Interview

神ってるKREVAの神業が集約。4年ぶりのアルバムから見える進化

神ってるKREVAの神業が集約。4年ぶりのアルバムから見える進化

KREVAがレコード会社を移籍し、待望のニュー・アルバム『嘘と煩悩』を完成させた。オリジナル・アルバムのリリースは『SPACE』以来、実に4年ぶりとなる。メジャー・デビュー10周年を挟んだ4年の間には毎年恒例となった〈908 FESTIVAL〉のほか、ライブハウス・ツアーや47都道府県ツアーを実施。自身が音楽監督を務める音楽劇『最高はひとつじゃない』シリーズや、宮本亜門構成・演出による新感覚の舞台『SUPERLOSERZ』への出演も果たした。つねに新しい領域を切り開き、自らの居場所を広げ続ける彼が満を持して送る『嘘と煩悩』で見せる世界とは?アルバムに隠されたテーマを探った。

取材・文 / 猪又孝


人間みんな嘘と煩悩でできている。嘘と煩悩を合わせると俺になる。嘘と煩悩からは逃れられない。イコール、俺からは逃れられない

今回のアルバムは、いつ頃から制作を始めたんですか?

「もう逢いたくて」を2015年の年末に自主的に作って録って、そのあと2016年の頭くらいに「居場所」を作ったんです。「居場所」がシングルだと思えるような曲に出来たんで、これが大きかったです。そこから何曲か作りだして、6月くらいに一気にまとめて録ったんです。

当初目指したアルバム像は?

最初はもうちょっと雰囲気系の、しっとりしたアルバムにしようと思っていたんです。「FRESH MODE」で始まって、全体的にそういう雰囲気で進行して、テンションのMAXが「居場所」みたいな感じでした。

結果、全然違う仕上がりですね。

そう。(レーベルを)移籍してあらたなスタートを切るっていうときに、それじゃないなっていうのは自分でもわかっていたし、移籍したタイミングだからタイトルもバチーンとインパクトのあるものにしたいと思って。それでずっと温めていた“嘘と煩悩”という言葉を提案して、音的にももう少しエッジの立ったものを、と思って「嘘と煩悩」という曲を作ったんです。

タイトル曲「嘘と煩悩」は、フックに出てくるトンチの効いた足し算がお見事でした。あれはKREVA式計算式と呼べばいいのかな(笑)。

あはは。ありがとうございます。あれは5〜6年前から温めていたんです。

そういうユーモアがありつつ、歌詞全体は人間の本質を突く奥深いものになっている。

人間みんな嘘と煩悩でできているっていうことですね。で、嘘と煩悩を合わせると俺になる。嘘と煩悩からは逃れられない。イコール、俺からは逃れられないっていう。テーマはその1点です。

要は乗せ方。そこは我ながらベテランだと思います

「神の領域」は自身を神格化した大胆なボースティング・ナンバーですが、前々作『GO』で「基準」という曲を作り、その後、「王者の休日」を作り、ついに“神”まで到達しましたね(笑)。

もう次のテーマは死後の世界じゃないですか?(笑)いや、神だから死なないのか(笑)。

今回、神をモチーフにした理由は?

「神の、かみ・か・かみ、神の領域」っていうフックのフレーズが頭に聴こえてきたんですよ。もう出てきちゃったから、そこから神になれそうな感じを書いていって。言わば、年に一度の神モードってヤツです。

超絶ラップが話題になった「基準」以上の神業ラップを披露していますが、言葉を詰めてワーッとラップするだけじゃなく、スッと抜く部分も抜群だったりする。ベテランらしいテクニックだなと思いました。

要は乗せ方ですよね。そこは我ながらベテランだと思います。あと、海外を見ていても、自分でトラックを作ってラップして、っていう人が本当に減ってきていて。でも、俺はそれをずっとやっているんで、ビートにハメていく感じとか抜く感じとか、そのコントロールとか、さじ加減がうまくなってきたところはあると思います。

KREVA

「居場所」はどんなキッカケで書いたんですか?

この曲を作っていた頃、綺麗な字を書けるようになりたいと思って、字を書く練習をしていたんです。その一環で、あまり韻のこととかを考えず、思ったことを綺麗な言葉で綺麗な字でノートにたくさん書いていくっていうことをウワーッとたくさんやっていて。ノート2〜3ページ分くらいあったのかな。そこから言葉を拾ってフロウにハメたんです。

歌詞に「無駄な事は無い それはウソだね ただボーッと眺めるだけの時間を減らせ」というフレーズが出てきますが、KREVAさんらしいストイックさが表れているなと思いました。

「遠回りしてもいんだよ」とか「努力は人を裏切らない」って言うけど、絶対要らない失敗とか遠回りってあると思うんです。『SUPERLOSERZ』で共演したWRECKING CREW ORCHESTRAのダンススクールを見学させてもらったときに、メンバーのDOMINIQUEさんが「嘘をつく努力っていうのがあって、要らない努力をして遠回りをしている人がいると思うから、そういうのをなくすためにスクールに入るのもいいんじゃないか」みたいなことを言っていて、「たしかに!」と思ったんです。

どこかのビルの前で自主練しているのもいいんだけど……っていう。

そう。リリックにも「間違ったフォーム 後で変えるのは一苦労」って書いたけど、間違ったことをどんどん覚えていっちゃったりするよりは、基礎となる体操をしっかり覚えたほうがいいかもしれない。計算が苦手な人は計算に時間を費やすより、電卓を早く打てるようになったほうがいいかもしれない。

目標やゴールがはっきりしているなら、なおさらそうかもしれないですね。

「遠回りも財産だし」とか、たしかにそれも一理あるんです。でも、それで心に傷を負うことは絶対に不要だし、要らない傷を負うことはない。そう考えると無駄なこともあるなと。

「今を見てくれたらもっと楽しいと思うんだけどなぁ……」

「想い出の向こう側 feat. AKLO」は、3拍子と4拍子を連結させたユニークなトラックですね。

3拍子のところが最初に出来たんですけど、今回はアルバムを10曲で構成したかったんです。だけど、10曲以上聴いた印象を持たせたかったから、1曲の中でいろんな表情を持つトラックを作れば、たくさん聴いた感じになるかなと思って、この曲もそういう構成にしたんです。

AKLOさんとは過去何度もコラボしていますが、再び2人でやろうと思った理由は?

まず「想い出の向こう側」っていうフレーズが浮かんできて、「想い出の向こう側ってなんだろう?」って考えた時期があったんです。同時期に、フリースタイル・ブームがあったからかわからないけど、「昔フリースタイルやっているのを見ていました」とか「いまだにMCバトル見ています」とか言われて。初めて会った人にも「昔よく聴いていました」とか「青春でした」って言われるから、昔のままで止まっている人って多いなぁと思って。そのときに「今を見てくれたらもっと楽しいと思うんだけどなぁ……」「あ! 思い出の向こう側を見せてあげられないかな」と思って。それで書く方向が決まったときに、まずは“今”を追いかけているヤツに登場してもらおうと。それはAKLOだなと思ったんです。


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