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若き才能発揮。池田純矢にしか表現しえない世界『スター☆ピープルズ!!』

若き才能発揮。池田純矢にしか表現しえない世界『スター☆ピープルズ!!』

俳優であり、自ら企画・構成・脚本・演出を手がける池田純矢、初の演劇作品、エン*ゲキ♯02『スター☆ピープルズ!!』が、1月5日から東京・紀伊國屋ホールにて開幕した。池田をはじめ、鈴木勝吾、透水さらさなど注目の若手に加え、酒井敏也という超ベテラン俳優が顔を揃える。宇宙を舞台に笑い満載、時にほっこりさせられながら数々の奇跡に取り込まれていく最高のエンタテイメント×コメディ。この上演に先駆けて行われたゲネプロの模様をレポートする。

取材・文 / 恒川めぐみ 撮影 / 京介


目のくらむような速い台詞の掛け合い。出演者による本気の“お笑い”の応酬が秀逸

舞台は、ある惑星から約100億光年離れた地球を目指して飛行する宇宙船内。地球人にはとうてい解読できない、宇宙語で書かれたパネルがあちらこちらに掛けられ、ところせましとダクトが張り巡らされている。

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ここに乗り込んでいる7人は、その“ある惑星”から重要な任務を任されて送り込まれた。彼らはそれぞれ“アビリティ”と呼ばれる特殊能力を備えているのだが、それはすべて役に立たないものばかり。存在感ナシ、頼り甲斐ナシ、それでも乗組員のリーダーである〈スター〉(鈴木勝吾)。彼の親友で一番の理解者、しかしミステリアスな雰囲気を持つ〈ライト〉(赤澤燈)。曲がったことが大嫌いで一見近寄り難いが、素顔は誰よりも優しい〈ビーム〉(井澤勇貴)。途方もないバカで、とにかく楽しいことが大好きなわんぱく少年、〈フラッシュ〉(吉田仁美)。食いしん坊でクルーのムードメーカー的存在の〈ホープ〉(オラキオ)。根暗で陰湿、美少女鑑賞が趣味のオタク青年〈シャイン〉(池田純矢)。とある惑星の役所で働く公務員で、監督的立場にいる〈グリッター〉(酒井敏也)。独特極まりないクルーたちを乗せた宇宙船は、航海の途中で難破した小型宇宙船に遭遇する。その船内には、彼らが目指す地球からやってきた科学者〈ユキ〉(透水さらさ)が。彼女は、7人の根幹を揺るがす重大な秘密を握っているというーー。

なにやらSFチックでファンタジックで、サスペンスタッチな空気もまとっていて……いろいろな要素を含みながらも、この舞台の最大の魅力は、まず個性際立つ登場人物たちの、目のくらむような速い台詞の掛け合い。ボケ&ツッコミは当たり前、ボケ×ボケ、ツッコミ×ツッコミ、果ては会話の流れとはあさっての方向へ発言するマイペース者もアリ。「ん? 今なんて言った?」と少しでも考えてしまうと、完全に遅れをとってしまう危険性がある。

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コメディ演出は徹底していて、キャラクターの心情に合わせたコミカルな音響効果、いたるところに散りばめられる小芝居が効いたギャグ、ちょっとエッチな匂いもする壮大な妄想劇、大袈裟なまでのミュージカルタッチ、意外にもキレの良さにびっくりさせられるダンスパフォーマンス、そして懐かしさが甦るヒーロー戦隊ばりの自己紹介とキメポーズ。見ているほうが思わず照れてしまうようなアクションを、真顔かつ全力でこなされてしまうと、かえって羞恥心は取り払われる……どころか、不覚にも自分がメンバーの一員になって一緒に騒いでいる気分にさせられるのが不思議だ。演劇を観ているはずなのに、笑いが「クスクス」から「ゲラゲラ」に変化していく。
ゲネプロの直前に行われた囲み取材で、ロン毛&眼鏡姿のオタク〈シャイン〉役であり『スター☆ピープルズ!!』の脚本・演出を手がける池田が「稽古場で一番楽しんでいたのは僕です(笑)」と語ったことからもわかるとおり、出演者による本気の“お笑い”の応酬が秀逸なのである。

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もちろん、池田の発想と演出のすごさは笑いだけに止まらない。役に立たない特殊能力にまつわる苦い思い出が語られるシーンでは、思わず目頭が熱くなるし、場面転換が数を重ねるごとに、みるみるうちに物語がサスペンス味を帯びてきて、それまで無意味に思えていた点の数々があれよという間に1本の線で繋がってゆくーー。その展開を例えるなら、難解複雑な数字の羅列が、たったひとつの数式にスルスルっと解かれていくような見事さなのだ。
〈グリッター〉を演じる酒井が囲み取材で、この公演のキャッチーコピー“ありえない、なんて、ありえない”を用いて「自分の子供ぐらいの年齢なのに池田くんは頼もしくて、すごいなぁって……。僕の20代の頃を考えると“ありえない”です」と褒め称えていたことにも納得。

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池田はまだ若干24歳。以前、インタビューで「若さは脚本・演出において武器になっているか?」と彼に聞いたことがある。すると、即座に「そう思っています」と答えてくれた。「若いということと、自分自身が役者でもあるということは、ほかの作・演出家の方にはない部分」だとも。

「どうしても生きてきた時代とか空気というものは絶対にあって、例えば僕がゴリゴリの戦争の話を書いてもゴリゴリの戦争時代を生きてきた人たちにはかないません。でも“今”という時代と空気感は、たぶん年配の演出家さんよりも僕のほうが敏感に感じているはずだし、時代に振り回されてもいると思うんです。だから、僕にしか表現できないものは必ずあると思っています。それに役者さんに対しても、20代という若い世代の僕からの距離だからこそ話せること、この距離だから理解し合えることは絶対にあって。それも僕の武器のひとつだと思っています。今はまだ僕と同年代の演出家はいないと思うので……。だから僕が今やることに絶対に意義はあります。その起爆剤に『スター☆ピープルズ』がなると嬉しいですね」(池田純矢)

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彼が類いまれなのは、恵まれた容姿、作家としての才能、演技や演出技術、舞台の知識の前に、おそらく物事に対する表現意欲と思慮深さが一番の要因なのだと思う。本作なら科学。そのひとつのことをどこまでも深く掘り下げ、小難しいことをどんな世代にもまんべんなく伝わるよう、芝居としてごくシンプルに、笑いを伴うユーモアたっぷりに描きながら、非常に大きなインパクトを残してしまう。それが彼独自のエンターテインメント……いや、“エン*ゲキ”なのだ。一見、浅いようで、実は濃くて深い。早くも『スター☆ピープルズ!!』のその先の池田純矢ワールドが見てみたくなった。

エン*ゲキ#02『スター☆ピープルズ!!』

2017年1月5日(木)~11日(水) 新宿東口・紀伊國屋ホール

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【作・演出】池田純矢
【出演】鈴木勝吾 透水さらさ 赤澤燈 井澤勇貴
吉田仁美 オラキオ 池田純矢 酒井敏也
【企画・製作】株式会社バール

『スター☆ピープルズ!!』 公式サイト

『スター☆ピープルズ!!』 公式ツイッター @enxgeki