたし。でもなんとなく話を聞いていると、“え〜、そうなんだ”なんて言っていたりして、その相槌はどうなんだと思ったりするけど、島のおばちゃんたちもまんざらじゃない感じで(笑)なんか、すごいなって。おもしろい方だなって思いましたね。

前田 龍平さんは、つかみどころのない人。でもいい人なんですよ。もっとクールかなと思っていたけれど、意外に笑ってくれるし(笑)。すごく優しいから永吉に近いと思いました。誰に対しても、分け隔てなく、ずっとこんな感じでいてくれるので、周りのスタッフさんにも気を遣わせないし、すごい主役だなって思いました。

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松田さんは、実際にモヒカンになった感覚っていかがだったのでしょうか。

松田 今回役者という仕事としてモヒカンになったんですけど、やっぱり周りの人たちの反応って、“わっ、何あの人”という感じで(ロケ地の)島の人たちは確実に怖がっていて。……なんか、つらいなって(笑)。吹奏楽の生徒の子たちも撮影が終わって、僕が教室から出て行った瞬間に“怖ええーー!”って叫んでるのが聞こえてきて(笑)“いや、俺はそんなに怖くないよ”って心の中で思うっていう複雑な心境でした。

前田 でもすごく似合ってましたよね、モヒカン(笑)。

前田さんは初めて妊婦さんになった感想は?

前田 由佳は妊婦さんだけど、元気に走っちゃったりするキャラクターだったので、あまり考えないようにしようと思いました。それでも後から本当の妊婦さんを見て、“でも妊婦さんっていうことを意識しすぎていたのかな?”って思ったくらいです。それくらい、実際の妊婦の方は、もっと普通に生きているなって思いましたね。