Interview

New Order Bernard Sumner Special Interview

New Order Bernard Sumner Special Interview

伝説のバンド、ジョイ・ディヴィジョンに源流を発し、ニュー・ウェーヴ・シーンを牽引したマンチェスター出身のニュー・オーダー。
後進のバンドに多大な影響を与え続けている彼らが約10年ぶりとなるニュー・アルバム『ミュージック・コンプリート』をリリース。
ヴォーカルのバーナード・サムナーが新作についてじっくりと語ってくれた。

新作『ミュージック・コンプリート』は、2005年の『ウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール』から10年ぶりとなるアルバムになります。この作品は、かつて所属していた伝説的レーベル、ファクトリーと同じく1978年に設立されたロンドンの老舗インディーズ・レーベル、ミュートからリリースされるんですよね?

今回、ピーター・フックがバンドを辞めて、新しいバンドに生まれ変わったと感じた。だから、レーベルも変えるべきだと思ったんだ。そして、レーベルオーナーのダニエル・ミラーのことも、ミュートの活動も好きだったし、なによりインディ・レーベルに戻るというアイデアにも魅力を感じたんだよ。実際、ダニエルは(ファクトリーのレーベル・オーナーで80年代の音楽シーンに多大な影響を与えた)トニー・ウィルソンのような存在になってくれて、アルバムの制作中もわざわざロンドンからマンチェスターのスタジオまで来てくれて、エグゼクティブ・プロデューサーの役割を果たしてくれたんだ。彼が個人的に深く関わってくれたことが、僕たちの環境にいい作用をもたらしてくれたよ。

ギター主体の作品を続けて作ったおかげで、エレクトロニックに戻りたい気持ちが募ったんだ

そして、前作以降の流れとして、2007年にメロディックなベースプレイがバンドの顔でもあったピーター・フックの脱退。さらに2012年には子育てのためにバンドを離れていた女性キーボード、ジリアン・ギルバートが復帰。併せて、彼女の代役を務めていたフィル・カニンガムとベースのトム・チャップマンが新たに正式メンバーに加わり、バンドは新体制になりました。

正直に言えば、ピーター不在でライブをやり始めたころは不安もあった。彼も「俺抜きでバンドを続けるなんて不可能だ」って、プレスに言いまくっていたし、リスナーが新しいニュー・オーダーにどう反応するのかもわからなかったからね。でも、いざライヴをやってみると、観客の反応はどこに行ってすばらしく、3年半、ライヴを続けて、新作の制作にとりかかるころには、自分たちでも手応えを感じていたこともあって、彼の不在は作品を作る上で全く問題にならなかったよ。

さらに、今回のアルバムは、2001年の『ゲット・レディー』から続いていたギター主体の作風から一転して、エレクトロニックなサウンドが展開されています。

僕らは、1983年に(世界的大ヒットを記録した名曲)「ブルー・マンデイ」をリリースして以来、ダンス・ミュージックにおけるパイオニア的存在として、これまで聴いたことのない音を出すのを常に期待されていた。それにダンス・ミュージックはジャンルが細分化され過ぎてしまって、曲を作ろうと思っても、まずどのジャンルに当てはまるかを考えなきゃいけないような気にさせられた。だから、ダンス・ミュージックからしばらく距離を置いていたんだ。ただ、ギター主体の作品を続けて作ったおかげで、エレクトロニック・サウンドに戻りたいという気持ちが募ったし、今回、再び、シンセサイザーを駆使した作品に取り組めたことは夢のようだよ。

90年代後半以降、劇的に進化した機材や制作環境はどのように作用しましたか?

昔はやりたいことがあっても、それをうまく音にすることができないこともあったし、かつてのシンセサイザーには限界があった。でも、機材が進化した今、かつて、できなかったことができるようになったばかりか、音楽をまるで粘土遊びのように扱うことができる。そうしたテクノロジーの進化は今回の制作をさらに面白いものにしてくれたよ。

アルバムでは、「シンギュラリティ」と「アンラーン・ディス・ヘイトレッド」の2曲で、同郷マンチェスターが生んだ世界的なダンスアクト、ケミカル・ブラザーズのトム・ローランズがプロデュースを手掛けています。彼に声をかけた経緯を教えてください。

トムならではのアングルが欲しかったんだ。ケミカル・ブラザーズの音楽は、非常に革新的かつ進歩的で、畳み掛けてくる迫力がある。だから、今回、彼が手掛けた曲に関しては、そういう彼ならではのテイストを勢いのあるトラックに反映してほしかったんだ。

ゲストでは、「トゥッティ・フルッティ」と「ピープル・オン・ザ・ハイ・ライン」に、エレクトトロ・ポップ・デュオ、ラ・ルーのエリー・ジャクソン。(マドンナほかを手掛ける)スチュアート・プライスがアディショナル・プロデュースを手がけた「スーパーヒーテッド」には、米国のロックバンド、ザ・キラーズのブランドン・フラワーズが参加していますね。

エリー・ジャクソンに関しては、ラ・ルーとアメリカでライヴで何回か一緒になる機会があって、その時にジリアンと2人でステージ脇から彼女のライヴを見て、彼女の歌声をすごく気に入ったので、彼女にヴォーカル、コーラスを依頼したいと思ったんだ。そして、ブランドンとは、何年も前にNMEアワードで初めて会って以来の付き合いで、僕自身、ザ・キラーズの大ファンだし、ブランドンの歌い方が大好きなんだ。彼が参加した「スーパーヒーテッド」に関しては、3年くらいずっとサビが書けなかったこともあって、ブランドンにお願いすることにしたんだ。お互い多忙で、そこから完成させるまでには時間がかかったんだけど、何とかアルバムにギリギリ間に合って、ほっとしているよ。

この作品は僕たちの中で起きた変化を経て、バンドの歴史においても節目となるアルバムになる

そして、「ストレイ・ドッグ」にはロック・アイコンのイギー・ポップが意外にもスポークンワードで参加していますが、彼とは昨年3月に現代音楽家のフィリップ・グラス主催のコンサートで共演されたとか。

そうなんだ。フィリップ・グラスから共演相手がイギー・ポップだと聞かされて、ホントに驚いたけど、もちろん、彼の音楽の大ファンだから、よろこんで参加したんだ。その時の共演を経て、今回の「ストレイ・ドッグ」では、ヴォーカル・パートを書く段階になって、ふと散文詩の朗読形式がいいだろうと思い付いて、僕なりに精いっぱいイギー風に歌った仮歌入りのトラックを彼に送って依頼したら、快く引き受けてくれたというわけさ。

エレクトロニック・ミュージックを土台に、近年培ってきたギター・サウンドが最良のバランスで同居したすばらしいアルバムが完成した今の心境は?

この作品は、バンド内で起きた変化を経て、バンドの歴史においても節目となるアルバムになるとわかっていたから、その制作過程は集中力を要する張り詰めた状況だった。完成に向け、とにかく集中して精いっぱい取り組んだし、そこまで頑張ったからこそできたアルバムにはバンド全員が満足しているよ。

ニュー・オーダーの始動から25年。この作品から伝わってくる高いモチベーションが維持出来た秘密はどこにあるんでしょう?

音楽をやっていれば、いつでも何か新しいことを学び、成長することができる。だからこそ、僕は長くミュージシャンを続けてこられた。学校は大嫌いだったけど、ほかのミュージシャンの作品を聴いたり、読んだり、実際に自分たちでプレイし、失敗や挫折を糧にして、独学で深められるところに音楽のすばらしさがあるし、学ぶことは今も尽きないんだ。秋にヨーロッパでライヴを数本やって、来年から本格的なツアーに突入するんだけど、新しいヴィジュアルと新曲を加えたセットで日本にも行きたいと思っているから、その日が来るのを楽しみにしてて欲しいね。

インタビュー・文 / 小野田 雄

ニュー・オーダー

’80年のイアン・カーティスの自殺によってジョイ・ディヴィジョンが活動を停止。残されたバーナード・サムナー、ピーター・フック、スティーヴン・モリスの3人によってニュー・オーダーとして活動を開始する。’82年にジリアン・ギルバートが加入。ダンスとロックを融合させたオリジナルのサウンドを確立し、’85年発表の「ブルー・マンデー」は大ヒットを記録。12インチシングルとして世界で最も売れた作品となった。80年代後半にはマッドチェスター、セカンド・サマー・オブ・ラヴといった世界を牽引する音楽シーンの中心的存在として活躍。2007年にピーター・フックがバンドを脱退した。2001年と2005年にフジロックフェスティバルに、2012年にサマーソニックに出演。2014年、MUTE移籍が発表され、2015年9月23日に9枚目のアルバム『ミュージック・コンプリート』をリリース。

限定盤に封入されるTシャツ

限定盤に封入されるTシャツ

New Order

ミュージック・コンプリート

9月23日発売
CD+Tシャツ:6,000円+税(限定盤)
CD:2,300円+税(通常盤)
ボーナス・トラック1曲収録
解説 / 歌詞対訳付

日本盤のみボーナス・トラックを収録した通常盤のほかに、日本企画のTシャツ付き限定盤もリリース。ニュー・オーダーのアートワークを長年にわたって手掛けてきたピーター・サヴィルと倉石一樹とのコラボで、S・M・L・XLの4サイズが用意されている。プロデュースは2曲を除く9曲をニュー・オーダーが行い、ザ・ケミカル・ブラザーズのトム・ローランズが「Singularity」と「Unlearn This Hatred」の2曲を手掛けている。

収録曲

①Restless
②Singularity
③Plastic
④Tutti Frutti
⑤People On The High Line
⑥Stray Dog
⑦Academic
⑧Nothing But A Fool
⑨Unlearn This Hatred
⑩The Game
⑪Superheated
⑫Restless – Extended Bonus Mix