ALFA MUSIC LIVE Special  vol. 6

Report

アルファミュージックライブ レポート

アルファミュージックライブ レポート

日本ポップ・ミュージックの激動時代に、新しくも普遍的なアーティストと楽曲を送り込み続けたアルファミュージックの、走馬灯のように巡る思い出と音楽の力を信じる新しい萌芽を感じさせたライブ。
9月28日の月曜日、午後6時すぎの東急Bunkamuraオーチャードホール入口付近は、妙齢の紳士淑女で溢れかえっていた。村井邦彦の70歳=古希を祝うイベントとして“ALFA MUSIC LIVE”が企画され、そうそうたるメンバーが一堂に介し歌と演奏を披露する“現場”は、この先二度とないかもしれないものだからである。観客の誰もが、嬉しくも少し神妙な面持ちで席に着いたに違いない。27日の1日目の開演は18時30分(定刻)の20分押しだったらしいが、2日目はほぼ定刻通りにスタートした。

アイキャッチ写真©三浦憲治

©三浦憲治

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まず、緞帳の前・ステージ下手にスポットライトが当たり、登場したのはユーミン(荒井由実)だった。彼女は“作家としてアルファが最初に契約したのが、荒井由実だった”ことを含め、日本ポップ・ミュージックの激動時代にアルファが存在したことを語った。そしてユーミンが紹介し、最初にステージに登場したのは、ザ・タイガースの“トッポ”こと加橋かつみ。加橋はユーミンの楽曲を“歌うことによって”初めて世に送り出した張本人であり、その曲「愛は突然に」を1曲目に歌った。
次に吉田美奈子がプレゼンターとなり、紙ふうせんの2人が登場。歌ったのは赤い鳥の有名曲「竹田の子守唄」だった。平山泰代は後藤悦治郎のアコースティック・ギター1本のバッキングで歌ったが、何の不足感もないばかりか、むしろギター1本での楽曲の充足感に恐れいったことを記しておく。
プレゼンターがミッキー・カーチスへと移り、大野真澄がステージに……。歌い出したのは無論「学生街の喫茶店」である。この日のために組織されたハウスBANDは、武部聡志を筆頭に名うてのミュージシャンばかりであるから、“あの頃”とは別種の安定感がある。しかしながら、ないものねだりだとは承知の上で、GAROがオリジナルメンバーのまま演奏したらどうなっただろう?と、夢想してしまう自分がいた。
プレゼンターは服部克久となって、雪村いづみが登場。服部良一の名曲を雪村がカヴァーしたアルバム『スーパー・ジェネレーション』の演奏を務めたのがキャラメル・ママであった脈絡から、バンドがハウスBANDからティン・パン・アレーに変わっての「蘇州夜曲」は格別だった。かつて僕は、ユーミンの「ひこうき雲」が当初、雪村いづみに向けて書かれた曲だという噂を耳にしたことがあったため、この日は遂に雪村いづみが歌う「ひこうき雲」が聴けるかもしれないと、浮き足立っていたのだけれど、それが、実現されることはなかった。
続いて、プレゼンター・野宮真貴の紹介で、荒井由実がステージに上った。雪村が「ひこうき雲」を歌わなかった以上、ユーミンがそれを歌うのは必定であり、もう1曲は何が歌われるのだろう?と推理した。2曲目は、「苗字が荒井から松任谷になる直前に作った曲です」というMCと共に「中央フリーウェイ」だった。それにしても「中央フリーウェイ」という楽曲の持つ“映像喚起能力”には、最初に聴いてから、40年近く歳月が流れた今でも舌を巻く。首都高速道路から中央高速に乗ったことがない人でも、いやむしろ乗ったことのない人のほうが、豊かな音楽的Inner Visionを描くことができるはずだ。ちなみに、音源と同様、キャラメル・ママのバックにユーミンが歌ったのは(彼女のMCにもあったように)初めてのことである。
さて、細野晴臣がプレゼンターとなって、登場したのは小坂忠。“狭山のアメリカ村”など懐かしい地名も飛び出して歌われた2曲は、US音楽に精通した小坂が、知識だけでなく技量として身につけたものに、キャリアを重ねることによってスピリットすらも包含したかに思える濃厚なものだった。
その後、桑原茂一のスピーチがあり、第1部終了、15分の休憩に入った。トイレがいっぱいだったことは言うまでもない(笑)。

©三浦憲治

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第2部最初のプレゼンターには、カシオペアの向谷実が抜擢、“スタジオAへ上がるエレベータにキーボードが入らず、1階とスタジオをケーブルで繋いでレコーディングをした”という泣き笑い必至の話を披露した。
そして、吉田美奈子がステージに上がった。リハーサル取材時に、スタジオから漏れ聞こえてくる彼女のヴォーカルにも唖然とさせられたが、本番のヴォーカル力は圧巻だった。
そして、紙ふうせんがプレゼンターとなり、サーカスがパフォーマンスを展開。メンバーを新旧取り混ぜつつ変わらぬコーラスワークでオーディエンスを魅了した。
サーカスの叶高がそのままプレゼンターとなり、山本達彦が登場(2日目のみ)。かつての音楽ジャンルの呼称である“シティ・ポップ”のお洒落でデリケートな楽曲のテイストを思い出させてくれた。
続いては、坂本美雨がプレゼンター、登場したのはブレッド&バターである。取材時にも明らかになったように、ブレッド&バターの骨子であり中核を築いたアルファ時代の2曲を歌った。
ブレッド&バターの岩沢幸矢がプレゼンターとなって、コシミハルを呼び込む。80年代はテクノポップ・レディだったが、この日はエディット・ピアフの超有名曲「バラ色の人生〜La Vie En Rose」を歌い上げた。こうした音楽性の変化が聴き取れるのも、感慨深いものだ。
さて、アルファミュージックライブも終盤へと差し掛かった。鮎川誠自身がプレゼンターを務め、登場したのはシーナ&ザ・ロケッツ。無念なことながら、シーナはステージにはいない。それでも、鮎川がヴォーカルを取り、キャリア初期の2曲を客席に放った。個人的に2曲目に演奏された「LEMON TEA」は塩ビ盤が擦り切れるほど聴いた記憶があり、その訳は、ギター・リフがザ・ヤードバーズ(UKのバンド)が有名にした「Train Kept a Rollin’〜又の名をStroll On」であるからだ……若き日の僕にとって、この曲が日英に掛かる共通音楽認識=ブリッジに感じられたことを、客席にて思い出した。
さらに、高橋幸宏・プレゼンターに紹介されたのは、日向大介 with encounter。この日、最も“今どき”の音楽を聴かせた日向大介ユニットの音楽は、アルファが思想として持っていた“新しい音楽の追求”を再認識させてくれたのである。
そしてプレゼンターは松任谷由実へと……アルファの絶頂期を作り出したYMOの登場だ。来日できなかった坂本龍一の代わりに参加するのは村井邦彦、予想だにしなかったYMOである。取材時に村井が練習を積んでいたピアノのイントロダクションから、ラテン・ジャズ系の「ライディーン」が客席を満たしていく。
村井邦彦がトークをし、次世代バンド(アルファのDNAを継承したであろう御子息バンド)による「翼をください」で、感情曲線はピークへと上昇していく。
さらに村井が「こういうイベントだからこそ新曲をやろうと思います」とMC。盟友・山上路夫が病床から歌詞を書いた「音楽を信じる」を演奏した。小坂忠と愛娘Asiahも加わった、この書き下ろし楽曲で本編は終了した。
アンコールでは村井が万感の思いで“きっとここに駆けつけてくれたであろうミュージシャン&アーティスト”の紹介をし、「美しい星」をピアノで弾き語り、大団円となった。

©三浦憲治

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終わってみれば、“過去が巡り蘇る”とばかりは言えなかったアルファミュージックライブ。その内容とともに、アルファの真価を今一度考えてみた。

現在、音楽表現は映像表現などに較べ、ある意味で軽視され、訴求力をなくしている。むしろ虐げられていると形容したほうがいいかもしれぬ。
だがしかし、日本ポップ・ミュージックの激動時代に新しくも普遍的なアーティストと楽曲を送り込み続けたアルファミュージック&アルファレコードは、音楽の持つ素晴らしきInner Vision(胸内映像)を、数十年の時を経て蘇らせてくれた。音楽の力は、未来をも生むだろう。そのことがよくわかってくるライブだったと言えるのではないだろうか。

ALFA MUSIC LIVE セットリスト

プレゼンター 荒井由実
M1.「愛は突然に/加橋かつみ」
M2.「花の世界/加橋かつみ」
プレゼンター 吉田美奈子
M3.「竹田の子守唄/紙ふうせん(赤い鳥)」
プレゼンター 安藤和津(27日)、ミッキー・カーチス(28日)
M4.「学生街の喫茶店/大野真澄(GARO)」
プレゼンター 服部克久
M5.「蘇州夜曲/雪村いづみ」     演奏 ティン・パン・アレー
M6.「東京ブギウギ/雪村いづみ」   演奏 ティン・パン・アレー
プレゼンター 野宮真貴
M7.「ひこうき雲/荒井由実」     演奏 ティン・パン・アレー
M8.「中央フリーウェイ/荒井由実」  演奏 ティン・パン・アレー
プレゼンター 細野晴臣
M9.「ほうろう/小坂忠」       演奏 ティン・パン・アレー
M10.「機関車/小坂忠」        演奏 ティン・パン・アレー
プレゼンター 向谷実
M11.「朝は君に/吉田美奈子」
M12.「夢で逢えたら/吉田美奈子」
プレゼンター 紙ふうせん
M13.「MR.サマータイム/サーカス」
M14.「アメリカン・フィーリング/サーカス」
プレゼンター サーカス
M15.「ピアニスト/山本達彦」(28日のみ)
プレゼンター 坂本美雨
M16. 「あの頃のまま/ブレッド&バター」
M17.「Monday Morning/ブレッド&バター」
プレゼンター ブレッド&バター
M18.「La Vie en rose/コシミハル」
プレゼンター 鮎川誠
M19.「ユー・メイ・ドリーム/シーナ&ロケッツ」
M20.「LEMON TEA/シーナ&ロケッツ」
プレゼンター 高橋幸宏
M21.「hot beach/日向大介 with encounter」
プレゼンター 松任谷由実
M22.「ライディーン/(YMO)細野晴臣、高橋幸宏&村井邦彦」
M23.「翼をください/紙ふうせん、小坂Asiah、大村、林」
M24.「音楽を信じる/小坂忠、小坂Asiah」
アンコール
E1.「美しい星/村井邦彦」

text / 佐伯 明(音楽文化ライター)

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