LIVE SHUTTLE  vol. 95

Report

遊び心とベテランならではのグルーヴ。5人の個性が際立つユニコーンのステージ

遊び心とベテランならではのグルーヴ。5人の個性が際立つユニコーンのステージ

昨年9月から12月まで、アルバム『ゅ13-14』を携えて、3ヵ月以上にわたるユニコーンのツアー〈第三パラダイス〉が行われた。ベテランらしいダイナミックなグルーヴの中に遊び心が随所に溢れ、5人の持ち味が存分に発揮されながらユニコーンらしさも際立つステージング。2016年11月24日、中野サンプラザホールで行われたライブの様子をお届けする。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 三浦憲治(Lightsome)


バンドとオーディエンスのコミュニケーションがとてもスムーズだ。ある意味、これがユニコーンのライブの真髄

ユニコーンの2016年のアルバム『ゅ13-14』は、一定のテーマを設けずに制作されたが、それでいて一個の統一感のあるアルバムになってしまうのだから、さすがだ。それこそ全員が50代を迎えたメンバーの心境が音楽として綴られた、“軽く笑える賢いアルバム”だった。

その『ゅ13-14』を掲げたツアーが〈ユニコーンツアー2016「第三パラダイス」〉だ。9月に始まったこのツアーの前半を、僕は大宮ソニックシティ大ホール(9月16日)で観た。そして再び後半の中野サンプラザの2日目(11月24日)に足を運んだ。大宮からの変化は大きく、改めてこのバンドの“らしさ”について多くのことを感じる、ダイナミックなライブになっていた。

セットのイメージはアメリカ合衆国のどこかのハイウェイ沿いの一角。道路標識やモーテルやダイナーのイメージが、電飾などで表現されている。パームツリーも立っているから、西海岸のほうかもしれない。2階席から見下ろすと、ステージの床には道路のセンターラインのような線が引かれている。この日、“通る道”は“ROUTE 42O”と表示されていた。都道420号線=通称・中野通りのことなのかもしれない。とにかくステージのあちこちに表示されている文字は、凝りに凝っている。このあたりの細かいネタへのこだわりも、ユニコーンのライブらしくて楽しめるのだった。

unicorn_161124_live_01

ステージに真っ赤なつなぎを着たメンバーが入場してきた。バックに流れているのは、ラテン系の打ち込みサウンド。メンバーがそれぞれの位置に着いて始まったのは、『ゅ13-14』からのABEDONナンバー「サンバdeトゥナイト」だ。ロックとサンバを力技でサンドイッチしたハッピーな曲だ。会場はのっけから盛り上がる。メンバーは頭上に息を吹き込むとピロピロ巻き出る吹き戻しを装着していて、演奏中に伸ばしたり巻いたりしてにぎやかにライブのスタートを飾る。
大宮でこの曲はひたすら軽快さが強調されていたが、この日の演奏はどっしりとしていて、まず最初の変化に気がついた。川西幸一のラテンなのにどっしりとしたドラム。それに合わせるように、手島いさむは珍しくレスポールの太い音色でギター・ソロを取る。ただし、ベースのEBIは早くも踊り出していて、軽快なまま。このあたりのバランスが面白い。

unicorn_161124_live_02

終わって奥田が「イェーッ」とシャウトして、「すばやくなりたい」へ。「俺たちに明日はない もう時間が少ない」というちょっと切ない“50代ソング”だ。結構シビアな歌詞なのに、奥田・手島はステージ前に並んでめっちゃ元気にステップを踏みながら演奏する。アルバム『ゅ13-14』に込められた気持ちが、冒頭から溢れ出す。

unicorn_161124_live_03

続く「頼みたいぜ」は、活動再開後の第2作目アルバム『Z』(通算10作目)からの曲。「すばやくなりたい」と同じく、横に揺れるロックンロールだ。このグルーヴは活動再開後のユニコーンが得意とするところ。今度は奥田が踊りながらギター・ソロを披露する。圧倒的なアッパー・ナンバー3連発で、華々しくライブは幕を上げたのだった。

「こんばんは、ユニコーンです。急に寒くなりましたね。東京は雪が降ると大パニック。来れない方もいたんですかね」と奥田。そう、この日は観測史上初の“11月の積雪”となった東京でのライブだ。幸いすぐに融けて、交通機関は事なきを得たのだった。

「サンプラザは伝統ある会館で、久しぶりに来て嬉しいです。ほんとはね、今日がツアー最終日のはずだった。中野ブロードウェイで大打ち上げの予定だった。でも追加公演がどんどん入って、打ち上げはなくなりました」。ツアーの内情を暴露して、笑わせる。そのあとが、衝撃的だった。

奥田の切れのいいギターのコード・カッティングから始まった「与える男」は、安定したリズムが生むスピード感が抜群で、オリジナルとはまた別の魅力が加えられている。作られてから20年以上も経つのだから変化するのは当たり前だとも言えるが、堂々たる曲の構えにその間のメンバーの歴史が刻まれていて驚いた。逆アゲマンの歌のふりをして、実は照れながら純愛を告白するこの歌の良さを、50代男たちが熱演する姿に、僕はグッときてしまったのだった。

unicorn_161124_live_04

この日はなにしろEBIが面白かった。非常にシンプルなメロディの「道」を非常に説得力のある歌で聴かせたと思ったら、MCでは一転して「どうも、こんばんは~!……あれ? 爽やかすぎる?」とひとりでボケてツッコんでみせる。もともと掴みどころのないのがEBIの魅力なのだが、この日は切り替えがとても冴えていた。

「僕たちの13枚目のアルバム『ゅ13-14』から聴いてください。今日は特別に中野バージョンでお送りします……ウソですけど」とまたも“ひとりボケツッコミ”をカマす。

それでいて「CRY」を歌い出すと、シリアスな歌詞をきちんと伝える。それを受けて、ABEDONがメロトロンで重厚なソロを取る。優れたライブというのは、オーディエンスの感情を思い切り揺さぶり、凝り固まった心をマッサージしてるくれるものだが、この日のEBIはキーマンとしての役割を充分に果たして余りあるものがあった。

unicorn_161124_live_05

すると奥田が話し出す。
「EBIのトークからの曲の入り、すごいよね。ついて行けない。お客さんも笑ってからすぐに真面目に切り替わるのがすごい。電大でも、いつもこうなの?」。
手島が答える。
「電大は、そこにツッコむ人がいない」。

再び奥田が「今度、電大のライブに、ツッコミに行こうかな」。その言葉に、会場から拍手が起こる。バンドとオーディエンスのコミュニケーションがとてもスムーズだ。ある意味、これがユニコーンのライブの真髄だ。

unicorn_161124_live_06

演奏で度肝を抜かれたのは、「ハイになってハイハイ」だった。ささやくように歌うパートと、激しいパートが目まぐるしく入れ替わる。そのメリハリが強烈だ。『ゅ13-14』で聴く「ハイになってハイハイ」のダイナミクスを、ライブでは10倍強調している感じ。メンバー5人のメリハリが一致していて、完成度の高い演奏で大きな拍手を浴びた。
「昨日より良かった! この曲、いろいろスイッチを踏まなきゃいけないから、ずーっと足を浮かせてるんだけど、股関節が大変なことになってる。できれば、テッシーが踏んでくれよ」と奥田が言うと、手島は「あー、でも自分のこともあるからね」とすっぱり切り捨てる。場内は大爆笑だ。

同じく「オレンジジュース」も、高い集中力の演奏で、オーディエンスの耳を惹き付ける。奥田とABEDONのハーモニーが絶品で、大歓声が上がる。その直後にEBIが犬のような声でカウントを取る爆笑ナンバー「BLACKTIGER」が待ち受けているのだから、タフなセット・リストだ。

ベテランらしいメリハリのある演奏と、ユニコーンらしいメリハリのあるセット・リスト&MCが見事に噛み合って、引き締まったライブが展開されていく。最終盤は「大迷惑」と「風と太陽」で締め括った。ここまで1時間50分。時計は8時50分を指している。

unicorn_161124_live_07

アンコールでメンバーがステージに戻ってくる。

「土日って5時スタートだったりするから、久しぶりの7時スタート。もう眠くなってきた」と奥田。締まった本編とは対照的に、アンコールはユルユルの雰囲気だ。本編はもちろん、このアンコールを楽しみに来ているオーディエンスも多いことだろう。

「今日は特別にこの曲をお届けします」と、またしてもEBIがとぼけた曲紹介をして「マッシュルームキッシュ」。「WAO!」では、途中、恒例のABEDONのワンマン・ショーが挿入される。この日は「中野は中央線だから、松任谷由実(八王子出身)のモノマネして」と奥田にムチャ振りをして、奥田は大苦戦。ABEDONの“いじめっ子”キャラが炸裂する。それもまたユニコーンらしい。

ラストはその奥田民生が熱唱する「Feel So Moon」。
完全に心をほぐしてもらったオーディエンスたちは、ポカポカに温まった足取りで帰路に着く。これがユニコーンのライブだ!


ユニコーンツアー2016「第三パラダイス」 2016.11.24 中野サンプラザ セットリスト

1. サンバdeトゥナイト
2. すばやくなりたい
3. 頼みたいぜ
4. 与える男
5. オーレオーレパラダイス
6. 僕等の旅路
7. 道
8. CRY
9. マイホーム
10. 第三京浜
11. ハイになってハイハイ
12. エコー
13. オレンジジュース
14. BLACKTIGER
15. TEPPAN KING
16. Boys & Girls
17. 大迷惑
18. 風と太陽
EN1. マッシュルームキッシュ
EN2. WAO!
EN3. Feel So Moon

vol.94
vol.95
vol.96