ALFA MUSIC LIVE Special  vol. 1

Column

時代の道標(signpost)となった レコード会社&レコード・レーベル

時代の道標(signpost)となった レコード会社&レコード・レーベル

アルファ・レコードの場合

アナログ盤=レコードに魅せられて50年ほど経つが、よく振り返ってみれば、レコードを購入する以前に“ソノシート”と呼ばれるものを、幼少の頃、よく買ってもらっていたなと、思い出す。
ソノシートという呼称は、㈱朝日ソノラマの商標であったから、一時期は“シート・レコード”などとも呼ばれたが、現在はソノシートで定着。一方で生産は10年前に終了し、あのスケルトン・レッドやブルーの新品は、よほどのことがない限りお目にかかれないこととなった。

食品用ラップ・フィルムを数枚重ねたくらいの厚さのソノシートは、通常のレコード(塩化ビニール盤)よりも薄く〜はっきり言ってペナペナ〜かつ安価であり、子供の頃は、円谷プロダクションの“ウルトラ・シリーズ”などの主題歌やTV放送の再収録〜もちろん音声のみ〜を再生して、悦に入っていたものだ。

小学校の高学年にもなると、小遣いやお年玉を貯めて塩化ビニール盤が買えるようになる。最初に購入したLPレコードは、ザ・ビートルズの『LET IT BE』(1970年)だったが、その時初めて、かの“緑色のリンゴ”が、盤面中央に貼付されているのを目の当たりにする。緑色のリンゴの正体が、ビートルズが1968年に設立した自分たちのレコード・レーベル“Apple”であることを知るには、そののち数年が必要だった。

ともあれ、緑色のリンゴを矯(た)めつ眇(すが)めつ、プレーヤー(ターンテーブル)に塩ビ盤を乗せ、ゆっくりと針を下ろし、ブックシェルフ型スピーカがコーン紙を震わせながら音を出していく“一連の行為現象”は、僕にとって至福の時間になっていった。

アルファベット“M”がデザイン化され盤面中央に貼付されたモータウン・レーベル(US)、海と太陽と椰子の木がドローイングされたアイランド・レーベル(ジャマイカ)、白い羽根の天使が真っ赤な空に浮かんでいるスワンソング・レーベル(US&UK)など、おびただしい数のレーベルが勃興と消沈を繰り返しながら、現在に至っている。

一方、日本に目を転じてみると、最も古い日本コロムビア(レコード会社)が日本蓄音機商会を発端にしていることが、ある種の原型となり、レコード会社は、ソニー、ビクター、東芝などの電機メーカーが持つソフトウェア事業(会社)という構造が基本形となった。
もちろん時代は推移し、現在では母体が電機メーカーではないレコード会社も多く、また、東芝は2007年にソフトウェア(音楽)事業から撤退している。

レコード会社とレコード・レーベルを同一視することも、当然のこと可能ではあるけれども、半ば無理矢理に比較検討する時、レコード・レーベルは、巨大化し旧態になりつつあるかもしれないレコード会社に新風を吹き込む1セクションというのが、わかりやすい位置づけだと思われる。

そして、新風を吹き込みつつレコード会社にまでなってしまったのが、1977年に設立されたアルファ・レコードである。設立者は、村井邦彦氏であり、今ではサッカー日本代表チームの応援歌としても認知されている「翼をください」を筆頭に、GS(グループ・サウンズ)からニュー・ミュージック黎明期の有名曲を多数作曲した人物だ。アルファ・レコード設立以前から、まだ美大生だった荒井由実(現在は松任谷由実)をプロデュースし、さらにはYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)をテクノ・ミュージックの覇者として世界的存在に押し上げていったことは周知の事実。

そしてまた、アルファ・レコードはハーブ・アルバートやカーペンターズを輩出したA&Mレコードの販売権を当時取得しており、1982年にA&Mレコードと契約していたビル・ワイマン(言わずと知れたザ・ローリング・ストーンズの初代ベーシスト)にソロ・アルバム発表時に電話インタビューできたことが、個人的にアルファ・レコードに関する最高の思い出だ。

まだ、ワイマン氏はストーンズに在籍中であったから、僕はストーンズのことばかりを聞きたかったのだが、ワイマン氏が雄弁に語ったことは、画家のマルク・シャガールのことと、(チャック・ベリーを輩出した)チェス・レコードのことだったと記憶している。A&Mレコードは、その後もポリスやジョー・ジャクソンのヒット曲を送り出し、総合的なレコード会社になっていった。

原点としてハーブ・アルバート&ティファナ・ブラスを大きく売りだそうとして設立されたA&Mレコードは、言うなればインディペンデント(独立系)レーベルだったと言っていい。
そのA&Mレコードの発売権を取得し、アルファ・レコード自体もインディペンデント系の魅力を周囲に振りまきながら、赤い鳥やユーミンを始点にしつつも、サーカス、カシオペア、シーナ&ザ・ロケッツ、YMOとより総合的なレコード会社になっていく(A&Mに似た)シンクロがあるのも、とても興味深い。

こうして見てくると、70年代の初めから80年代の終わりにかけて、(前身のアルファ・ミュージックを含め)アルファ・レコードは、音楽的に一時代の道標(signpost)になったことは明白であり、前述した「翼をください:赤い鳥」やYMOの先駆的音楽遺産は、今も輝きを失ってはいない。

そのアルファ・ミュージック&アルファ・レコードに所属したバンド&アーティストが一堂に会する音楽イベントが、9月27日と28日におこなわれる“アルファミュージックライブ”@東京・Bunkamuraオーチャードホールだ。

開催にあたり、当Web Siteでは、このライブ・イベントを多角的に取材していくつもりである。ぜひとも、期待していてください。

text / 佐伯 明

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